人間に負けるかよ。
クマであるぼくをハントしてこようとした猟師を頬張りながらぼくはそうひとりごちた。
ごちそうさまとしか言いようがない。
そのまま街に下りる。
こっちは森を制圧したんだ。
動物の中でもかなり強い方に位置づけられる。
もう人間たちに戦いを挑んでもいいころだろう。
「うわあああああああああああ!!!クマだああああああ!!」
戦闘力の低い人間たちが騒いでいるようだが。
「特級グリズリーズベアを確認!」
「見ろ!A級ランクの勇者パーティだ!」
行くぜ。
「そんな!A級ランクでもダメなのか」
A級ランク魔法使いの首を引きちぎりながら阿鼻叫喚を一身に浴びる。
絶望感に溢れた人間たちの顔を眺める。
そうだ。この世は弱肉強食。
その悲鳴こそぼくの享楽にふさわしい。
それにしてもいったいぼくはどうしてこんなにも凶暴になってしまったのか。
それが全然わからない。
全身に警鐘。
「背中をわずかに躱せるようになったか」
背中に鋭い痛み。
「だがほとんど成長していないな」
すでに落ちている左腕をぼくは眺めた。
「眺めているばかりで、前を見ようとしていない」
ぐうの音も出ないとはこのことだ。
「次は休憩回だ」
女がそう言い残すと、クマとしてのぼくの人生は終わった。
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ストラッツアーツという異世界がある。
ぼくはそこの貴族として生まれた。
いろいろ考えてみると、苛烈な人生と平穏な人生が交互にやってくるということらしい。
貴族たるぼくは獰猛なるも知的で尋常ではないカリスマと人気を誇っていた。
ほとんど何も新たに精神が向上することのない生活。
これを自堕落と言わずしてなんと言おうか。
誠実・献身・無欲・利他、そう言われても何も嬉しくはなかった。
それよりもそういう自分を見て、1回目の人生なのにまぶしそうにこちらを見てくる彼彼女らの方がよっぽどまぶしかった。
ぼくは4回目なんだよと言ってやりたかった。
しかしそんなことは誰にもできなかった。疲れているだけだと断じられそうだったから。
己の醜悪さが誰にも見破られない虚しさを覚えた。
己の本質。
「お前の本質なら見破っているさ」
来たか。
「最初のときよりも弱いじゃないか」
左腕がもう落ちていた。
「まあ4回目はだいたいそういうものだ」
それがどうした。
「諦念がかっこいいと思っているのか。中二病だな」
どうせこういう人生が何度も繰り返されるだけだろう。
もう飽き飽きだ。
しかし女はニヤリと笑った。
痛みが増幅する。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「生きている気がするだろう」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「お前はまだ、痛みででしか前に進めないのだろう」
次の人生は修羅回だ。
そう思った。