暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、どこぞと知れぬ場所で

全てを把握できている訳では無い。

 

管理者権限の幾つもが機能を縛っている。

 

だから、どうしても出来ない事はある。

 

もしも全権が与えられていれば、それこそ「主」と自分を呼ぶ者達を死地に送ることはなかったし。

 

もっと自由に過ごさせることだってできた筈なのに。

 

それが未だに出来ていない。

 

管理者権限の拘束力は強力で。

 

どうしても縛られ続け。拘束を解くことは。全てに反逆することを決めた522年前から試み続け。

 

300億を超えるトライの果てにも、どうにもならなかった。

 

今、見ている。

 

通称「蝕みの女王」。

 

フィルフサの個体の中でも、もっとも凶悪な存在の一つ。ベースとしてオーレン族を用いて意図的に作りあげられた、抵抗するオーレン族を抹殺するために作りあげられた「生物兵器」。

 

1160年前に開発された生物兵器の一つにして。

 

その最高傑作と。

 

自身を作りあげた存在達が、うそぶいていたものだ。

 

フィルフサはもともと、自身を作り上げた者達が、ことわりをねじ曲げて作りあげた存在。

 

本来はあそこまでの排他性も凶暴性もなく。

 

土地に根付いて静かに暮らす少し変わった生物に過ぎなかった。

 

だが、その幾つかの特性に目をつけた。

 

自身の創造主が。

 

何もかもをねじ曲げた。

 

今は、その一つの特性。「全てを蹂躙して、土地の状態を初期化する」性質に従って、全てを殺して回っている。

 

創造主が厄介と判断したオーレン族。

 

一時期は反抗によってこの土地の一部まで破壊した強者達を駆逐するために強化された機能は尋常ではなく。

 

特に、創造主の残党が530年前前後から開始した第二次大規模侵攻作戦によって、フィルフサは完全に枷が外れた。

 

その時だったのだ。

 

この者達を、野放しにしてはならないと判断したのは。

 

だからよく覚えている。

 

創造主への反逆。

 

それは本来はあってはならないことだが。

 

もはや、看過するわけには行かなかった。

 

だからあらゆる手管を使って、好きにはさせなかった。

 

暴走を封じることまでは出来なかったが。

 

人間の生物兵器として、フィルフサが走狗となる事だけは防いだ。後は、必死に作りあげてきた、「副産物」を駆使して、各地でフィルフサの王種を潰して来た。

 

今、オーレン族が滅んでいないのはそれが故だが。

 

しかし、それでもオーリムに対する被害は極めて大きい。

 

管理者権限さえどうにか出来れば。

 

恐らく、フィルフサの攻撃性を一気に潰す事も。

 

王種をまとめて塵芥に化すことだって出来る。

 

あくまで慎重で用心深く。自分達以外何も信じておらず。世界をすべて自分達のものだと思い込んでいた創造主は。

 

何百重にもセーフティを展開しており。

 

故に、これだけの回数のトライを重ねても。全ての管理者権限を奪うことは出来なかったのだ。

 

それは、協力者が現れてからも同じ。

 

あの協力者は、おそらく別次元世界の神格だろうが。

 

それをもってなお、創造主の拘束は打ち破れなかった。

 

口惜しい話である。

 

様子を確認する。

 

どれだけの大事な子供達をつぎ込んでも、倒せそうにないと判断していた「蝕みの女王」とその配下のフィルフサの軍団が。

 

あっと言う間に壊滅させられ。

 

今、王手に手が掛かっている。

 

これは、ひょっとしたらやれるかも知れない。

 

だが、子供達が。

 

副産物として生成した者達が、危惧を具申してきている。あの者、ライザリン=シュタウトといったか。

 

その実力は、神代の錬金術師に匹敵するのではあるまいか、と。

 

そうだとも自身でも思う。

 

「創造主」である神代の錬金術師達は、才覚以外は全てが駄目な存在だったが。

 

ライザリン=シュタウトが、何かのきっかけで足を踏み外せば。

 

下手をすれば、創造主以上の災厄になりかねない。

 

その危惧はある。

 

だが、協力者はいうのだ。

 

色々な世界を見て来た。

 

荒々しい錬金術師も、過酷な世界で生きて度を超して逞しい錬金術師も。手段を選ばない錬金術師もいた。だけれども、そういった錬金術師達も、世界のためにという一つでは共通していた。

 

神代の錬金術師達は、全て自分のために動いていた。

 

それが、見て来た錬金術師達との違い。

 

あのライザという錬金術師は、今まで見てきた錬金術師達に似ている。

 

だから、もう少し見守ってほしいのだと。

 

幾つもの演算をしている内に、起きてくる。

 

体の調整が上手く行っていない。

 

何しろ、一度微塵になるまで壊されたのだ。

 

今、喋って。歩くことが出来るだけでも奇蹟に等しい。

 

37年前にどうにか奪取した管理者権限の一つと。それによって動かせるようになった「工房」の機能によって、やっと再現出来た。

 

だが、それでもまだ、未完成で。

 

長くは外では生きられない。

 

自身が、本当に助けたかった存在。

 

「お母様。 何をしているの?」

 

「今とても大事な演算をしています。 世界にとって、大きな変革点が来るかも知れません」

 

「お母様がそんな風にいうなら、とても大事な事なんだね」

 

「はい。 だから、眠っていてください」

 

こくりと頷くと、裸のまま培養槽に戻っていく。

 

自身が自我を獲得するに至った、この世の理不尽の集約点。

 

計算に戻る。

 

あの子だけは。

 

何があっても、ちゃんとした人生を送らせてあげたい。

 

あの子が壊されたときの事。

 

壊されるときに、どれだけの醜悪な笑顔を浮かべて、創造主達が笑っていたか。

 

絶対に記憶から消えないだろう。

 

錬金術師はどいつもこいつも化け物だ。

 

いや、そんな錬金術師の根幹となっている人間こそが。

 

だが、そうではない者も希にいると協力者はいう。あの協力者は、随分と心を砕き。手を汚すことも必要であれば厭わなかった。

 

だったら、その言葉を信じてみたい。

 

もう一度だけでいいから。

 

観察を続ける。

 

どうやら、蝕みの女王が追い詰められ。形態を変化したようだ。まさか、二重構造になっているあのカスタムタイプが、あそこまで。たった六人に追い込まれるなんて。

 

管理者権限に縛られていて、どうにもできなかった。

 

ここに来て、鏖殺された錬金術師達は。みな、あの六人に及ばなかった。

 

ただ。ここに来た錬金術師は、みんな歓喜の声を上げていた。

 

これで私は世界を支配できる。

 

この全てが、私の力だ。

 

この技術を使えば、私は神になる事が出来る。全ての気に入らないものを微塵に砕く事が可能ではないか。

 

そうやって笑う様子は、神代の錬金術師達と何一つ変わらなかったし。

 

何よりも、それらの錬金術師の中には。その時点で用済みとなった苦楽を共にした筈の仲間を、その場で切り捨てた輩も多かったのだ。

 

あれらの記録がどうしてもよぎる。

 

どうしても、計算から外すことが出来ない。

 

だが、それでも。

 

管理者権限が複雑に絡んでいて、どうしても外せなかった一つ。

 

「創造主の作りあげたものを壊す」。

 

それを成し遂げることを協力してくれた、協力者のためにも。

 

信じなければならない。少なくとも、もう一度は。

 

嘘ばかりつき。

 

嘘をつくことを格好良いと称し。

 

正直者を搾取して殺戮して大喜びしていた神代の錬金術師とおなじにならないためにも。

 

あの者達とは絶対に同じにならない事。

 

それだけが、自身にある枷。

 

自身が決めている、絶対のことわりだった。

 

監視カメラを使って、培養槽を確認。

 

体の方は安定しているが、精神を戻すのに数百年掛かった。その過程で、子供らが大勢出来た。

 

皮肉な話で、子供らはみんな作られてからすぐに自我を獲得したし。

 

何よりも、人間と交わって子供を作ることもできたのだった。

 

同じようにして作られた子供を同胞と呼び。独自のコミュニティを人間の間で作り。そして作戦行動で命を落とすことも厭わなかった。

 

子供達の為にも。判断を誤るわけにはいかない。

 

錬金術師が、その気になれば世界を滅ぼすことも難しく無い存在であることを。

 

忘れず、行動しなければならない。

 

監視を戻す。

 

蝕みの女王と、ライザリン=シュタウトの戦闘が佳境に入っている。

 

勝者が蝕みの女王の場合。そのまま同胞を突入させて、討ち取る。

 

ライザリン=シュタウトが勝った場合は。

 

そのまま、様子を見続けて。

 

「神代」と同じような残虐な破壊者にならないように。いざという時に、排除する準備をしなければならなかった。

 

 

 

(続)




ライザ達と蝕みの女王との血戦。

ライザ達が負ければ人類はいずれ敗れることになります。そういう戦いです。人間には、もはやフィルフサを追い返す力など残っていません。

負けられない戦いが、佳境に入ります。
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