…まぁた性懲りもなく新しいの書き始めたよこの作者…。
まぁ、書きたい作品が次から次へと出てくるんだから仕方ないね!
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…昔々、
他の島々とあまりにも離れているために、通常の航海では
そんなミナトにある時、一人の赤ん坊が生まれた。艶やかな黒髪と赤い瞳が美しい、大層綺麗な女の子だったという。その子は新世界のワノ国から放浪してミナトに住み着いたという若夫婦の間に生まれた。”
成長するにつれて、不知火は徐々にその大きすぎる才覚を露にしだした。時に島の大人達や王族すらも舌を巻く知識量と思考力、判断力、あまりにも子供離れした身体能力、統率力、何よりワノ国の侍である父の鍛錬を真似ることで早くから覚醒した覇気とその強大さ…。不知火が持つ能力は、天才という言葉では片付けられないほど常軌を逸していた。まだ10歳になったばかりの子供が、島の兵士達を指揮して億越えの海賊団を壊滅させたと言えばその異常さが伝わるだろう。まるで”
15歳になる頃には、不知火はミナトの軍隊長としてその力を振るっていた。三種類の覇気を当たり前のように使いこなす不知火の力は、その頃にはもう懸賞金10億を超える大物海賊とタメを張るまでに成長していた。
ミナトはその立地上、滅多なことでは海賊の襲撃を受けたりしない。しかし、頻度が低い分そこら辺の国なら間違いなく滅ぼせるほど強い海賊が度々やって来た。また、敵となるのは海賊だけではなく、周囲の国々も大艦隊を編成して攻めて来ることもある。不知火はその悉くを跳ね返した。磨き上げた力を振るい、数多の敵をなぎ倒し、圧倒的な強さで勝ち星を挙げる。その姿に多くの者達が心酔し、尊崇していつの間にか不知火に忠誠を誓う者達の部隊が出来上がっていた。
そんな折、世界政府からミナトの王へある取り引きが持ち掛けられた。
”水城不知火を海軍の兵士として引き取りたい。その見返りとしてミナトを世界政府加盟国へ加えてもいい”…とのことだった。しかも、加盟の際にマリージョアへ納める天上金は他加盟国より遥かに低い金額で良いとのことだ。
世界政府としては、成長すれば間違いなく世界で5本の指に入る強者になる不知火を是非とも自陣営に取り込みたいという思惑があった。海軍将校にでもすれば世の海賊達へのこれ以上ない抑止力となり、
一方でミナト国王は悩んだ。不知火という逸材を失うのは痛い。しかし、一国の主として世界政府加盟は何よりも大きいメリットだからだ。世界政府に加盟したなら、まず海軍の庇護を受けられる。度々やって来る手強い海賊も世界政府の後ろ盾があればおいそれと近寄ることは出来なくなるだろう。加えてそれは国家間の戦争の抑止力にもなる。同じ円卓を囲む国を大義名分も無しに侵略することは他の国々が許さない。立ち回りさえしくじらなければ、ミナトは平和を維持しながら伸び伸びと発展することが可能になるのだ。
不知火というたった一人の女か、それとも国の発展か。ミナト王は取り引きを持ち掛けられて数年、悩みに悩んだ。その結果、彼は後者を選んだ。不知火を世界政府に引き渡すことに同意したのだ。
確かにミナトは不知火のおかげで多くの敵から守られ、平和を享受していた。しかし、裏を返せばそれは水城不知火というたった一人の女に頼り過ぎているという弱点にもなっていた。ミナトの歴史も長く、国王軍には古くから王族に仕えてきた貴族の子息達も所属している。その軍で、力があるとはいえ平民出の女が幅を利かせていることに不満の声も多く上がっていた。
いつか不知火を旗印として民衆の反乱が起きるかもしれない。不知火の代わりを世界政府が務めてくれるなら絶好の好機。これからのミナトの発展のためにもこの取り引きは受けるべきだ。
そういった意見が多く上がり、王も最終的にそれに合意したのだ。
数日後、数人の海兵と世界政府の役人がミナトへ来訪し、不知火も王城へ呼び出された。そこで不知火は王より取り引きの内容を説明された。
この時、王や周りの貴族達は、不知火が今回の取り引きを理解し、喜んで受託してくれるものと信じていた。不知火は確かに周りの大人が畏怖するほど聡く、強い子であったが、長い間国のために戦ってくれた愛国心溢れる子でもある。幸い天竜人の奴隷や妻になれという取り引きではない。所属をミナトから海軍に変え、これまで通り戦うだけだ。これが国のためなのだと説明すればきっと分かってくれるはずだと、そう信じていた。
「断る」
だからこそ、その瑞々しい唇から発せられた言葉と、瞬きをする間に斬り落とされた海兵や役人達の首が信じられなかった。
不知火は王の命令を拒否し、邪魔する者を全員排除して王城を、そしてミナトを捨てて海へ飛び出した。ミナトの王は茫然とした。何より最悪だったのは国を飛び出したのは不知火だけではなく、これまで彼女の下で戦ってきた部隊の兵士達も不知火について行く形で国を捨てたことだ。ミナトは不知火だけでなく、彼女が育て上げた優秀な兵士まで大量に失ったのだ。
一体何が彼女の逆鱗に触れたのか、それは誰にも分からない。ただ一つ分かるのはミナトが選択を誤ったということだけ。王は不知火の強すぎるカリスマ性と国への情がさほど無いということを見抜けなかった。それが何よりの要因だ。
ミナトの発展を願っての選択であったはずなのに、王は優秀な兵力と国の未来をたった一日で失ってしまった。血と臓物が飛び散った謁見の間で、王はどしゃりと膝をついた。
…そのわずか数週間後、ミナトという国は地図から消えた。不知火が消えたという情報を聞きつけた他国に何もかも奪い尽くされてしまったのだ。
▽
「…それがお前というわけか?」
「そう。生まれ育った国に見捨てられて命からがら逃げるしかできなかった可哀そうな子兎…、それが当方だ」
「お前が子兎ぃ? ジハハハハ! 獅子と互角に戦う子兎がいてたまるかよ!」
男の方は”金獅子のシキ”。
女の方は”水城不知火”。独自の傭兵組織”
今回シキと不知火は、不知火がある商船の護衛の依頼を受けたことで衝突することになった。たくさんの商品や金を積み込んだ船が
シキと不知火の戦いは思いがけず長期戦になり、戦場も海の上からたまたま近くにあった無人島へ移り変わった。文字通り三日三晩の戦いの末、引き分けという形で戦いの幕は閉じた。その間に商船は無事に目的の島に辿り着いたという連絡が入った。今回も不知火達は依頼を達成した。
一方でシキの方は不知火との戦いは引き分けに終わったものの、目当てだった商船には逃げられて金も物資も何も得ることはできなかった。実質的に負けと言っていい結果だろう。
だというのにシキは酒を豪快に飲み干し上機嫌に笑う。確かに負けはしたが不知火という遥かに良い逸材と出会えたからだ。
大笑いをするシキに、不知火はむすっとした顔を向ける。
「…そんなに笑うほどか?」
「そりゃそうさ! 俺の後ろをよく見てみろ! ここまで死線をくぐり抜けてきた自慢の仲間がこんなに殺されちまった!」
シキの後ろには何十人もの海賊の屍が転がっていた。そのどれもが実戦でよく鍛え上げられた屈強な肉体をしており、そこら辺にいる海賊とは質も強さも段違いであることが窺える。金獅子のシキの海賊団でも特に優秀な戦士達だったものだ。今回の金獅子海賊団と不知火の夜兎部隊との戦いで命を落とした戦死者である。
「…それはこちらとて同じことだ。さすがは噂に名高い金獅子海賊団。当方の指揮下でこれほどまでに犠牲者を出したことはなかった」
一方で不知火の後ろにもたくさんの死体が転がっている。一緒にミナトを飛び出してきた者、海に出てから出会って部隊に加わった者、いずれにしても不知火が自ら訓練して鍛え上げた兵士達だったはずだが、その多くが今回の戦いで命を落とした。少なくともシキと不知火の周囲には息をしている生き物は誰もいない。その惨状が戦いの壮絶さを物語っていた。
「俺は改めて敬意を表するぜ。お前とお前が育てた夜兎部隊にな!
「…まぁ、それも同意見だな。やはり闘争とはこうでなくては…!」
ジョッキを強く握りしめ、目を剝き興奮した様子の不知火。先程のシキとの死闘を思い出しているのかその顔からは喜色が溢れている。
不知火のその様子を見てシキは確信を強める。戦いぶりや生い立ちを聞いて薄々感じていたが、この女は根っからの戦闘狂だ。ひたすら自分を鍛え、強者との戦いを望み、命を賭けた死闘にこそ生の喜びを感じるイカれた思考の持ち主。聞けばワノ国の侍の血を引いているようで、もしかしたらその精神は血が起因しているのかもしれない。
「…まぁ、いずれにしてもそのミナトとかいう国は遅かれ早かれ滅ぼされていただろうがな」
「む、そうか?」
「そりゃそうさ、よく考えてみろ。たった一人女を差し出したくらいで世界政府に加盟できたとして、他の国が黙って見ていると思うか? それも天上金をほとんど免除された特別待遇だぞ?」
「…なるほどな。他国からやっかみを多く買う形になるのか」
「その通り。そうなりゃ奴らは結託して適当な難癖をつけてミナトを滅ぼしにかかる。そんな面倒な真似をしなくても、貿易を断ち切って兵糧攻めという手もあるだろう。ミナト王は長い間辺境に引きこもっていたせいか、政治的手腕が足りてなかったようだな」
「…政治、か。面倒なことだな」
「ジハハハハッ! 違いねぇ!」
こんなにいい女の価値も分からねぇような奴だしな、とシキは不知火のジョッキに酒を注ぎ、また大笑いする。
よく笑う男だ、そう思いながら不知火はシキの注いだ酒を口に運ぶ。果実の酸味と香りが心地良い、すっきりとした味わい。その味を不知火は不思議に思った。目の前の男は見た目の通り、度数の高い辛口の酒を好む。そのシキがこんな飲みやすい酒を持っていたことが意外だったのだ。
「お? 酒の違いも分かるのか。ますますいい女だな」
「まぁ、ちょっと意外だと思ってな。こんな果実酒はお前の好みではないだろう?」
「ジハハ! まぁ確かに俺の好みじゃねぇ。だが、一船の船長をやろうってんなら色んな”良さ”ってものを知っておかなきゃならねぇ」
「…ほう?」
「部下の扱いも同じだろう? この世に何もかも同じ人間は存在しねぇ。それぞれに好み、苦手、特技、才能を抱えている。そいつを具に理解して伸ばす環境を与えてやり、思う存分発揮した個性をまとめ上げるのが船長である俺の役目ってわけだ!」
「…ふふ、どうやらお前はただ強いだけではない。上に立つ者の器とカリスマ性を持ち合わせているようだ」
「おうよ! 俺はいずれこの世界のすべてを支配してみせる! 海賊は海の支配者だ! バカな政府や天竜人共にはもったいねぇ!」
どんっ、と酒の入ったジョッキを地面に叩きつけ、シキは宣言した。その目はギラギラと輝いていて野心と自信に満ちている。酔狂でも冗談でもなく、本気で世界のすべてを支配しようという男の目だ。
「お前はどうだ? 不知火!」
「当方か?」
「ああ! お前を捨てたミナト王は見る目のねぇバカだが、理解できる部分もある。何故海軍にいくという未来を選ばなかった? お前の生きがいの戦闘は、海兵になっても充分楽しめたはずだろう?」
シキの問いかけに、不知火は考えるように俯き目を閉じた。やがて何か思い至ったのか、ゆっくりと立ち上がって一番近くに倒れていた夜兎部隊の戦士の亡骸の近くにしゃがみ込んだ。その頭をゆっくりと撫でながら不知火は語る。
「……そうだな。確かに当方も、付いてきてくれたこいつらも、どうしようもない戦闘狂だ。血と臓物が飛び散り、肉が爆ぜ、火薬の焦げつく匂いが充満した戦場にしか居場所を見い出せなくなった依存者…。だが、それは決してどんな戦場にも飛びつく愚か者ということではない」
不知火は立ち上がり、シキへ振り返る。その瞳は戦場に取り憑かれ、ドロリとくすんでいるがその奥にある意志は爛々と輝いていた。
「何のために戦い、誰を守り、誰を殺すのか。どんな戦いに身を投じるかは当方達自らが決める。戦うことでしか自分を表現できないが、この”忠義”を奉げる相手は自分で決める。それが揺らぐことのない当方の意志だ」
シキと不知火の視線が交差する。”支配”と”忠義”、信条としているものは似ても似つかない。けれど、見ている景色は同じだとお互いに確信した。二人とも根底にあるのは”力”への絶対的な妄信だ。地位や名誉のような権力でも、金銀財宝のような財力でもない。自らの障害となるものをすべて踏みつぶす、圧倒的な力なのだ。
そう、ミナト王はそこを見誤っていた。不知火という魅力的過ぎる女を動かすのに必要だったのは、海軍本部へスカウトされる栄誉でも、故郷のために戦う誉れでも、ましてや金銭などでもない。
不知火が欲していたのは”共感”だ。戦うことしかできない自分を正面から認めてくれる、そしてその力を心の底から必要としてくれる。自らの意志で忠を尽くしたいと思える、そんな相手だ。
世界にとって悲運だったのは、その条件を満たしたのが世界すべてを支配する野望を持った海賊だったことだ。
”金獅子のシキ”、三日三晩戦い、殺し合った相手だ。その思想も価値観も、とことんぶつけ合って骨の髄まで染み込んだ。この男になら、任せられる。不知火は本気でそう思っていた。後は目の前の男からの言葉を待つだけ…。
それはシキも分かっているのだろう。ニヤリと不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。
「…今日という日は、俺の海賊人生で最良の日かもしれねぇな」
「そうか? ならば当方は
「ジハハハハ! そうか!」
シキは不知火へ手を差し出した。そして目の前の女を迎え入れるための言葉を言う。
「不知火! 俺の仲間になれ!」
不知火はにっこりと笑い、その手を固く握りしめた。
「…はい、喜んで。ボス」
後に世界へ大きく名を轟かせる金獅子海賊団のツートップ、シキと不知火はこうして邂逅した…。
・水城不知火
TS主人公。せっかくワンピースの世界に転生したんだからうんと強くなろうと色々頑張った結果、殺し合いが楽しくなってすっかり戦闘狂になってしまった人格異常者。一人称は「当方」。
見た目は対魔忍に出てくる水城不知火そのもので、むっちむち肉感的ボディ。なのに鬼のように強い。悪魔の実は食べてないが、覇気をひたすら訓練し続けたため、もうそれが能力かってくらいめちゃくちゃ。
戦うことは好きだが、その力を誰かのために使いたいという漠然とした思いを持っていた。この度うってつけの相手が見つかってご機嫌。
・金獅子のシキ
まだ駆け出しの頃の伝説の海賊。懸賞金も4億くらい。まだロックス海賊団にも所属していない。
見た目もいいし、強いし、価値観も合う最高の仲間と出会えてご満悦。多くの仲間を失ったが、海賊の世界ではよくあることだと割り切っている。
この時点でもう覇気だって使える。仮にも伝説の海賊だし、このくらい盛ってもいいだろうという判断。
最近、ハーメルン内の作品を読み漁っていたんですが、「二次創作が”原作”として存在する世界線の読者の反応が載っている作品」ってすごくいいなって思いました。何というか読んでてついニヤニヤしちゃうんですよね。
というわけで、この作品も同じような感じにしていきたいなと思っています! 失踪しなければですが…。