転生チートオリ主が性格で無惨に離婚された話   作:ややや

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頑張ってナロー陣営がペラ回す会議。
モリアーティが見たら頭抱えます。



婚活失敗記録/Zero⑤

 固有結界『疑似虚構世界SE.RA.PH』は青く白線が引かれた、なんとも簡素な代物だった。周りに建ち並ぶ巨大なビルはどれもが均等に建設されておらず、ナローが案内した城の中はその巨大さとは裏腹に二階もないハリボテの建造物だった。豪奢な椅子と机は絵画の絵柄がアニメ化したように安っぽい。

 

「…どう思う、ライダー」

()()。器がというのではなく、積み重ねが余りにも少ない」

 

 ディルムッドの問いにイスカンダルは髭を撫でた。漸く会えたナローが従うマスターは、彼らから見て異様であった。体幹が安定しない。サーヴァント達に大きな反応を示す。配られた茶菓子もたまごボーロであり、ひっきりなしに溢していた。

 

 正気ではあるが、挙動があまりにも幼い。ナローが手ずからお菓子を振る舞う様は雛鳥のようであった。イスカンダルは自身のたまごボーロを鷲掴みにして口に放り込む。口当たりの良い、優しい味が広がった。

 

「傀儡か、そもそも偽物か…」

「本物ではある、筈だ」

 

 妙に確信を持って断言したディルムッドにイスカンダルは無言で理由を促したが、彼は首を横に振った。ディルムッドも根拠のない判断だったからだ。同じく仕えるものとしてナローへの目線が偽りでないように見えたのだ。

 

 イスカンダルは彼の直感を信じた。信じ、そしてそれが正しいからこそ彼らは英霊だった。十重二十重に偽装したナローの嘘をこじ開ける。器や詐術でナローに負けるサーヴァントはここには居ない。ナローが出来ることは事実で脅すしかなかった。

 

 一発芸しかないナローの立場は他の陣営が想像するより遥かに危うい。ナローの武器は持参した銃火器一式のみであり、それ以外の攻撃手段がない。圧倒的に火力が不足しているのだ。宝具も燃費が極悪のサポート系に、()()()()()使()()()()()()産廃宝具*1の二つのみ。

 

 ナローの目的は婚活である。現世で新たなパートナーを見つけるのが彼の最終目標である。冬木の聖杯は彼の欲にとことん合わなかった。汚染された聖杯は露悪的に願いを叶える。逃げすら封じられた弱小サーヴァントの八つ当たりの結果が今の惨状だった。地獄でエレナ(あのおんな)が笑ってる気がした。

 

 ─つ、次こそは…つぎこそはぁぁ!

 

 なお、とある世界線(レクイエム)ではフィードバックは還ってこなかった模様。彼のサーヴァント体は彼らしく皆身勝手だった。

 

「じゃあ、ライダーさん。後はよろしく」

「うむ、感謝するぞ、アサシンよ」

 

 専守防衛しか策がないナローは場の有利を手放しで捨てた。掴みどころがない、というより忙しくて余裕がないと評すべきか。マスターの口元を拭うナローにイスカンダルは肩をすくめた。

 

「お主は参加せんのか?」

「聴きはするけど別に。君達と違って俺は()()()()()なんだ。勝ち目が無い以上、俺はマスターを守るよ」

 

 いかにも介護している風にナローはメアリー(マスター)とリハビリスケジュールの話題を話す。勿論、本体の白野にはちんぷんかんぷんな内容であるが、メアリーはそれに流暢に答えた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()憑依(デミ)サーヴァントならぬ仮想(エミュレート)サーヴァント。静謐の協力の元、固有結界故に実現したこの偽装はアサシン陣営渾身のブラフだった。

 

「ふぅむ。…フフン。参加するなら構わん」

「(なんなんだよあの笑い…やめてよこちとら頑張ってるんですよ!?)」

「(少なくともギルガメッシュさんにはバレてるようです。…白野ちゃんを狙うのはちょっと犯罪的では?)」

 

 ナロー達が内心てんやわんやする中、イスカンダルは両腕を大きく広げて机を叩いた。イニシアチブを取るための慣れ親しんだ行為である。全員の視線が集まったのを見計らい、彼は歯を見せて笑みを浮かべた。

 

「これより、我らの聖杯問答を始める。酒杯を交わし、各々が格を見せつけ合えば、剣に屈するまでも無く相応しき者を知るであろう。己こそが聖杯に相応しい、と名乗るのであれば。相応の格を我らに、なにより自分自身に刻むがいい」

「…何だ、その話し振りは」

 

 今まで沈黙に徹していたアルトリアがイスカンダルに眉を顰めた。

 

「この会議はアサシンを問いただす場ではないのか?何故私達の主張をする必要がある」

「だからこそだ、セイバー。我々は互いの望みを知らん。目的も知らん輩に()()()()も行えんだろう?ハリネズミではアサシンの思う壺だぞ」

 

 アルトリアは返答しようと口を開いて、無言で閉じた。マーリンに似た気質の奴に説得は無駄なのではと確信していたが、それでも口に出さなかった。死にかけから脱して色々頭が冷えた結果、彼女は主義主張に少々自信が持てなくなっていた。

 

 その弱々しく張り詰めたアルトリアを観てギルガメッシュはワインを片手に脚を組んだ。目の前のたまごボーロはいつのまにか原初のたまごボーロに変貌しており、白野の前にお代わりとして飛んで行った。

 

「馬鹿馬鹿しい──問答など不要だ」

「金ピカの。そりゃなぜだ?」

「全ての財宝は(オレ)のモノよ。戦争だルールだ小賢しい柵は雑種が甘受していろ。(オレ)以外に裁定者は要らん」

 

 ギルガメッシュの暴言はあまりに堂々としていたためにマスター達は一瞬それが正しいと思ってしまった。ふざけた物言いにアルトリアが苦言を発しようと口を開く前に、ナローは指を鳴らした。

 

「じゃあそれで」

 

 ()()()()と異音を鳴らして地面から生えたTVに映し出されたのは小型の可愛らしく装飾された裁判所だった。『魔法少女フィールド 運営場』と書いてある看板の下には顔が黒塗りの赤毛で巨乳の女性がおり、彼女は裁判服でガベルを叩いた。

 

『ルール⑨ ギルガメッシュはルールになる』

「よし、け「待て雑種よ」──何です?」

 

 何か邪悪な所作をしたナローの手をギルガメッシュは全力で掴んだ。みっともなく身を乗り出した彼の鎧はたまごボーロが粉まみれになって汚れていた。尚も腕を動かそうとする彼の手をテーブルの上でうつ伏せになって防ぐその姿に王の威厳は何一つ無かった。

 

「確かに(オレ)は裁定者と言った。言ったが!なるとは言っとらんわ!」

「裁定者に自我は不要では?(暴論)…大丈夫!珍しく俺がパーペキな!あっ!ちょっと!イケる、ルーラーイケるから!」

(オレ)の力を強奪しての宝具(ソレ)はやめ!…やめんか!たわけ!雑種!戯け雑種!!」

 

 十分後。

 

「……。…………… (オレ)の参加理由は財の回収よ。全ての財がある(オレ)の蔵に取りこぼしがあっては恥だからな」

 

 最終的に白野(メアリー)の発言により()()()()裁定を諦めたギルガメッシュは憮然としたまま己の願いを述べた。

 

「そこの改竄者(チーター)のように宝を無価値として捨て置く輩は後を経たん。価値ある物は相応しき者が扱わねばな…」

「つまり器が欲しいと。…中身は空でも構わんよなぁ?」

(オレ)の眼鏡に適えばな」

 

 ギルガメッシュの言葉にイスカンダルは哄笑した。聖杯戦争に投じている身で勝ち残れとは、当然のことに何を言っているのだと笑った。ナローは何故笑うのか理解できずに首を傾げた。

 

「そう言う貴様はどうなのだ、ライダー」

「余か?余は─受肉だ!

「はぁ!?お前、そんなものに聖杯を使うのかよ!?」

 

 ウェイバーのツッコミにイスカンダルは肯定した。指を天に向け、指しようがない彼方の地点を指差しながら彼は宣言した。

 

「余は地の果てを目指して遠征を続けた。生憎最果ての海(オケアノス)は無かったが、世界はまだまだ広い、広すぎる!だからこそ、余は夢を抱えて肉を持たねばならん!次は宇宙だ!いやあ!興奮するばかりだ!」

 

 興奮が抑えきれずに腕を組むイスカンダルは子供のようだった。彼の有り様を見て何かを指摘する存在はいなかった。夢を見て行動した彼を無謀だと理解しても、それは悪にはならないと納得したいからだ。

 

 肩書は人を盲目にする。ただの()国王アルトリアは国を切り離して漸く人を知った。思えば円卓の誰もが人の心を理解していなかった。ヒトは、()()()()を持つ生き物だ。何かを抱えて、何かを捨てて。アルトリアは取捨選択に国を言い訳にし過ぎた。

 

「──私の願いは我が国民(こきょう)()()だ」

 

 アルトリアは重ね澱んだ経歴を捨てて本心を出すことができた。

 

「…つまり、過去に滅んだ国を甦らすと?」

()()。国など飾りにすぎない。一世紀もあれば変わる看板に…いや、私はその百年を誤魔化したい…のか」

 

 アルトリアは苦しげに下を向いた。目に入るのは散らばったたまごボーロだった。あの食べ物を捨て置いて何とも思わない飽食の世界に、彼女はブリテン島の限界を悟っていた。

 

「私の国、ブリテンは神秘を糧にした(前提とする)国だった。神秘が薄れた私達に生きる術はない。─おそらく、生き残りは一割もいないはずだ。」

 

 我が国にマッシュ(ジャガイモ)は存在していたんだぞ、とアルトリアは自嘲した。

 

「最終的に一割になるのは当然だ。生き死ににとやかく言いたくはない。だが…だけど!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「故に誤魔化しか、セイバー」

「ああ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。亡国の王として、彼らの権利を私は勝ち取りたい」

 

 アルトリアの宣言に王達は彼女が正しく『王』だと確信した。中でも、ディルムッドは消費される側故に感動して頷いていた。

 

「なるほど、貴方は確かに王のようだ。我ら戦士は死後の保証あれば万全の憂いなく。その願いを奪わねばならぬのが残念で仕方ない」

「そんなら自害すればいい。枠が空いて俺も楽になる」

「それはできない。俺はケイネス殿に願いを捧げた身。ケイネス殿の願いをドブに捨てるわけにはいかん」

 

 相変わらずナローは他の参加者の願いに興味もないようで、夕飯の為に白野にランチョンマットを準備していた。その欲の無さはある種ディルムッドが徹しきれなかった理想であった。

 

「ならばアサシン、お前の願いは何だ」

「婚活」

 

 ディルムッドはあんぐりとした顔で呆然とした。その他のサーヴァントも困惑の表情が強い。ナローは幸せな連中に青筋を立てた。大半が諦観で構成されるアサシン霊基の珍しい怒りの感情だった。

 

「お前らみたく星を殺しても次がある連中はくだらなく感じるだろうが。恋仲になれるヒトは!無駄に!増えない!非殺傷は当然!恋人募集中!そのためなら死ぬ気でルール整備くらいするよ!この殺人鬼ども!」

「の、のう坊主。あのアサシンは何故あそこまで苛立っておるのだ」

「ナローは生前妻と不仲…凄い不仲で。全財産の九割は妻のエレナに使い潰されたって逸話もあるんだ」

「ほう。可哀想な相手を掴んだのだな」

 

 イスカンダルの同情にナローは歯を剥いてキレかけた。隣の静謐(メアリー)が彼の腕を嫉妬混じりに叩いた。ショックで崩れ落ちた彼に、白野(メアリー)は頭を撫でて尋ねた。

 

「ねぇ、ナロー」

「どうした、マスター」

 

「この人達は冬木のことはどうでもいいの?」

 

 白野の問いに皆が口を噤んだ。聖杯戦争の前提条件やら、遠坂家(セカンドオーナー)が身を切って提供しているなど、理由は幾らでもある。しかし、彼女が尋ねた質問はもっと根本的な内容だった。

 

 人に迷惑をかけて気分が悪くならないのかと言う、魔術師の道徳に語りかけるものだった。

 

「そうじゃないか?」

「何で?」

「特別だと思い込んでるから」

 

 ナローは白野の皿にお粥を注ぎながら回答した。

 

「魔術やら武術やら『お力』を持つ輩はみーんな欲張りになる。叱られない環境は寛容さを消す。誰かのおかげが消えた連中の吹き溜まりが此処さ」

「殺し合う必要はあるの?」

()()()()()()()()。だからルールを作ったわけだけど、何でこんなことしてんだろうね」

 

 白野の目が辺りを見渡した。その眼は人を見定める鑑定であり、持たざる者である筈の彼女が格上だと理解せざるを得ない王気(オーラ)があった。覚悟のあるサーヴァント達はその才気に目を細め、マスター達はバツの悪い気持ちに()()()()()。幼児の説法にギルガメッシュはうっすらと笑った。

 

「愚かさ故よ。そこな被害者は我らに愚痴をだしたくてしようがないらしいぞ?」

 

 TVにいる彼()は首を横に振った。

 

『ワレワレは◼︎◼︎された冬木の統合人格です』

『ワタシは参加者の皆様(あなたがた)に期待しておりません』

『六十年の愚かしさをワシは体験していました』

『ワレワレは何者も拒みません。─故に、力を持った──を』

 

 それは、ある種当然の帰結だった。

 

 統合人格は何処までも人間であった。被害者である彼らは容易く憎しみが浮かんだ。正しき怒りは浄化の枠を超え、背後にあった大聖杯から大量の泥が溢れ出た。泥はアバターへ迷いなく進み、彼と彼らは混ざり合った。

 

「あー、時間切れかぁ」

 

 ナローは魔法少女ルールが一部取り込まれたのを残念に思っただけだったが、その他の参加者は訳がわからない。素早く危険を判断した切嗣は銃口をメアリーへ向けた。

 

「アサシン。単刀直入に聞くが──アレは、何だ」

「俺達の敵だよ」

 

 銃口は下がらない。ナローはとぼけるアインツベルンに非難の目を向けた。

 

「だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 銃口が下がる。が、切嗣の疑問は途切れない。全員がナローの内容を把握出来ていない。ナローが抱えた大前提を、聖杯戦争のマスターは誰一人理解していなかった。

 

「…、……?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 ナローの発言にようやく全ての陣営が彼の不合理さの理由を知った。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ごぼり、ごぽりと統合体は黒い泥を中に含み、何もないはずの黒い体の全体から赤い血が噴き出た。上着を脱ぎ捨て、ワイシャツから浮き出るのは全身を覆う蠢く刺青だった。妖しげに光り輝く身体をニヤニヤと見つめながら、顔を生やした彼女は怒り狂った笑みをただただ浮かべた。

 

『どうもー♪この世の全ての悪-顕現体(アンリマユ・アバター)でーす♡』

 

*1
FGOでは基本的に使用されない




アンリマユ(裸ワイシャツ透け刺青褐色ぐだ子)
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