暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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さっそく課題開始です。

原作だとルベルトさんがものすごい勢いで圧を掛けてくるので、色々怖いイベントでもありますが。

ライザは臆することなく、課題に淡々と取り組みます。

新しい親友のために。


1、関門への到達

ルベルトさんがいる時間を見計らって、あたしはクラウディアの家に出向く。まあ借りている家だが。

 

それはそれとして、今はクラウディアの家だ。

 

クラウディアに頼まれたのだ。

 

いよいよだから、頼まれて欲しいと。

 

あたしも頷いて、そうだと決めた。

 

タオから借りた建築関連の書物を読んで、まずは家の構造について勉強する事から始めている。

 

この本は、タオの誕生日プレゼントにと、以前レントと魔物狩りで稼いだお駄賃で買ったものなのだが。

 

いずれにしても誕生日プレゼントに買ったものだ。

 

それを無碍にはできなかった。

 

メイドのフロディアさんは、相変わらずの無表情で出迎えてくれる。

 

本当にこの人は何なのかよく分からない。

 

同じような顔の一族がたくさんいるという話なので、ちょっと想像すると怖い。この人達の一族の家に夜にでも出向いたら、恐怖で一生寝られなくなるのではないのだろうかとも感じる。

 

まあ、それはあくまで失礼な想像だ。

 

クラウディアは、いつも満面の笑顔で出迎えてくれる。手の傷を見かねてお薬を渡したのだが。

 

今はそれはそれとして。

 

何か辛そうだった。

 

お菓子が配膳された後、話を聞く。

 

「どうしたの? 訓練の時に指をざっくりとかやっちゃった?」

 

「ううん、そうじゃないの。 リラさんから、痛みがあるくらいで動けなくなったら戦いでは役に立てないって言われて。 いつも痛くなるような腕輪を貰ったの。 痛みを受けて、慣れるようにしているのだけれども、やっぱりちょっとつらいね」

 

「へ、へえ。 クラウディアって凄く真面目だね」

 

「ふふ、ライザたちと冒険に出るため。 ……お父様が来たら、フォローして。 今も心臓がばくばく言っているんだから」

 

頷く。

 

クラウディアは、殺し合いを目の前で見た事があっても。

 

少なくとも自分では経験したことがない。

 

だから、殺したり傷ついたりの訓練は必要だし。

 

タオ以上に心臓が小さいと思うべきだろう。

 

ルベルトさんが来る。

 

最初は機嫌が良さそうだったが。

 

クラウディアが切り出すと、すぐに顔をしかめていた。

 

「冒険に出たい、だと!?」

 

「お父さん。 本気よ。 フロディアから、どうせ私が弓矢や音魔術の訓練をしている事は聞いていたのでしょう」

 

「むっ……」

 

「お願いお父さん。 怪我をするのも自己責任、それに死んだってライザを恨んだりはしないわ」

 

クラウディアの決意は本物のようだが。

 

ルベルトさんは珍しく滅茶苦茶動揺していた。

 

商談の時には、どんなにおべんちゃらを使われようが、それに既に聞いているのだが強烈な地酒を入れようが平然としているようだが。

 

それがこれほど動揺するとは。

 

本当にクラウディアさんの事が大事なんだなと一目で分かる。

 

「ライザ君。 クラウディアをそそのかしたのは君かね」

 

「違います。 クラウディアは、最初から自分の意思で動いていました」

 

「そうか。 それで君は、クラウディアをとめてくれるのかね」

 

「人の意思はその人に属すると思います。 どんな存在だろうと、その人の決めたことをねじ曲げてはいけないと思います」

 

あたしの方に火が飛んできたけど、想定済だ。

 

ルベルトさんは、動揺し困惑しつつも、詰ってくる。

 

「君達の事は既に聞いている。 悪い噂もあるが、それ以上に多くの護り手よりも既に優れた戦士で、多くの魔物退治に実績を上げていて。 最近では、とても出来が良い薬も配っているようだな」

 

「はい、錬金術というものです」

 

「分かった。 君が独自の優れた技術を持ち、快活で明朗な人格を持つ好人物であることは私もクラウディアから聞いているが、それでも正気とは思えん。 君との交流でクラウディアが少しでも明るくなったらと思ったのだが、その交友も見直さなければならないかも知れん」

 

「お父さんっ!」

 

クラウディアががたんと長いすをならしながら立ち上がる。

 

明白に怒っている。

 

「クラウは黙っていなさい!」

 

「いいえ黙っていないわ!」

 

「お前の事が心配なんだ! お前も魔物達が、人間を美味しい肉の詰まった皮袋くらいにしか思っていない事は分かっているだろう! お前がいつもフラフラ出歩く度に、私の寿命が縮まっているのを知らないわけではあるまい!」

 

「それは……理由はいえないけれど。 でも、ライザの事を悪く言うのは、お父さんでも許さないわ!」

 

いきなり親子げんかが始まる。

 

まあ、揉めるのは分かりきっていた。

 

それにしても、感情が高ぶると素が出るのだろうが。ルベルトさんは、クラウディアの事をクラウと呼ぶのか。

 

人前でそう行動するのは、珍しい事なのだろう。

 

メイドさんがいつのまにか影のようにルベルトさんの側にいて、服の袖を引く。

 

なんだと不機嫌そうにいうルベルトさんだが。

 

それはそうと今のメイドさんの動き。

 

歴戦の猛者のものだ。

 

本当にこの人の一族、何者なのだろう。

 

「怒鳴り声が外に漏れています。 商談に悪影響を及ぼしかねません」

 

「あー、おほんおほん。 そ、そうだな……」

 

「ルベルトさん。 私から提案があります」

 

「なんだね」

 

声を抑えるように努力しているようだが、それでも滅茶苦茶苛立っている様子のルベルトさんである。

 

だが、それでもだ。

 

あたしは。引くわけには行かない。

 

クラウディアは新しく出来た仲間である。

 

まだ短い間しか過ごしていないが、間違いなく良い娘だと断言できる。

 

偏見も持っていないし、性根も優しい。

 

こんないい友達は、一生で何人も出来ないと断言して良いだろう。

 

だから、あたしは体を張る。

 

それだけの意味と価値があるからだ。

 

「クラウディアを……娘さんをあたし達が守るだけの力量があると判断したら、同行を認めてくださいますか?」

 

「た、確かに生半可な傭兵より出来るとアガーテさんから聞いてはいる。 だがそれでも……」

 

「それなら、何かしらの試験を出してください。 それで判断してください」

 

「む……うむ……」

 

これについては、決めていた。

 

クラウディアから、ルベルトさんについては既に聞いている。

 

どんなに怒っていても、公正さを忘れないように努めている人だとも。

 

感情を表に出すことは滅多にないが。

 

それでもどんな場合でも筋を通そうとする人だとも。

 

だったら、これが一番だ。

 

一番厄介なのは、変な信仰を持っていたり。或いは感情を最優先で動くようなタイプだったりするのだけれども。

 

この人は、どれだけ怒っていても自分を見失わないように務めている、立派な方の人間だ。

 

だからバレンツ商会はどんどん大きくなっているのだろうし。

 

此処でも、誠実な商売をすることに成功もしている。

 

今回はそれを。

 

逆に利用させて貰うのだ。

 

「分かった。 試験を出す。 内容は三つだ」

 

「はい」

 

三つか。

 

意外だ。もっと多く無理難題を言われるかと思っていたのだけれども。

 

「まず第一に。 ……」

 

相当に焦っているのだろう。

 

これだけ頭の回転が速そうな人が、かなり悩んでいる。三つと言い出したが、多分何も考えていなかったということだ。

 

勢いに任せて三つと言ってしまった訳で、それだけ動揺していたことが分かる。

 

やがて、咳払いしたルベルトさんが、最初の試験について告げた。

 

「実はこの家の地下が浸水していてな。 それを錬金術、というものでどうにかしてほしい」

 

「現場を見せて貰えますか」

 

「いいだろう」

 

タオとレントも連れてくる事も許可を貰う。

 

こうして、最初の試験。

 

クラウディアと一緒に冒険に出るための試験が、始まった。

 

 

 

レントとタオも伴って、クラウディアが借りている旧市街の大きな家。その地下を見に行く。

 

クラウディアから、浸水の話は聞いていたし。

 

そもそもあたし達は、全員旧市街がどこもこんな感じだと言う事は知っている。

 

旧市街は現在進行形でどんどん水没している。特に東の方は半ば湖の中だ。あの辺りは、色々酷い目にあったので、あたしも近付きたくない。

 

なおレントとタオは、既にクラウディア関連の話を共有しているので。

 

来たか、という顔をしていた。

 

まず地下に入り、水の様子を確認する。

 

結構な広いスペースで、水が浴槽のように溜まっている。これ以上水が出てくる様子はない。

 

話通りだ。

 

どう見る、とレントとタオに振ってみる。

 

まずは話を聞く。これが何事でも、もっとも重要な事なのである。

 

「そうだな。 他の家と同じだろこれ」

 

「あたしもそう思う」

 

「水位が上がっていないのは、そもそも地下の水位がこの辺りまで来ているからだと、僕は思うな」

 

タオの意見はより専門的だ。

 

タオの話によると、水位というのは一定を保とうとするものであるらしい。

 

幾つかの高さが違う容器などを接続して水を流してみると分かるらしいのだが。最終的に水は一定の水位に溜まって、容器にくっつけたパイプとか関係無い状況を作り出すそうだ。

 

古い時代の本に、その辺りの説明が書かれていたそうである。

 

流石に色々知ってるなあ。

 

あたしは感心すると、まずは順番に対策を考える。

 

「まず水が入り込んでいる場所を特定する必要があるね。 彼処かな?」

 

「間違いないと思う」

 

レントが先に飛び込む。レントの膝くらい。そうなると。あたしでも溺れる事はないか。

 

昔ほど水に苦手意識はなくなってきているが、それでもやっぱり若干最初に飛び込むのはやりたくはない。

 

やはり、壁の一角に穴が開いているという。

 

あたしも入ってみて確認するが。

 

壁の何カ所から、ぼこぼこと音がしている。

 

なるほどね。

 

これは恐らくだが、壁全体を補修する必要がある。それも水の中で駄目にならない素材で、だ。

 

壁だけではなく、床もそれで補修する必要があるとみて良いだろう。

 

ちょっと調合には手間が掛かるが。家に帰って調べれば、どうにかなりそうだ。

 

水の出元をとめれば、後は水を排除するだけ。

 

これについては。錬金術なんて必要ない。

 

この辺りにも海綿の類はたくさんあるので、それをつかうだけだ。桶でくみ出してもいいだろう。

 

「分かりました。 どうにかしてみます」

 

「本当かね」

 

「何とかなります」

 

ルベルトさんが不安そうにするが。あたしが根拠もなくそう口にする人間ではないと思ったのだろう。

 

溜息をつく。

 

まずは。最初の一つからだ。

 

後の二つは、多分ルベルトさんもまだ考えていない。それならば、出来るだけ速攻で、片付けるべきだった。

 

クラウディアに大丈夫と指で丸を作って。そのままあたしの家に戻る。レントには、桶を用意しておいてくれと頼み。

 

タオには、どれくらいの水があるのか、何回くらいの往復で水を外に出せるか。計算を頼んだ。

 

さて、後は此処からだ。

 

あたしの出番。

 

錬金術の出番だ。

 

 

 

釜にエーテルを満たす。これはすっかり慣れてきた。無言で釜をエーテルで満たした後は、参考書を見ながら、順番に素材を入れて行く。

 

素材は、全て要素ごとに分解する。

 

今回使うのは、接着剤と言う奴だ。

 

膠なんかが、今でも普通に使われているが、そんなものじゃない。錬金術で作れるのは、石と石をくっつけ。

 

片方を持ち上げれば、もう片方もついてくる。

 

それくらい強力な接着剤である。

 

扱いも非常に注意がいるものになってくるが。

 

フラムと同じで、その辺りは魔術を介してつぶしが利くようにもしておく。更には、透明なものとかだと事故になりやすい。

 

敢えて、薄黒い色になるようにしておく。

 

素材は、対岸で取って来た石をまず使う。

 

これを分解していき、順番に固まる要素を混ぜていく。

 

フラムのような殺戮特化の錬金術の産物と違って、とても安全で平和なものだ。あたしとしても、多少気が楽である。

 

少しずつ要素を分別して、そして順番に組み立てて行く。

 

冷や汗が流れてくる。

 

出来る。

 

だが、それでもかなり魔力を吸われる。

 

豊富な体内魔力がなければ、連続しての作業はとてもできないだろう。あたしは、才能依存だと言われた事を、こう言うときに思い出す。

 

才能がない人には、理屈が分かっていても確かにこれはどうにもならない。

 

そう実感せざるをえなかった。

 

まずは固まるための仕組み、完了。

 

色づけ、完了。

 

水に対する抗性。完了。

 

順番に要素を混ぜながら、組み立てて行く。

 

この組み立てもセンスがいるらしいが。それについては、あまり実感が湧かない。そのまま、順番にやっていくだけ。

 

それで出来るのだから、あたしはそれでいいと思っている。

 

ほどなく。完成品がエーテルの中に浮かび上がってきた。

 

それをあたしは、桶に入れて。くみ出していた。

 

エーテルを揮発させる。

 

そして、ハンカチで冷や汗を拭っていた。

 

まずは実験からだ。

 

畑の側溝の一角が、少し水漏れしているとお父さんが嘆いていたっけ。お父さんを呼んで、まずは実験をする。

 

黒いヘドロみたいなのを見て、お父さんはちょっと心配そうにしたが。

 

大丈夫。

 

あたしはまず、水漏れしている一角にそのヘドロみたいなのを塗り。

 

それが、しっかり水の中でも馴染み、柔軟性も高いことに安心していた。

 

材料の一部に、海草なども使っている。

 

水の中で平気な草だ。塩水にも強い。

 

クラウディアの家の中で湧いていた水は、臭いで即座に分かったが塩気がある。真水だと大丈夫だろう接着剤も、すぐに腐食する可能性がある。

 

だったら、塩水への耐性もつける。

 

それだけだ。

 

塗りおえてから、あたしは手に着いている黒いヘドロを綺麗に落とし。そして棒をヘドロの一角に突き刺す。

 

そして、魔力を流していた。

 

瞬時にヘドロが色を失い、透明になる。

 

おおと、お父さんが珍しく声を上げていた。もう一度触る。

 

大丈夫。がっちり固まっている。それでいてガチガチではなくて、ある程度の柔軟性もある。

 

「どう、お父さん。 水漏れは大丈夫?」

 

「ああ、これで水が無駄にならなくて済んだ。 それも錬金術かい?」

 

「うん。 凄いよね、錬金術」

 

「そうだな、今の時点では凄いな。 後は畑の収穫をライザがもっとやってくれるようになる薬とかを作れないかい?」

 

またそれか。分かってはいるが、お父さんはどうしてもあたしを農婦にしたいらしい。

 

この島最高の農夫だから、それは分かるけれど。

 

あたしはもう決めている。

 

農民は、それはそれで立派な仕事だ。

 

だけれども、あたしはもっと大きな事をやる。

 

ただ、それだけだ。

 

「これからクラウディアの家に行ってくる」

 

「確か、水漏れしていると聞いているけれど、それかい?」

 

「そうだよ」

 

田舎ってのは恐ろしい。

 

実はこの水漏れの話、とっくに周知の事実だ。間違ってもあたし達がばらしたのではない。

 

メイドさんもいっていないとなると。田舎の何かしらの謎情報ネットワークで漏れたのだろう。

 

それだけじゃない。

 

ルベルトさんは、滅茶苦茶観察されている。酒を飲んでも云々の話だって、酒を飲んだ翌日には島中の皆が知っていた。

 

この閉鎖的でろくでもない村の仕組みが、いずれ悪い方向に働くのでは無いかとあたしは危惧している。

 

とにかく、今は。

 

少しでも、今後動きやすいように。

 

錬金術での実績を作っていくしかなかった。

 

クラウディアの家に到着。

 

でっかい桶を持ってきたレント。更には海綿も。

 

それと、タオが計算を済ませていた。

 

「水漏れを完全に封じたら、それを二十往復で理論上は水がなくなるよ」

 

「よーし」

 

「そのヘドロみたいなので、本当にいけるのか?」

 

「任せておいて。 実験済だから!」

 

両腕をまくる。

 

心配そうに見ているルベルトさんに、まずは説明。水漏れを防ぐための一種の接着剤であると。

 

この色も、使用後に一瞬で透明になり。

 

ゴム状の弾力があるものへと変わるのだと。

 

「ほ、本当にそんな品があるのかね」

 

「まずは確認してください。 全てはそれからです」

 

「ううむ、にわかには信じがたい。 彼方此方で色々な品を扱ってきたが、そのようなものは魔術の産物でも見た事がない」

 

「いま見せます」

 

あたしは、クラウディアが頷くのに返すと、すぐに地下に。

 

そして、さっきの要領で、壁、床に満遍なく接着剤を塗っていく。まだ水没していない地点にも。

 

そして、水が直接浸水する原因となった箇所は。外れた石材を探しておいて。はめ込みながら、接着剤でとめた。

 

このヘドロみたいな接着剤そのものにもある程度の接着性があるので、時間稼ぎは出来る。

 

後は、固めるだけだ。

 

塗るのをてきぱきと済ませて、そして水を出る。

 

足の裏を確認して、接着剤がついていない事をチェック。もしもついていたら大変である。

 

そして、最後に杖を突いて。

 

魔力を流し込んでいた。

 

薄黒くなった地下の部屋を見て、眉をひそめていたルベルトさんが、驚きの声を上げていた。

 

「おおっ!?」

 

まずは、呼吸を整える。

 

この量の接着剤だと、かなり体力を使うんだな。そうあたしも思った。

 

そのまま、水のくみ出しに。

 

レントが桶に水を入れると、担いで持ち出す。力仕事はレントに任せてしまっていいだろう。

 

そう思ったら、メイドさんも同じように桶で水をくみ出し始める。

 

流石にレントほどではないが、かなりの力持ちだ。

 

本当に何者なんだこのメイドさん。

 

少なくとも、王都で貴族だのなんだのとふんぞり返って実際には身内での陰湿な争いを繰り広げているだけの連中とは、一線を画しているはずだ。

 

水がみるみる減っていく。

 

水漏れは、確実に止まっていた。

 

最初から、捨てる水は近くの側溝と決めている。旧市街の水路は元々塩水混じりで、こういった湧き水を捨てても問題ない。

 

ラーゼン地区だったら、用水路は真水だから大問題になるけれども。

 

此処は特にそういうのは気にしなくていい。

 

汽水湖に浮かんでいるから、真水は貴重。

 

当たり前の話だ。

 

「よっしゃ。 だいたいくみ出したな。 次は海綿だ」

 

「もう用意してあります」

 

「ありがとうございます、ええと……」

 

「メイドのフロディアです。 メイドとでもお呼びください」

 

レントも困惑する謎のハイスペックメイドさん。

 

後は、タオも加わって、淡々と海綿で水を吸い。水を吸った海綿を桶に入れて外に運び出す。

 

それも終わった後は、あたしが熱魔術で水を乾燥させる。

 

なお、熱にも強いように調整しておいたから、大丈夫。それにこの接着剤、千年はもつ。

 

熱魔術で乾かす過程で、蒸気がどうしても出る。

 

大きなうちわを取りだして、メイドさんが蒸気が部屋に入らないように、外に出してくれる。

 

手伝ってくれて助かる。

 

やがてルベルトさんが、手で触れてみて。本当に乾いている上に、適度な柔軟性を得た床を見て。

 

真顔で驚いていた。

 

「驚いた。 色々な固有魔術は見て来たが、これにはとても及ばない。 量産出来るなら、商品にしたいくらいだ」

 

「ちょっと作るに手間が掛かるのと、扱いを間違えると大変ですので……」

 

「ああ、分かっている。 今は商談の時間ではない。 とにかく、最初の試験は合格としよう。 まさかこんなにすぐに、驚天の奇蹟をみせられるとは……。 ライザくん、私は君を過小評価していたようだ」

 

礼をされる。

 

すっかり水の問題が解決したクラウディアの家の様子を、外で人だかりが出来て見守っている。

 

外に出て見ると、一瞬だけ見えた。

 

苛立ちながら帰っていく、ボオスの様子が。

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