「あなたは幽冥さんに相応しくありませんわ。身の程を弁えなさい」
「お前に言われる義理はない。部外者が私たちの関係に口を出すな」
幽鬼と
幼馴染との関係に土足で踏み込んでくる
「幽冥さんの価値を貶めている自覚がありまして?本来ならば、あの方は東京に来ているはずでしたのよ」
「は?何を言っているんですか?」
「あら、あなたは幽冥さんから、何も聞かされていないのですわね」
無知を嘲笑うかのような
付かず離れず関わらずの関係を幼馴染と築いている幽鬼にとって、必要以上に相手の私生活に干渉をすることはなかった。互いの居心地の良い距離感を保ち、共に過ごすだけで十分に満たされていたのだ。だから、幼馴染の仕事に関しても、パソコンでゲームを作っている程度の認識でしかなかった。
そこを
「あの方のお仕事について、どれだけのことを知っているのかしら?」
「さぁ?私はユウタの仕事になんて興味ないし、お互いが居れば満たされる、私たちの関係は
「――――ッ!あぁ……あなたの
「あっ?私の代わりなんて、ユウタに居る訳ないだろ?」
醜いマウントの取り合いだと、幽鬼は自覚していた。愚かだと知りながらも、
「幽冥さんは天才では片づけられない、まさに稀代の怪物と言っても良いお方なのですわ。それなのに、こんな田舎で……あなたさえ居なければ、わたくしの居場所は……ッ!幽冥さんに相応しい女は、このわたくしなのです!なんで、学校にも通わないような社会不適合者が、その居場所に居座っているんですの!」
「知らねぇよ!それを決めるのはユウタ自身だろ!勝手に割り込んでくるお前が間違っている!」
「相応しい存在が、相応しい場所を求めて何が悪いんですの!わたくしは間違っていませんわ!そもそもの間違いは、あなたがあのお方の傍に居ることです!さっさと身を引いて、その居場所を寄越しなさい!5歳の頃より、テレビで観た時からずっとお慕いしていたのです!あの日からわたくしは勉学に励み、容姿だって誰にも負けないほどの――――あらっ?震えていますの?」
「ちがっ――――ッ!これは私の発作だから……ッ!」
怯えるような全身の震えが幽鬼を満たしていた。
これは
だが、それが引き起こるタイミングは最悪としかいえない。
格付けが済んだ、と言いたげに満足したように幼馴染の椅子に座りながら、震える幽鬼を愉し気に見物している。
「酷い震えですわね。無理に立つ必要はないのではなくて?床で楽になられたら?」
「うるさい。これは心の問題だ。お前が怖くて震えている訳ではない」
「そうなのですか?わたくしの調べでは、社会性に問題がある少女と出ているのですけれど、本当はまともに人と話すことも出来ないのではなくて?」
興信所を使ってまで調査をしたのか、と幼馴染に対する異常な執着を見せる
自分たちは中学生である。それなのに大人を巻き込み大枚をはたいてまで、幽鬼のことを調べ上げる行動力。そこまでしてユウタが欲しいのか、とこんな少女に付き纏われる幼馴染が不憫であると幽鬼は思った。棚上げする自分のことは意図して無視した。
明らかに
最初はユウタのことを取られるかもと心配した私が馬鹿みたいだ。こんな異常者に惹かれる要素なんてない。
行き過ぎた行為をする
震える幽鬼を見つめて、笑っている
「何をやっているのですの?!殿方のベッドに入るなど、はしたないですわ!」
そこんとこの倫理観はしっかりしてるんだな、と声を荒げる
「ただいま。お待たせしたね、
「おかえり、ユウタ。それと震えているので、身体を抱きしめてください」
「分かった。ほら、ベッドから起き上がって……んっ――――」
「なっ――――ぁっ、幽冥さん……?」
ベッドの上で両腕を広げる幽鬼の身体を幼馴染が強く抱きしめる。震えが収まるようにと、気持ちの強く籠められた抱擁。ほぅっ、とあまりの心地よさに息が零れるのを止められない彼女は、幼馴染に胸板に埋まるように頭を預ける。
全てがどうでも良くなる感覚、心を蝕む
もうすぐ震えが止まることを察して、幼子の駄々のように身体を無理して震わせる幽鬼であるが、幼馴染にそんなことが通用するはずもなく、完璧な頃合いをみて腕が離れていく。
「最近、震えも落ち着いてきたんじゃないか?前だったら、30分以上は抱きしめてないと止まらなかっただろ」
「そうですね。どうやら、心が落ち着いてきてしまったようです……今は、たった5分もせずに止まるなんて」
「発作も収まってきたし、あと一か月以内には完全に止まりそうだな」
幼馴染の言葉に、震えなくなる自分の身体が恨めしく思った。
あの抱きしめられる感覚を味わえなくなる。この世でありながら、極楽にいるような幼馴染の抱擁。それを失うことが幽鬼にとって堪らなく嫌であった。何とかして
最低の考えが幽鬼の頭の中に浮かぶ。それは同情を買うためだけに自傷するよりも質が悪い。場合によっては他のプレイヤーを犠牲にしてまで生き残る必要がある
流石にこれはないな。幼馴染を理由に
「幽冥さん。この方が心の病気であるのでしたら、心療内科で専門的な治療をする方が適切ではないかしら?」
悪役令嬢のような嗜虐的な振る舞いはどこに行ったのか、猫を被った
「俺が出来る範囲で何とかなるなら、望むようにさせてるんだ。これで症状が悪化したら、もちろん病院には無理してでも連れて行くが」
「そうなのですね。幽冥さんの貴重なお時間を使って……この方を癒しているなんて……わたくしは感動しましたわ!」
憎悪と妬みを極限まで混ぜ込んだような瞳で幽鬼を見つめる
「変なのに好かれますね……東京に行ったら余計に面倒なことが増えそうです」
「なんか言ったか?ユウキ」
「いえ、私はお邪魔ですのでベッドで少し眠らせてもらいます。話が終わったら起こしてください」
幽鬼にとって