「我が名はこんにちはくんだ」
急にそんな声が聞こえた。どういうことだろう。
刹那、背中に鋭い痛みが走る。
絶望の痛み。
しかし耐えられないことはない。
まずい…
切られたか…
こんな急に切られることがあるのか。
右から後ろに振り向こうとする。
おかしい。
誰もいない。
左腕が切り落とされた。
しまった。
落ちる左腕。
直後に与えられる痛み。
死ぬかもしれない。
左側に女の顔が見える。コイツが刺客か。
「異世界転生、してみたくない?」
ハキハキとした奇妙な声でそう問われた。
ぼくは頷くほかなかった。
こっちは一般人だぞ。
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しかし転生先の生活はとりたてて言うべきところもなかった。
平凡な異世界、平凡な立身出世、驚くべきこともないファンタジー要素。
どうやってこの異世界が成り立っているのかわからないハリボテ感の強い箱庭。
はじめに一通りの承認欲求が満たされたあとは消化試合のような人生が待っていただけだった。
地球の偉人たちが考えたことを思い出しながら焼き直す作業。
それで尊敬されたとしてもちっとも嬉しくはなかった。
和やかで温かい地獄、それがぼくにとっての異世界生活だった。
ただそんな生活も悪くはなかった。
ぼくには真の友ができていたからだ。
地球の生活について憧憬の念を抱きつつも、この異世界に誇りを持つ彼がいたことで、ぼくの人生には彩りがあった。
そんな生活にももうすぐ終わりがやってくる。
寿命だろう。
これほどまでなかなかにない経験をさせてもらえたことに感謝しか感じられない。
どれもこれもあの女のおかげかもしれない。
あの女?
まずい!
「また背中ががら空きじゃないか」
背中が切られていた。
「我が名はこんにちはくんだ」
背中にまた絶望の痛み。
「右を振り向くクセも同じだな」
左腕が落とされた。
「お前は70年何をやっていた?異世界で」
ぐうの音も出ないとはこのこと。
「直感は多少発達したようだな」
痛みが全身を駆け巡る。
死の直前に声が聞こえた。
「お前がいう真の友な」
まさか。
「それは私だ」
そんなことはありえないはずなのに。
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今度はクマに転生かよ。
どこのクマだ。日本なのか異世界なのか海外なのかストラッツアーツなのか。
とにかくこの生において初めてあの女の存在が脳裏に焼き付いた。
いつ何時こちらを襲撃してくるのかわからない。
目的も不明。ただし何らかの形でぼくの人生を終わらせてくる。
むずかしい。
はあ、クマだから難しいことを考えられない。
まずい!!
前方に猟師!!
ハントされる!!!