暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、敗走の末に

ボオスは、屋敷の自室に閉じこもっていた。

 

全ての経緯はアガーテが話したのだろう。みっともないほど右往左往した後、父はそうかとだけいい。

 

後は、何も言わなかった。

 

ランバーが食事を持ってくる。

 

黙り込んでいるボオスに声を掛けて来るが。応える気にもなれなかった。

 

ドラゴンに、文字通り手も足も出なかった。

 

戦ったのはウラノスとアガーテ。それにライザ達。

 

それも、ウラノスは魔力を寿命を前借りに使い切って、魔術師としてはもう戦える状態ではないそうだ。

 

アガーテも、決死の一撃で鱗を断ち割ったが。

 

それも致命打には届かなかった。

 

ドラゴンを最終的に斃したのはライザ達だ。文字通りのドラゴンスレイヤーだった。

 

それを、隅っこで見ている事しか出来なかった。

 

悔しいというよりも。

 

呆然としてしまう。

 

此処まで差がついてしまっていたのか。

 

それだけではない。

 

負傷して行軍から離脱した連中までまとめ上げて、ライザは一人だって死なせなかったのである。

 

ああやって年上の人間までまとめあげ。

 

そして戦意を取り戻させた。

 

ボオスには絶対に出来ないことだ。

 

父が直接遠征していても出来なかっただろう。

 

ライザと仲良くしておけと、父が言ったのは間違っていなかった。錬金術とか言う怪しい呪いだけではない。

 

何もかもが、もう勝てない存在になりつつあった。

 

「くそっ……」

 

吐き捨てる。

 

体は正直で、どうしても腹は減る。すっかり冷めた飯を腹にかっ込む。とにかくまずかったが。それでも空腹は収まった。

 

情けなくて言葉も出ない。

 

何が悔しいって。

 

ライザを認めている自分が確かにいるのに。あの時の事がどうしても忘れられなくて。反発が収まらないことだ。

 

どうして、あの時ボオスが言ったことに、ライザ達は反発した。

 

そうしなければ、助からなかっただろうに。

 

ぐっと拳を握りしめて、床を叩く。

 

石床は、冷徹すぎるほどの力の差を見せつけて。びくともしなかった。

 

ランバーが来る。夕食を持ってきていた。情けなくて、ランバーの目を見る事も出来なかった。

 

「ぼっちゃん、夕飯です」

 

「ああ……」

 

「明日の朝には村会を行います。 ぼっちゃんにも出るようにと、お館様が言っています」

 

「分かっている」

 

村会には、ボオスは最近は必ず出るようにしている。

 

これは少しでも、次世代の指導者としての経験を積む為だ。

 

だが、ボオスの発言には、周囲全員が反発する。

 

言葉では賛同する者もいるが。

 

絶対にあれは納得していないと分かる。

 

誰もがボオスを馬鹿にしている。

 

それが肌で分かってしまうのだ。

 

ハラワタが煮えくりかえる。

 

こんな島、滅んでしまえば良いのだろうか。

 

そう、ボオスは思った。

 

それ以上に、手元にある剣で、自分の喉も掻ききれない弱さが、更に不愉快だった。

 

 

 

クーケン島を見下ろすには、此処がいい。

 

そう、既にフロディアは把握していた。

 

手元にある古式秘具で、仲間と連絡を取る。

 

各地に散っている仲間の数はそれなり。貴族に取り入るために王都で活動している仲間が一番多いが。

 

各地で、監視をしている仲間も珍しくは無いのだ。

 

「此方ナンバー9442。 成長中の錬金術師を確認。 ドラゴンを打倒。 更に成長の兆しあり」

 

「了解9442。 そのまま解析を続けてほしい。 もしも世界を変える程の力を手に入れた場合は、動かなければならない」

 

「了解。 解析を続行する」

 

通信を終える。

 

この古式秘具は、竜脈を利用して各地の仲間と連絡を取れる。

 

フロディアのような戦闘タイプの仲間と、上層部にだけ渡されているもので。

 

現役を引退するまでは、基本的に死守することを義務づけられていた。

 

フロディアの仲間には秘密が多く。

 

それを仲間以外に明かすことは無い。

 

はっきり分かっているのは、数百年ほど前に古代クリント王国が滅びた頃くらいから、フロディア達は人間社会に溶け込んで動いている。

 

元々の戦略は昔から変わっていなかったらしいのだが。

 

その頃に、首脳部が「失望した」らしい、という話を聞いている。

 

失望というよりも絶望が近いらしいが。

 

ともかく、それはあまり関係がない。

 

フロディアはバレンツ商会のルベルトに取り入ることが任務の一つだったが、周辺が硬く。ルベルトは容姿を整えてあるフロディアにも興味を示さない。娘のクラウディアとは悪くない関係を構築できているが、それだけだ。

 

ルベルトとの間に子供を作ってしまうのが一番早いのだが。

 

こういった巨大資本を動かしている人間は欲求が強い事が多いのに。ルベルトという男は、どうもそれに当てはまらない例外らしい。今でも妻以外の女に興味が無いようだ。

 

この手の金持ちは、「愛人を作るのは甲斐性」とか抜かす事が多いのだが。例外はいると言う事である。

 

まあどうでもいい。

 

いずれにしても、バレンツ商会で大きな役割を確保できるのは確実。

 

子供が出来なくてもいい。

 

そもそも、仲間がどうして皆同じ顔をしているか。

 

それには、理由があるのだから。

 

灯台から音もなく飛び降りると、バレンツ商会に戻る。クラウディアは最近戻る事が減ってきているが。ルベルトは心配していないようだ。

 

のんきなものだなと思う。

 

錬金術師がどれだけ危険な存在か知りもしないから、なのだろう。

 

いずれにしても、フロディアは指示に従って動くだけ。

 

覚えているのは、灼熱の記憶。

 

凶悪な理不尽に蹂躙されて。

 

何もかも。

 

文字通り、何もかも奪われた最初の記憶。

 

それは仲間で共有されている。

 

この文明でも、既に何人か、凶悪な錬金術師は出ていて。悪の限りを尽くした後である。

 

才能依存の学問である錬金術は、どうしてもそうなる。

 

才能があるのと、個人の善性は全く関係がないから、である。

 

故に、フロディアはいなければならない。

 

いざという時に。

 

悪を滅するためにも。

 

 

 

(続)




アトリエシリーズでは恒例となっているドラゴン戦。全部ではありませんが、幾つかのシリーズではシナリオの佳境でドラゴンと戦う事になります。

ライザのアトリエシリーズでは、メインの敵にフィルフサがいることもあって比較的頻度は低めですが。それでも初代作ではしっかり話の節目に入っています。

ドラゴン戦を経て、更にこじれるライザとボオス。
混沌が深まり行きます。
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