野獣は美女の幸せを望む   作:プレストン

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Volume6のAdam short動画のシーン

なんか勢いが止まらず続いちゃった。
つっても前日譚みたいなもの。


多分、どちらも正しくどちらも間違ってる

「動物が道を間違えたようだな!」

 

侮蔑の言葉が耳を通り抜ける。

まだホワイト・ファングが暴力的な活動をしていなかった頃だ。

現指導者シエナ・カーンの元ではなく、前指導者ギラ・ベラドンナの元で活動していた、平和的だったころの記憶だ。

 

最も、その頃には俺は既に仮面をつけ、武器を手に持っていた。

あの頃に俺にあったのは、仲間を守りたいという純粋な気持ちだったのだろう。

それがさらなるファウナスと人間の抗争を呼ぶものだったとしても。

俺は武器を取るべきだと信じていた。…それは今でも変わらないが。

 

「頼む!我々はここを通りたいだけだ!」

 

切実な男の声。ギラの交渉を求める声を襲撃者に向けた。

だが帰って来たのは、新しい撃鉄の音と飛来する弾丸。

それがギラに向けて放たれた時、俺は刀で弾き彼を遮蔽物として使っているトラックの裏に隠す。

 

「お隠れ下さい!危険です!」

 

そうギラに声をかけ、シエナと共に隠れる。

弾幕が止む気配はない。奴らはただ”狩り”を楽しんでいるだけなのだ。

俺たちの事情や頼みなど知ったことではない、奴らにとって俺たちは獲物でしかない。

どこまでも、この社会は俺たちを認めてはくれなかった。

 

「このような暴力は無意味だ!」

 

またギラはそう訴えかけ、立ち上がろうとする。

その胸倉をつかんで、俺は立ち上がるのを阻止して声をかける。

 

「今おっしゃったばかりでしょう!?頭を上げてはなりません!」

 

「しかし、アダム…彼らとの対話をしなければ…」

 

対話、その言葉に思わず怒りがこみ上げる。

だがそれ以上に悲しさも胸の内に溜まっていく。

そうだ、対話こそが俺たちを知性あるものたらしめるというのに。

食べるためでも、仇を取る為でもない、ただ遊びの為に奴らは対話を放棄してこちらを撃って来る。

それがたまらなく俺は悲しく、歯を食いしばりながらギラ様を見る。

 

「今の彼らに我々のお言葉は届きません。そもそも彼らはこちらに耳を貸すつもりなどないのです!」

 

「だがこちらから手を出せば…」

 

その言葉に、しかしギラは首を振って抗議しようとするのを隣にいたシエナが声を上げた。

 

「言い争っていられる場合か!このままじゃ奴らに撃ち殺されるだけだ!」

 

ここに至るまで対話をしようとするギラの姿勢は今では正しいと思う。

だが正しさをいくら言葉で訴えても、それを聞き入れるには”人間”である必要がある。

そして今俺たちに銃を向ける彼らは…人間などにはあの時の俺には見えなかった。

しかし、だからといって暴力で押し通そうとすれば社会に俺たちの行動は悪く映るだろう。

 

「……分かりました。無血でこの場を収めます。だからギラ様はここでお待ちを。

カーン、あなたはギラ様を守ってくれ。俺一人で片を付ける」

 

そう声をかけ、俺は武器をギラに預けた。

奴らは武器を使う。ならこちらは無手で片づければ、平和的活動とまだ言えるだろう。

これがただの詭弁であるのはわかっている。だがギラの理想はファウナスに必要なのも理解している。

…対話の為には対等であることを知らしめなければならない。

そのためには暴力もまた必要なのだとみんな感じている。

ただ、今はまだダメだ。少なくともギラの前では、俺は誰かを殺すわけには行かない。

 

「無茶だアダム!素手でアイツらを制圧するなど!」

 

「だがやらねば俺だけじゃなく、ここにいるみんなが死ぬだけだ!」

 

制止するシエナの言葉を無視して、俺はトラックから飛び出る。

瞬間、飛来してくる多数の銃弾を両腕で受け、俺のオーラによって防いでいく。

 

 

 

オーラとは生命の力。人間やファウナスが備える命の鎧。

オーラによって俺たちは力を得て、そして防を得る。

これが尽きるまでの間俺たちは傷がつくことはない。

だがこれが尽きてしまえば、あとは生身の身体が残るだけだ。

 

 

 

林の中にいる人間の一人を殴り飛ばし、一番近くの人間へとショルダータックルを食らわせる。

やろうと思えばそのまま殺せるだけの力が俺にはある。

俺には雄牛の力が備わっており、突進力で言えば人間とは比べ物にはならない。

直線的な動きで体当たりするだけで、プロの軍人でも昏倒は免れない程の衝撃を与えられる。

 

「ぐ、ぉおおおおおおおお!!」

 

雄たけびを上げ、俺は腕に、脚に、胴に、仮面に何度も銃弾を身にうける。

一人一人、木の幹を盾にしつつもなんとか殴り、蹴り、制圧していく。

だがそんな無茶をするのにも限度がある。俺のオーラが尽き、霧散する光が見えた。

その瞬間に奴らはさらに弾を撃ち続けるが、俺の身体を貫く弾丸などお構いなしだ。

元より、この程度の痛みには慣れているのだから―――!

 

「ひ、ひぃいいいい!!」

 

情けない悲鳴を上げ、最後の一人を突き飛ばして息を吐く。

両腕を貫いた弾によって俺の全身は血まみれになっていた。

それでもなんとか無事に制圧が終わったことを感じて、ドッと痛みを改めて感じていく。

だが……。

 

「死ね奇形共!!」

 

そんな言葉に顔を上げれば、まだ意識が残っていたのか隠れていたのか。

銃をトラックの裏に隠れていた同胞たちに向ける人間の姿がまだいた。

 

「くっ!あぁあああああああ!!」

 

ブシッ、と踏ん張ったせいで血が噴き出るが、俺は全身全霊をかけて走る。

その勢いを止めることなく俺はその人間に思い切り体当たりをかけて………。

無我夢中なのが、俺の不幸だった。トラックに向けて、全力で、その突撃を放ったのが行けなかった。

 

大きな衝突音と共に、ぐちゃりという気色悪い音が響いた。

 

 

 

 

 

 

「……ダム………アダム………アダム!!」

 

はっ、と俺を呼ぶ声に起き上がる。

意識を失っていたらしい俺を同胞の一人が見下ろしており、飛び起きた俺を驚いたように見ていた。

 

「動くな!まだ応急手当の最中だ!」

 

止血し、包帯を巻いている同法の言葉に少しずつ起こそうとしていた上体を戻す。

同時に聞こえる、怒鳴る声。その声の主は、シエナだった。

 

「アダムは私たちを守ろうとしてあぁなった!なのに奴らは私たちを悪者にしている!」

 

「あぁ、しかし……彼の行動は勇敢で必要だった。それは間違いない!だとしても、現に犠牲者は出た!」

 

「ぎせい………しゃ………?」

 

まだ意識が完全には回復していなくても、その言葉に俺は反応してしまった。

俺の声が聞こえたのか、口論していたギラとシエナが駆け寄って来る。

 

「意識が戻ったのか!」

 

「すまないアダム…私が迂闊だったばかりに、私はお前に…」

 

シエナは喜びの顔を、だがギラは悲しみの顔を見せる。

犠牲者…死んだ…まさか。

 

「同胞が、だれか死んだのですか…?」

 

シエナはその言葉に首を振ってこたえてくれた。

 

「いいや、誰も死んでいない。お前のおかげで我々は誰も死んでいない、安心しろ!」

 

「……………」

 

バツが悪そうに視線を逸らすギラを怪訝に思い、その視線の先を見る。

そこには、トラックにべったりと血を張り付けて倒れている、俺が最後に突撃した男の姿があった。

俺たちを動物と最初に侮蔑する言葉を吐いたあの男の姿だ。

 

「すまないアダム…お前にあんなことをさせたばかりに、殺人を犯させてしまった」

 

「これは必要なことだった、なにを謝る必要があるんだギラ!

むしろこれは賞賛すべきことだと私は考える。無手で戦い、無力化を試みた彼は犠牲者を一人に抑えた!

そのことを大々的に宣伝し、彼を英雄にするべきだ!」

 

そう叫ぶシエナの言葉は、俺にはどうしてもどこか作為的な物を感じていた。

だがそれ以上に、俺はこの手で誰かを殺めてしまった事実に胸の奥がぞわぞわしていた。

 

「俺たちはただ、食料を自分たちの所に持って行っていただけだったのに………。

俺はただ、みんなを守りたくて…なのに、奴らはただ虫けらのように俺たちを狩りと称して…。

でも、誰も死なせたくなかったのに、俺は…」

 

悲しみに暮れる俺に痛ましさを感じたのか、ギラは俺の肩に手を置いて言った。

 

「アダム…。心配ない、お前の立派な行動はきっと人間たちもわかってくれると私は信じる。

だから今は休め。お前のような勇敢な者がいれば、ファウナスの未来は決して暗くはない」

 

そう慰める彼の言葉に、俺はゆっくりとまた目を閉じた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アダム?どうしたの?」

 

ホワイト・ファングの支部の上で、座る俺に声をかけてくれる少女がいた。

振り向けば、黒い髪と金色の瞳、紫色のアイシャドウで化粧をした猫のファウナス。

…俺のパートナー、ブレイク・ベラドンナの姿があった。

 

ギラはあの事件の後、俺を信頼してくれたのかブレイクを紹介してくれた。

紹介と言っても、まだ幼い少女であったブレイクを必要なら守ってくれという頼みに近い。

そんな彼女もまたファウナスの未来を憂い、ホワイト・ファングに身を投じてくれた同志だった。

 

立ち上がり、コートを揺らしながら俺は彼女へと話す。

 

「お前に会う前の事を思い出していた」

 

「私に会う前…もしかして、お父さんを守ってくれたっていう?」

 

小首をかしげて、疑問を口にする彼女を見て思う。

数年ですっかりチャーミングになっていた。年齢差を考えるとかなり危ういのだが。

まぁ年齢差と言っても俺もまだ20にもなっていないのだが。

 

「あぁ、みんなを守るため、ブレイクの父…前指導者ギラを守るためとはいえ。

俺は人間を一人、直接的に殺めてしまったあの事件だ。…今でも、あの感触は夢に出る」

 

向き合った後、そう告げて。もう一度彼女に背を向ける。

事故とは言え俺は人を殺し、あまつさえ今も俺は人が死にかねないような活動をしている。

現に犠牲者だってホワイト・ファングどころか人間の方にも出ているような作戦もだった。

聡い彼女の事だ。そのことにはもう気付いていることだろう。

 

「事故…そう、事故よね。…でも」

 

「わかっている。…次の任務も同胞も、人も死ぬかもしれない。

それを必要なことだとは俺は言わない。だが暴力を使わないと人間たちは耳を貸しすらしない」

 

「…だとしても、父さんの理想を信じるならこんなことは続けるべきじゃないわ」

 

訴えかける彼女に、俺は仮面の下で目をつぶる。

あのギラのもとで育ったのだ。今のホワイト・ファング―――シエナ・カーンが率いるホワイト・ファングに彼女は賛同しないだろう。

分かっていた事だった、いづれは彼女は今のホワイト・ファングに見切りをつけることだろうとも。

そしてその時は決して遠くはない。なら俺に出来ることは…。

 

「次の任務は二日後だ。それまで休んで武器を整備しておけ」

 

「アダム!答えて!」

 

こちらへと近寄ろうとするブレイクに、俺は手を出して制止する。

 

「それはまた今度だ。…ダストがなくて凍えている同胞の為にもな」

 

そう告げた俺の言葉は事実であり、だからこそブレイクは何も言えない。

聡いからこそ、理想に対する現実の犠牲者もまた彼女には見えている。

どちらが正しいか、それを考えるのは大事だろう。

 

だが正しさで人が救えないというのなら、俺は………。

こんな俺の背中ではなく、あの父親の背中を見て育ったことが、俺はひどく喜ばしいと思う。

 

「俺も整えておく、またな」

 

そう言って支部の屋上から俺は梯子を使って降りていく。

きっと、その”また”が最後だと予感しているというのに。

俺は彼女を避け、対話をしないことを決めた。

だから、俺はどこまでも勝手で、結局ギラの理想に殉じることが出来ないのだろう。

………人を殺めてしまった、その事実がある俺には、もうその道は歩めないのだ。

 

ならせめて、振り下ろす拳の行く先は俺が決める。

自己満足、欺瞞、偽善、どうとでも言え。俺は同胞に血を流させたくもなければ、流したくもないのだ。




正直ホワイト・ファングの活動は間違っているとしても
人間の今までしてきた仕打ちに対してギラは理性的すぎると思う。
ただシエナのやり方もよくはないよねって。

ここのアダムはそういう指導者としての自分を考えられないので現場幹部のままです。
自身がホワイト・ファングを率いるなんてこれっぽっちもおもってなかったり。
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