暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ 作:dwwyakata@2024
以降はクラウディアと一緒に冒険が行えます。
しかし、良いことばかりではありません。
既にアンペルさんは、その兆候に気付いていました。
アンペルは、タオが持ち帰った文字の写しを見ていた。
古代クリント王国の言葉だ。
専門用語だからタオは読めなかったのだろうが。
アンペルには読むことが出来た。
ライザ達を返した後、リラが聞いてくる。
「アンペル、難しい顔をしているな。 何が書かれている」
「これは結界の一部だな」
「ほう」
「防衛線、防御。 殺せ。 内容はそんなところだ。 その後がかすれてしまっている」
リラが。クラウディアの差し入れである焼き菓子を頬張っていた。
のんきなものだが。
アンペルもさっき貰った焼き菓子を口にしながらである。
説得力は皆無だが。それはそれとして、この焼き菓子はじつにうまい。腕利きのメイドがいるらしいが、そのものが焼いたのだろう。クラウディアによるとみんな同じ顔をした一族の出身で、みんなメイドをしているらしいが、一体何者なのだろう。アンペルにも分からない世の神秘はまだまだあるものだ。
「古代クリント王国の錬金術と魔術を組み合わせた仕組み……自動的なドラゴンへの命令装置とみて間違いない。 恐らく結界の中心点は童歌にある東の城だろうな。 経年と風雨に晒されたか、古代クリント王国崩壊時の大侵攻で破壊されたか……いずれにしても劣化した結界の一部、文字がかすれている部分がドラゴンに誤った行動をさせて、人間への攻撃を促してしまったのだろう。 そして、此処からだ。 本来はそんなもの、起動する理由がない」
「そうなるとやはり出て来ているとみて良いな。 彼奴らが。 分かってはいたことだが」
「ああ。 そういうことだ。 出るぞ。 斥候が出て来ているだろう。 一匹でも多く排除する」
「分かった」
菓子を食べ終えると、即座に出る。
彼奴らの戦闘力は尋常では無い。
前にライザ達に逃げろとだけ告げたが、当然だ。
リラたちの氏族ですら敗れて、壊滅させられたほどの存在だ。
斥候と呼ばれる最下級の個体ですら、その辺りの魔物とは次元違いで、ドラゴンが対処に出てくるレベルである。
古代クリント王国は、彼奴らに対処するために、あらゆるものを利用した。
ドラゴンすらも走狗にした。
古城の竜。
それについては、ライザから聞いたこの辺りの伝承にあった。
恐らくは、古代クリント王国による召喚拠点。
それが東に見えている古城というわけだ。
いずれにしても、今はそれどころじゃあない。
すぐに島を出る。
港で見かける。どうやら島の権力者達が集まってわいわい騒いでいるようだが、どうでもいい。
古老という老人が、唾を飛ばして叫んでいた。
「竜様のお怒りじゃ! 考え無しによそ者を入れるから、このような事になったんじゃ!」
「何が竜様だ! 人を虐げるような守護神など必要ない! 既にドラゴンは魔物と判断し、見つけ次第狩るべきだ!」
古老に対抗して叫んだのはモリッツか。
まあどうでもいいが。
ちょっとだけ気になる。
今までも、調査中に散々保守的な頭の人間には邪魔された。殺され掛けた事だって何度もある。
それを想定して、今のうちに手を打っておく必要があるだろう。
「また悪巧みかアンペル」
「必要な手だ。 頭が凝り固まった老人が、どのような行動を取るかは、今までも見て来ているだろう」
「そうだったな。 牢破りはもう何度したかも覚えていない」
「今回も必要になる可能性がある。 その場合、問題になるのは私達ではない。 ライザ達だ」
最悪の場合。
ライザ達をつれて、この島を逃げ出すことになるだろう。
そう告げると。
リラはそうか、とだけ呟いていた。
リラはこの島を良い場所だとは、一切思っていないようだ。
まあそうだろう。
腐臭を放つ人間関係。
慣習を盲目的に守る事しか考えていない老人達。
人間は思考を放棄しやすい。
当たり前の話だ。
考えない方が楽なのだから。
だから何処でも信仰は存在している。
古代クリント王国の時代にも、信仰は存在していたらしい。もっと古い時代にも、である。
信仰にすがって、思考放棄すれば楽なのだ。
ましてや頭が衰え始めた老人達は、その傾向が強くなって行く。
老人だけじゃない。
若い人間もそうだ。
いずれにしても警戒の必要がある。
時に人間は。
彼奴らよりも更に厄介になる事があるのだから。
(続)
少しずつの進展。同時に明らかになっていく暗雲。
ライザのアトリエシリーズ共通の敵、最悪の侵略性外来生物出現は近付いています。
アンペルさんもリラさんも、それとの戦いの為……彼方此方で結構無理をしています。
ただこの二人は修羅場を潜りすぎて、もうなんとも思っていないようですが。