暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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ようやくとけたライザ達とボオスの呪い。

それは雪解けに等しいものでした。

しかし現実問題として、フィルフサに対応しなければなりません。

そして、その圧倒的過ぎる軍勢の恐怖は、想像を絶するものだったのです。


2、聖旋

情報を共有する。

 

キロさんから語られる。この土地で、クリント王国が何をしたか。その話を聞いて、あたしは義憤に目の前が真っ赤になりそうになった。

 

許せない。

 

その場にクリント王国の錬金術師がいたら、生かしておくか自信が持てない。

 

それにだ。

 

キロさんの話によると、クリント王国の人間は多数の奴隷を使っていて。

 

奴隷をフィルフサが水がなくなった事により大増殖した後は真っ先に見捨てて逃げたのだと言う。

 

奴隷なんて使っている時点で大問題なのに。

 

しかも、最悪の場合は真っ先に見捨てて逃げる、か。

 

人間が今の何十倍もいて、技術も文明も発達していた国家だったとしても。

 

とてもではないが、許せる国家ではなかった。

 

その国家は、潰れてしまって当然だったのだと思う。

 

ふつふつとわき上がる怒りが、一段落すると。

 

あたしは頬を叩く。

 

アンペルさんが、抑えろと視線を向けてきている。

 

今、怒りをぶつける相手はいない。

 

今怒るべきではない。

 

今は、怒りを蓄えて。

 

怒るべき相手は、別にいて。そいつにこの怒りを、叩き付けるべきだった。

 

共存の証として作られたとか言う石碑も見に行く。

 

最初、クリント王国の者達は、言葉巧みに此処……グリムドルというそうだが。オーレン族の聖地にて長広舌を振るい、友好的に接してきたという。

 

その頃はまだこの辺りは美しい自然と青い空が残っていて。

 

オーレン族もフィルフサを押さえ込めていたから、そこまでの危険な相手だとは認識していなかったのだろう。

 

水を奪われて、初めて騙されたことに気付いたが。

 

その時にはクリント王国の者達は、圧倒的な大多数になっていて。この土地を手当たり次第にあらし尽くし。

 

挙げ句の果てに、オーレン族の食べ物に毒まで入れたそうだが。

 

ただ、本来はフィルフサが減る雨期で、逆にフィルフサが大繁殖した事もあって。

 

クリント王国の人間は蹂躙され。

 

そのままの勢いで、フィルフサは此方の世界。

 

あたし達の世界にまで侵攻してきた、ということだ。

 

馬鹿馬鹿しくて、溜息しか出ない。

 

本当にどこまで愚かになれば気が済むのだろうと思う。

 

キロさんはあくまで静かで、とても大人の女性に見えるが。オーレン族だ。人間とは違っているだろう。

 

何を考えているかは分からない。

 

少し前に聞いたのだが、リラさんも人間に分かりやすいようにある程度感情をコントロールして見せているという話だ。

 

つまるところ、今まで人間と接してこなかったキロさんは。

 

人間にわかりにくいだけで。

 

今過去の事を話して、ハラワタが煮えくりかえっていたのかも知れないし。

 

もしそうだとしても、責める事も、ましてや責任逃れもできなかった。

 

「先に言っておくけれど、貴方たちが謝る必要はないわ。 貴方たちは二十世代以上もクリント王国の時代から後の人間。 それにボオスから聞いたわ。 クリント王国は既に伝承の彼方にあり、錬金術師すら希になっているそうね」

 

「はい……」

 

「それならば、もはや関係もない。 ボオスも奴隷制度の話を聞いたときは顔色を変えていたということは、あの悪しき集団はもう生きていないと言う事。 それで私には充分よ」

 

フードで顔を隠しているキロさんは、寂しそうに笑う。

 

本当に凄い人だ。

 

好きかってしたクリント王国の人間の子孫だって、本来だったら根絶やしにしないと気が済まないと言い出してもおかしくないのに。

 

こんな人ばかりだったら。

 

此方の世界は、何倍も暮らしやすくなっただろうし。

 

王都で井戸の中のカエル達が、偉そうにすることも。

 

アンペルさんがそれに巻き込まれて、錬金術が出来なくなることもなかっただろうに。

 

そう思うと、本当に悔しかった。

 

アンペルさんが咳払いする。

 

「過去の話は理解出来た。 この土地を一人で護り続けた偉大なる戦士キロ殿、この土地の状況の説明を願いたい」

 

「いいわ。 私の知る限りの事を話しましょう」

 

「この土地にいるフィルフサの群れの規模と、王種について分かるか」

 

王種。

 

将軍の上にいるという奴か。

 

フィルフサの中でも最強の戦闘力を持ち、オーレン族の精鋭が束になっても勝てるか怪しいと言う。

 

リラさんも、存在は知っているが、それだけだそうだ。

 

将軍級ですら、オーレン族の手練れが複数掛かりで倒せるかどうか、という相手らしいから。

 

それは無理もないのだろう。

 

「現時点で将軍が67、その麾下のフィルフサも一軍団ごとにおよそ二万。 それも戦闘タイプのフィルフサだけで、ね」

 

「67! 2万!」

 

「ちょっとまて、それって……」

 

「今まで僕達が蹴散らして来たフィルフサは戦闘タイプじゃなくて諜報タイプだって聞いてる。 つまりあれより強いのが、130万はいるってことだよ」

 

タオが即座に計算する。

 

それを聞いて、その場のキロさん以外の全員が戦慄する。

 

確かにそんなのがあふれ出したら、乾期が終わるまでにロテスヴァッサは終わりだ。文字通り世界が踏みつぶされ尽くすだろう。

 

戦慄しているあたし達に、更にキロさんは告げる。

 

「そして王種は恐らくは「蝕みの女王」よ」

 

「なんだって!」

 

「間違いないわ。 一度将軍を潰して群れの一部を瓦解させたときに、遠くから見たから。 一対の鎌を持つ姿、他の王種とは違う隔絶した戦闘力が遠くからでも分かった。 リヴドルを滅ぼしてから、此方に侵攻してきたのでしょうね。 この辺りにいた群れは、クリント王国の時代に隣の世界に……貴方たちの世界に丸ごと侵攻して、そのまま帰って来なかった。 その後は複数の群れが割拠していたのだけれど、数十年前に「蝕みの女王」の群れが来てからは、それらの群れを統合し、私達も防戦一方になったわ」

 

そうか、それなら話も納得が行く。

 

リラさんの故郷を滅ぼした超級のフィルフサ、「蝕みの女王」。

 

それが更に複数の群れを従えているとなると。

 

確かにおぞましい規模にも納得である。

 

「まさか、王種も複数いるのですか」

 

「いや、どういうわけかフィルフサは同種で全く争うことをしないようでね。 群れの一部を割譲して、王種はさっさとこの土地から離れたようだったわ」

 

「それは良かった……。 仮に王種が複数いたら、天地が裂けても現状の戦力では倒す事は不可能だっただろう」

 

「……」

 

アンペルさんが胸をなで下ろす。

 

そして、黙り込んでいる皆を見回した。

 

「今まで私とリラは、「門」を閉じる対処療法しか出来なかった。 悔しいがな。 しかし、今私を超える成長を見せているライザがいる上に、此処で踏ん張っているオーレン族……それも今まで一人で耐え抜いてきたキロ殿がいる。 連携すれば、この土地をフィルフサから取り戻す事が出来るかも知れない」

 

「なんですって……」

 

「キロ、心が初めて揺れたな」

 

「ええ。 もしもそれが出来たなら……今まで死んで行った霊祈氏族の皆も、安らかに眠る事が出来るわ」

 

アンペルさんが、順番に説明する。

 

まずは水だ。

 

「クリント王国は、リラの故郷……リヴドルからも水を奪ったと聞いている。 此処でも同じ事をしたとなると、恐らく錬金術で何かをした可能性が高い」

 

「それについては、俺に心当たりがある」

 

「ボオス!?」

 

「俺の何代か前の先祖……バルバトスがどこからともなく水を持ち込んだんだ。 以降、俺たちはそれを管理して、島の支配者になった。 バルバトスは禁足地に足を踏み入れたと聞く。 何があったかは分からないが、そこで何かを見つけ、持ち帰ったんだろう」

 

これは、追い風だ。

 

それにモリッツさんが焦るのもよく分かった。

 

それは確かに焦る筈だ。

 

リラさんが詳しく聞かせろと言うが、アンペルさんが抑えろと言う。

 

不満そうにするリラさんだが。

 

此処で話の腰を折るわけにはいかなかった。

 

「よし、水の問題は何とかなるかも知れない。 まず順番としては、この地に水を戻す。 フィルフサの群れは、それだけで致命的な打撃を受ける。 だが、極めて強力な王種である「蝕みの女王」がいる。 群れの混乱に乗じて、奴を葬る」

 

「おおっ!」

 

「フィルフサに対して、我等オーレンの民は、氏族問わずにずっと防戦を強いられてきたのだ。 私の先祖の代からな。 まさか、反撃の嚆矢を撃ち込むことが出来るというのか」

 

「ああ。 キロ殿は気にするなというが、この土地を破壊し尽くした者達の分も、我等がやらなければならない」

 

あたしを見るアンペルさん。

 

勿論、あたしも同じ思いだ。

 

「やろうみんな!」

 

「おう! フィルフサの群れを押し流してやるなんて、爽快極まりないだろうな!」

 

「確かにどれだけ戦術を駆使しても、百万を超える群れをどうにかするなんて、完全に無理だ。 戦略の段階で、敵を倒すのが此処は最善だと思う」

 

「ふふ、活路が見えてきたね」

 

クラウディアも嬉しそうである。

 

咳払い。

 

アンペルさんは、まだやる事があると言う。

 

「その前に、時間を稼ぐ必要がある」

 

「アンペルさん、聞かせてください」

 

「ああ。 フィルフサは王種が統率しているが、群れを統率しているのは基本的に将軍なんだ。 恐らくだが、この近辺に将軍がいる。 そいつを倒せば、大侵攻までの時間を稼ぐことが可能だ」

 

「あのライザのフルパワーの魔術を余裕で耐え抜いた将軍に勝てるのかよ!」

 

レントが驚く。

 

まああの場にはレントもいたのだ。

 

あたしの全力詠唱魔術で小揺るぎもしなかった上に、頭を撃ち抜かれても効いている様子もなかったフィルフサの将軍。

 

それを倒せるのとなれば、昂奮するのも道理である。リラさんが、付け加えてくれる。

 

「恐らくその将軍は、「蝕みの女王」直下の最強個体だろう。 この場で侵攻の準備をしている将軍は、違う個体と見て良い。 フィルフサは役割をそれぞれ分担して動く生物だ。 大物見をする将軍と、侵攻部隊の指揮を執る前衛の将軍は、別個体だろうな」

 

「ならば勝ち目があるんですね」

 

「恐らくな」

 

皆でキロさんを見る。

 

キロさんは少し考え込んでから、頷いていた。

 

「確かに私も、このグリムドルを取り戻したい。 そのための時間稼ぎであるというのなら、体を張りましょう」

 

「キロさん!」

 

「ありがとうございます! 将軍の居場所に心当たりはありますか」

 

「……奴なら、すぐ近くにいるわ。 私が雑魚ばかり駆逐している事を知っているから、どうでもいいと思っているのでしょうね」

 

そうか、ならばなおさら追い風だ。

 

話を聞く限り、キロさんの実力はリラさん以上。それだったら、実に頼りになる。

 

ボオスに視線をやる。

 

頷く。もう動く事は出来る、ということだ。

 

クラウディアが立ち上がった。そして、深呼吸する。

 

「あの、聞いてほしいの」

 

「どうしたクラウディア」

 

「……私、勇気がほしくて、ライザと一緒に行くことを選びました。 ライザの前では、勇気を出す事が出来ました。 今、此処で。 こんな素敵な人達の前でなら、もうちょっと勇気を出せると思います」

 

ケースから、フルートを取りだすクラウディア。

 

クラウディアは。

 

ルベルトさんの前で、フルートを吹くのが目標だと言っていた。

 

これは、邪魔してはいけないだろう。

 

だから、クラウディアが。勇気を振り絞るのを、あたしは見守る。

 

クラウディアが、フルートを吹き始める。

 

前に聞いたとても優しい曲だ。

 

こう言うときは、気が昂ぶるものだが。

 

クラウディアは特にそういう事もなく、落ち着いて笛を奏でている。それどころか、以前よりも更に魔力が上がっているか、これは。

 

目を細めて聞き入るリラさんとキロさん。

 

二人が立ち上がると、歌い始める。

 

そうか、オーレン族にも歌はあるんだ。

 

確かに、人間と違っても、違う文化を持っていても不思議では無い。姿もとても似ているのだから。

 

澄んだ歌声だ。

 

リラさんはどちらかというと低い声だし。キロさんも、落ち着いた声だったが。

 

こんなに美しい澄んだ声を、出す事も出来るんだ。

 

そう思うと、凄く感動させられる。

 

クラウディアの、森の中の小川のせせらぎを思わせる演奏が終わると。

 

皆が拍手した。

 

「すごいよクラウディア!」

 

「ああ、名人の演奏って感じだ!」

 

「たまにくる下手な吟遊詩人なんかよりずっと上手だったよ!」

 

レントとタオが、あたしに続いて絶賛する。

 

クラウディアは、恥ずかしそうにした。

 

アンペルさんは何も言わない。

 

リラさんとキロさんは、歌い終えると、静かに皆を見回した。

 

「まさか、人間からこれだけ純粋な音を聞けると思わなかった」

 

「ええ。 まるで一瞬だけでも、此処に穏やかだった頃の聖地が戻って来たかのようだったわ」

 

「……」

 

ボオスが俯く。

 

だが、顔を上げていた。

 

勿論、この作戦は戦力で劣る上に、怪我をしたばかりのボオスにも参戦してもらう。

 

これが、禊ぎになる筈だ。

 

アンペルさんが、さっそく地図を書き始める。

 

作戦を、タオと練り始めていた。

 

 

 

クラウディアが奏でたフルートで、皆が少なからずリラックスしたのは確かだった。

 

作戦はすぐに決まる。

 

洞窟から出ると、キロさんが頷く。どうやらこの辺りに展開しているフィルフサは変動無し。

 

将軍はその強さから、殆ど護衛を置いていないらしい。

 

キロさんは、皆に言う。

 

「私が雑魚を引きつける。 護衛軍はリラ=ディザイアス。 白牙の貴方に任せるわ」

 

「ああ。 アンペルも私と同じ作戦に出る」

 

「ボオス、事前の作戦通りに頼むわよ」

 

「ああ、任せておけ」

 

ボオスには、あたし手製の爆弾を渡した。使い方も既に説明してある。

 

すぐにボオスは把握した。後は、使うだけだ。

 

洞窟から出て、丘に上がると、見える。

 

よりドス黒い灰褐色の装甲をした将軍だ。あいつが、恐らくさっき話題になった、この辺りのフィルフサをまとめている元締め。

 

そしてフィルフサは、統率を失うとバラバラになる。

 

これは文字通りの意味らしく、殆どの個体はその場で崩れてしまうそうだ。だとすれば、将軍の強さも納得である。簡単に倒されたら、それこそ集中狙いで潰されてしまうのだろうから。

 

オーレン族が苦戦し続けた相手だ。

 

これだけの好条件が揃っても、簡単にはやれないという事である。

 

将軍相手の大一番。

 

絶対にし損じる訳にはいかない。

 

あたしは頬を叩く。

 

そして、態勢を低くした。

 

体が心なしか軽いし、全身が昂奮でほてっている。クラウディアがそうであるように、あたしも一皮剥けたかも知れない。

 

雑多なフィルフサの群れが、蠢いている中に。

 

キロさんが、まずは先陣を切った。

 

「いくわ。 敵の乱れを見逃さないで」

 

「おうっ!」

 

全員が、それに続く。

 

ちょっとまて。キロさん、非常識なほどの速度だ。本当にこれは、生き物が出している速度なのか。

 

キロさんは、リラさんでも鈍足に見える程の速度で、文字通り敵に踊り込む。この速さ、魔力を身体強化に全振りしている人間の戦士なんかでは、及びもつかない。少なくとも、あたしが見た事がない次元だ。

 

リラさんが竜巻だとすれば、キロさんは雷だ。

 

それも、何もかも破壊し尽くす、空の怒り。

 

キロさんが、たちまちにして雑魚を巻き込み、群れごと粉々にしていく。何をしているか、早すぎて分からないが。

 

ただキロさんにも、体力的な限界があると聞く。

 

戦闘を、もたつかせる訳にはいかなかった。

 

上空から来る「見張り」。それも複数。

 

多数の針が飛んでくる。

 

あたしが、それを爆弾で相殺。ルフトで無理矢理弾き散らす。その風に乗って、リラさんが跳ぶ。

 

いや、もはや飛ぶの領域だ。

 

見張りの一体に乗り込むと、背中にクローを叩き込む。

 

空中で、見張りが入り乱れての激しい戦闘が開始される中、上空にアンペルさんがあの黒い光を放つ。

 

見張りの一体が、高高度で翼を切りおとされ、きりきり舞いしながら落ちてくる。それで、フィルフサの群れが少なからず混乱する。

 

走る。

 

ひたすらに、混乱の中を走り抜ける。

 

あたし達は、全て任された。

 

いずれにしても、将軍を倒せなければ。話にならないのだ。

 

戦い方は分かっている。とにかく装甲を大規模に破壊して、中にあるコアに物理攻撃を叩き込む。

 

普通の魔術はフィルフサにとってはただの餌だ。

 

恐らくだけれども。

 

あの何をしても効かない有様からして、装甲の全てから魔力を吸収していたという事なのだろう。

 

そして、あたしの魔力を全て飲み干しても余裕というレベルのキャパが、将軍にはあるということだ。

 

だったら、それはそれとして。

 

戦い方は別にある。

 

あたしの爆弾も、あの時とは火力が違う。ドラゴン戦を想定して強化し。そしてあの時の雪辱も考慮して改良を重ねてきた。

 

今度は、以前と違うことを見せてやる。

 

前に、尻尾のある奴が躍り出てくるが。

 

ボオスが投擲した爆弾が、炸裂。其奴が怯んだ隙に、四人で一気に走り抜ける。追いすがろうとした其奴には、キロさんが躍りかかると。

 

瞬時に細切れにしてしまった。

 

あの人は徒手空拳だと思うのだが。

 

流石にこの土地で、ずっとフィルフサとやり合い続けただけのことはある。最後の、最強の戦士だ。

 

しかし体力の問題もある。

 

あまり長い事、時間は掛けられない。

 

「見えたよ!」

 

タオが叫ぶ。

 

着地したリラさんが、将軍の周りにいるフィルフサに襲いかかる。どうやら見張り全てを撃墜してきたらしい。手傷を受けているが、まるで気にもしていないのは、まさに戦士そのものだ。

 

それにアンペルさんが続く。

 

瞬く間に苛烈な戦闘が開始される中。

 

あたし達四人は。

 

フィルフサの将軍と相対していた。

 

やっぱり違う。

 

小妖精の森の中で遭遇した将軍とは、別の個体だ。だが、プレッシャーの凄まじさも確かである。

 

他のフィルフサとはものが違う。

 

それも確実である事がよく分かった。

 

時間は、それほどない。

 

短時間で此奴を仕留めなければならないのは骨だが、それでもやるしかない。二万からなる群れの真ん中に飛び込んだのだ。

 

勿論密度は薄いが、それでも時間を掛ければ、キロさんやリラさんアンペルさんでも処理出来ない数が来るし、ボオスの陽動も意味を為さなくなる。

 

また後方で爆弾が炸裂する音がした。

 

あたしは杖をフィルフサの将軍に向ける。

 

四足で、重厚な虫のような形をしていて。頭に角を生やして。背中に宝石のような結晶を持つ其奴は。

 

どうやら、あたし達を敵と見なしたようだった。

 

文字通り、大気を揺るがす雄叫びが、こっちに圧を加えてくる。

 

恐らくだが、戦闘タイプのフィルフサ全てを集結させようとしている意図もあるはずだ。

 

周囲はリラさんとアンペルさん、キロさんが全力で暴れていて。文字通り、一種の空白地帯になっている。

 

それを、無駄には出来ない。

 

「行くよ、みんなっ!」

 

「おう、やってやらあっ!」

 

「無茶だけどやるしかないか……」

 

「支援は……任せて!」

 

将軍が、上半身を持ち上げ。そして、此方に突進してくる。

 

そのプレッシャーは。

 

正直、古城で戦った、ドラゴンを凌いでいた。

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