暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、それぞれの野望

一度、クラウディアの家に戻る。

 

そこで、四人で話すことにした。メイドさんはお茶とお菓子を置いて、すぐに消える。クラウディアに気を遣っているというよりも、単純にメイドとしての行動をしているようにあたしには見えた。ルベルトさんは忙しいのだろう。ここ数日は、街の人達と話している事はあっても、この家で見かける事はほとんどない。

 

狭い島だ。誰が何をしているとか、そういった話はすぐに伝わる。

 

それはあたしたちの事も例外では無い。

 

既にクラウディアがあたし達と懇意にしている事は、島の全員が知っているとみるべきだった。

 

軽く話をする。

 

「進捗を確認しよう」

 

まずあたしから。

 

今回コベリナイトを入手してきたことで、恐らくその上の段階のインゴットであるブロンズアイゼンを作る事が出来る。

 

それだけではない。

 

今ちらりと見て来たが、貰った参考書。

 

かなり凄い。

 

あたしは手応えを掴んでから、タオほどでは無いけれども錬金術について色々試してきたけれども。

 

それの答え合わせをするような話がたくさんならんでいた。

 

あたしの次の目的。

 

アトリエ、そのものを作る事だ。

 

「アトリエを作るって、今のアトリエでは駄目なの?」

 

「まず第一に、お母さんとお父さんが問題。 知らずに入って事故とか起きたら、大変でしょ」

 

「確かにそうね。 まだ錬金術というものが、あまり知られていないのも悲しいけれども事実だわ」

 

クラウディアに、まずはそれを説明しておく。

 

実はクラウディアは、お父さんとお母さんの事をかなり好感を抱いたようなのである。ルベルトさんにつれられて、お父さんが作った畑を見に行き。王都に出回っているのとは別次元の品質にあるクーケンフルーツを直に食べたから、だろう。

 

行商ということもあって、現地に足を運んで回っている事は大きい。

 

それに、最近知ったのだが、クラウディアは虫をまったく苦にしていない。

 

島暮らしのタオですら、虫は苦手で時々悲鳴を上げているのに。

 

クラウディアは小型の徘徊性の蜘蛛がでた時、ひょいと摘んで外に逃がしていた。力のいれ方も心得ているようで、蜘蛛も抵抗しないで身を任せていた。

 

他の虫も平気なようだ。

 

虫を食べる地方もあるが、そういった料理も食べた事があるらしい。いかにも過ぎる深窓のお嬢様な容姿からは、信じられない話ではあるが。まあ、彼方此方出歩いているなら不思議ではないだろう。

 

要するにクラウディアはかなりフィールドワーク派である。

 

ルベルトさんが期待しているのも、何となく分かる。多分だが、次代のバレンツ商会のトップは間違いなくクラウディアさん。旦那さんが出来るとしても、完全に入り婿だろう。

 

「ライザは相変わらず考える事が凄いな」

 

「ふふ、まずは確実にね。 次はレント、どう進捗は」

 

「そうだな。 まずは俺にその新しいインゴットでの装備をくれるか。 今回ので、もっと盾として頑丈じゃないと駄目だと思った。 こんなんじゃあ、あの塔に行くなんて夢のまた夢だ」

 

「おっけい。 ただブロンズアイゼンはまだ作っていないから、それを作ってからの話になるよ」

 

問題ないとレントは言う。

 

いわゆるタンクとしての仕事を、更に極めたいと言うことか。

 

そういえば。このタンクという言葉。

 

語源がよく分からないと聞いた。

 

王都でも普通に使われている言葉らしいのだが。アガーテ姉さんも語源については知らないらしい。

 

まあ、それはいいか。

 

続いてタオだ。

 

「タオ、状況は?」

 

「ええとね、僕はアンペルさんと話して、ある程度分かってきた事があるから、それをまとめておきたいかな。 ちょっと短期目標にしても、時間が掛かると思う」

 

「なるほど。 戦闘面は問題無さそうだし……それでいいのかな」

 

タオはどうしても学者肌だから、時間が色々掛かる。

 

今でも成長が早すぎるくらいだと、アンペルさんが時々嬉しそうに言っている。

 

今まで、どうしても解読の手口すらなかった書物が、どんどん読めているのである。それは色々と、気合いが入るのも納得だ。

 

タオは戦士として見るとどうしても力不足だが。

 

ただし判断力はある。

 

時々敵の攻撃を見て割り込んだり、相手の隙を突いたりと、ここぞではちゃんと動けている。

 

普段腰が引けていること何て、問題にもならない。

 

前に護り手と魔物狩りにでた時に、タオがボオスより全然動けていたのをあたしは知っている。

 

タオはあらゆる意味で、本番に強いタイプだ。

 

後は本に没頭しているときに、引き戻す事を意識すれば良いだろう。

 

「分かった。 タオはその辺で大丈夫だね。 クラウディアは?」

 

「私は、とにかく動いている的に当てる事ね。 今走りながら止まっている的に当てる訓練をしているの。 その後、走りながら動いている的に当てる訓練に移行したいわ」

 

「止まっている的に、止まっている状態から当てるだけで結構凄い事だから、それは覚えておいてクラウディア。 あんまり無理しすぎないで」

 

「大丈夫よライザ。 今までの惰眠を、一気に取り戻している気分。 それと……もう一つあるんだけれど。 それはね。 アトリエが出来たら」

 

そうか、まあそれも良いだろう。

 

まずは、一つずつだ。

 

メイドさんが、お菓子をはこんできた。

 

今回はクラウディアも忙しかったこともあって、クラウディアの手作りではないが。メイドさんの作る奴も充分以上に美味しい。

 

でも、やっぱり味付けが薄い。

 

この辺りは教育されたものだ。どうしても仕方が無いだろう。

 

「フロディア、もう少し味付けを濃く出来ないかしら」

 

「残念ながら、いい調味料がございません。 商会の商品に手をつけて良いと言うのであれば味付けを濃く出来ますが、それはお嬢様の望むところではございませんでしょう」

 

「そうね……」

 

「大丈夫、気にしていないよ」

 

クラウディアも言っていたっけ。

 

裕福そうに見えるが、それは基本的にそう見せているだけ。

 

商会は見かけから入る商売らしく、スーツをびしっと着こなしているルベルトさんも、普段の食生活はかなり質素だという。

 

テーブルマナーだのを学ぶのは、基本的に貴族などの面倒なマナーを何より重視する相手との商談のため。

 

社交界のマナーについても同様。

 

普段は驚くほど質素に生活しているそうだ。

 

商会の中には、稼ぎを経営層の懐に入れて、好き放題している者達もいるらしいのだけれども。

 

そういった商会は、基本的にすぐ没落するらしい。

 

人が余っている、平和で安定した時代だったらそれでどうにかなるかも知れないのだけれども。

 

「あのさ、クラウディア」

 

「どうしたの?」

 

「蜂蜜とかを利用して、調味料作ろうか?」

 

「そんな、悪いわ」

 

眉をひそめるクラウディア。困り眉が、とても可愛らしい。

 

レントとタオも、責めるような視線を向けてくるが。まあこの嘘のない表情を見ていればそうもなるか。

 

本人は全く自覚していないようだけど。

 

しっかり男を転がしているクラウディアである。

 

「大丈夫。 もしもいい調味料が出来たら、商会で買ってよ。 錬金術で量産出来るような調味料になったら、それを島の特産にするべく動くし、そうなればいずれ此処から離れても、あたしと連絡が取りやすくなるでしょ?」

 

「確かにそうだけれど。 ううん、そうね。 ライザなら出来ると思う」

 

「その時は、試食という事で、その調味料を使ったお菓子よろしくね」

 

「うん、任せて! 頑張る!」

 

とりあえず。こんな所か。

 

ルベルトさんが戻って来た。皆で挨拶する。

 

結構好意的な表情だ。あたし達の評判はもう知っている筈だが。クラウディアが明らかに活気を持って動いている事や。

 

多分笑顔も増えていることに、気付いているのかも知れない。

 

だとしたら、一緒に冒険に行くのは更にハードルが上がるだろうが。

 

それについては、ルベルトさんと膝をつき合わせて話すしかないだろう。

 

「みな、ゆっくりしていってくれ。 クラウディアと仲良くしてくれて助かる」

 

「いえ、丁度話が終わった所です。 レント、タオ、行こう。 クラウディア、また明日ね」

 

「うん。 ごめんね、お父さん。 いずれ近いうちに話す機会が出来ると思うわ」

 

「うむ、分かった。 何かあるようなら、しっかり話を聞かせてくれ。 くれぐれも勝手に動かないようにな」

 

何かあることは分かっているのだろう。

 

それはクラウディアが大まじめに弓矢の訓練なんてしていれば、それは気付くだろうが。

 

クラウディアの家を出ると、ボオスとばったり。

 

いつも以上に、不機嫌そうな表情だった。ランバーもつれている。

 

「護り手が総動員で狩りにでたというのに、随分と脳天気だな貴様ら」

 

「あんたはその狩りで役に立ったのかしら」

 

「俺は後方から指揮をする立場だ」

 

「そう。 その指揮も上手に出来ていないように見えるけれど」

 

毒の篭もった言葉が飛び交う。

 

ばちりと視線の火花が散るが。レントが先に引いた。

 

「行くぞライザ。 相手にしているだけ時間の無駄だ」

 

「ふん、それはこっちの台詞だ。 商談に参加する。 ランバー、ついてこい」

 

「へい、分かりました」

 

商談か。

 

大股で去って行くボオスとランバーを見送る。

 

クラウディアとまだ口約束の段階だが、あたしが独自で商談をバレンツ商会と結べる可能性があると聞いたら、ボオスはどんな顔をするやら。

 

ただ、それについてもまだこれから。やってみないと何ともいえない。

 

エルツ糖という特殊な圧縮砂糖で。

 

これ一つで、できる事が無茶苦茶に増える。

 

ただ。現状使われている、巣ごと潰して取りだす蜂蜜と違って、かなり繊細な作業と、長持ちするように不純物を廃棄する方法も必要になる。

 

触る錬金術は少しずつ高度になって来ている。

 

それに、アトリエを新しく作ると言う野望も手が届く範囲に入ってきた今。

 

確かに、ボオスと小競り合いをしている時間などなかった。

 

「さっきは大見得を切ってたが、本当に大丈夫なのかライザ。 アトリエを作るって、家一軒建てるようなもんだろ」

 

「場所はあの広間にするつもり。 資材については、さっきちらっとみたんだけれども、多分なんとかなる」

 

「ライザも、学者を目指してみたら? 本を読むの、かなり早いし理解力も凄いよ」

 

「いや、あたし興味が無いものしか本読む気になれないから。 ごめん、タオ。 タオはそれこそ、何でも本なら楽しく読めるでしょ」

 

それは偏見だと言った後。

 

そうかも知れないとタオは認める。

 

ともかくだ。

 

ここからも、皆進捗を少しずつこなして行くしかない。

 

あたしは、この錬金術と言う新しく手に入れた力で。

 

このなんてことのない島を少しでも良い方に、暮らしやすく変えるのだ。

 

 

 

(続)




いよいよ動き出すアトリエを作りたい、という意思。

錬金術への興味と、進捗。

皆の拠点の作成が近付きます。
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