暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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完全に振り下ろした拳の降ろし先がなくなっているボオス。

その暴走を放置も出来ず、ライザは動きます。

同時にアンペルさんは、状況を見て老獪に準備を進めているのでした。


1、追跡

アンペルさんに、出来た誘引薬……魔物を誘き寄せる強烈な薬を、事前に渡しておく。

 

アンペルさんは説明を聞くと、満足そうに頷いてくれた。

 

ちょっとのヒントで、良く此処までのものを作ってくれた。

 

そう言われて、あたしも嬉しくなった。

 

だが。今はそれどころじゃない。

 

ペンダントを人数分作ったので、配る。

 

全身の力がわき上がってくるペンダントだ。

 

島などで採れる宝石の原石を利用して、魔力の伝導率を上げたペンダント。これを身につける事によって、魔物が使うような、魔力を無効化する強烈な防御障壁を擬似的に再現出来る。

 

転んだくらいだったら怪我一つしない。

 

身を覆う魔力が、それだけ増幅されるのだ。

 

エナジーペンダントと名付けたこのペンダントは、これからの戦闘での切り札となるだろう。

 

最初に作ったのは出来が酷くて、殆ど役に立たなかったが。

 

急いで改良して、何とか実用レベルにまで高めた。

 

恐らくあたしだったら、これをつけていればずっと走る事が可能だろう。それくらい魔力が増幅され、結果それによって体も良く動くようになる。

 

皆の武器も、微調整した。

 

アンペルさんに教わった、錬金術で作った道具の再調整。

 

それによって、何とか細かい部分を調整したのだ。

 

タオには剣を使って見ないかと提案したのだが、まだハンマーの方が良いと言われた。

 

というのも、剣には興味があるらしいが。

 

何しろリーチが背丈もあって届かない。それが最大の理由らしい。

 

なんなら槍の方が向いているのではないかとタオは言うが。

 

槍だと、奇襲戦にはちょっと取り回しが悪い。

 

更に、これからの戦いは絶対にギリギリになる。

 

間違いなく、普段使い慣れている装備でないとまずい。

 

それはあたしも分かっている。

 

だから、結局装備の微調整に留めた。

 

切り札は、用意した。

 

なんとか調整が終わった。

 

以前戦った時と、ドラゴンが変わっていなければ。かなりの手傷を与える事が出来るはずだが。

 

問題は、切り札のコアクリスタルから取りだすとき、ごっそり魔力を持って行かれる事である。

 

だから、先にコアクリスタルに入れて。

 

取りだしておく。

 

魔力がごっそり減るのが、肌で分かるほどだ。

 

思わず青ざめたが。

 

それでも、戦闘中にこの魔力切れを起こすよりはなんぼかマシだろう。

 

とにかく、一度コアクリスタルに格納したから、内部に情報だってそのまま残されている。

 

かなりのコストをつぎ込んだ爆弾だ。

 

二度は、作りたくはなかった。

 

すぐにアトリエを飛び出す。

 

アンペルさんとリラさんが、何かの悪巧みをしている事は分かっている。外海の魔物以外にも、だ。

 

外海の魔物は、既に被害が出ないように手を打った。

 

もしも、それ以外に何かあるのだとしたら。

 

ひょっとしたら。

 

いや、今は考えるのは後だ。

 

護り手の中には、あたしより年下の子だっているし。知り合いがたくさんいる。

 

一人だって、死なせる訳にはいかなかった。

 

アトリエ近く。

 

島の対岸に出る。

 

既に、護り手の部隊は引き払っていた。本隊の到着を待って、移動を開始したのだろう。

 

レントが足跡を読む。

 

これは、リラさんに教わった技術であるらしい。

 

「護り手全員が出ているみたいだな。 もう現役引退した老人くらいしか、クーケン島には戦力が残っていないぜ」

 

「まずいね。 全滅したりしたら、しばらく身動き一つとれなくなるよ」

 

「タオくん、滅多な事はいわないで」

 

「うん……ごめん。 ちょっと配慮が足りなかったね」

 

本当にクラウディアが悲しそうに言うので、タオもすぐに言葉を訂正する。

 

クラウディアは打算で優しくしてくれているだけだと分かっているだろうに、クーケン島の人間に好意的だ。

 

取引先で嫌な思いをしたことだってあるのは知っている。

 

それなのにこれだけ良識がある行動を取れるのは。それだけ素が良い子だからなのだろう。

 

「足跡はやっぱり街道に向かってる?」

 

「そのようだな。 荷車は四つ……物資の量から考えても、山越えルートと見て間違いないだろうぜ」

 

「厄介だね……」

 

街道から東に向かうと、火山に出る。

 

時々噴火することもあるが、それほど派手に噴火するほどの火山ではなく、今では温泉が途中にある程度。

 

ただ、非常に蒸し暑く、あまり人間が行くべき場所ではない。

 

あたしも昔ちょっと悪戯で出向いた事があるのだけれども。

 

なんと、昔は人が住んでいたらしく。集落の跡が残されていた。

 

ただ。今は魔物の巣窟となっている。

 

住んでいた人達は、魔物に追い出されたのか。

 

或いは別の場所に移ったのか。

 

皆殺しにされていないといいのだけれどな。

 

そう、悪戯で出向いたときは、思ったっけ。

 

一応、行き方は分かる。荷車には、必要な水、食糧は積み込んだ。そのまま、全員で走る。

 

クラウディアの事がちょっと心配になったが。

 

大丈夫と言われた。

 

短期間で体力を増やしているし。リラさんに体力を消耗しない走り方も習っているようである。

 

更に、荷車もブロンズアイゼンで強化した。

 

車軸、車輪、ともにである。

 

ただ、車体はまだそれほど強化出来ていない。

 

これを強化出来たら、更に安全に採集にいけるだろう。場合によっては、荷車を盾に出来るかもしれない。

 

荷車の車体の底には鼬の皮を使ってクッションを作り。

 

その上に油紙を敷いてある。

 

これで、殆どの素材を安全に運ぶ事が出来る。

 

卵なんかはちょっと危ないかも知れないが。それはあたし達が工夫すれば、割らずに持ち帰る事が出来るだろう。

 

卵は調合に使ってもいいし。

 

そうで無い場合は、クラウディアが何か焼いて作ってくれる。

 

クラウディアは特に誰にも教わっていないようだけれども。どんどん料理の腕を上げているようだ。

 

「レント、魔物の気配はあたしも探るけれど、気を付けて!」

 

「おう! 攻撃を受けた場合は俺が壁になる。 その間に反撃を頼むぜ!」

 

街道周辺は、徹底的に駆逐したこともある。魔物は殆どいなくなっていた。

 

これが何を意味するかは、あまり考えない。

 

西からあれほど大量に押し寄せていた魔物がいなくなった。それは西からの供給が絶たれたからだ。

 

それの理由は、今は考えずに走る。

 

流石にアガーテ姉さんは、部隊の移動を迅速に済ませている。護り手も毎日訓練をしているのだ。

 

しっかりアガーテ姉さんについていけているようだ。

 

「魔物の気配無し!」

 

「よし、そのまま行くよっ!」

 

「途中で休み入れないと、魔物に襲われたとき抵抗できないよ!」

 

「分かってる! 無理なときは、そういうから! 疲れたらタオもクラウディアも言ってね!」

 

走りながらだと、どうしても怒鳴りながらの応酬になる。

 

やがて口数が殆ど無くなり。魔物がいるかどうかの確認だけになった。

 

街道を突破。

 

東に抜ける。殆ど獣道同然になっていて、魔物の残骸が散らばっていた。かなり荒っぽく片付けたらしい。

 

護り手の数の暴力で、蹂躙したというわけだ。

 

死人は、多分出ていないな。そう思う。

 

死んでいるのは魔物だけ。

 

人間の残骸の類が落ちている様子もない。

 

ある程度の覚悟はしていた。

 

ドラゴン狩りの話が出ていることは、既に聞いていたし。

 

アガーテ姉さんが反対していることも分かっていた。

 

それにしても、本当になんというか。

 

話してくれれば、少しでも協力できたのに。どうしてそういう水くさいことをするのか。

 

荷車には、剣を一振り入れている。

 

アガーテ姉さん用に、ブロンズアイゼンで新しく剣を打ったのだ。

 

勿論、今後更に装備を刷新していくつもりである。

 

それでも、まずはアガーテ姉さんに一本渡したかった。

 

とにかく、急ぐしかない。

 

山に入る。

 

同時に、つんと強い臭いが来た。

 

前に山に入った時も、こんな臭いがしたっけ。

 

クラウディアが、口を押さえながら言う。

 

「硫黄だわ」

 

「硫黄?」

 

「火山でよく見かけられる柔らかい石よ。 酷い臭いがするの」

 

「そうか、そういえば前に来たときもそんなのがあったな」

 

一度足を止める。

 

クラウディアがちょっと疲れが溜まっているようだったし。

 

それに、魔物の気配があるからだ。

 

護り手は強引に此処を突破したらしい。かなりの数の魔物の死骸が散らばっていて、周囲に殺気が満ちている。

 

姿を見せたのは、鼬だけではない。

 

他にもぷにぷにもいるし。

 

更に。だ。

 

あの洞窟で交戦したゴーレムも、何体か姿がある。ゴーレムは体が崩れていて、既に殺気だった魔物と交戦したのか。

 

或いは護り手と戦ったのか、ちょっと判断がつかなかった。

 

このまま進ませてくれそうにはない。

 

それに、帰路のこともある。

 

此処で、敵は駆逐しておかなければならなかった。

 

 

 

蹴り砕いたゴーレムの残骸が崩れ落ちる。大穴が開いたゴーレムは、それでも動こうとしたのだが。

 

回し蹴りで横殴りに一撃を叩き込んで。

 

あたしが足を降ろしたときには、既に動かなくなっていた。

 

呼吸を整えながら、周囲を見回す。

 

すぐに呼吸の乱れが消える。

 

このペンダント、かなりの効果がある。やはり作ってきて良かった。

 

乱戦になったが。それでも誰も怪我一つしていない。クラウディアがちょっと心配だったが、冷静に走り回りながら射撃で確実に隙を作って回っていた。もう、クラウディアはみんなと一緒に肩を並べて戦える。

 

短時間でここまで強くなったのだ。

 

下手をすると追い抜かれるかもしれなかった。

 

「掃討完了!」

 

「ちょっとごめん、休憩しよう」

 

「賛成だわ」

 

皆の意見を聞く。

 

どうせこの様子だと、先行した護り手の部隊も恐らくは同じような状況だ。帰路の体力を残すためにも、今のうちに少しでも魔物を削る必要がある。

 

それにしても、ゴーレムを。

 

恐らく以前遭遇したのより、水に浸かっていなかった分がんじょうなのを。

 

さほど苦労せずに蹴り砕く事ができた。

 

かなり力が上がってきている。

 

そうあたしは感じて、ちょっと嬉しくなった。

 

側に散らばっている魔物を捌いている余裕は無い。魔物の死骸は一箇所に集めて、余程状態がいい素材以外はその場で焼いてしまう。

 

そうすることで、残骸に他の魔物が寄ってくるのを避ける。

 

あたしの固有魔術は熱魔術だ。

 

燃やすことは、なんの苦労もない。

 

休憩しつつ、持ち込んでいる食糧を口にする。

 

今まで斃した魔物から取った肉を燻製にしたものや、更にはクラウディアが焼いてくれたクッキーだ。

 

水も持ってきてある。

 

「トイレは今のうちにすませておいて。 その辺の影で」

 

「今の時点では大丈夫だ」

 

「僕も。 というか、そんなによくガツガツ食べられるね」

 

「消耗した分は取り返さないとね」

 

あたしがムシャムシャ食べているのを見て、タオが呆れる。タオはもうこれは恐らくだが、そもそも戦闘に不向きなのだろう。

 

性格的な意味で、だ。

 

それは別に悪い事でもなんでもない。

 

ただタオは、遺跡とかに興味を常に持つのだ。

 

今後そのままではまずいだろうとも、あたしは思うが。

 

休憩を終えて、すぐに移動開始。

 

この山はそれほど標高も高くなく、これを擦るように移動して、東に見える城へ行く事になる。

 

城といっても、森の中からは見えず。

 

街道からは、ちょっとだけ見える程度の規模だ。

 

クラウディアに聞いたが、魔物と戦うための施設としては、規模はそれほど大きくないらしい。

 

王都でももう少し高い城壁があって、遠くからでも見えるそうだ。

 

各地にある遺跡には、もっと大きな城らしいものがあるという話なので。

 

いずれ見に行きたいものである。

 

再び、移動を開始。

 

魔物の死体が点々としている中。

 

数人の護り手と正面からばったり。

 

いずれも、知っている顔だ。

 

「ライザ!」

 

「どうしたの!?」

 

「一旦負傷者をまとめて、自力で帰還するようにと言う指示が出たんだ。 魔物がいて、それで戻れずに困っていた……」

 

「あたしが以前、薬を提供したよね」

 

アガーテ姉さんの指示とは言え、帰れることにほっとしている様子。

 

更には魔物に右往左往している様子に、あたしもちょっと頭に来た。

 

それで問いただすと、悲しそうに護り手が俯く。

 

「もう使い切っちまったよ。 此処の魔物、街道にいる奴らとは比べものにならねえ」

 

「ライザ、責めても仕方がねえ。 とりあえず薬、分けてやろうぜ」

 

「……分かった。 そうだね」

 

コアクリスタルから、魔力を消耗して薬を取りだす。

 

それを見て、護り手達は青ざめたが。

 

薬の効果は知っているのだろう。渡すと、すぐに使っていた。

 

傷は消えるが、体力の消耗までは抑えきることは不可能だ。すぐに戻るように指示。護り手達は、逃げるように戻っていった。

 

「ウラノスさんとアガーテ姉さんがいるだろうに、この消耗か。 あいつらが死んでいなかっただけマシなのかもしれないな」

 

「ちょっとあたしを支援してくれる? 今の消耗、思ったより大きかった」

 

「任せて。 急ごう」

 

クラウディアが率先していってくれるので有り難い。

 

その後は、また走る。

 

魔物の残骸が散らばっていて。それに小型の魔物が集っている。それを蹴散らす。かなり強いのが斃された形跡がある。多分アガーテ姉さんが斬ったのだろう。凄い切り口だった。

 

白目を剥いて、転がっている鼬の死体。

 

上半分しかない。

 

これは多分、ウラノスさんの魔術によるものだろう。

 

彼方此方に戦いの後もあるし、魔物も襲ってくる。どうしても、進むのは遅くならざるをえない。

 

だがそれは、アガーテ姉さん達も同じだ。

 

わっと押し寄せてくる鼬の群れ。相当に殺気立っている。あたしも覚悟を決めると、さがってと叫んで。

 

そして、フラムを投擲していた。

 

発破用フラムで分かったが、熱は閉じ込めることが出来。

 

そうすることで、殺傷力を著しく上げる事が出来る。

 

フラムはそうやって改良している。

 

そうすることで、味方への被害も抑えられるからだ。

 

文字通り、空間が熱に抉り取られる。

 

鼬の群れは、何が起きたのか理解出来ずに半分以上が蒸発。残りは、困惑しているうちにレントに頭をたたき割られ、タオに頭を砕かれ。

 

少し高い所に登って狙撃手に徹したクラウディアの矢を喰らって、悲鳴を上げてのたうち回っている所をあたしが蹴り砕いた。

 

「赤熱してる地面、踏んだら駄目だよ!」

 

「分かってる! それよりライザ、大丈夫か!?」

 

「先に爆弾具現化しておいて良かった。 これだと、ドラゴンに遭遇した時にはへろへろになってたよ」

 

「違いねえ……」

 

一旦休憩。クラウディアが、見張りに立ってくれる。

 

有り難い。

 

水を飲み干すと、トイレと言い残して物陰に。さっさと済ませる。

 

戻ると、食欲もないと言っていたタオががつがつ肉を食べていた。流石にさっきから、ハンマーごと全身を振り回していたのだ。疲弊が溜まっているのだろう。

 

赤熱している地面は、もう熱が収まったようである。

 

まあ熱というのは、案外簡単に収まるものだ。それはあたしも知っている。

 

「レント、戦闘音とか聞こえない?」

 

「いんや、まだ先のようだな」

 

「それより、人がいるよ! 多分立ち往生してる!」

 

「!」

 

クラウディアの言葉に、全員で即座に動く。高所を取っていたクラウディアも、危なげなく飛び降りて着地。

 

魔力の使い方を、短時間で学んでいる。勿論、怪我などしていない。

 

走りながら、レントが褒める。

 

「クラウディア、凄いな。 最初から弓矢の修練を真面目にやってたら、あんな風にルベルトさんが心配しなかったんじゃないのか?」

 

「うーん、そうかなあ。 でも、みんなと一緒に動くようになってから、明らかに体が軽くなったんだよね。 多分、一人でこつこつやってても、こんな風には伸びなかったと思う」

 

「クラウディアは僕とは真逆だね。 僕は新しい知識を得たり解析したりするのは、一人の方が向いてるかな」

 

「人それぞれだよ。 それよりも……」

 

足を止める。

 

以前、病院で手当てした人を始め、数人の護り手が立ち往生していた。クラウディアの見立て通りだった。

 

話をして、状況を確認。

 

アガーテ姉さん達は、二時間ほど前にこの先に行ったようだ。

 

もう城が見えている。

 

巨大な城に、幼い頃は見えたけれど。

 

今は朽ちかけた、哀れな城にしか見えなかった。

 

「薬、これで何とかしてください。 戻るのは自力で出来ますか?」

 

「どうにかしてみる。 薬、助かった」

 

「この様子だと、辿りついた頃には戦力も半減か? アガーテ姉さん、大丈夫だろうな」

 

「わからん。 この辺りの魔物、街道にいた連中とは桁外れだ。 蹴散らして回るなんて、お前達、本当に強くなったな。 アガーテ姉さんが、お前達を残すって言った意味がよく分かったよ」

 

苦笑いする護り手。

 

あたしは、それに対して。何も言い返すことが出来ない。

 

アガーテ姉さんは死ぬ気だ。

 

確かにドラゴンは、非常に危険な脅威になっている。排除しなければ、いずれクーケン島に直に飛来するかも知れない。

 

そうなったら地獄絵図どころか、クーケン島が圧倒的暴力にて、エサ場にされるだろう。

 

だがそれにしても、あたしに声を掛けてくれれば。

 

ドラゴンを倒して来たのに。

 

勿論、それが厳しい事は分かっている。というか、ビリビリ感じるのだ。

 

生唾を飲み込む。

 

城の方で、警戒している気配がある。

 

間違いなくいる。

 

しかも前と、ブレスを叩き込んでそのまま去って行った時と違う。

 

侵入者を排除するつもりで、戦闘態勢になっている。

 

レントが、汗を拭う。

 

「皆、感じてるな。 ドラゴンだ間違いなく。 警戒態勢に入っていやがる!」

 

「アガーテ姉さん達が戦闘を開始していないって事もそれは意味してる!」

 

「急げば間に合うかな……」

 

「間に合わせる!」

 

あたしは頬を叩く。

 

それを見て、護り手達が、一念発起したようだった。

 

「お前らが本当に強くなったのは事実みたいだな。 だったら、役立たずなりに壁になるか……」

 

「私なんかライザ姉さんに助けて貰ったし、恩を返さないと」

 

そう言ったのは、前に病院でざっくりやられていた子だ。

 

復帰早々この仕事は辛かっただろうに。

 

他にも何人かが協力の意を示す。それだけじゃない。

 

先に戻ったはずの護り手達が姿を見せる。

 

帰ったんじゃ無かったのか。

 

「あんた達!」

 

「このまま戻ったんじゃ恥ずかしすぎるからな! せめて、露払いくらいはさせてくれるか!」

 

「……分かった! でもドラゴンが出たらさがって!」

 

「分かってる。 あんなバケモンとやり合えないしな。 どうしてあんなバケモンを、守り神なんてあがめ奉ってたんだろうな」

 

護り手の、主力部隊から脱落した全員が武器を抜く。負傷して一度後退した彼らも、回復を入れて心を再度燃やしていた。

 

あたしは頷くと。

 

声を掛けた。

 

「よし、みんな突撃っ!」

 

「おう!」

 

「行くぞ! 魔物ども、覚悟しやがれ!」

 

一気に熱気が噴き上がる。

 

あたしは、レントとタオとクラウディアと頷きあうと。

 

城へと、突入を開始していた。

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