暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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いよいよ洞窟への潜入作戦です。

実戦経験はあるライザ達ですが、それはあくまで護り手としてアガーテ姉さんの支援を受けながらの話。まだまだ独立戦闘単位として魔物と交戦し慣れているわけではありません。

そのためリラさんの出した課題には、全員が気合いを入れて臨むのでした。


3、激戦石人形

ひんやりとしめった空気。

 

この洞窟については、あたしも知っている。

 

入った事はないが、危険だと。

 

この湿気。

 

危険であると、肌に告げてきている。

 

あたしは、即座に警戒度を一段階上げていた。確かにこれは、護り手で中に入るのを禁じる訳だ。

 

いきなりエレメンタルが姿を見せる。

 

あたしだけじゃない。レントもタオも、即座に動いていた。

 

リラさんに実践的な訓練を受けていたのだ。後はそれを、実戦で試して昇華していくだけである。

 

レントが斬り付け、タオがハンマーを叩き込む。

 

表情がない人に似ただけのエレメンタルが、体を捻って反撃しようとするが、顔面に連続して七発の熱の槍が炸裂。

 

爆破、消滅せしめていた。

 

すぐにハンドサインをして、周囲を警戒。

 

洞窟の中はそれなりに広く。またいわゆるヒカリゴケのようなものが群生しているようである。

 

灯りについては問題ない。

 

問題なのは、それに照らされて、数体のエレメンタルがうごめいている事だろうか。

 

どこにでもいるな、あいつら。

 

そう思って、あたしは苛立つが。

 

すぐに心を落ち着かせる。

 

これでも実戦経験者だ。

 

あの時、死にかけてから。ただ遊んでいるだけでは駄目だと思った。

 

護り手に混じって実戦も経験した。護衛に守られた末だったけれど、詠唱をフルで行って、全力で魔術を魔物の群れにぶっ放したこともある。

 

それで泉が出来てしまったっけ。

 

ともかく今は、奧へ進む事だ。可能な限り静かに敵に接近。

 

背後から、レントがエレメンタルの頭を唐竹にたたき割る。それでも動くのだから、エレメンタルはヒトの形をしているだけの何か別のものだ。

 

ただ、レントの剣は絶好調。

 

前の壊れかけのお古と違って、バッタバッタと魔物を切り伏せる。

 

遠くから、無数の視線を感じる。

 

獣のものだ。

 

おこぼれに預かりたい。

 

そう考えているのだろう。

 

別に悪辣なわけでもなければ、卑しいわけでもない。

 

ただ動物で。

 

生きるのに必死なだけだ。

 

だからあたしは、別に不愉快だとは感じなかった。

 

クリア。

 

ハンドサインを出すと、周囲を警戒しつつ奧に。

 

珍しい植物や鉱石があるので、全て回収していく。びりびりと来るイナヅマ鉱というのもある。

 

これはありがたい。

 

これが材料になる爆弾もある。プラジグというのだが。材料がなくて困っていたのだ。

 

また、冷気を帯びたアクア鉱もあるので。

 

これで更に爆弾のバリエーションを増やせる。

 

ノータイムで、どんな詠唱無しの魔術よりも火力を出せる上。魔力に依存しないこれらの爆弾は戦闘で切り札になりうる。

 

魔物も、人間が詠唱しなければ大きめの魔術を使えないことを知っているから、全力で詠唱している人間をつぶしに来るし。

 

逆に言えば、詠唱していなければ大した火力は出せないと侮ってもいる。

 

何百年も掛けてそういった経験値を蓄積してきた魔物の、隙を逆に突けるのだ。

 

これはとても大きなアドバンテージだと言える。

 

更に数体のエレメンタルを屠りながら、奧に。

 

少し地面から浮いているエレメンタルは、こういった場所でも植物を増やそうとしている雰囲気がある。

 

それだけなら敵対する理由は無いのに。

 

殺しに来るから、敵対しないといけない。

 

なんとも、もの悲しいことだった。

 

魔術を使うエレメンタルも珍しくは無い。だったら、言葉を話せるエレメンタルがいてもおかしくない筈なのに。

 

そういうのには、アンペルさんやリラさんも、あった事がないそうだ。

 

ハンドサイン。

 

展開、周囲警戒の指示だ。

 

あたしは急いで、鉱石を中心に、荷車に詰め込む。レントがハンドサインを出してくる。大物だ。

 

奥の方は水が溜まっている。

 

出来るだけ行きたくない場所だが、そこに何かいる。

 

ヒトの形をしているが、エレメンタルじゃない。

 

あれは、なんだ。

 

「ま、ま、まずいよ! あれはご、ゴーレムだ!」

 

タオがふるえながら言う。

 

ゴーレム。

 

聞いた事がある。岩で出来た自動殺戮を行う魔物。たまに可愛らしい人形みたいな姿をしているが、基本的に岩や鉱石で出来ている事もある。殴られたら、骨折程度ではすまない相手だ。

 

生態はよく分かっていなくて、何を食べているのか、何のために人間に襲いかかってくるのか、そもそも生物かも分からない。

 

だが搦め手無しで人間を殺傷できるという定義からすれば、間違いなく魔物。それも、かなり危険度が高い相手になる。

 

岩で出来ているから、呼吸も何も関係無いのだろう。水の中で、ずっとじっとしていたと言う訳か。

 

島の近くには出ないと聞いていたのに。

 

ゆっくり動き始めるゴーレム。

 

今までは「ヒトの形」くらいに見えていたが。ずんぐりむっくりではあるが、確実に手足を備えて、此方に向かってきているのが見えた。

 

大きいものは人間の何倍もあると聞くけれども。

 

あれは、人間大程度のサイズしかない。

 

それでも、まともに拳が直撃すれば、それで骨が砕ける事になる。タオが、ハンドサインを出してくる。

 

撤退すべきだと。

 

だが、あたしはハンドサインを出す。

 

総攻撃開始。

 

洞窟の奧は、それほど広くもない。今までエレメンタルを仕留めてきた事もある。背後から奇襲を受ける可能性も低い。

 

何よりだ。

 

あいつを洞窟から出したら、護り手が対処する事になる。あれを相手にしたら、絶対に死人が出る。

 

此処で、倒すしか無い。

 

レントも頷く。タオは腰が引けていたが、それでも頷いていた。

 

あたしはフラムを、問答無用で投擲。

 

洞窟の崩落は今は気にしない。

 

彼奴を倒す事が、最優先だ。

 

投擲されたフラムが、炸裂。既に今までに、実験で何個かは試してみる。ばっちり直撃。

 

だが、赤熱しつつも、ゴーレムは此方に来る。

 

あたしは攻撃を頼みながら、まずは上空から、熱線をゴーレムに叩き付ける。以前の倍近い火力だが、水に濡れていることもある。それに、痛みも感じないのだろう。

 

ゴーレムは気にせず迫ってきていた。

 

雄叫びを上げて、レントが左から襲いかかる。

 

ゴーレムが上半身を旋回させた。文字通り、体の上半身がぐるんぐるんと回ったのである。

 

生物の動きじゃあない。

 

直前で踏みとどまったレントが必死に回避するが、もし直撃を貰ったらどうなっていたか。

 

ゴーレムの拳が伸びて。周囲を抉り始める。

 

殺戮回転独楽と化したゴーレム。

 

どうやってとめるか。

 

熱の槍も叩き込んでやるが、これはまずい。荷車を確認。フラム数個を、まとめて叩き込むしかない。

 

タオが走って、ゴーレムの後ろに回り込む。それを見て、ゴーレムがタオに視線を向けるが、好機。

 

そのままフラムを投げ込み。

 

接触と同時に爆破。

 

ゴーレムが、灼熱に晒され、動きが明らかに鈍る。

 

熱かろうが痛かろうが止まらないとしても。

 

体の構造が壊されたらどうだ。

 

動きが鈍った瞬間、関節部にレントが一撃を叩き込み、ゴーレムの回転が止まる。そこに、タオが横殴りに、フルスイングのハンマーの一撃を入れていた。

 

タオの速度が、以前とは比較にならない程上がっている。

 

靴の性能によるものだ。

 

それゆえ、質量兵器としてのハンマーも威力が上がり、ゴーレムの頭部を文字通り拉げさせる。

 

突貫するあたし。

 

意図を読んで、レントとタオがあわてて離れる。

 

島を脅かす悪の自動殺戮人形。

 

生物ですらなく、ただ殺す事だけを行う自然の破壊者。

 

滅ぶべし。

 

そのままあたしは、雄叫びを上げつつ、フルパワーでの蹴りを叩き込む。一瞬遅れて、ゴーレムが回転しようとしたが。

 

あたしが踏み込んで、その土手っ腹に蹴りを叩き込む方が早かった。

 

全てが静止した直後。

 

ゴーレムの全身に亀裂が入り。

 

そして、全身から衝撃波が噴き出した。

 

飛び離れるあたしに対して、ゴーレムが感情の全く見えない、ただついているだけの目を向ける。

 

それが、今までただ動いていただけの殺戮人形が。

 

怒りと殺意を向けてきたように、あたしには思えた。

 

ぼろぼろにくだけたゴーレムだが、まだ滅びていない。

 

レントが再び斬りかかる。タオがハンマーを叩き込む。

 

ゴーレムの頭がレントの一撃で半壊。

 

左腕が、タオのハンマーで砕け落ちるが。

 

右腕だけを振るって、レントとタオをまとめて吹き飛ばすゴーレム。ただ速度が乗っていない。

 

もう体が崩壊し掛かっているのだ。

 

ゴーレムがあたしを探している。

 

だが、あたしは大きく移動していた。

 

ゴーレムの上空に、跳躍していたのだ。

 

洞窟の天井を蹴ると、全力の踵落としを叩き込む。

 

地面に、亀裂が走る。

 

脆くなっていたゴーレムの上半身が、瞬時に粉砕されていた。すごいな。二発もあたしの全力の蹴りを耐えた。

 

許してはおけない相手だけれども。

 

あたしは、その堅牢性に、素直に感心していた。

 

「とどめ!」

 

「畜生、いてえがしかたねえ!」

 

「もう自棄だ! やってやる!」

 

飛び離れるあたし。

 

足がちょっと痺れる。全力での蹴りを二発も短時間で叩き込んだのだから、まあ仕方が無い。

 

というか切り札を連続で二回も切らされたのは初めてだ。

 

下半身だけになっても、まだ動いているゴーレムに、レントとタオが渾身の一撃を叩き込んで。

 

今度こそ打ち砕く。

 

ゴーレムが、砕けて。

 

そして、まだぴくぴくと破片が動いていたが。あたしが、その中にあった赤い球体を取りあげると。

 

全ての動きが止まっていた。

 

とんでもない魔力を感じる。これは、錬金術で使えるかも知れない。それに、放ってはおけない。

 

これがゴーレムの心臓みたいなものの可能性は高く。

 

放置したら、またゴーレムが復活する可能性だって高かった。

 

それに、だ。

 

壊れたゴーレムの中から、コベリナイトも見つかる。

 

間違いない。

 

手帳にある特徴通りだ。

 

レントが急かす。

 

「護り手が戻ってくる可能性がある。 もう少し急いだ方が良いぞ」

 

「分かった。 荷車に、ゴーレムの残骸を出来るだけ積み込んで。 明らかに石しかない部分はいらない」

 

「おいおい、本気かよ……」

 

「これとか宝石みたいかも」

 

タオが、意外に率先して動く。

 

確かにきらきらしているが、これはなんだ。とにかく、専門家……アンペルさんに見せた方が良いだろう。

 

すぐに荷車に、周囲のものを採取して詰め込み。そしてこの場を後にする。

 

潮は安定したようで、水位は変わっていない。

 

あまり奥深くは無い洞窟だが。あのゴーレムが危険だったのは確かだ。それに、あたしの力不足も思い知らされた。

 

世の中には強い魔物が幾らでもいる。

 

分かっているつもりだったのに。

 

こんな島のすぐ至近に、それがいるとは思えなかったのかも知れない。

 

駄目だな。もっと経験を積まないと。

 

そう思いながら、あたしは皆を急かして。洞窟を出る。

 

外で、派手な戦闘音が聞こえる。街道の近くで、アガーテ姉さんが率いる護り手が、魔物を駆逐しているのだ。

 

この派手な戦闘音は、アンペルさんの魔術かも知れない。

 

あの人は、錬金術は厳しいが、戦闘に用いる魔術については問題ないと言う話である。だとすれば、あたし以上の大火力で魔物を薙ぎ払っていることだろう。

 

いずれにしても、護り手に見つかる訳にはいかない。

 

途中、リラさんの介入はなかった。

 

ということは、後は持ち帰った中に、コベリナイトがあれば最初の関門は突破とみて良いだろう。

 

ただ課題は多い。

 

あたしも、それは嫌になる程、自覚せざるを得なかった。

 

 

 

船に荷車を積んで、クーケン島に戻る。

 

凱旋とはいかない。

 

レントもタオも負傷している。薬は提供して傷は治したが、服まではどうにもならない。完勝とまではいかなかった。

 

ただ。そもそも服がぼろぼろになるまで冒険するのはいつものことだ。

 

それに関しては、いつもの悪ガキ軍団と言う事で。

 

ある程度誤魔化せるのも事実だった。

 

クーケン島で、まずは分別を行う。

 

あたしはハンマーも用意してきている。ただし、このハンマーは小さなもので、大岩を砕くほどのパワーは無い。

 

いずれ、錬金術で専門のハンマーを作りたい。

 

そうすれば、できる事も拡がるはずだ。

 

ハンマーを振るって、鉱石を割りつつ、中身を確認していく。

 

ただの石の場合も廃棄はしない。石でも使い路はなんとあるのだ。

 

虫が出てくる事もある。ひっとタオがいうが、それはそれでストックしておく。釣りの餌にでもするか、或いは食べるか。

 

食べられる虫はいるにはいる。

 

あたしは積極的に食べたいとは思わないが、外で捕まえた虫をクーケン島で放すのは最悪の行動だ。

 

だから、それはやらない。

 

いずれにしても、責任を持って始末する。

 

他にも、石を確認。

 

植物も。

 

恐らくは、コベリナイトだと思われるものを確認して。それを持ち帰る事にする。後は、虫は相応に処分して。

 

残りは、現在倉庫にしている家の離れにしまった。

 

これも、そろそろまずい。

 

屋根裏には床が抜ける可能性があるから持ち込めない。

 

今考えている野望を、どうにか実現に移したいけれども。アンペルさんに許可は貰いたい。

 

あたしはまだまだひよっこも良いところだと言う事がわかった。島での未来を期待されているなんてこんなものだ。

 

外には恐ろしい脅威がなんぼでもいる。

 

よく分かった。それを思い知らせることが恐らく今回の試験の主旨だったのだ。

 

ともかく、旧市街に出向く。

 

あまり、試験に受かった気はしなかった。

 

 

 

一旦クラウディアにあって、進捗の話をする。

 

洞窟の中にて激戦をした事。かなり危なかった事を話す。クラウディアも、今後冒険を一緒にするとしたら、そういう経験をする可能性があるからだ。

 

「ゴーレム……恐ろしい魔物よね」

 

「やっぱり余所でもいるんだね」

 

「街道とかにはあまり出てこないの。 でも僻地の街や集落に行くときには、どうしても遭遇する事があって」

 

前に遭遇した時は、護衛に雇った傭兵が、悲惨な死に方をしたのだという。

 

さもありなん。あの強さだ。

 

しかも、一体だけで。しかも水の中から現れたから良かった。水の中にいたこともあって、体は軟化していた筈だ。少なくとも蹴り砕いた時の印象では、鉱物でガチガチに固めた手応え……足応えではなかった。

 

もしもあれがそうではなくて。複数とか出現した場合。アガーテ姉さんやザムエルさんがいても。勝てるとは思えなかった。

 

強くならないといけない。勿論それで人間性を捨てたら意味がないとも思う。人間性を捨てる選択肢を選ぶ人もいるだろうけれども。ライザはそうなりたくはなかった。

 

「クラウディアはどう?」

 

「とまっている時は的に当てられるわ。 でも動くと途端に難しいの。 まずはリラさんに教わった通り、普通の木ぎれと……」

 

誰かに見られるとまずいので、メイドにも話せないそうだ。

 

あのメイドさん、クラウディアとは幼い頃からのつきあいらしく、メイドとして正式にバレンツ商会に来る前も、見習いとしてちょくちょく来ていたらしい。同じような顔の先代から引き継ぎを受けて、最近赴任してきたとか。

 

まあ、正直な話クラウディアも昔なじみとは言え、何かあったらルベルトさんに全て話が行く相手だ。

 

今回は協力を頼めないのだろう。

 

性のデリケートな話とか、仲間であっても話せない事は幾らでもある。

 

クラウディアがあのメイドさんを信用していない訳ではないと思うのだが。色々と面倒な話である。

 

話をしていると、リラさんとアンペルさんが帰還したようだ。

 

借家に行くと、難しい顔で二人とも話していた。入って良いぞと言われたので、そのまま四人で入る。

 

何か厳しい事があったのは確実だった。

 

「どうしたんですか?」

 

「ああ、ちょっと厄介な事になっている。 お前達にも近々話しておくが、かなり危険な魔物が出る可能性が高い」

 

「なんだって!」

 

腕試しだとか言い出しそうなレントでも、如何に危険な事態かは分かったのだろう。

 

この二人が危険だと言う程の魔物だ。

 

それこそ、街一つ崩壊させるのは簡単な存在だろう。

 

「最悪お前達にも協力を頼むかも知れない。 我々でも対処できるかは分からない程の相手だ」

 

「どんな魔物なんですか?」

 

「詳しくは言えない。 ただ灰色の装甲と、生物急所を貫いても死なない堅牢性を持ち、それに宝石のような構造体が体に着いている見かけをしている。 魔術も効き目が極めて薄い。 これを見たら、基本的に戦わず、絶対に逃げろ」

 

「分かりました……」

 

ゴーレムの一種だろうか。

 

だが、だとしたらそんなもの程度にこの二人が臆するとも思えない。

 

確かに強力な個体はいるかも知れないが、動きが鈍い魔物だ。海を渡ってクーケン島に危険を及ぼすことはないだろうし。

 

そもそも、何かしらの指向性を持って行動する魔物とも思えなかった。

 

リラさんが此方に向き直る。

 

「それで、洞窟でコベリナイトだかは見つけたか」

 

「はい、見つけて来ました。 これで大丈夫だと思います」

 

「アンペル」

 

「確認する」

 

アンペルさんが、あたしの手からコベリナイトの鉱石らしいものを受け取る。しばらく確認後、目を細めていた。

 

どうやら、試験は合格らしい。

 

だが、合格した気がしなかったのも事実だった。

 

「鉱石の中に微量に含まれているだけだったのだが、これはどうやって入手した?」

 

「ゴーレムの中にありました」

 

「そういうことか。 ゴーレムが配置されていても確かに不思議ではないな。 リラ、どう見る」

 

「配置されていたことはどうでもいい。 起動していたことが問題ではないのか?」

 

分からない話をリラさんとアンペルさんが始める。

 

どっちも専門家らしいし、口は挟まないで置く。

 

少しの間、短い専門用語が会話でかわされていた。

 

彼奴ら、という言葉に。二人の強い憎悪が篭もるのが聞こえた。

 

それが件の魔物なのだろうか。

 

だとすると、本当に危険な存在なのか。

 

「いずれにしても、コベリナイトを取得したのは間違いない。 私としては合格だ。 リラ、君はどう考える」

 

「戦闘の経緯を見たが、全員概ね合格点だ。 ハンドサインで即座に動きを決定し、それぞれがするべき動きをしている。 まだ荒削りだが、もう生半可な戦士より強いとみて良いだろう」

 

「それは合格という意味か」

 

「ああ。 この島の護り手だかいう者達よりも既に格上だ。 それは私が認める」

 

リラさんも、認めてくれたか。

 

ただし、あたしの不安をリラさんは見抜いていたようだった。

 

「ライザ、お前の判断の甘さを悔いているのか」

 

「えっと、分かります? ちょっとまだ経験が足りないなって思って、それで」

 

「経験が足りないのは当たり前だ。 もっと頻繁に戦闘を経験していたのなら、ましな手を打てただろう。 今の時点のお前達なら、これだけ動ければ上出来だ。 後は勝てる相手と勝てない相手を見極めろ。 それで充分だ」

 

厳しい言葉だが、胸に刺さる。

 

確かに、勝てない相手には相応の戦い方がある筈だ。

 

仮にそれが絶対に許せない存在で。

 

逃がしてはいけない。逃げてはいけない相手でも。

 

優先するべきものは何か。

 

常に考えなければならない。

 

いずれにしても、この時点ではこれで充分だと、リラさんは言ってくれたと言う事である。

 

あたしは頷いて、言葉を素直に受け取ることにした。

 

「ライザ、これを渡しておく」

 

アンペルさんが、もう少し難しい本をくれる。調合の更に詳しい話が書き込まれていると言う事だ。

 

これほどの人が認めてくれた。

 

それは、とても嬉しい事だ。頷いて。本を受け取る。

 

後は。少しずつ。

 

なんてことないあたしから。

 

もう少し先に行けるあたしに、少しずつ変わっていかなければならなかった。

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