暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ 作:dwwyakata@2024
禁足地には、まるで何かの台のような巨大な遺跡があった。これは既にアンペルさんも調査したらしいのだが。
危険だから近寄らないようにと言われている。
この辺りは、川や泉もあって、真水が彼方此方にある。それもあるからだろうか。植物の質は、ずっとクーケン島周辺よりも良かった。
此処を、フィルフサどもに踏み砕かれる訳にはいかない。
恐らく、フィルフサに追われた魔物の一部が居座っているのだろう。明らかに汽水に適応した鼬がいて。
それらは。少なからず傷ついていた。
リラさんが視線を向けると、すごすごと逃げていく。
昨日同胞を殺されて、それで勝てないと知っているのかも知れない。だとしたら、賢明な事である。
クラウディアが手を振って来る。
この間着ていた絹服よりも、グレードを落としているらしい。恐らくルベルトさんも、仕方がない投資だと判断したのだろう。
だが、此方も筋を通したい。
クーケン島に戻る際には、服とはいわないが、せめて同価値の絹の反物くらいは持参したかった。
「ライザ、こっちだよ!」
「どれどれ、おお……!」
其処には、既に中身がない繭が複数。しかも黄色い。
黄金色の絹か。
若干埃や他の汚れで汚くなっているが、それでもこれは洗浄すれば素晴らしい色合いを出せる筈。
白銀に近い絹とは、それはそれとして違う色で、これもまた良いだろう。
量産出来れば、いい売り物になるかもしれない。
しかも人間が手助けしないと生きていけない蚕と違って、此方は成虫を殺したりしなければ、一定量を常に採取できる。
その上多分あたしでなければ布に仕立てられない。
そうなってくれば、クーケン島の財源になる可能性も高かった。
恐らく、幼虫が食っている草もメモ。
クーケン島には自生していない植物だが、これは育てるのはそれほど難しく無い可能性もある。
丁度アトリエの側に、開いている土地もある。
まずは自分で育てて見て。
育つようなら、蚕も移植して。
それで上手く行ったら、クーケン島の開いている土地に持ち込んでみる。それで、順番を経て。絹糸の産業をクーケン島に持ち込めるかも知れなかった。
それはそれで。
まずは糸を採取する。
これは、蜘蛛の糸よりも魔力含有量が多いが。その代わり、若干脆いかも知れない。
難しい顔をしているあたしに、クラウディアが声を掛けて来る。
「どう、使えそう?」
「……試してみないとなんともね。 羊毛との組み合わせもやってみるかな」
「どうやら考え込んでいるらしいな。 邪魔はしない方が良さそうだ」
「周囲を警戒しろ」
リラさんとレントが気を利かせて、周囲を警戒してくれる。
あたしは考え込みながら、植物の実を回収。見た事がある植物だ。育てるのは、一年もあれば充分だろう。
その時にはアンペルさんもリラさんもいないだろうが。
あたしのアトリエを放棄するつもりはさらさらない。
必要な物資を、他にも回収してから、すぐにアトリエに戻る。もう夕方近くなっていた。
アトリエに戻ると、クラウディアが一度レントと一緒にクーケン島に戻る。夕食を作って持ってきてくれるという。
ありがたい。
あたしは黙々と釜に向かうと、調合を実施。
まずは羊毛を利用して、糸を作って見る。
この糸は柔らかいのだが、どうにも強度に欠ける。普段着には満足出来る手触りを作れるのだが。
それだけではちょっとどうにも。
そこで、思いつく。
まずは蜘蛛の強力な糸で布を作る。
これによって作り出した布は、手触りは最悪だが、強度は鋼鉄並みだ。しかも柔軟で、魔術をこれそのものに込める事も出来る。
裏地は羊毛から作り出した布でいい。野生種の羊が襲ってきた時。殺して皮ごと糸を回収している。
それを使って、布は幾らでも作れる。
この布は少し厚めにして、裏地にする。
裏地にすることで、服としては存分な肌触りになる。
そして絹だ。
絹は、試してみたが。やはり上品な金色になるが、その代わり強度に問題が出てくる。その代わり、魔術に関する適応能力が極めて高い。
ただ金色というのは、全部そうしてしまうと下品極まりない色になる。これは紫あたりと同じだ。
考え込んだ後。
あたしは、四層構造にする事にした。
内側を羊毛から作った布。これは錬金術ではありふれたものらしく、モフコットというらしい。
そして中心部に、クロース。
これも錬金術ではありふれた布だ。
外側には、基本的に絹糸から作り出した布をつける。ただこの黄金の絹糸は、色合いがはっきりいって下品で、セレブが好むかも知れないが。人間が着てもはっきりいって好ましいものとはならない。
一応、反物にはして見るが。
これはあくまで要所に用いる。
外側には、考え抜いた上で、モフコットを薄く加工して。更にクロースと混ぜ合わせたものを使う。
この四重構造にして、服を作る。
勿論この服はかなり分厚いので、デザインが大事になるが。
魔術をそのまま織り込むことが出来るので、通気性や、なんなら冷やすことだって出来る。暑い中で活動できるように調整も可能だ。
まずは下着から作って見る。
風呂場で着替えてみるが、これはいい。
水を吸い込ませてみると重くなるが。そんなもの気にならないほど、身体能力を上げることが可能だ。
男共の下着もついでに作って見る。
なに、お父さんの下着を洗濯しているのだ。
男の下着の形状なんて知っている。
そのまま作って、レントとタオに試して貰うが、これは良いと大絶賛だった。肌触りにしても、文句のつけようがないという。
また、強靭な蜘蛛糸をベースに作った糸を使うことで、下着を引き締めることも緩めることも自在に出来る。
これでサイズが多少変わっても仕える筈だ。
続いて服を作る。服といっても実用品だ。お洒落のためのものではない。
丁度、其処でクラウディアが戻って来た。食事前に、皆で試着する。
服のデザインについては、あたし達は今着ているものをベースにして。
クラウディアは、今着ている上品な絹服をベースに仕上げて見る。
それぞれ順番に着替えてみると。
あたしは、強靭で、なおかつ柔軟性が高い服に驚いていた。これだったら、多少攻撃を貰ったくらいではなんでもない。
しかもその気になれば、更に優れた素材で強化も出来る筈だ。
今までは麻とかを中心素材にした服を着ていたから、肌触りもはっきりいって比べものにならないほど優れている。
クラウディアにも、遠慮なく感想を聞く。
クラウディアは少し動いてから、満足そうに頷いていた。
「服は重いはずなのに、信じられないくらい体が軽いわ!」
「身体能力を上げる魔術をバチバチに仕込んでるからね。 相対的に見て、ずっと動ける筈だよ」
「凄いわライザ!」
「あ、あの。 それで……デザインは大丈夫?」
クラウディアの絹服とできるだけ似せているが。やはり金色を出来るだけ表に出さないようにするデザインにして正解だったか。
まっきんきんにしていたら、かなり下品な色合いになっていたが。
それを上手に複数種類の布で隠し、それでいながら要所で金色を出しているので。これで良いとは思うが。
「うん。 これなら、商会で扱える服と遜色ないと思うわ」
「良かった……。 じゃあ、絹の反物を作っておくね。 絹そのものの反物だったら、多分この間のお洋服の代わりくらいにはなると思うし」
「ふふ、ライザは義理堅いね」
「島の命運掛かってますから」
フィルフサを退けた後、クーケン島の命運を握るのは、バレンツ商会とのコネだ。
ここで筋を通しておけば、ルベルトさんとのコネをしっかり作る事だって出来る。
勿論ルベルトさんも、今ではあたしを認めてくれているけれども。それ以上に、駄目にしたクラウディアの服の分くらいは補填しないと。
それが筋を通すと言う事だ。
この服は、そのまま洗濯も出来る。ただし着ていないときはかなり重くなるので、それだけは注意だ。
それを皆に告げてから、食事をする。
それぞれの予備を二着くらいずつ作る必要があるか。
アンペルさんとリラさんの分も作る。
リラさんはかなり複雑そうだ。
リラさんは、いつも恐らく異界の獣の皮をベースとした服を着ているのだが。
あたしが作った服を着ると、これはこれで悪くないと満足そうだった。
アンペルさんは、それこそ服なんて何でも良いという顔をしていたが。
とりあえず、さっさと着て貰う。
アンペルさんも、割と悪くないと着てから口にした。
アンペルさんくらいの錬金術師だったら、普段は自分の服くらい自作できるだろうに。
それを思うと、ちょっとだけ寂しくなってしまった。
夕食を終える。
この時点で、あたしがやっておきたかった事の半分はなんとかなった。
後一日。
その一日で。
更に、できる事を増やしたかった。
翌朝。
まずはクーケン島に出向く。
最初にバレンツ商会に赴いて、絹の反物を渡した。昨晩。それなりの数の反物を、それぞれ仕上げたのだ。
ルベルトさんは、金絹の反物をみて驚いて。しばらく上から下から見ていたが。やがて、咳払いした。
「これは、どうやって作ったのかね。 錬金術かね」
「錬金術です。 絹そのものは、野生の蚕から使い終わった繭を貰いました。 家畜化した蚕は仕方がないとしても、野生種の蚕を無意味な殺生はしたくありませんでしたので」
「野生種の蚕は私も知っているが、繊維がどうしても脆くて糸に繰るのは難しく、更に言うと反物にするのは非常に難度が高い。 錬金術とは凄まじいな……」
これで勘弁してくださいと言うと。
咳払いしたルベルトさんが、真剣な顔で計算を始める。
ほどなく、お金を一袋くれた。
「ルベルトさん!?」
「この反物は、娘の服の代金を引き替えにしても、これくらいの対価を払う価値があるものだ。 君が筋を通したように、私も筋を通さなければならない。 受け取ってくれ」
「ライザ、筋を通すというのなら……」
「分かりました。 ありがとうございます」
実はクロースやモフコットも持ち込んでいた。足りない場合はこれもと引き渡そうと思っていたのだが。
その必要はないか。
そのまま、島を見て回る。
あたしは。この間ボオスを助けた事もある。かなりそれが話題になっていて、困っている人が声を掛けて来る。
その場で解決できるようなものは、即座に解決してしまう。
今は、それだけの力があった。
護身用の道具がほしいと言う人には、簡単に使える、目くらまし程度になる爆弾を渡しておく。
火力がありすぎるものを、知人とは言え責任が持てない場所に届かないようにする。
それが錬金術師としての仕事だ。
それにこの島の住人はそこまで柔でもない。
軽く出かけて来るらしいので、それで充分だろう。
また、服を一着、近場の街に出かけるという知人の女性に渡す。
結婚相手に餓えていると噂の女性で。しかも丁度良い条件の相手が島にいないのだ。
そこで、よそ行きにもなるとクラウディアが太鼓判を押してくれた服を渡すと。大喜びで出かけて行った。
護り手で訓練を受けていた人だ。
まあ、身を守ることは難しくもないだろう。
後はお薬だ。
護り手の本部に出向いて、お薬を渡す。後はエドワード先生の医院にも。
医院で、ウラノスさんと顔を合わせる。
もう前線に立てる魔力は失ってしまったが。
それでも、経験豊富。後続にアドバイスは充分に出来る力はある。
幾つか話をして。クラウディアは真剣にアドバイスに耳を傾けていた。話を終えると咳き込むウラノスさん。
エドワード先生が医院の奧に連れて行く。
きっと、あまり状態は良くないのだろう。医療費は、ブルネン家が全額負担するらしいが。
何とか、根本的な回復をさせてあげたかった。
納入する薬の品質は毎回上がる。それに、エドワード先生は感謝してくれる。
後は、アトリエに戻る。
アトリエに戻った後は。
ひたすらに、爆弾の改良を進める。
また、金属の改良も。
幾つかの鉱石を試しながら、更に強靭な金属を作れないか試す。そうしているうちに、ついに参考書にあった更に強力な金属が作れそうな手応えがある。
しばらくそれに没頭。
無言でインゴットを作ってはエーテルに溶かし、またインゴットにする事を繰り返す。
時々声を掛けられて、食事をしたことは覚えているが。
完全に錬金術に頭のリソースを割り振っているからか。
何を食べたのか。
全く覚えていなかった。
夕食だと言われて、食事にする。
トイレも勿論アトリエには作ってあるので、思い出したようにトイレに出向く。
なお、此処では肥は必要ないと判断しているので、糞便は乾燥させてから自動的に寄せて、そのまま土に返す仕組みにしてある。
これくらいの装置は、錬金術で簡単に作れる。
ついでに水洗で洗えるようにしてあるので、衛生面も問題ない。
トイレを済ませた後、食事をする。クラウディアは台所を活用して、料理をせっせとしてくれている。
リラさんは、野戦料理は得意そうだが。
こういった料理はまず無理だと見て良い。
食事を終えると、まずはアンペルさんに見せる。
「見てください、アンペルさん。 クリミネアです」
「ふむ。 どれどれ……」
クリミネア。
青黒く輝く合金だ。
ブロンズアイゼンとは比較にならない強度を持ち、全く錆びることがない。錆びないという特性はとにかく強い。
魔術に対する親和性はブロンズアイゼンと大差ないが、それ以外の全てで勝る強力な素材である。
問題は、やっとこれを作る事が出来たという所で。
これから皆の装備を一式作ると、徹夜になると言う事だ。
目を細めてクリミネアを見ていたアンペルさんだが、やがて頷いていた。
「これは素晴らしいな。 いずれ更に上位のゴルトアイゼンにも手が届くかも知れない」
「本当ですか?」
「いや、かも知れない、ではないな。 あと少し時間があれば、確定で届くだろう」
だから、自分を大事にするように。
そうアンペルさんは念を押した。
へへ、と。あたしは頭を掻く。
確かに、このまま行くと徹夜コースだった。
それを察して、アンペルさんは釘を刺してくれたのだと言える。
夕食は、久々に味がした気がした。
見ると、タオも似たような状態だったらしくて。口にしていて、ほっとしているようである。
或いは、タオの方が重症だったかも知れない。
確かに此処には、あっちへ行ってしまっている状態のタオをとめる者が誰もいないのだから。
夕食後、風呂に入って。
それで、眠る事にする。
明日、朝一番にブルネン邸に出向くが、とりあえずクリミネアの加工は後回しだ。
明日は戦闘が想定される状況は無い。
此処で無理をする意味は一つもないし、してはいけないのである。
風呂に入ると、疲労から全身が溶けそうだ。
途中でクラウディアが声を掛けてくれて、我に返る。風呂で寝たらおぼれ死にかねないのである。
今日、調合中は頭をフル稼働させていたらしい。
その反動で、頭が未だにくらくらしている。
これはどうも、もう寝る以外には選択肢は無いらしい。
風呂から上がりながら、あたしは苦笑していた。
アトリエで、男共と女衆で別れて眠る。
こうしてみると、アンペルさんとリラさんは、別々でもなんともなさそうだし、本当にそういう関係ではないのだろう。
あたし達は元からこうだ。
クラウディアが加わって変わるかと思ったが、それもないらしい。いずれにしても、あたしはその場でぐっすり。
あたしが調合している間に、クラウディアとレントは威力偵察にずっと出ていたようなので。
クラウディアもすぐに寝入ってしまったようだった。
気付くと朝だ。
外に出ると、軽く体を動かす。新しく作った服は、なんぼでも同じ服を作れるから、使い捨て同然に出来る。
今までのは一張羅同然だったのだ。
貧しい島だと、服はかなりの貴重品になるのである。
それが麻とかのものであっても。
しかも、クラウディアの話だと、もっと貧しい集落はなんぼでもある。裸同然で住民が暮らしている土地も多く、そういった場所だともっと酷い風習が集落全域を覆っていることも珍しく無いとか。
まだ、此処はマシなんだ。
それは分かっているけれども。
あたしは、それで妥協するほど、あきらめは良くなかった。
「おっす、おはよう」
「おはようレント。 一番とは珍しいね」
「いや、今後の事を考えてな。 睡眠をコントロールする訓練をしているんだ」
「なるほどねえ」
レントはいずれ、一人で旅をすることを想定しているという。
これは、昨日の夕食で軽く聞かされた話だ。
勿論いずれ、だが。
一人で旅か。
そうなると、何もかも一人でやらなければならない。
料理などは、今リラさんから野戦料理を教わっているそうだが。
それ以外にも靴などを繕ったり、食事を必要に応じてその辺のもので得たりという訓練もいる。
一応、あたしもその時の事を考えて、餞別の準備をしている。
あたしだって、この悪ガキ軍団がいつまでも一緒だとは思っていない。
いずれそれぞれが別の道に行く可能性もあるし。
その時は、またその時だと考えていた。
「二人とも、早くから起きているな」
「リラさん」
二人で訓練をしていると、リラさんも起きてくる。
丁度良いので、軽く見てもらう。流石にリラさんはまだまだ全然次元違いの強さにいるけれども。
それでも、基礎部分を軽く見てくれるだけだった。
ただ、渡した服は着てくれている。
それなりに気に入ってくれたようだ。一番気に入った理由は、頑強な上に自分に強化魔術が掛かるから、だろうが。
リラさんの動きを見ていると、これだけ頑強に作った服でも少し心配になってくる程なので。
いずれ、更に強力な服を作りたいと思っていた。
リラさんは、軽く動きを見てくれた後、言う。
「後で、頼む事がある」
「? あたしにですか?」
「ああ。 このことは誰にも言うな。 レントも、他言無用だ」
「分かりました」
レントも、師匠であるリラさんにはとにかく対応が丁寧だ。いずれ一人旅を想定しているならなおさらだろう。
それにしても、リラさんからの頼み事とはなんだ。
今は時間がないから出来ないが。
程なくして、皆起きだしてくる。
一番遅かったのは、タオだった。
庭で軽く体を動かした後、朝食を取る。それから、アンペルさんが手を叩いて、話をした。
「それではブルネン邸に出向く。 皆、気を付けろ。 勿論ボオス少年が裏切る可能性は低い。 だが、モリッツはどうかはわからん」
「はい。 念の為に注意はします」
「ただ、流石にモリッツさんも、今のライザに喧嘩を売るほどバカじゃないと思うんだが……」
「人間は地位が脅かされると、とんでもなく愚劣な行動に出ることがある。 私は何度もそれを目にしている」
レントの言葉に、リラさんが正論をぶつける。
レントも黙り込むしかない。
あたしは、なんとなく分かる。
今、錬金術で飛翔したあたしは、文字通り脂が乗りに乗っている。
だが、此処でもしも叩き落とされるようなことがあったら。
どんな風に心が壊れて、おかしな選択をしてしまっても、不思議では無いだろう。
まずは、クーケン島に船で向かい。それからブルネン邸に出向く。
その際に、邸宅の調査をするために手土産が必要だ。悩んだが、此処も絹の反物で良いだろう。
あのルベルトさんの反応からして、かなりの値打ち。それはモリッツさんも分かる筈だ。
何より、反物である。
誰かを傷つける可能性もないのだから。
勿論価値が高すぎる場合、人を狂わせる可能性もあるだろうが。ルベルトさんの反応からしてそれもない。
ブルネン家からして見れば、常識的な範囲内での高級品と見て良かった。
一応念の為、護身用の装備も持ってきてはある。
さて、此処からだ。
アンペルさんだけに交渉を任せる訳にはいかないだろう。いざという時は、あたしも動かなければならない。