死亡遊戯で幼馴染を買う。   作:たたたった

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第4話

 今にも消えてしまいそうな幼馴染の姿を見た時、俺は掛けるべき言葉が見当たらなかった。

 艶のある銀髪を流して枝毛すら見当たらず、眉もまつ毛も完璧に整えられ、唇にはリップが塗られている。洗濯屋によって洗われたあとのように皺もない上下のジーンズ、完璧な美少女としての出で立ちのユウキに対して俺は呆けてしまう。

 

 それはまるで死化粧をされた遺体のようだった。棺桶に収められて綺麗に整えられた故人、生気が完全に抜け落ち、決して生き返ることのない人物が目の前に立って言葉を話し、こちらを見つめて、いつものように窓際で開けてくれと頼んでいる。

 

「今日は疲れました。ベッドを少しだけお借りしますね」

 

 ユウキからいつもの臭いがしない。まるで本当に死んでしまって幽霊になったかのように、それでいて生前の頃のままに部屋に入ってくるなり、必要な言葉だけを告げて俺のベッドの上で胎児のように身体を丸めて横になる。

 

「ユウキ……何かあったのか?」

「…………………ッ!なにもありませんよ」

 

 僅かに震えるユウキの身体が嘘だと教えてくれる。

 椅子に座り幼馴染を見つめる俺の視線と、ベッドで丸まり俺を見つめる視線が交差した。お互いに何も言わない。付かず離れず関わらず、それが俺たちの関係である以上、無理強いして話すこともなければ、不躾に干渉するなんてこともしない。それでも、今のユウキとはたとえ不可侵を破ってでも関わらなければならない、という感情が心の底から湧きあがる。

 

 そうでなければ、幼馴染の心は決定的にどこかが壊れる。そんな予感がしていた。

 

「仕事しないんですか?」

「今からするよ。お前は少し寝てろ。普段から幽霊のように生気がないのに、今日はなんか洒落になってないぞ」

「…………疲れてますからね。それでは、私はお言葉に甘えて、眠ることにします」

 

 胎児のように丸まる姿から、仰向けになりお腹に手を添え、小さな寝息を立てて胸を上下させる眠り姫。

 無警戒で無防備、子供とはいえ男の前でそんな姿を晒すユウキのことが心配になりながら、彼女の身に何が起こったのか考える。

 

 美容に興味ないユウキが、なんでこんな完璧に外見を整えているんだ?夜型のこいつが来てすぐに眠るなんて、絶対におかしい。整えた容姿、疲労した肉体、そして生気の抜けた顔……――――ッ!?まさか……ッ!

 

「ユウキ……まさか、お前……?」

 

 幼馴染の性格は把握している。だから、絶対にあり得ないことだと思いながらも、口から零れてしまう言葉は止められない。幸いにその声が届かない程に深い眠りに落ちているが、まるで俺の最悪の想像の答え合わせをするかのように、ジャージのポケットから分厚い茶封筒が転げ落ちた。

 

「――――――――っ……ッ?!」

 

 零れ落ちる札束が封筒から覗いている。諭吉の印刷された紙、つまり現金で1万円の紙幣が何十枚ではなく、何百枚というあるかのような厚みを誇るそれは、俺の疑惑を確信にさせるには十分な物的証拠だった。何をすればこれだけ稼げるのか、外見だけなら見目麗しい美少女が出来ることなんて一つだけだろう。

 

 売春した……のか?束が3つ……1日で300万も稼げるような……そんな、そんなことをしたのか……?

 

 部屋を訪れた時の幽霊のようなユウキの姿が、脳裏に蘇ってくる。まるで心を殺されたかのように、いや本当に殺されたのだろう。中学生で売春、それも300万円の大金となれば、どのような下種な行為をされたのか、恐ろしい光景を想像して戦慄する。

 どうすれば良いかなんて分からない。ユウキを叱ればいいのか、慰めればいいのか、それとも同情して寄り添えばいいのか。追い詰めてしまった張本人が俺である可能性が高いのに、どの面を下げて彼女と接すればいいのか、答えの出ない問題が頭の中をグルグルと駆けまわっていく。

 

「俺は……俺は、どうすれば良いんだ……?」

 

 傷付いた幼馴染の心を救う方法。そんな都合のいいものなんて、前世知識チートの俺の中にも存在しなかった。だから、せめて、ユウキが目覚める、その時が来るまで、俺は傍でずっと見守ることにした。

 

 起きたら、幼馴染と話し合わなければならない。

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