転生チートオリ主が性格で無惨に離婚された話   作:ややや

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はくのんfgo登場記念に。
一発ネタのため続きはありません。


月の彼女は完璧で究極の女王様

 西暦二千三十二年。

 

 困窮に喘ぐ人類が月面にて発見した「ムーンセル・オートマトン」は人類のあらゆる叡智を超える物体だった。あらゆる事象をコントロールすることが可能な力を持つそれは、意思ある者が持てば世界さえも掌握できる万能の願望機であった。

 

 この聖杯に等しい物体を手に入れるため、世界各地の組織・勢力がムーンセルの作り出す霊子虚構世界「SE.RA.PH」にアクセスした。ムーンセルは自身に相応しい担い手を選別するために「聖杯戦争」を開始し、月海原学園はその会場となる場所であった。

 

 しかし、聖杯戦争は五回戦を以て中断した。突如として彼ら参加者とNPCは未使用領域である月の裏へ連れ出されたのだ。最終的に、彼らは間桐桜に似たBBによるサクラ迷宮の攻略に勤しむこととなった。

 

 BBは埒外の力を持つ少女、AIだった。BBによって洗脳されていた遠坂凛と、続いて救出したラニ=VIIIを味方に加えたマスターを集めた生徒会は更なる効率化を求めてジナコと交渉を行っていた。

 

『いやっす!はくのんちゃんのお願いでも安全には代えられないっす!』

 

 しかし、怠惰と諦観を長年習慣としてしまった彼女はテコでも動くことはなかった。運動不足で膨らんだ腹、常人より上手い程度のハッカー技術、そして利益を考えることもない消極的な思考回路。敗北を当然と受け止めた彼女の歩みは白野達の歩みまで止めていた。

 

 モニター越しに協力を拒否するジナコだが、これでも自主的に参加するだけ意欲はあった。それは辛抱強く話し合いを続けた白野の力が大きい。愛想の悪い鉄面皮な彼女は精力的に迷宮攻略を行い、BBをあしらっていた。

 

 そう、あしらうである。ムーンセルを掌握せんとサクラ迷宮を作り上げた強大無比な彼女に対して、岸波白野は無感動と評せるほど効率的に対応していた。

 

 白野は既に現代では使えないはずの置換魔術を極めた絶滅危惧種の魔術師(メイガス)だった。洗脳され襲いかかる凛とラニをほぼ無傷で鎮圧したのは彼女以外なしえない功績である。所持するサーヴァントの特異性も含めて、彼女はレオに匹敵するダークホースの優勝候補として扱われていた。

 

「白野さんは殊更にジナコさんに固執してますが、何か根拠でもあるのでしょうか」

 

 世界を統べていると語っても問題ない西欧財団の代表者すら知らない在野の強者。木根から生まれたような彼女の在歴に、参加者とサーヴァントは警戒を弱めることは出来なかった。

 

「ジナコのサーヴァントはカルナ。マハーバーラタの大英雄であるトップサーヴァント。私達の誰よりも強いサーヴァントになるよ」

 

 彼女の口から出したのは値千金の他人のサーヴァントの真名である。レオの軽く振ったジャブにも彼女はストレートで返してくる。秘匿性など端から考えていない行動は過去を秘匿している状況と一致していない。

 

 戦闘もそうである。無銘と呼ばれたアーチャーは武器を創り上げて投げ飛ばす弓兵だった。凡ゆる宝具を雑に()()()も複製(少なくともレオの観察眼ではそう認識できた)し続ける魔力は明らかにサーヴァントの限界を超えている。やるやらないではなく、肉体的に魔力が産み出せない。鉄火場の安全圏ほど冷静になれる場所はない。無尽蔵に思える魔力を背景にしたステータスの暴力が彼女の指揮を更に鋭いものとしていた。

 

 彼女は単体で完璧だった。生徒会などという自分達に従う必要すらないほどに。しかし、現実は寧ろ彼女から方針を仰がれる始末である。行動は信頼できるのに、来歴が不穏で塗りつぶす。ジナコが信じ切れないのはそこにあるのではないかとレオは考えていた。

 

『ひ、酷いじゃないっすかはくのんちゃん!か弱いモノの味方って言葉はウソだったんすか!?』

「…。……」

 

 岸波白野はジナコの言葉に無意識に机を叩いて立ち上がった。冷静沈着を地でいく彼女らしからぬ感情の発露であった。ユリウスと凛が彼女の暴挙に目を見開き、レオが楽しげに首を傾げた。

 

「おやおや、どうやらジナコさんは白野さんの地雷を踏まれたようで」

 

 揶揄の言葉を、ジナコはもとより他の者も理解出来ない。我儘な子供が年甲斐もなく甘えた戯言を抜かしただけだ。実際口にしたレオも理解できていない。彼女を分析する証拠が不十分だと舌打ちしたくなった。

 

 レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイは西欧財団を統べる王である。財団が掲げる『世界の全ての富や資源を公平に分配し、人類を平和に導く』という方針を完璧に達成できる能力を有していると自覚している。

 

 その彼が器を測りかねているのが岸波白野という女だった。レオが頂点ならば、彼女は規格外だった。全てを有する彼に対して、如何にもならない不条理を隠しもつジョーカー。レオは彼女を唯一負けうる敵だと認識していた。

 

 平静さを失った白野は、その勢いのままジナコに噛みついた。

 

「親の遺産で生きながらえる人生は強いモノの特権でしょう?」

『は…。え、…?』

「貴女は無自覚かも知れないけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。平等さを量るなら、貴女が誰よりも不平等なほどに」

 

 レオは白野がジナコを見ていないように感じたのは錯覚であったと理解した。白野はその眼を以て彼女を的確に判断し、だからこそ地道な会話に勤しんでいたのだ。

 

「私達はチェスで賭け試合をしているのに、貴女は賞金額で挑んでいる。勝ち負けじゃない、懸賞のハガキ扱いだ。いつでも、ジナコ=カリギリは恩恵だけを受け取り続ける」

 

 レオは初めてあの岸波白野が本気で怒りに染まった顔を見た。今まで還暦周りの老人の精神として露出していた仮面が剥がれた。感情が年齢と一致し、初めて肉と混ざり合った感覚を覚えた。

 

 顔つきは変わらない。歯を剥き出しにするなどという無様を彼女は晒さない。ただ、目だけが、爛々と妖しげに光るその虹彩だけが彼女の熱を表していた。

 

「私はプレゼントを受け取るジナコの施しを期待するしかない。だから、こうして懇願している。さあ、()()()()()()()()()?」

『へぇ…?あ、アタシ…あ、あゃ、さ、そ……の…』

 

 ジナコが怯えて言葉に詰まる。話の内容は惨めな懇願なのに、溢した感情は苛立ちが大量だった。本心からジナコを上だと確信しており、彼女は困惑ばかりが頭をもたげた。劣等の自分。敗者のアタシ。ジナコは一瞬だけカルナを縋るように見てから、震える声のまま返答した。

 

『あ、アタシの人生を何一つ知らない奴が!ガトー(おっさん)の戯言だって知ったかぶりして嘲笑ってんのは分かるんすよ!そんなや』

「知っている」

 

「全部、私は、読める」

 

 煌めく眼が全員を見据えた。マスターのみならずサーヴァントすら迎撃の姿勢を取るほどの意思があった。ジナコは息を吸うことで精一杯となっていた。白野はモニター越しにジナコを見ていた。その目が虹色に輝いていることの価値を知るのはカルナだけだった。数分の凝視の後、白野は口を開こうと息を吸い、色黒の手に抑えられた。

 

「マスター。そこまでだ」

 

 無銘の停止に、白野の輝きは収まった。息を吸い、吐き、目頭を解しながら堂に入った仕草で机を指先で叩いた。無銘はニヒルに笑いながら彼女のティーカップに紅茶を注ぎ入れた。

 

「余裕がないな。初対面のあの太々しさはどこへ行ったのかね?」

「下準備を拵えて呼び出したのが同学の先輩なら適当になるでしょ。あんたの戸籍から何から重婚の処理をした私に恩がないとは言わせないよ」

「やめっ…!存在しない記憶を差し込むのは…!私は独身だとも、決してイシュタルとカーマを同時に娶ってなど、娶ってなどいない…いないのだ…!」

 

 何やらダメージを受け始めた無銘を肴に白野は紅茶を豪快に一気飲みした。ルーチンなのか、あるいは演技なのか、わざとらしい動作で岸波白野は普段の鉄面皮に戻った。

 

「若い身体は熱を持っていけない。若気の至りとはこれを言う」

 

 白野は火照る顔を手で仰いだ。その顔には汗一つ浮かんでいない。凛が呆れた顔をする中、レオは金髪碧眼の美顔をにっこりと花咲かせて白野に問いかけた。

 

「僕には蚊帳の外でしたが、ジナコさんのサーヴァントを暴露したのは確かにいただけませんね。どうでしょう、謝罪として貴女も彼女に何らかの秘密をお伝えするというのは。喧嘩両成敗、という奴です」

 

 よく言うよ、とレオの兄であるユリウスは内心で独りごちた。ジナコの情報など気ほども興味のないものを盾に探りを入れるサマは王というより政治家だ。それをさも善意の調停として提案するのだから、コイツは完璧なんだとユリウスは顔を顰めた。

 

「まあ、うん。別にいいけど。何を語れば?」

「それはジナコさんの権利です。僕が関与する裁量ではありません」

『うぇ!?ぼ、ボクが!?』

 

 流れでジナコに方針が寄せられているのを自覚すれば、確かに彼女には天運が付いていると凛は思った。ジナコは先程の恐れをとりあえず他所に投げてうんうんと唸り、ふと思いついた疑問を投げかけた。

 

『な、何でBBを怖がらないんすか?』

 

 ジナコの質問が白野の琴線に触れたのを全員がはっきりと理解した。幸運か、あるいはジナコ自身の才覚故か。脅威で誤魔化されていた本質をあっさりと指摘した彼女に、白野は複雑な表情を浮かべた。この顔も初めての変化だった。

 

「一言で言えば、BBと私は類似品だから」

 

 それはつまり、人狼CO(人外宣言)ではないかとジナコは思った。隣に居るカルナは納得したと頷いているし、彼が無反応(ノーリアクション)では無い時点でそれは分かっている。無駄な質問だったかなとジナコは項垂れた。

 

「つまり、貴方もAIだということでしょうか」

 

 けれども、自身より数十倍有能な彼らには無用にはならなかったらしい。彼女の疑問を具体的に、それでいて有用に変換するレオは優勝候補なだけあるなぁとジナコは他人事として流した。

 

「ちょっと違う。岸波白野は実在するし、月の聖杯戦争にも参加してる。でも、それは私ではない」

 

 だから白野さんはこちらを見つめるのはやめて欲しい。ジナコの頭は肉体と等しく速く動かないのだ。ジナコは気まずげに身を捩った。

 

『えぇと…。同一同名の別人ってことっすか?』

「そそ。岸波白野()()()はちゃんと参加者として存在してる。裏に行く際に交渉してね、目的を完遂するまで身体を借り受ける契約をしたんだ」

『なんすかその課金チート。RMTしたら優勝確定じゃないっすか!』

 

 契約とは不平等でも実現出来る行為だとジナコは知っている。そうでなければ己がカルナという星五ガチャを従える事はなかった。歯を剥き出して威嚇するジナコに、白野はバカな子を見る目で緩く手を振った。

 

「そこまで万能でもないよ。聖杯戦争には参加してないしね」

『お偉いさんの手のひらのドリル具合は分かってるんすよ!取れるもんは取って独占する、魂胆は丸見えっす!』

「ジナコに乗っかるわけじゃないけど、私も同意するわ。貴女は間違いなく聖杯戦争自体に精通している。支配されてなくても勝てないと確信できるくらいには。何故、利益を求めないの?」

()()()()から、かな」

 

 凛の追求に、白野は困り眉で返答した。

 

「ムーンセルは割とわがままでね。オーバーホールの味を覚えたら四六時中甘えっぱなし。それが二つになったら本格的に監禁されるよ。まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「はあ?何だよそれ。所有者が決まってないから戦争するんだぞ?自由に使えるなら……。…あん?」

 

 否定するために言葉を並べ立てたシンジの口が止まった。彼女の指にある特徴的な指輪の正体に見当がついたからだ。一息ついた後、彼は縋るように辺りを見渡す。レオ、ラニ、凛の三人は同じ解答に至ったとシンジに頷いた。

 

「…それは、つまり」

「…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 万能機故に使用用途は無限大だ。月の支配権を手に入れた成果物がこの岸波白野の存在だった。不思議と並行世界に対して蘊蓄があった凛は溢すように彼女の正体を口にした。

 

「──違う?」

「正解。並行世界の岸波白野がインストールされて作られたワクチンプログラムが私。いわば、岸波・Z・白野」

 

 ドヤァ…とした顔は誰にも受けなかった。決めポーズをした白野は白けた目線に半目となって不貞腐れた。無銘は肩をすくめるのみである。

 

「──酷い」

「それどころではありませんので…」

 

 類似品とは確かに言ったものだ。並行世界から勝利者が直々に派遣したプログラムは確かにBBと同類と言える。彼方がバグに塗れたAIならば、此方は正常稼働するセキュリティか。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「白野さんがNPCを乗っ取ったのか、こちらの白野さんの身体を借りているのか、あるいはそのまま顕現したのか。手段は棚に上げます。ワクチンと自称しましたが、BBの暴走の原因は貴女が関係しているのでしょうか」

「…たぶん?」

『曖昧っすね』

「コッチの技術は段違いでレベルが低いからね。シンジくんやリンちゃんみたいに姿形(アバター)の変更までされると如何もね。一因にはなってるとは思うけど」

 

 白野が懐から出したのは古惚けた写真だった。赤丸付きで『殺生院キアラ』と書かれた女は若い頃は美しくあったであろう相貌をシミとシワで醜く化粧した老婆であった。清潔さこそ保っているがレジスタンスの底辺組に近い衣類を身に纏った彼女の姿は、悪意に塗れた表情と巨大な角と比較して悍ましく感じられた。

 

「態々亜種聖杯まで使ってコッチに逃げてきてね。見分ける自信はあったんだけど、どうにも見つからない。日帰りの予定がとんだ小旅行だ。お姉さんはつらいよ」

「はっ。若作りしてる癖にか?挙動がババくさいんだよ、アンタ。引退したらどうだい」

「まあ還暦近いのは否定できないけど。…すぐに終わる予定だったんだよ。ぶっちゃけシンジ君の言うように婆がやる仕事じゃないんだけどさぁ。寝覚め悪いじゃない」

 

 寝覚めが悪いで並行世界にリソースを割く余裕があることに凛はため息をついた。レジスタンスで困窮と不平等に歯向かっている彼女にとって、白野の世界の裕福さは羨ましいと思ってしまったからだ。

 

 レオは写真の彼女が不自然に生やしている角の輪郭をゆっくりとなぞりながらその顔を記録した。

 

「この老婆が貴女の目的ですか。月の支配者と対立するとはいったいどのような危険人物なのですか?」

「他人を洗脳して自殺させるのを趣味にする快楽殺人鬼だよ。それ以上は言えない」

「…。…分かりました」

「物分かりの良い子は好きだよ」

 

 にやりと笑う白野の表情は年齢を重ねた老獪さが見えた。

 

「タダ働きはさせないよ。このまま手伝ってくれれば報酬くらいは渡すよ」

「はは。ならば負けた際に死なないようにムーンセルへ取次をしてくださいますか?」

「望むなら」

 

 軽口に返された言葉にレオは絶句した。周りの目が変わる中、白野は映像を操作してジナコのカメラを眼前へ引き寄せた。ビビり散らすジナコに、白野はなんと画面越しにチケットを彼女の腹元へ置いた。ジムチケットだった。

 

「あなたはダイエット券だけが買えるわ」

『さっきから鬼畜っすよ!アタシに死ねと言ってるんすか!?』

「ハン!!どれもこれも!孫娘のあんたが悪いのよ!!」

 

 孫娘。

 

 血縁関係のカケラもない歳下の少女に言われた単語にジナコは脂肪であまり曲がらない首を傾けた。そのままカルナを見るが、彼も首を無言で振った。催促するようにばんばんと机を叩けば、音声が届いたらしい生徒会の中で凛が溜め息をはきながら説明をした。

 

「…並行世界はあくまで可能性の歴史。白野の世界は魔術が残った世界なら、ズレは相当なものよ。血縁関係くらいは誤差の範囲なくらいに」

 

 この世界の白野があちらでは老人となるあたり、誤差は数十年単位のレベルである。単純に一年に一人分のずれがあるならば、十年で変わる人数は凡そ三百六十三万人。その中にジナコが含まれていたという話だった。

 

 思い返して怒りが再燃したのか、白野は指を机で叩いてからジナコを指差した。無銘はどうしようもないと顔を覆って嘆いた。見た目が麗しいのを除けば、白野とジナコのやりとりは確かに孫娘へのお叱りそのものだった。

 

「元々!!()()()!!アンタが送られる予定だったのよ!」

『えっ』

「私の血が濃くてガネーシャすら常時降ろせるアンタならこの世界の荒廃程度も含めてなんとか出来たでしょうに!」

『ガネーシャは豊穣の権能を持つ。其方のジナコは才を捨ててはないようだ』

『えっへいこうせかいのボクつよい』

 

 世界が節制(ダイエット)を矯正している環境を是正する存在はジナコの脳内の枠に入らない可能性だった。脳裏に浮かぶのは痩せて美化五百割増しの理想の自分。自分の三段腹を見てジナコは何故か涙が出てきた。

 

「それを『鉄火場にアタシを置いても豚っすよ〜。戦争なら婆ちゃんが出張らないと。アタシみたいな軟弱者は月の支配者が決まった後(おいしいころ)に出張るっすよー』って!」

『やっぱどの世界もアタシはアタシなんすね…』

 

 理想の自分もやはり怠惰であった。憎々しいことに怠惰の行動に理屈まで付けるスーパーエリートだった。才能に溢れたジナコさえ怠惰であるのだ、この並行世界からの祖母から見て自分はさぞかし腐った豚に見えたことであろう。

 

 ぎゃーぎゃーと喚くジナコと白野を見ながら、呆れた凛は白野が出したであろうカタログを開いた。生存権、現世への金銭付与、病気の治療。素晴らしいラインナップの中に、ダイエットの報酬は存在しなかった。

 

「…ねぇ」

「なんでしょう、凛さん」

「もしかしてあの子が暇さえあればジナコに会ってたのって…孫娘の顔を見たかっただけ?」

 

 レオは笑いながら肩をすくめた。

 

「この際だしあの子が投げ捨てた肉体情報操作をインストールしてやる…!出涸らし気味のアンタも地球では日間二秒はガネーシャに()()()わ」

『それって人体改造っていわないっすかぁ!?てかハッカーってそんな物理的なものじゃないっすよね!?カルナサァン!!』

 

 ジナコに縋られたカルナは目を見開いた後に拍手をした。今まで見たこともない彼の手放しの祝福に、ジナコの三段腹が脂汗でネトネトになった。

 

『今まさにジナコ。お前の消費に見合う身体になったと確信した。現世では鼻の運動をすると良い』

『マジで!?アタシの人生リアタイで終了したの!?』

 

 ジナコは咄嗟に椅子から立ち上がる。心なしか上がった魔力に加え、腹から落ちたチケットはちぎり線から一枚分消失していた。慌てて掴んで指で枚数を数えれば、その数は十二枚。チケットには『()()()()()()』として半日単位のずれで時間が進んでいた。

 

『…ニートの代償って…こんなに重いんすか…!?』

 

 

 

 

 

 

 建物内のどこかの天井裏にて。

 

 清潔は保たれているが何処か埃臭い空間で、一人の幼女が人形と向き合ってもそもそとコンビニ(そんなものは存在しないが)弁当を食べていた。その動作は他人が見れば情欲を感じ得るほどに蠱惑的で、頭部に生えた小さな角が愛嬌になるのは間違いなかった。

 

 将来的に美女に成るであろう彼女は不機嫌な顔で人形が拵えた監視カメラの映像を見ていた。人形は彼女の顰め面を見て頷いた。人形は彼女に召喚されたサーヴァントであった。正確には()()()()()()()と語るべきか。サーヴァント質として連れ逃げたそれは、電子的な機械音(CV金元)で唸るように笑った。

 

「うーん。あっちは王道を往く王道。これは俺達敗北者ですね」

「諦めないでください!私の未来は貴方にかかってるんですよ!?」

「いうてキャスタークラスの俺は産廃ぞ。見ろよこの高さ五十センチのフェルトの塊な我が身を。銀蝿くらいは出来るが戦闘は無理無理。道連れにはついて行くから投降…しよう、な?」

「いーやーでーすー!!今までに何十年我慢してきたと思ってるんですか!快楽!悦楽!極楽!味わい尽くすまでは石に齧りついても生き延びますわよ!」

「それを別方面に向けりゃあもっと幸せになれただろうに…あっやめ頭掴まないで綿がでる」

「とにかく!宝具が完成するまで死ぬ気で逃げますよ!」

「へいへい。偶には良いマスター引きてえなぁー」




後に真実を知ったBBはぐずぐずに泣いた。
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