暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ 作:dwwyakata@2024
既に暗雲は立ちこめていました。
早朝。
船で対岸に渡ったあたしは、まずは街道方面に出る。確かに鼬がかなりの数いる。アトリエの組み立ては、あれを蹴散らしてからだ。
「いるぞ。 本当に多いな」
「おかしいよ。 どこからあんな数来たんだろう。 それに、あいつら、彼処で留まるんじゃなくて、更に東に行こうとしているんじゃないのかな」
タオが言う。
東に行こうとしている。
そういえば、どんどん新しい群れが来ている。
西……禁足地からだ。
どういうことだ。禁足地で何か起きているのだろうか。
それに、である。
傷ついている者、過敏になっている者が目立つ。
此方に数体が気付く。
そして、尻尾を立てて、威嚇してきていた。その声を聞いて、更に鼬が集まってくる。
鼬と言っても、強さは千差万別。
以前アンペルさんが瞬殺した鼬は、当時のあたし達では手も足も出ない強さの奴だったけれど。
今対岸に群れている鼬は、それより一回り弱いくらいだろうか。
「どうする、全部始末するか?」
「そうするしかない。 このままだと、街道を通る人間、全部食い散らかされる! 護り手でどうにもできない分は、あたし達で補う!」
「分かった。 しょうがない、やるよ!」
「援護は任せて!」
鼬が飛びかかってくる。
こっちだって、負けてやるわけにはいかない。ましてや餌になってやるわけには絶対にいかない。
あたしが上空から熱線を降らせる。
魔力が上がっているのだ。
火力も当然上がっている。
悲鳴を上げて立ち往生した鼬の頭を、レントがたたき割る。鮮血をぶちまけて倒れる鼬。
だが次から次に来る。
一体があたしが蹴り砕いた鼬の頭を飛び越えて、後方に出ようとする。
だが、その顔面を。
クラウディアが放った魔力の矢が撃ち抜いていた。
ギャッと鋭い悲鳴を上げた鼬を、上空からタオがハンマーで叩き落とす。地面に落ちたところを、あたしが焼き尽くす。
更に来る。
フラムを投擲。
色々なバージョンのフラムを作った。
あたしも、発破用のを作った時に、色々考えたのだ。
ドラゴンにまるで通用しなかった時にも。
これは、その新しいバージョンのフラムの一つ。
「レント、さがって!」
「おう!」
前衛で数体を相手にしていたレントがさがり、其処に血に酔った鼬が数体突貫。フラムが、完璧なタイミングで炸裂していた。
熱で抉り取る程の火力は出ないが。
その代わり。三十歩四方ほどを丸焼きにするフラムだ。
後から続いていた鼬十数匹も含めて、まとめて火だるまになる。
更に、あたしは続いてイナヅマ鉱で作った爆弾を使う。
これも手投げ弾型だが。
これは雷撃を周囲にばらまく。プラジグという爆弾だ。
投擲し、起爆。
死にきれずにもがいている鼬が、まとめて薙ぎ払われ。そして倒れて動かなくなった。
鼬の群れが、逃げ腰になる。
あたしが詠唱を開始。
空に、千を超える熱の槍が出現するのを見て、鼬の群れはかなわないと判断したのだろうか。
北に逃げ散り始める。
本当は逃がすわけにはいかないのだけれども。
人間への恐怖を叩き込む。
それだけしか今は出来ない。
更に言えば、手負いの気が立っている奴は、あらかた片付けた。
今回は、これで一旦はよしとする。
問題は、此奴らを追い立てた何かだ。
疲弊していた鼬は、どうみても普段近場で見るよりも強い種類のものが多く。それでも傷つけられて怖れていた。
つまり、群れ単位で反撃する鼬が、全部まとめて蹴散らされるほどの何かが出て来ているということだ。
ドラゴンではないだろう。
ドラゴンだったら、ブレスで一発。それで終わりだ。
後はがつがつ喰ってしまうだろうし、その後は飛んで巣に帰っていく。
十中八九、リラさんが警告してきた。超危険な魔物に間違いなかった。
詠唱をとめ、熱の槍を消滅させると。
辺りを見て回って、死に損なった鼬にとどめを刺していく。
クラウディアは流石に青ざめていたが。
こういうのを逃がすと、後で人間に対して復讐心を燃やして非常に危険な個体になる。人間の血の味を覚えた魔物は、絶対に殺さなければいけない。
それは基本の中の基本。
そして、人間を襲った魔物もしかり。
それがどんなに可愛かろうが。今まで人間には敵対的ではなかろうが、例外ではない。
人間というのが、実はあっさり死ぬ上に。
肉の袋に等しい容易い獲物だと学習した魔物は。
極めて危険な存在となり果てるのだ。
「クラウディア」
「うん」
死に損なった鼬がいたので、クラウディアを呼ぶ。
全身焼け焦げて、ひいひいと息をしているが。もしもこのまま死の淵を脱したりしたら、それこそ人間に見境なく襲いかかるようになる。
クラウディアも、相手を殺す必要性は知っていたのだろう。
今後、前線で戦うには、だ。
至近から、矢を引き絞ると。
放っていた。
ホーミング機能がついた魔術の矢だ。外す訳がない。
しかも至近距離である。
鼬の頭蓋を矢が砕いて、脳漿が飛び散る。青ざめていたクラウディアに、レントが声を掛けた。
「大丈夫か。 魔物相手とはいえ、殺すのは初めてだろ」
「大丈夫。 お魚とか料理したことはあったから。 でも、やっぱり、こんなに大きい相手を殺すのはちょっと怖いね」
「あんまり刺激が強いと、後で心に傷がつくよ、 後処理は僕達がやっておくから、その辺りで休んでいて」
「うん……」
タオが助け船を出す。
まあ、最初はこのくらいで良いだろう。
あたしはレントとタオと連携して、消し炭になっていない鼬の死骸を漁り。毛皮や肉を剥いでおく。
その後は、駄目な死体は全て湖に放り込んでしまう。
放り込むと、凄まじい勢いで魚が寄って来て、全て食べ尽くしてしまう。
鼬の主要な餌は、小さな動物と、更には魚だ。
だが死んだ途端、関係は逆転する。
この関係から逸脱したのが人間だと、アガーテ姉さんから教わったっけ。
逸脱しているからこそ、自然に敬意を払わなければならないのだとも。
駄目になっている骨も細かく砕いて、全て湖に放り込む。
その後は、食べられる分は食べ。
残りは燻製にし。その間に、毛皮もなめした。毛皮は錬金術に使う分もあるが、それ以外はクーケン島に戻ったら売る。
フラムに巻き込んだ大型の鼬の爪が、強い魔力を持っている。
かなり手強い個体だったようだけれども、恐らくは噂になっている危険な魔物に痛めつけられていたのだろう。
もう、あたしと対面したときには、殆ど力を残していないようだった。
有り難く爪をいただいておく。
これも、いずれ何かの素材に使えるだろう。
無言で解体処分を終える。この辺りは護り手と混じって行動している内に、嫌でも覚えた。
クラウディアは途中から、皮のなめし方や燻製の仕方を聞いて、それで熱心に頷いていた。
以降は、自分がやるつもりなのだろう。
お菓子作りだけでは無い。
こういう料理も出来るようになっておけば、あらゆる意味でつぶしが利く。
隊商だって、いつも安全に動ける訳ではないだろう。
魔物を撃ち倒して、肉を食べなければならない可能性もある。
そういうときは、肉の取り方や、皮の剥ぎ方などを知っている者がいると、せっかくの物資が無駄にならないし。
それで命を拾う可能性が出てくるのだ。
もう一回、街道を見に行く。
どうやら味方が捻られたことを、血の臭いで気付いたのだろう。
鼬の群れは、かなり北の方を移動しているようだ。
少なくとも、当座の危険は去ったか。
ただ。アトリエを建てたら。
それを拠点に、鼬の駆除を更に進めなければならなかった。
森の中に移動する。
森の中は比較的静かだ。エレメンタルも姿を見せない。これなら、ある程度は安心してアトリエを組み立てられるだろう。
縄張りをまず始める。
此処からは、クラウディアにも手伝って貰う。
全員が手袋をして。
あたしは傷薬も用意した。どうしても、此処からは怪我をする可能性が出てくるからである。
重いものを扱う作業は必ずレントと組む。
それを徹底してから、あたしは順番に動く。
まずは地面を耕して、其処に石材を並べる。埋め込んでいく。これを基礎部分とする。
今回作るアトリエで、もっとも重い部材だ。
これをしっかり作っておくことで、アトリエは倒壊することがなくなる。なお作業のために必要なはしごなども、既に作ってある。
石材や木材を作る作業が暇だったので。
その合間に作ったのだ。
石材は、どれも組み合わせることが出来るような形にしてあるので、順番にそれにそって組み立てて行く。
建物の大まかな形が分かるようにもなっている。
基礎は建物より少し大きめに作るのだ。
そして、基礎部分を、皆で石材を運んで作った後は、少し休憩。
此処が一番大変だから、である。
クラウディアもかなり疲れているようだったが。
とにかく魔術の弓を引くのに魔力を鍛えた事もある。
その魔術を身体能力強化に使っていて、かなり動けるようになっているようだった。
「紅茶を淹れるね」
「おう、ありがたいぜ」
「お菓子も持ってきてあるわ」
「助かるよ」
みなでわいわいと茶と菓子を摘む。
その後は、基礎部分を組み立てて行き。それだけでかなり時間を喰ってしまった。
できれば今日中にアトリエを組み立てたいが、無理は禁物だ。土を掘り返して、基礎部分を組み立て。
そして、基礎部分の組み立てが終わった所で、接着剤を使う。
クラウディアが借りている家の地下の浸水をとめた奴である。それを更に強化改良した接着剤だ。
皆で手分けして、石材を固定するようにして塗る。
元々部材ごとに組み合わせる事が可能な形にしてあるが、これで更に盤石に固めるのである。
皆で塗りおえた後、最初にやるのは汲んできた水で手を洗うこと。
接着剤は敢えて黒く目立つようにしてある。
固める時には魔力を流すのだが。
その時に、事故が起きないようにするためにだ。
手足に接着剤が残っていないかを確認した後、接着剤に魔力を流す。
一瞬で黒さが消えて。
石材が、固定されていた。
レントが踏みつけて、驚きの声を上げる。
「クラウディアの家の地下でも見たが、すげえなこれ。 これがあったら、旧市街の幾つかの家、倒壊しなくて済んだのかもな」
「いや、今から全ての家をこれで補修するのは現実的じゃないよ。 新しい家を作る時に使うなら兎も角ね」
「それもそうか……」
「クーケン島は、意外と規模が大きいのよ。 田舎だって住んでいる人はいうけれど、もっと田舎の小さな集落は、幾らでも見て来たわ」
そう言われると、そうなのかとしか応えられない。
とにかく、次だ。
まずは柱を立てる。
柱は、既に番号を振ってあるので、そのまま組み立てるだけでいける。
このアトリエを完成させたら。
別の所にアトリエを建てるときに備えて、この作業をパッケージ化しておきたい。
そうすれば、次はこんな何日も掛けずに、一日で作れる可能性が出てくるからだ。
柱はどうしても部材として長くなるので、これも合成木材を、パーツとして組み立てられるようにしてある。
そして、石材の一部に、敢えて穴を開けてある。
そこに突き刺して固定するのだ。
まずは、一番下になる部品を石材の穴に入れて。後は順番に、組み立てをしていく。
幸い、あまり高さがある建物ではないから、そこまでの危険はない。ただ。レントと組みながら作業をするようにと、皆に徹底している。
レントの単純なパワーはやはり近くで見るとザムエルさん譲りだ。
太い柱って、人間よりずっと重くなるのに。それを支えて、微動だにさせない。
それは、あのザムエルさんに殴られても怪我程度で済むわけだ。
柱はパズルのようになっていて、それをはめ込むことで、がっちりと固まるようにしてある。
それを更に接着剤で固めていく。
順番に柱を立てていく。此処までの作業が、もっとも力を必要とする重労働だ。タオとクラウディアはかなり消耗しているようだが。
適宜休憩を入れながら、進めていく。
最初はお菓子を食べていたクラウディアだが。
途中からあたしが提案して、さっき仕留めた鼬の燻製肉を食べる。
もうなりふりも構っていられなくなったのだろう。
皆で、肉を食べて。
それで力に変える。
残念だけれども、お菓子では頭は回るようになるが。力はそこまで出る訳ではないのである。
まあ、あたしもお菓子は好きだけれども。
「ライザ、柱はこれで最後?」
「うん。 クラウディア、手は大丈夫?」
「何回か傷が出来たけれど、傷薬ですぐに回復したわ。 本当に良く効くね」
「切り傷くらいだったらね。 昨日の重傷者みたいな傷になってくると、まだまだ改良がいるかな」
油断するなよとレントが声を掛けて。
はしごも使いながら、最後の柱を組み立てて、接着剤で固定。
レントが何度か叩いてみて、それでもびくともしない。
ひゅうと口笛を吹く。
「これならあのクソ親父がタックルを入れても、柱は多分小揺るぎもしないぜ。 合成の木材と接着剤の組み合わせとは思えない強度だ」
「ありがと。 じゃあ、下から順番に組み立てて行こう!」
「おう!」
まずは基礎部分から、順に部品を組み立てて行く。
床板を張る。このアトリエは、調合する部分と、皆で自由に使うフリースペースに分けている。
フリースペースは階段があって、擬似的な二階建てになっているお洒落な造りだけれども。
この造りは、クラウディアに貸している家を参考にした。
また、二階建ての下には倉庫部分もあり。
その倉庫部分はあたしの熱操作魔術を強化して掛ける。
これで、回収してきた物資を、かなりたくさんストックできる。コンテナという訳だ。
そしてなんなら、コンテナを拡張することも出来る。
造りには、ある程度余裕を持たせているからだ。
床板、貼り終えるの完了。続いて二階建て部分の階段と、其処の床板を貼っていく。
クラウディアが空を見る。
「雨が降ったら大変だと思っていたのだけれど、平気そうね」
「この時期は絶対に降らないよ。 もうちょっと前だったら降ったかも知れないけれど」
「乾期が始まるからね。 もしも雨が降ったら、農家としては大助かりなんだろうけど」
「そうなんだ……」
クラウディアが汗を拭う。
絹服じゃなくて、作業用のにした方が良いという話はしたのだが。これしかないと言っていた。
基本的に、クラウディアには良い服を着せたいとルベルトさんは思っているのか。
それとも、将来的に商談を任せるつもりなのか。
いずれにしても、苦渋の決断の末、あたし達と一緒に行動するのを認めたのは。
多分だけれども、クラウディアに経験を積んで貰って。
いずれ、仕事の一部を順番に任せていきたい。
そういう意図があるのかも知れなかった。
そもそもとして、バレンツ商会の跡取りは恐らくクラウディアか、その入り婿になるのだろうし。
クラウディアが経営関係の知識皆無では困るのはルベルトさんとしてもあるのだろう。
箱入りに育ててしまってけれども。
それでは駄目だと、ルベルトさんもどこかで思っていた可能性が高い。
そうでなければ、絶対反対で話なんか聞こうともしなかっただろう。
娘は単に入り婿の餌と考えるような冷徹な親も世の中にはいるだろうが。
少なくともルベルトさんは違ったのだと思う。
「床はこんなところか?」
「そうだね。 よし、次は梁行くよ!」
「ライザは元気すぎるよ……ちょっともう少し休憩を挟もう」
「私も賛成……」
そうか、じゃあしょうがない。
一度休憩を挟む。
そして、建設途上のアトリエを見やる。
まだ壁も張っていないアトリエだが。
確実に、形になっていくのが分かって嬉しかった。
陽が落ち始める。
その頃には、梁を作り終えて、壁に取りかかり始めていた。
壁は重さも全然柱より軽い事もある。まずは二階建ての部分から、順番に張っていく事もある。
建物によっては、この壁も重量を支えるための重要な部材にするそうだけれども。
このアトリエは、柱が非常に強力であるという事もある。
梁も頑丈に作ってある。
だから、壁と屋根は、風雨を防ぐためにあると割切った造りだ。
一応屋根部分は、雪などにも耐えられるように設計してあるが。ただ正直、タオから借りた設計の本の知識だけだとちょっと不安だったので。
ちょっと大きめの魔物が乗っても大丈夫、くらいの強度に仕上げている。
壁も、組み合わせるようにしてある。順番に組み立てて行く。アトリエの形が、外からも分かりやすくなっていくのを見て。
あたしもわくわくがどんどんわき上がる。
これが、あたし達で作るアトリエ。
今後の拠点。
もう、いちいちお父さんとお母さんの機嫌を伺わないといけない拠点ではない。
本当のあたしの家だ。
そう思うと、更にやる気も上がる。
燃えてきた。
壁に窓をはめ込んでいく。接着剤で固定する。これらの作業を順番にやっていく。タオが、部材などをしっかり管理してくれているので、非常に作業がやりやすい。部材を破損した時も、余程酷い破損でなければ、接着剤でどうにでも出来る。
問題は窓だ。
いわゆる硝子はかなり作るのが難しい。
其処で、街の近くで取れる魔石という、ある程度透明度がある石を使う。
この魔石は魔力を蓄える性質があるのだが、実は魔力そのものが結晶化したものであるという噂もあるらしい。
ともかく魔石を加工して伸ばして、それで窓に造り替えた。
硝子は作るのに専用の鉱石が必要になるらしく、レンズは更に難しいらしい。それもあってタオの眼鏡はとても高級な品なのだ。
ボオスがどんだけタオを虐めても、絶対に眼鏡は傷つけなかったのも、それが理由である。
島に残った非常に貴重な過去の遺産であり。
もし壊したら、ブルネン家でも迂闊に保証なんか出来ないのだから。
「窓のはめ込みは大丈夫か?」
「今確認してる。 うん、大丈夫だと思う。 接着剤は機能していると思うけれど、レント、壊れない程度に押してみて」
「おう。 どれどれ……よし。 まあこれなら、大丈夫だろう。 石くらいなら投げられても、普通に弾き返すぜ」
「それは良かった」
手の甲で何度かノックしてみて、強度は問題無さそうだと判断。
扉は何カ所かにつける。
これもはめ込み式で、その周囲の壁もろとも組み合わせるようにして作った。
一箇所だけにしないのは、いざという時に備えてだ。
籠城するときなんかは、勝手口があった方が良い。
此処はどうしてか安全地帯になっているが。
それでも小妖精の森の中だと言う事を忘れてはならないのである。
「ドアも大丈夫そうだよ」
「ドアはがんじょうな方が良いからね。 今はこれで作るけれど、問題がありそうなら後であたしがもっと頑丈に作るよ」
「素敵な外観になって来たわ。 でも中は殺風景だね」
「みんな好きなものを持ち寄ろう。 そのために、広めに作ってあるからね」
後は、残してある柱を使って、屋根を運ぶだけだ。
そろそろ陽が落ちる。
作業は此処までにするか、最後までやるか判断が難しい。ただ、一気に仕上げればできない事もないが。
いや、駄目だ。
今日は一度切り上げる事にする。
陽が落ち始めると、一気に暗くなる。そうなると、クーケン島に戻るときに、暗礁とかに引っかけやすくなるのだ。
そんな馬鹿な事故で死んだら、死んでも死にきれない。
残念だけれど、屋根は明日。
そう告げて、一度撤収とする。
誰もそれについては、不満を口にしなかった。
作業道具などは、此処に残して置いて大丈夫だろう。島にもまだ悪ガキはいたりするが、流石に此処には来られない。
魔物が悪戯をする可能性もない。
季節によっては雨が降るが、それも今の季節だったら大丈夫だ。
数日前までは、空の彼方に凄い入道雲が出ていたりしたのだけれども。
今はもう、嫌みな程の青空である。
そのまま、エリプス湖を通って、クーケン島に。
レントは特に疲れている様子もなく、そのまま船を漕いでくれた。タオはかなりしんどかったようで、うつらうつらしている。クラウディアも、苦笑いした。
「私も限界。 家に帰ったら、そのままばたんっていきそう」
「ルベルトさんを心配させないようにしてあげてね」
「うん。 お父さんも私がみんなと一緒に行くことを許してくれたし、多分もうそれは大丈夫だと思う」
「そっか」
魔物を殺した事は、別に言わなくていいと思う。
そう告げると、クラウディアは少し黙った後、頷いていた。
少しずつ、一緒に冒険するなら慣れないといけないことだ。
それはわかっていても、やっぱり戦いをすれば相手を殺すし。
殺せば血に汚れることは。
理解しないといけない。
それは。あたしも分かっているし。
今更告げなくても、クラウディアも分かっている筈だった。
クーケン島について、そこで解散。タオは、レントが送っていくそうだ。あたしはクラウディアを送っていく。
家に戻ると、流石に疲れた。
お父さんとお母さんに、鼬の毛皮とか肉を渡しておく。護り手が大きな被害を出した事は、とっくに知っている筈だ。
あたし達が護り手の支援をすることも。
夕食は、その燻製肉を使ったけれども。すごくおなかがすいていたので、がつがつと食べてしまった。
そして、後はばたんきゅうである。
アトリエの中に、ベットでも作ろうかと思ったのだけれど。
そうなると、男共と分けた方が良いか。
丁度二階部分と分けてあるから、それで分けるべきだろう。
そういえば、アンペルさんとリラさんにも来て貰うとすると、もう二つベッドがいるかな。
後はリラさんがソファを喜ぶかも知れない。
そんな事を考えていると、もう朝だ。
眠れた。
それも、気がつくと墜ちていた、というレベルだった。
実に充実している。
後は、アトリエを完成させるだけ。
少し進捗は遅れているけれども。それでも、ついに完成する。その時が。近付いていた。