転生チートオリ主が性格で無惨に離婚された話   作:ややや

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ナロー君の生前の能力内訳
・解析の魔眼(自前)
・現実改変(チート)
・神様の名前及びそれを使った魔法モドキ(自前)
・なんか無駄に凄い身体能力(自前)
なお本人は全てチートだと思っていた模様


迷宮中層

「すまなかっがぁあああああ!!!!」

 

 撤退したカルデア一行は集団でモリアーティを折檻していた。

 

「困ります!!困ります!!マスター様!!困ります!!あーっ!!困ります!!マスター様!!あーっ!!マスター様!!腰!!腰が砕けます!!あーっヨハンナ様!!困りますあーっ!!困ーっ!!腰困ーっ!!困ります!!困り様!!あーっ!!お腰様!!困ります!!困ります!!お腰ます!!あーっ!!おマスター様!!」

「そ、その。ヨハンナ君、エレナ君。モリアーティ殿の腰が危険だ。明日の攻略に差し支えるのは如何かと」

「そうだね。2人とも許してあげて」

 

 エジソンと藤丸の言葉にヨハンナはモリアーティを彼のベッドに放り投げた。モリアーティはうつ伏せのままベッドに着地する。彼の腰はギリギリ無事だった。モリアーティは改めて謝罪をした。彼の宝具は本心で計算外だったのだ。

 

『で、改めて聞くけど。ナローの宝具はあの弾丸かい?』

「あ、あれは()()()使()()()()()()()。ナローの宝具は『我が神の名は全てを易く(フィクション・ファンタズマゴリア)』」

 

「存在を書き換える、空想具現化(マーブルファンタズム)の極致だ」

 

 空想具現化(マーブルファンタズム)。読んで字の如く、無を有にする力。真祖のみが使えるというそれを、ナローは宝具として持ち合わせていた。詳しくは理解していない藤丸達一行とは異なり、ゴルドルフとダヴィンチは眉を顰めて否定した。

 

『馬鹿を言え!アレは確率変動によって世界の再構築を実現する()()()だ!!近代の英霊如きが持つ能力ではない!』

『ゴルドルフ君に同意だ。そもそも、それは自然を対象にしたもの。自然から独立した人間由来の物質は干渉出来ない筈だ。サーヴァントを顕現するような行為は出来ない』

()()()()()()()()()()退()()()

 

 だがここに例外が存在する。

 あり得ない、無駄だ、出来るはずはない。それを潰して解決するのが英雄なのだ。彼だけの特権が、神の名という万能キーが、最上位の神秘として不可能すら塗り潰す。制限が掛かろうと、権限だけは特等席だ。座が彼を登録したのも当然だ。魔力さえ提供すれば、彼はどんなことも解決できる鬼札に変貌するから。

 

「──生前の彼はその一部を切り分けることに成功した」

 

 偶然か。必然か。彼の望む秘匿を理由付けする口実が出来る。

 第2の言葉『矛盾』。理屈として相反する事柄の辻褄が合わないこと。今回の問いはシンプルで分かり易い。足止めが主目的であり、解答に重要性は無いのだ。

 

 複製された同一人物など矛盾そのものではないか。

 

()()()()()()()()()()()()。結論から言えば、私はその()()()()を形見に受け取り、エレナは()()()()をその身に受けた」

「魔法──エレナさんの幸運伝説ですか!」

『会話したものは皆望みを叶える。生ける聖杯伝説としての逸話だね。魔法が使われたなら当然といえば当然か』

「どのような──エレナさん?」

 

 マシュの声にエレナは無反応だった。普段の赤黒い光のない目をいっそう暗くし、ベッドに入った。

 

「魔力を回復させるために寝るわ。明日には完璧に『させる』。魔法の経緯は──そうね、マスターに夢で教えるわ」

「いいのかい?君の恥だろうに」

「今更なんでしょう?」

 

 エレナのヤケクソ染みた言い方にモリアーティは鼻白んだ。そのやり口はナローが愚痴る時とそっくりだった。ナローから離れて以降、彼女はずっと厭世的だった。マスター達はナローを失った影響かと考えているが、果たしてあの夫婦は本当に互いを愛する可能性があったのだろうか。

 

 神に決められた結婚は彼らにとって不幸でしかなかった。

 決まりなど無視できる愚か者であればどちらも幸せになれただろうに。

 

「話を戻そう。私はその遺産を研究したが──完成は終ぞなかった」

 

 苦々しい敗北だ。ホームズの邪魔もさるものだが、結局は私はあの力に怯えていたのだ。管理だけで満足していたのだ。それが友の一番だと理解していたから。

 

「おそらく黒幕は私を殺してその単語を知った。ナローが閉じ込めたのは人理の安全のためだろう。少なくとも、私と彼以外は対面すら出来ない」

「モリアーティ。なぜ単語を知ったらダメなの?」

「死ぬ」

「えっ」

「死ぬ。冗談抜きで」

 

 座の私すらアサシン霊基以外で劣化したソレすら持ち込むこともできない劇物だ。聞く、読む、理解する。望んで発狂した魔術師がどれだけいたことか。

 

「参考までに言うが、1文字で魔術師は頭をかち割って死んだ。自殺出来ない死徒は3文字で吸血衝動を無くしてそのまま自我を捨てた。多分今も聖堂教会の地下で安置されているのではないかネ。殺そうにも殺せそうになかったし」

『…私達英霊でも?』

「記憶を引き継がないだろうとは主張するヨ」

 

 引き継げないのではなく引き継がない。神の名を知ったものは魂が変質する。我々が紙ならば、神の名は水である。そもそも次元が異なる格納できない存在なのだ。耐える、その行為自体が不可能なのだ。だから嘘を交えられる。

 

「黒幕は聖杯の力で神の名を耐えた。だが、黒幕にとっては不運なことに我々はエレナ経由とはいえナローを召喚していた。()()()力は本来の持ち主であるナローに飛び、彼はサーヴァントとして現界した」

『ナローが迷宮を構築した理由は?』

()()()()()()()()。あるいは殺したが神の力が残留している。ナローはソレを回収しきれていない。最後の下層はもう作っている筈だが、戻らないことを考えると残滓に近い残骸を殺し切れてない。アレは漏れ出ただけで自動殺戮装置に早変わりだ」

『どちらにせよ攻略は必要と』

 

 なお、モリアーティが主張する意見は誤りである。ナローとしてはカジノで一日足止めをする見込みだった。具体的にはエレナの豪運を他人に与えて突破されると予想していた。しかし、モリアーティが華麗に攻略したため、現在は半泣きで下層の構築中である。万能の魔力もアイディアは出せなかった。

 

「それで、攻略はどうするんですか?あのカルナさんも相打ちにさせられた空間。弾の数だけ召喚されるなら勝ち目はありませんよ?」

「私の宝具で解除を試してみるかね?」

「無駄だよ。彼の宝具は概念そのものを変換する。あの弾丸自体が踏んだ物を媒体にサーヴァントを召喚する陣だと認識したまえ」

「ならばどうする!」

 

 苛立ちからベッドを叩いたエジソンに、モリアーティはいとも容易く答えた。

 

「一人で行けばいい」

 

 その夜、藤丸はある男とある女の夢を見た。

 歪んだ、履き違えた、互いのことが闇になる、ただ哀しい魔法の成就を体験した。

 

 ◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎

 

「そもそも我々の中でカルナだけが()()だったのだよ」

 

 ゆっくりとエジソンが歩く。目の前にある出口に向かって一直線に、身体にあたる障害物を破壊しながら進む。

 

「存在を書き換える。サーヴァントを複製召喚する。言葉にすると最強だ。だが、運用となると上手くはいかない」

 

 幻想、ごた混ぜ、多人数、地続き、憑依、人間。分かりやすい比較対象だ。彼が複製体の基準にした内容が答えになる。モリアーティの計算が正しければ、彼らから出るのは()()()英霊になる。

 

「私達は戦闘においては下駄履きの弱者だ。まともに召喚されるなら、単体で負ける道理はない」

 

 エジソンが地雷を踏み、サーヴァントが召喚される。しかし、その姿は年若い青年だった。エジソンが剛腕を以てソレの首を叩き折れば、何事もないかのように消滅した。ソレを何度か繰り返した後、出口にたどり着いたエジソンは己の拳を見つめ、やがて吠えた。

 

「すっっっっっごく惨めになる!!」

「分からないでもないですけど…」

 

 既に先行していたヨハンナが苦笑いしてエジソンに同意した。

 

「そりゃ私の真価はこの頭脳だよ?大統領パワーがあれば勝ちは当然だ。いざとなれば部屋外から攻撃も出来る。でも惨めなのだ…」

「そんなこといったら私なんか石像でしたよ?いや、信仰の結果生まれたならそりゃ石像がサーヴァントになるんですけども。私、将来的にはガラテアさんタイプになるんですね…」

 

()()()()()()()()()だ、お先にどうぞ」

 

 落ち込んだ二人を他所にモリアーティはエレナを見て出口を指差した。

 対外的には唯一正規召喚されかねない彼女を前後でカバーするため。本心はマスター達が人質にならないようにするため。

 

「よくってよ。──無駄だと思うけど」

 

 モリアーティはエレナがすれ違う時に合わせて薬莢を排出した。エレナは不快そうに手でそれを払って出口へ向かった。モリアーティの予想では、彼女が触れても霊基は再現しないと踏んでいた。彼女の同位体が黒幕ならば、それはヨハンナの石像と同じく、ナローが倒している。

 

 エレナが地面の弾丸を踏み込む。ソレは消え、淡い光を放つ。

 

 ()()()と。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「───」

 

 絶句だったのはモリアーティにとって幸運だった。

 

 背中の汗をコントロールして無理矢理止める。開く瞳孔を目を閉じて誤魔化す。全てを思考に割いた彼は、傍目から見て軽蔑した目を向けているように見えた。

 

 ぼとり、ぼとり、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だが、平静もそこまでだった。

 触れた死体が別の死体に変わる。触れてもないのに存在が置き換わる。天井が弾丸に置き換わる。死体が天から降り注ぐ。雨のように、呪いのように。祝福のように。

 

 ありとあらゆる幸運を抱えた第六魔法が死体を増やした。

 

「な、なんだこれは!?」

「エレナさん!?大丈夫!?」

「エジソン!ヨハンナ!ソレに触れちゃだめ!!」

 

 心配して近寄る彼らにエレナは叫んで魔術で吹き飛ばした。モリアーティも彼らを気にかける余裕はない。薄らと這い寄ってくる肉片にマスター達を下がらせながら天井に向けて叫ぶ。最早なりふり構ってはいられなかった。

 

「ナロー!!観てるなら宝具を解除しろ!!」

 

 幸運だ。いくらでも使い潰せる魔法の消耗品だ。

 何が欲しい。命も燃料も運命も魔力も才能も。凡ゆることを幸せにしよう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 世界が瞬いたのを全員が認識した。

 目の前の弾丸は空薬莢といくつかの幾何学模様が描かれた金色の符に変貌していた。あるいは、元からその状態だった。降り注ぐ手は音を鳴らすのを止めた。部屋にあるのは無表情のエレナと夥しい手の山だった。

 

『な、なんだねコレは!スプラッター!?』

『霊基が尋常じゃない!ただの死体が…!』

「マスター」

 

「令呪を」

 

 藤丸は無言で令呪をエレナに注いだ。膨大な魔力がエレナにかかり、溢れ出す。エレナは無言となったナロー人形を持ち上げ、その中身を解放する。その中身は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

私の諫言の根源(サナンダナ・クマラ)

 

 格納されたナローの魔眼が最大出力となる。本来なら座から引っ張るコストをエレナは無理矢理支払った。支払おうとした。手の一つがナロー人形に飛びかかった。手は魔力として消費された。

 魔眼にとって、手の魔法は解析可能な技術でしかない。死体は喜び勇んで人形へ突貫した。膨大な魔力が溢れ、消費され、使い潰された。最終的に残ったのは滝のような汗を流すエレナだけだった。

 

「…あれは猿の手。私が召喚できない場合に来る、願いを消費させる私の死体」

「私の死後、墓荒らしにあって消失した左腕が都市伝説となったもの」

「中々の脅しだったわ、モリアーティ」

 

 エレナの意地の悪い揶揄にモリアーティは無反応で返した。ソレどころでなかったからだ。表向き不機嫌な顔を出し、モリアーティはひたすらに今までの内容を再検討していた。

 

 黒幕がキャスターエレナだと回答したモリアーティの結果は不正解だった。

 

 座に本人が登録されたエレナはクラス違いによる人格の変貌は存在しない。長いスパンをかけて狂った彼女の人格はロングスパンの躁鬱を繰り返している。ダウナーで破滅思考のキャスターエレナ。アッパーで救世主思考のバーサーカーエレナ。

 

 特異点は過去改竄故に時を遡行する。未来の存在が過去の場所へ移動する。それゆえに、本来存在があり得ない同一存在の重複を招く。

 

 エレナはクラスのカテゴリに区別は存在しない。そんな存在が同時に存在した結果、滅びる予定のキャスターエレナの残滓が幸運を糧にへばり付いていた。そんな経緯をモリアーティは考えていた。

 

 だが違う。キャスターエレナは黒幕ではない。回答は誤りだった。

 最終階層は目の前だ。戻る提案も、必要ない。必要に出来ない。

 

 モリアーティの解説をそのまま着けていた盗聴機で拝聴していたナローが作り上げた黒幕を倒す前に誤魔化す必要がある。

 

 モリアーティはゆっくりと唇を舐めた。

 

 ◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎◼︎▫︎

 

 ───繋がりが切れると何時も頭がフラットになる。

 幸運の鎖。第六の鎖。壊しても壊しても蘇る永遠の象徴。

 何も知らないと去った彼は私のことも知らなかった。

 

 流石は神代のサーヴァント。呼び名がクラス名ではない時はどうなるかと思った。名前を言えば良いものが、律儀なことだ。精神(ココロ)が壊れるといつだってコレだ。会得した技術が部分的に散逸する。知識を入れろ。技を再現しろ。学べ。学ぶのだ。狂い、果てに、終わりがなくとも。

 

 執着だ。醜い屁泥の精神の権化だ。

 糞で、下劣で、不愉快で、惨めで、強欲で、だがそれでも。

 知りたい。知らなきゃ前を見れない。顔を覗けない。たとえそれが恋でも愛でもないとしても、今度こそ『──』をしなければならないのだ。

 

 ───本物へと。




『我が神の名は全てを易く』
 ランク:EX 種別:対存在宝具
 レンジ:1 最大捕捉:1人
 フィクション・ファンタズマゴリア。
 指定した人物・物体の凡ゆる定義を閲覧して書き換える。
 創造神の名を知る彼は魔力の許す限りではあるが極小規模の聖杯を再現する、文字通りの規格外宝具。魔力の関係からもっぱら自己強化に使われる。

アサシンのモリアーティは音源1つのみのストロングスタイルの暗殺者です。
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