暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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ただの悪ガキ集団とは言え、魔物の脅威がすぐ側にある田舎。

当然全員戦闘経験はあります。

ライザは後に第一の親友となる存在のために。

まだまだ未熟ながらも、果敢に武勇を振るうのです。


2、未知との出会い

目の前に出て来た鼬を、ドロップキックでそのまま吹っ飛ばす。それほど育っていなかった鼬だし、それで充分。

 

悲鳴を上げてすっ飛んで逃げていく。

 

どうせ今の悲鳴を聞いて、餌にありつけるかも知れないと顔を見せた個体だ。容赦する必要なんてない。

 

あたしは走る。レントが、前に出すぎるなと、荒々しい戦士らしい声を掛けて来る。遅れてついてくるタオ。少し遅れてはいるけれども、それでも着いてきている。この辺りは、村育ちで。

 

さらには、あたし達でいつも引っ張り回して、それが要因だし。

 

タオもレントも、昔ある事件があってから、意図的に最低限得意分野を鍛えるようにしている。

 

タオの場合は、体力のなさを自覚して、それを補う努力をしている。

 

それが、ついてこれている理由だ。

 

走りながら、辺りも見る。

 

猪突猛進した挙げ句、自分達が迷子になったら世話ないからだ。

 

なんどかそういう事が昔あって。

 

その度に、護り手や。比較的最近は、護り手のリーダーに就任したアガーテ姉さんに随分大目玉を貰ったっけ。

 

ぷにぷに。球体状の生物。見かけと裏腹に、危険極まりない魔物の一種。なんでも喰うので、勿論人間も殺しに来る。

 

かなり大きい奴が来るが。

 

気合いとともに跳躍したレントが、一撃を叩き込んで両断。更にあたしが、ノータイムで光の槍を作り出し、投擲。

 

突き刺さった槍が、ぷにぷにを爆散させた。

 

あたしの熱魔術の一つだ。

 

基本的に今の時代は詠唱をしないから、一度に一つずつ作りあげて投擲する熱の槍。今は急いでいるので、かなり手荒い。

 

レントが大剣で熱をしのぎながら、更に走る。タオは、ひいっと分かりやすい悲鳴を上げていた。

 

「ちょっとライザ、火力また上がってない!」

 

「成長期だから!」

 

「だからって、ちょっとやばいよ! 詠唱したら、数百発は出せるんでしょ!」

 

「そうだけど!」

 

走りながら応じる。

 

誰でもそう。だから、ある程度人数に余裕があって、魔物に隙が出来たら、詠唱して一気に仕留める手もあるにはある。

 

だが、隙を作ったフリをして、詠唱する人間をしとめようとする魔物もいる。

 

それを考えると、安易にできる事ではない。

 

見えてきた。

 

かなり大型のエレメンタルだ。

 

人間に似ているが、目には瞳孔がなく。服のように見えるのはそれも体の一部。その証拠に、殺すとそれごと消えてしまう。そして死んだ場所では、とても作物がよく育つ。

 

昔はそれを利用できないかと思って、捕まえようと四苦八苦してみた事もあるのだけれども。

 

生かして捕まえる事はどうしてもできなくて、護り手の人達も呆れていたっけ。

 

ただ、ブルネン家になんでも頭を下げなければいけないのは、大人達もみんな思うところがあるようで。

 

それでも、しぶしぶながら協力してくれたものである。

 

目の前にいるのは、かなりの大物。人間大の大きさを持つ奴。

 

もっと高位のになると、更に大型になり。服装などの再現が精緻になっていくらしい。

 

噂によると、「エレメンタルロード」なんていう魔物もいるらしく、そいつらの実力はドラゴンを凌ぐとか。

 

そして、そんなエレメンタルの視線の先には。なんだか育ちが良さそうな、とても綺麗な服装に身を包んだ。とても清潔そうな女の子が、腰を抜かして倒れていた。このままだと、確実に殺されるだろう。

 

あのさっきの澄んだ悲鳴。

 

この子の挙げたものだと思えば納得出来る。普通だったらぎゃあああとか、そういう身も蓋もない悲鳴が出るものなのだから。

 

いずれにしても、弱者を蹂躙するもの。

 

死あるのみ。

 

あたしは、声を張り上げていた。

 

「レントっ! タオっ!」

 

「分かってる!」

 

タオも本気だ。二人とも仕掛ける。

 

振り返るエレメンタル。赤い服を着ているが、それは少し遅れていれば、人血によって更に鮮やかに彩られ。

 

あの女の子は、森の肥やしにされていただろう。

 

顔には表情がなく。

 

こいつらと会話の余地がない事が一目で分かる。

 

向こうも、ノータイムで術式を展開。あたしはレントが先に、タオが遅れて突貫するのを見て。

 

足を止めながら、魔術を展開。

 

空中から、光の矢を放って、突き刺す。

 

魔術を展開出来ずに防がれたエレメンタルが、顔を歪めることもなく、ライザを見て。

 

その瞬間、フルパワーでレントが大剣の一撃を叩き込んでいた。

 

切っ先が、エレメンタルの肩から入り込み、腹まで食い込む。タオはそれを見て、行動を変更。態勢を低くして、エレメンタルの死角に入り込むと。倒れている女の子との間に入る。

 

良い判断だ。

 

ライザはそのまま、光の槍を作り出し、レントを腕を振るって吹っ飛ばしたエレメンタルに突き立てる。

 

レントを軽々吹っ飛ばしたエレメンタルは、大剣が体に食い込んでいるのにまだ生きているし、なんならぴんぴんしているが。

 

それでも、顔面にあたしの光の槍が突き刺さると、流石にぐらりと揺れる。

 

更に、魔力を絞り出して、三本の槍を同時出現させ、それを一斉に投擲。それを見て、血混じりの唾を吐いたレントが、素手で突貫。

 

刺さったままの大剣を掴むと、一気に横薙ぎにエレメンタルを切り裂いていた。

 

L字に体を裂かれたエレメンタルの顔に、三発の光の槍が突き刺さり、爆散

 

タオが必死にガードの姿勢を取って、自身の体と、何より気絶している後ろの女の子を庇う。

 

ナーイス、タオ!

 

そう呟きながら、ライザは更に五本の槍を同時に出現させる。レントがそれを見て、タオと女の子を抱えて、大急ぎでその場を離れる。

 

一斉射。

 

これでも再生しようとしているエレメンタルに、全ての槍が殺到して。一瞬後に、爆砕していた。

 

エレメンタルの絶叫が轟く。

 

これで、ひとたまりもないだろう。

 

呼吸を整える。脂汗が流れていた。

 

こんな大きなエレメンタルを、三人で倒せた。それも、人を助けながら。ちょっと自慢にしていいと思う。

 

魔力の消耗が激しくて、かなり危ない。詠唱をしないと、魔術の消耗は、こうも大きくなるものなのだ。

 

汗を乱暴に拭いながら、レントに様子を確認。

 

「大丈夫、二人……三人とも!」

 

「僕達ごと吹っ飛ばすつもり!?」

 

「今はいい! とにかく撤退するぞ! 魔物の声が聞こえやがる! もたついていると絶対に殺到してくる!」

 

「レント、前衛よろしく! その子、あたしが担ぐ!」

 

よし来たと、レントが曲がってしまった剣を手に走り出す。

 

かついで見ると、女の子は金髪で、絹のいい仕立ての服を着ていて。良いにおいがしそうな、それこそお嬢様という言葉をそのまんま人にしたような子だ。

 

たまに隊商とかにこういう子がいるのをあたしも見て知ってはいたけれども。話した事は殆どなかった。

 

というか、前に似たような子を見た時は、露骨に見下されて頭に来た記憶もある。

 

この子がそうではないといいのだけれども。

 

背負うと、走る。タオは、奇襲に備えて少し後ろを走って貰う。ざわざわ、そう森が騒いでいる。

 

争いがあった。

 

そうなれば、おこぼれにありつけるかも知れない。

 

そう卑しく考えている。

 

畜生なんてそんなものだ。

 

それが普通。というか、人間だってちょっと油断すれば、すぐに畜生に落ちるものなのである。

 

だから、別にそれに嫌悪を覚えるつもりも、ライザはない。

 

走りながら、さっきの広間を目指す。

 

あの様子だと、あの広間には魔物だって出ない。それに、ここに来るまで、道のようなものが出来ていて。

 

ブッシュの一つもなく、退路ははっきりしているのが、とても有り難かった。

 

「急げっ!」

 

「分かってる!」

 

「ライザ、来てる来てる来てるっ! おっきいのが!」

 

「くっ!」

 

あたしも焦る。

 

全力で走っているが、それでもいつもよりやっぱり体が重い。気絶している女の子一人を背負っているのだ。

 

この状態では、戦う事も出来ない。

 

レントが入れ替わって、時間を稼ごうとしてくれるが。

 

一瞬で吹っ飛ばされた。

 

相手は、一瞬見えたが、大型の鼬だ。

 

鼬は大きくなると戦闘力がおぞましい程跳ね上がる。しかも、育つと際限なく大きくなる。

 

人間ほどでは無く社会性を持つ生物で、とくに女王個体と呼ばれるものは、群れの中でも非常に巨大で、極めて戦闘力も高い。

 

群れごとに戦闘力がまるで違う種族でもあって、こんな森の中だと、苛烈な生存競争に晒されているから、強いのがいるのも当たり前だ。

 

覚悟を決める。

 

女の子を降ろすと、タオに叫ぶ。

 

「その子を引きずって安全地帯に!」

 

「ちょっ、ライザっ!」

 

「いくわよレント! 時間稼ぐ!」

 

「やってやる……!」

 

レントも、相当肝を冷やしているようだ。

 

散々危ない目にはあってきた。魔物と初めて護り手の皆と一緒に戦ったときは、本気で殺しに来る相手の怖さだって知った。

 

だけれども、今、毛を逆立てて、此方を威嚇している鼬は今まで見てきた魔物とレベル違いだ。

 

勝ち目はゼロ。

 

レントが、視線を合わせる。

 

頷く。

 

勝機があるとしたら、詠唱しての魔術しかない。だけれども、それを作る時間を、あの大きさからしてもあたしの背丈の倍はありそうな鼬が、許してくれるだろうか。

 

それでもやるしかないのだ。

 

レントが、頭から血を流しながら、鼬に雄叫びを上げて踊りかかる。

 

それと同時に、あたしは詠唱を開始。

 

フルパワーでぶっ放せば、あの鼬だって殺す自信がある。

 

だけれども、相手がそれを許してくれそうにもない。

 

次の瞬間。

 

何かが、あたしの横を通り抜けた。

 

それが後ろから投擲されたものだという事はわかった。

 

案の定、レントには目もくれず。あたしに襲いかかった鼬に、それは空中で接触。

 

そして、球形の、超高熱熱球を作りあげていた。

 

鼬は悲鳴一つ挙げない。

 

熱の球体が消滅した跡は。

 

頭から腹に掛けて球形に体を抉り取られた鼬が、ぼとりと落ちてきて。

 

そして、忘れていたかのように内臓と、大量の鮮血が地面に拡がり始めていた。

 

更に、鼬の後ろから何かくる。さっきの鼬の群れの仲間か。

 

だが、それらが足を止める。

 

あたしと、レントの前に降り立った、長身の女性。青白い肌をして、とても長い薄紫の髪を持った人。なんだかもの凄くワイルドな格好をしている彼女が、一瞥するだけで。魔物達は、明らかにすくみ上がる。

 

さっきの鼬と同格だろう鼬たちが、それで逃げ出す。

 

一睨みで、あの鼬の群れを。

 

すごい。

 

あたしも戦士だから分かる。この人の体を纏っている強さが。レントも、一発でそれは見抜いたようだ。

 

この人、とんでもなく強い。

 

「無事だったようだな」

 

もう一人の声。

 

モノクルを掛けた、長身の男性だ。ローブに近い服を着ている。さっきの、なんか相手を抉り取ったもの。

 

あれは明らかに魔術ではなかったが。

 

あれを投擲した人か。

 

それだけじゃない。全身にみなぎっている魔力。クーケン島の古老なんて問題外。あたしでも、及びもつかない凄まじさだ。

 

生唾を飲み込む。

 

「事情は後で聞く。 街道で、そこのお嬢さんの親御さんがお待ちだ」

 

「ん……うん……」

 

目を覚ます「お嬢さん」。

 

恐らくだが、気絶する前にあたし達が割って入ったことは覚えていたのだろう。恐怖でふるえながらも、あたしに拒絶感を示すことはなかった。

 

「た、助かったの?」

 

「どうにか……」

 

「良かった……。 ありがとう、みなさん」

 

やっぱり、居住まいがしっかりしているなあ。

 

腰が抜けていたようだけれども、それでも時間が経ったからか。恐怖がピークに達して、意識を一度失ったからか。

 

手をさしのべれば、立ち上がる事が出来た。

 

そして、女の子は必死に何かのケースを持っていて。それは背負ったときも、離さなかった。

 

執念すら、それには感じる程だった。

 

一度、さっき見つけた何故か安全な広間に戻る。すぐ側だった。

 

そこで、呼吸を整える。

 

タオが持ってきた薬草を使おうとしたが、不要と男性の方が口にすると、何か薬を取りだした。

 

それを傷口に塗るだけで、文字通り溶けるように傷が消える。

 

これは、ちょっと凄い。

 

魔術の中には、詠唱込みで使う回復のものもある。ただし、それは詠唱込みでも、傷の治りを早くする程度。

 

とてもではないが、こんな回復速度は実現できない。

 

さっきの大型鼬の攻撃をもろに食らったレントは、彼方此方大きな傷を貰ってダラダラ出血していたのだが。

 

それも一瞬で治ってしまっていて。あたしは驚かされた。

 

「それ、魔術による薬ですか?」

 

「いいや、錬金術だ」

 

「アンペル」

 

「嗚呼、分かっている。 だが、この子達は見知らぬ人間を助けるために、全力で危険に立ち向かった。 それが出来る人間なら、少しくらいは信頼しても良いだろう」

 

アンペルというのか、この男の人は。

 

ライザは、飲むタイプのお薬を貰う。それを飲み干すと、消耗していた魔力を一気に回復する事が出来た。

 

すごいな。

 

味はとんでもなかったが。良薬は口に苦いものだ。

 

だから、別に気にしない。

 

「助かりました」

 

「まだだ。 とりあえず、森を抜けて隊商の所まで戻るぞ」

 

「はい。 ええと……」

 

「私はクラウディア。 クラウディア=バレンツです」

 

そう胸に手を当てて、女の子が名乗る。

 

あたし達も、それに対して名乗り返した。すぐに名前を覚えてくれた。クラウディアは、あたしに対して、強い興味を持ったようだった。

 

どうやら、前に来た不愉快なお嬢様とは違うらしい。

 

そう思って、あたしはちょっとだけ安心したのだった。

 

 

 

もの凄く強い護衛二人がいることもある。

 

魔物はそもそも近寄ってこなかった。伝説に残るような超強い戦士だと、森の中を歩いても魔物が逃げていったという話は聞いたことがあるが。

 

まさかそれを、目の前で見られるとは、あたしはおもわなかった。

 

女性の戦士は、リラ=ディザイアスというらしい。戦士として圧倒的に強いが、体はとても豊満で、なんというか凄い。

 

また、髪の毛は若干雑に手入れしているようだが。前髪の間から見える両目はオッドアイである。

 

そして、ちらりと見える手元。

 

手から直接毛が生えていないだろうか。

 

爪の生え方も、なんだかちょっとおかしいような気がするが。じろじろ見るのも失礼に思えたので、控えることにした。

 

男性の方はアンペル=フォルマーさんというそうだ。

 

何でも、少し前からクラウディアの商会、バレンツ商会を護衛していたらしい。

 

商会の会長はクラウディアのお父さんと言う事だが。

 

まあ流れの傭兵としては、この実力は破格だ。

 

雇われたのも、当然と言えるかも知れない。

 

程なくして、海岸に出る。

 

よかった、小舟は見つかっていないな。

 

それは良かったのだが。商会とともに、アガーテ姉さんが来ている。それを見て、あたしは思わず首をすくめていた。

 

「やっべ。 アガーテ姉さん無茶苦茶怒ってるぞあれ……」

 

「これはミオさんも一緒に一晩説教コースだね……」

 

「大丈夫よ、私が助けてくれた事を説明するから。 みんなとても勇敢だったわ」

 

「ほんと? ありがとう!」

 

クラウディアと呼んで。

 

あたしはそう言われている。タオやレントも、である。

 

クラウディアはあたしとおない年らしい。おない年でも、生きてきた世界が全く違うが。

 

それはむしろ、クラウディアにはとても新鮮な相手に見えるらしい。

 

安全を確保できたとみるや、かなり喋るようになった。あたしが、危険を顧みずエレメンタルに立ち向かう姿が、何かヒロイックに見えたのだろうか。

 

あたしは、無謀だっただけだ。

 

ちょと、クラウディアには後でそれを説明しなければならないかも知れない。

 

バレンツ商会の会長、ルベルトさんというらしい人は。いかにもなとても厳しそうな男性だった。

 

それだけじゃない。恐らく相当大口の取引先らしく、モリッツさんまで来ている。

 

モリッツさんが平身低頭しているのは、見ていて気分が良いが。

 

それよりも今は、あたしをじっと冷たい目で見ているアガーテ姉さんが怖い。

 

「おてんばな娘を助けていただき感謝しています。 リラ殿、アンペル殿」

 

「いいえ。 これも仕事の内ですので。 それに、我々は間に合わず、実際に彼女を助けたのはそこの三人です」

 

「なんと……」

 

「そういうわけで、叱らずにおいてほしいのですが」

 

アンペルさんが、そんな事をいうので。

 

モリッツさんは、はははと苦笑い。

 

アガーテ姉さんが、前に出ると、苦言を呈する。

 

「この三人は無鉄砲極まりなく、今回もあやうく命を落とすところでした。 叱ることは貴方たちに免じて今回はしませんが、それでも甘やかして貰っては困りますね」

 

「分かっています」

 

「そ、それよりも、立ち話もなんですから、島に向かいましょう。 危ない目にあって、お嬢様もお疲れでしょうし」

 

モリッツさんがまとめて、島に大きな船で渡る。おっと、あの船どうしよう。

 

もう一つ、ちょっと小さめの廃棄漁船を見つけてあるのだけれども、それを使うしかないか。

 

いずれにしても、説教コースは避けた。

 

疲れきってぐったりしているタオ。

 

レントは、じっと手を見ていた。

 

「どうしたのレント」

 

「ああ。 俺の力不足を感じてな」

 

「あたしだってそうだよ。 それよりさっきの見た?」

 

「ええと、あの一瞬で鼬を殺した奴か?」

 

それもそうだけれども。

 

同じ「錬金術」というものが、回復としても凄まじい力を発揮したのを、あたしは見ていた。

 

魔術だと、あれほどの力は出ない。

 

どうやってもだ。

 

通常の薬でも、どれだけ凄いものでも、彼処までの回復機能はない。どれだけ優れた薬でも、回復力を上げるだけ。手足をつなげたりするような、驚天の力はない。

 

それが、あの薬には出来る気がした。

 

わくわくが、全身からわき上がってくる。

 

それを見て、タオが呆れた。

 

「ライザ、とにかく今日はもう動けないよ。 僕は僕で、ちょっと色々興味があることもあるんだけれどね」

 

「タオは何でも興味深々だもんね」

 

「いや、そうじゃなくて。 二人は聞いていなかったっぽいけど」

 

タオによると、あの二人が古代クリント王国の様式がどうのこうのと、さっきの広場で話していたという。

 

ひょっとすると、古代の知識があるのかも知れない。

 

そう言って、タオはちょっとはにかんでいた。

 

「ちょっと今日はもう家に帰るので限界だけど、後で話が聞きたいな」

 

「じゃ、明日にでも集まろうか」

 

クラウディアが混ざろうとしたそうにしている。

 

この様子だと、本当に友達に餓えていたのかも知れない。

 

一緒に話す?

 

そう聞いてみると、クラウディアの顔が、ぱっと明るくなる。

 

モリッツさんの話を聞きながら、クラウディアの様子を見ていたルベルトさんが。その様子を見て、一瞬だけ嬉しそうにしたのを。

 

あたしは見逃さなかった。

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