暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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ライザ達とは現在は対立しているボオス。現在ではすっかりブルネン家のどら息子として周囲に嫌われています。しかしながら、そうなってしまったのには色々と理由があるのです。

なおボオスの取り巻きであるランバーですが、本作ではかなりキャラクターをまともにしていますので、そのあたりはご承知おきください。


2、クーケン島は楽園に非ず

帝王教育というものがある。

 

ボオス=ブルネンが受け続けたのはそれだ。

 

昔はただ、なんとなく金を持っている程度の家に過ぎなかったブルネン家だが。何代か前のバルバトスという当主が出てから、全てが変わった。

 

ブルネン家の男は、と事あるごとに言われるようになった。

 

それについては、ボオスも何となく知っているし。

 

別に女傑も珍しく無い時代、どうして男にこだわるのかはよく分からなかった。事実。ボオスの先々代は女性当主で、バルバトスにも劣らない豪腕だったと聞いている。

 

物心ついた頃。

 

父であるモリッツが言っていたことを、ボオスは覚えている。

 

あのライザという娘。

 

あれは天性の指導者の器の持ち主だ。

 

お前はいずれブルネン家を、いやクーケン島を背負って立つ身だ。

 

だから、ライザを側で見て、しっかり観察しろと。

 

はいとその頃は擦れていなかったボオスは、素直に答えて。

 

自然と受け入れてくれたライザの悪童集団に混じった。

 

その頃は、父もにこにこと。

 

ライザと悪童集団がする悪さも微笑ましいものを見る目で見守っていたし。ボオスも一緒になって、冒険やら悪戯やらをしていたものだ。

 

それが。

 

あの日。

 

全てが変わってしまった。

 

今でも時々夢に見る。

 

着衣泳が極めて難しいから、絶対に湖に落ちるなと言われていた意味。

 

それだけじゃない。

 

水の中にいるのは、魚だけではないという事。

 

恐怖に泣き叫ぶ周りの中で。

 

ボオスは最善を尽くしたつもりだった。

 

それなのに。

 

起きだすと、ボオスは頬を叩いて、意識を覚醒させる。

 

ライザに女としての魅力を感じたことは、昔から今に至るまでただの一度もない。

 

あれはなんというか、天性のたらしであり。

 

ボオスみたいに捻くれた奴でも、簡単に心を掴んでいく魔性だ。

 

ただ、それはそれとして性的な魅力は皆無なようで。

 

一緒にいた男子の悪ガキにも、初恋がライザだという者はいないようだった。

 

分かっている。

 

あれからボオスは、勉学と武術に励んだ。

 

それで、必死に支配者たろうとした。

 

父であるモリッツは、事故の後ボオスに何も声を掛けず。後は好きにやるように、とだけ言った。

 

そう言われてボオスはそうすることに決めたし。

 

手下を引き連れて、将来の島の支配者になるべく動いた。

 

だけれども、ボオスはいつも何というか、手応えを感じなかった。

 

皆が反発しているのが分かる。

 

どれだけ理論をもってしても、ライザの天然の豪腕には及ばない。

 

それが分かっているからこそ、苛立ちは更に募った。

 

壊れてしまった関係を修復できなかった事もあるだろう。

 

やがて、ライザや子分に対してとげとげしい言葉を口にするようになり。

 

いつしか口もすっかり悪くなっていた。

 

起きだすと、早くから剣術の鍛錬をする。

 

ランバーは荒事には向かないが、剣を一人で振るっているとき。或いは他の人間に教えているときは、別人のように冴える。

 

最初に護り手が剣術を習うのはランバーだ。

 

槍は別のスペシャリストがいるのだが。槍は人間に対しては有効だが、どうも魔力を通すのが難しいらしく、獣に対して必殺の打撃を与えにくい。

 

古くは槍が戦争の主役だったらしいのだけれども。

 

今は、人間ではなく魔物が敵。

 

魔術を織り込んで戦うのが当たり前になった現状。

 

剣を使って戦うのが、当たり前になっていた。

 

匪賊でも出れば話は別なのだろうが。

 

幸いこの近辺に、人を食うようにまで落ちた匪賊共の話はない。

 

よって、まずは剣術を学ぶ。

 

それが、クーケン島ではスタンダードになっている。

 

ランバーに稽古をつけて貰う。

 

普段は腰巾着の惰弱なランバーだが、剣の稽古をしている時だけは目つきも違うし背もしっかり伸びている。

 

というか、剣の腕前だけならアガーテにも迫る。

 

しばらく無言で早朝の訓練をして。汗をしっかり流す。

 

分かっている。

 

これだけ真面目に訓練をしても、天性の体格と筋力に恵まれているレントには多分かなわない。

 

魔術の技量だって、ボオスは別に誰にも劣っていないが。

 

レントは暴れん坊であるザムエルの血を強く引いているようで。

 

ガタイも戦闘適性も、恐ろしい程高い。

 

誰が相手でも負けないようにしろ。

 

そう父は言うが。

 

その言葉が、ボオスには強い重荷になっていた。

 

「ここまで」

 

「おう」

 

「ふう、今の所現状維持ですね。 このままもう少しからだが出来るのを待ちましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

ランバーは。剣をしまうと。

 

それまでが嘘のように、ひ弱なヘタレになる。

 

本当に荒事に向かない奴だ。どうして此処まで変わるのか、ある種の怪奇現象だとボオスは思っている。

 

ランバーも親に剣術を学んだらしいのだが。

 

それでも、此処まで精神が弱いと使い物にならないと思ったのだろう。

 

護り手に入れたときも、此奴は実戦では話にならないから、剣術師範か何かにしてくれとまで言っていたらしい。

 

ボオスはその現場にいたことはないが。

 

確かに、それは的確な言葉だと感じる。

 

「それで、今日も島の見回りですかい?」

 

「ああ、そのつもりだ。 その前に飯を喰って、だがな」

 

「分かりました。 俺も朝食にして来ます」

 

「そうしろ」

 

ボオスはなんでこう、才能には偏りがあるのかと思って舌打ちする。

 

ランバーだって、もう少し殺し合い向きの才能があれば。こんな風に剣腕を腐らせずに、もっと本人だって自信を持てた筈なのに。

 

それがこんな有様だ。

 

世の中は不公正だな。

 

そう思って、ボオスはじっと手を見る。

 

あの時やった事は、間違っていない。そう何度自問自答したか。

 

今でも、間違っていないと結論出来る。

 

だが、それで壁が出来てしまった。

 

ライザと壁が出来た事に関しては、父も残念そうにしていた。

 

或いはライザのやり方を学んだボオスが、もっと大きな男になるかも知れないと思っていた可能性もある。

 

父はどちらかというと憶病な男で。

 

外では尊大に振る舞っているが。今来ているバレンツ商会に見せているような顔の方が本性だ。

 

ボオスのことも、時々心配しすぎているようだし。

 

今考えている、王都に勉強のために留学したいなんて話をしだしたら、泡を吹くかもしれなかった。

 

今日も、孤独な支配者ごっこが始まる。

 

誰も喜ばない。

 

誰もボオスを認めたりしない。

 

それでも、もう後に引けない滑稽な自分を。ボオスは多分、誰よりも嫌悪していたかも知れなかった。

 

 

 

鼻歌交じりに集合場所に向かっていると、ボオスとランバーに出くわす。あたしはむっとしたが。

 

ボオスは、やっぱり嫌みを言ってくるのだった。

 

「ようライザ。 また冒険ごっこか?」

 

「ふふん、それはどうだろうね」

 

「……」

 

ボオスは気付いたか。

 

あたしが新しい杖と、靴を身に付けている事に。

 

此奴は元々、頭が悪くない。

 

タオが規格外で目立たないだけで。相応に頭はきれるし観察力だってある。

 

だから、あたしも侮ってはいなかった。

 

「その杖は盗んだりしていないだろうな」

 

「あたしがそんな事しないって、誰より知ってるんじゃないの」

 

「そうか。 いずれにしても、お前達が好き勝手を許されている意味をもう少し考えておく事だな。 それと、ザムエルの事はどうにかしろ」

 

「ザムエルさん、また暴れたの?」

 

顎をしゃくるボオス。

 

あたしが視線を向けた先は、ボーデン地区に店を構えるフレッサさんがいる。

 

穏やかなまだ若い男性店主だが。

 

いつもザムエルさんの猛威に晒されている人だ。

 

理由は簡単。

 

酒を扱っているからである。

 

ボオスが好きかって言った後、行ってしまう。太陽を見る限り、まだ時間はあるか。

 

アガーテ姉さんには、恩返し出来たと思う。

 

それなら、他の人にも。

 

フレッサさんには、色々なものを売って貰った。

 

この島では貴重な紙の本も、高値だけれども扱っている。だから、タオの誕生日プレゼントとして、お金をレントと出し合って買ったこともある。他にも、牧畜をやっている牧場などとの物資の中継役をしているので、街の顔役の一人だった。

 

話をすればだ。

 

ザムエルさんが来る。

 

レントを更に一回り大きくしたような巨体に、血みたいな豪放な赤毛を見せびらかし。そして衰えても筋肉ムキムキの体を見せつけるようにして歩いて来る様子は、まさに巨人だ。

 

傭兵として現役の頃は、多数の魔物を手に掛け。

 

その剣で敵を斬り続けて、勲にして来た。それは、見た目だけで本当なのだと分かる。

 

そしてザムエルさんは凄まじい悪人面でもある。

 

向かい傷が斜めに交差していて。どんな魔物と戦えば、あんな向かい傷を受けるのかよく分からない。

 

大胸筋やら腹筋やらの辺りにも、古傷らしいのが幾つもある。

 

それを見せつけて歩いているから、みんな怖がる。

 

ひっと、フレッサさんが声を上げる。

 

ザムエルさんは、もう酔っているようだった。

 

「酒。 いつものだ」

 

「あんたには、売らないように達しが出ているんだ」

 

「んだとゴルァ!」

 

いきなりキレる。

 

ザムエルさんの拳は、凶器と同じだ。魔力でガードすることが出来ても、その上から骨ごと砕くくらいのパワーがある。

 

これに殴られて死なないレントが強い訳である。

 

酒場などで暴れられると、アガーテ姉さんか、知己であるうちの父さんか母さんが出向かないと止まらないと聞くが。

 

それもそうだ。

 

こんな筋肉と戦闘経験の塊を目の前にして、そのままでいられる人は多く無い。

 

「てめえ、金は出してるだろうが!」

 

「も、もう決まったことで……」

 

「誰が決めやがった! ブルネンのクソ爺か? ああんっ!」

 

別に小柄でもないフレッサさんが。胸ぐらを掴まれると、簡単に中空にういてしまう。それもザムエルさんは片手で吊っていて。特に力を入れている様子もない。

 

足をばたばたさせているフレッサさん。

 

このままだと、本当に殺しかねない。

 

あたしは、たまらず割って入っていた。

 

「ザムエルさん!」

 

「あん? お前はライザじゃねえか。 また大きくなりやがったな」

 

げふりと、息を吐くザムエルさん。

 

とんでもなく酒臭い。

 

思わず顔をしかめるあたし。フレッサさんに興味を失ったらしく、ザムエルさんが手を離していた。

 

尻餅着くフレッサさんだが。

 

幸いこの島の人間は、そのくらいでは怪我しない。

 

「ちょっと前もそんな事言ってたじゃない」

 

「そうだったか? ふん、どうでもいい。 それにしても酒を売らないってどういうことだ。 聞かせろ」

 

「あたしに言われても困るよ。 また酒場とかで暴れたんじゃないの?」

 

「イキってる護り手の若造がいたから、軽くしめただけだ。 なーにが俺が将来の護り手のトップだ、だ。 百年早いって現実を見せただけだ。 この島のためだろうが!」

 

声に抑揚がない。

 

ザムエルさんはガタイもガタイなので、吠えると魔物が雄叫びを上げたかのようだ。

 

あたしは一歩も引かない。

 

昔から、ザムエルさんは。多分母さんと父さんの子供があたしだからだと思うけれど。あたしには手を出さなかったし。

 

それにあたしも、ザムエルさんが一線を越えないことは何処かで知っていたと思う。

 

「それは分かるけれど、今は駄目だよ。 今日はもうおうちで眠ったら?」

 

「……ちっ。 どうせ騒ぎになったし、ミオとカールが出てくるか。 分かった分かった、くそ、胸くそわりいな。 島のために散々魔物をぶった切ってやって、それで稼いだ金だってのによ」

 

ずしんずしんとザムエルさんがいく。

 

本当に巨人だなと思った。

 

手持ちの薬を出して、フレッサさんに渡す。フレッサさんは、胸ぐらを掴まれて浮いたときに、怪我でもしている可能性があったからだ。

 

強烈な効果を一度見てから、少しストックしてあるのだ。

 

しかも少しずつ改良もしている。

 

フレッサさんは、案の定何カ所かに傷を受けていたので、薬を塗って効果を見せる。すぐに傷が消えていくのを見て、フレッサさんは驚いていた。

 

「た、助かったよライザ。 生きた心地がしなかった……」

 

「ううん、気にしないで。 それより、本とか何か手に入ったら教えてね」

 

「またタオにあげるのかい?」

 

「タオは今別の事に夢中かな。 あたしがほしい。 小説とかはいらないから、図鑑とか専門書とか、そういうのがほしいかな」

 

いつものお礼と言って、フレッサさんにお薬を渡しておく。

 

ボーデン地区にいる老医エドワードさんが来るので、後は任せる。エドワードさんにも、丁度良いので薬を渡しておいた。

 

どちらにも世話になっているのだ。

 

これくらいは、しないといけない。

 

後はエドワードさんに引き継いで、皆の所に行く。

 

さっきのザムエルさんの様子を見るに、レントが心配だ。また殴られていないといいけど。

 

そう、あたしは思って急ぐ。

 

待ち合わせの場所は、旧市街の一角だ。

 

クラウディアが最初に来ていた。ちょっと遅れてタオが合流し、レントも来る。レントは案の定、顔に痣を作っていた。

 

「ちょっとレントくん!」

 

「レント、これ使って」

 

「おう、すまねえ。 あの酒乱親父……」

 

「とうとう出禁が出たらしいね。 あの暴れっぷりじゃ無理もないよ」

 

タオが騒ぎを知っていた。

 

なんでも、護り手の若手の一人。まああたしもしっている、ちょっと自信過剰な奴がいて。

 

そいつが酒場で給仕をしている娘さんをかなり強引に口説いて、将来アガーテ姉さんを超えて俺が護り手のトップになるとかほざいていたらしいのだ。

 

まあそれについてはあたしも頭に来るが。

 

ザムエルさんは、ひよこがキンキン騒いでいて五月蠅かったのだろう。

 

そのまま無言で掴んで片手で店の外に引っ張り出すと、数回ぶん殴ったそうである。

 

酒が入っていても手加減はした様子だったらしいが。

 

それでもアホは一発で気絶。残り数発は余計だった。

 

その後何事もなかったかのようにザムエルさんは酒を飲み干して、代金を置いて帰っていったそうだ。

 

話だけ聞くと、別にザムエルさんは悪くないようにも思えるが。

 

暴れたのは事実で。

 

護り手の一人が、完全にノックアウトされたのも事実である。

 

そして、これに限らずザムエルさんはやり口が荒っぽい。荒っぽすぎる。だから、もう誰もが怖がっているのだ。

 

「もう少しで、ライザの家に急使が行く所だったよ」

 

「それは災難だったね」

 

「うちのバカ親父がすまん」

 

「いいんだよ」

 

タオも、いきなりの騒ぎで流石に読書どころではなくなったそうである。

 

まあ、それもそうか。

 

クラウディアは、心配そうに目を伏せた。

 

「平和なだけでは無いのねこの島も。 私が住んでいる、今借りているおうちでも問題が起きているの」

 

「何かあったの?」

 

「地下室で浸水が起きていて。 幸い水は大量には出ていなくて、水位は安定しているし、使っていない部屋だから実害はないのだけれども。 今後の事を考えると、対策が必要だわ」

 

一つ問題が解決したら。

 

また一つ問題が起きる、か。

 

ただ、これは好機かも知れないとあたしは思う。

 

クラウディアの家の問題を解決すれば、ルベルトさん、それにバレンツ商会が錬金術を認めてくれるかも知れない。

 

錬金術のすごさはあたしはしっているが。

 

島の皆はそうではないのだ。

 

これで、少しでも多くの人を救えたら。

 

あたしはそう思う。

 

「傷はどう、レント」

 

「おう、すっかり大丈夫だ」

 

「信じられないくらい頑丈だね。 あのザムエルさんに殴られたんだよ」

 

「もしも家にいられなくなったら言ってね。 レントくんの腕前だったら、うちで用心棒として雇ってもいいから」

 

クラウディアが助け船を出してくれる。

 

レントは苦笑いして、ありがとなとだけ言った。

 

まあクラウディアの事だ。本気で善意で言っているのだろうが。

 

レントとしては、貸し借りはこんな事で作りたくは無いのだろう。

 

それに、だ。

 

あたしが見る所、ザムエルさんは極悪人ではない。

 

もしも本気でどうしようもない極悪人だったら、とっくに人を殺しているだろうし。今まで散々起きた騒ぎで、再起不能になる人間を何人も出している筈だ。

 

そういった人間を出していないし。

 

手加減だって心得ている。

 

酒に溺れた人間としては考えられない。

 

勿論衰えている事もあるのだろうけれども。

 

それでも、ザムエルさんは最後の一線を越えないように、ちゃんと振る舞っていると言う事である。

 

だから、あたしもザムエルさんを嫌いになりきれない。

 

お父さんとお母さんも、ザムエルさんの事を困った人だと言いながらも、ちゃんと世話をしている。

 

その辺りの理由は、何となく分かるのだった。

 

とにかく、そろそろ時間だ。

 

進捗を皆で確認した後、一旦解散。

 

クラウディアはこれから訓練だ。矢の具現化に成功したのだから、今後は更に実践的な訓練をしていくことになる。

 

あたし達は、これよりいよいよ試験である。

 

ささっと、うちの裏手にある入り江に移動。其処から、前に確保した小舟でエリプス湖を渡り、まずは例の広間に移動する。森の中だが。はっきりいって対岸の石柱に船を固定するよりも、ずっと見つかりづらい筈である。

 

レントが、船を漕ぐ。

 

顔とかに傷はついていたが、骨とか筋肉にダメージはないらしい。本人は怒るだろうが、流石はあのザムエルさんの息子という所だ。

 

普通だったらとっくに天国である。

 

「まずは森を抜けて、対岸に。 その後は、洞窟に行く感じだね」

 

「そうだな。 護り手達はどうしているんだ?」

 

「今日はなんでも、街道の方で大規模な掃討作戦をするんだって。 リラさんは様子を見て離脱して、試験を影から見守ってくれるそうだよ」

 

「そうか。 相変わらず顔が広いな」

 

あたしは別に顔が広いつもりはないのだけれども。

 

いや、顔は広いのか。

 

島でも有名な悪ガキ。

 

それに、護り手の次期リーダーになる事を期待もされてる。

 

そう考えると、それなりに知られている訳で。

 

ちょっと複雑だ。

 

なお、今日に備えて、レントとタオにも靴を作ってきた。二人とも、満足そうにはきこなしている。

 

踏み込みの時とかにパワーを更に上げられるはずだ。

 

レントは大剣を使うから、言うまでもなく踏み込みは大事だし。

 

タオだって、ハンマーで一撃必殺を狙うときには、どうしても踏み込まなければいけなくなる。

 

普段の靴だと、どうしても頼りないから。

 

この辺りは、二人のためになる。

 

問題があったら調整するから言って欲しい。

 

そう告げてあるが、二人とも靴については気に入っているようだ。毛皮をしっかり使っているから、金属靴でも足が痛くなるようなこともないだろうし。

 

何よりあたしが岩を蹴り砕いても壊れなかった程だ。

 

頑丈さは折り紙付き。多分、一生使える筈である。

 

対岸に到着。

 

例の広間に出るが、やっぱり空気がぴりついている。

 

タオはそれだけですくみ上がるが。

 

あたしは、二人を鼓舞するように言う。

 

「さ、船を固定した後、対岸に急いで出るよ。 護り手の人達が戻ってくるまで、多分そんなに時間もないし」

 

「分かってるよもう……」

 

「よし、船固定完了だ」

 

「じゃ、行こう。 しゅっぱあつ!」

 

あたしがわくわくが篭もった声を上げるが。

 

二人とも、緊張の方がそれに勝るようだった。

 

だけれども、これが久々の冒険だと思うと、あたしは心が躍るし。対岸を抜け、危険だとされる洞窟に辿りついた頃には。

 

レントだけではない。

 

タオも、緊張がある程度、抜けていたようだった。

 

さて、此処からだ。

 

護り手は確かにいない。レントが先に入って、内部を確認する。そして、すぐに手招きして来た。

 

頷くと、レントに続く。

 

前衛はレントに任せる。

 

あたしはフラムを含めて、もらった参考書に書かれている使えそうな道具はもってきている。

 

荷車に積んで持ってきたそれらの道具と一緒に。

 

洞窟へ、三人で入り込んでいた。

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