暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、最初の一歩

ライザは別だといって、私、クラウディアの前から連れて行かれた。タオくんも、百科事典のようなものを渡されたみたいだ。

 

そもそもタオくんは典型的な本の虫で。

 

それを見ると、すごく嬉しそうに読み始める。クリント王国の言葉の基礎部分を記しているものらしい。

 

タオくんにつきっきりで教えるわけにはいかないということで。

 

それで、本を渡されたらしい。

 

というか、そもそもだ。

 

タオくんのようなタイプは、自習の方が向いているらしい。それもあって、自習できる本を渡したのだろう。

 

私とレントくんは、借家の裏庭に。

 

レントくんの周囲を歩いた後、リラさんは告げる。

 

「基礎的な体はしっかり作っているな。 だとすると、お前がやるのは一つだ」

 

「な、なんでしょうか」

 

「お前はあのライザという娘に頼りっきりだろう」

 

絶句するレントくん。

 

そういえば。レントくんもタオくんも、なんだかんだいいながらライザに引っ張られて動いている。

 

多分、戦うときもそうなのだろう。

 

私は、あの時あっさり意識を手放してしまったから、三人の戦いぶりは殆ど覚えていないのだけれども。

 

レントくんの反応からして、どうも間違っていないらしいことは私には分かった。

 

「か、返す言葉もありません」

 

「自覚しているのならそれでいい。 お前がやる事は、戦術の理解だ。 基礎的な事は私が教えてやるから、後はそれを実戦で応用しろ」

 

「はいっ!」

 

すっと、リラさんが私を見る。

 

そのオッドアイの目は、あの時私を襲った感情がないエレメンタルのものよりも。ずっと冷たく。

 

見透かすようで、冷や汗が流れた。

 

この人は、魔物よりおっかない。

 

それを何となく理解出来た私は、それでもこのまま勇気を出せないままでいたくはなかった。

 

「それで、勇気を出したいと言っていたな」

 

「はい。 私、色々あって、それで勇気が出せなくて。 音操作の魔術を習っているんですけど、それだと貧弱すぎて……」

 

「まずは見せてみろ」

 

頷くと、横笛を取りだす。

 

大事な笛じゃない。

 

戦闘に使うための。質素なものだ。

 

魔術を展開。

 

私の魔術は、他者の力を上げたり、若干治癒したり、そんな程度の力しかない。魔術を込めたこの笛を自由に操って、魔物を打擲することも出来るけれども。魔物に効いた記憶がないほど非力だ。

 

それを見せると、リラさんは目を細めていた。

 

「なるほどな。 音楽は好きか」

 

「はい」

 

「その好きだけで練り上げた魔術だなこれは。 才覚は別の所にある」

 

そうなのか。

 

もしそうなら。

 

どうすればいいのだろう。

 

困惑するクラウディアに、リラさんは一つずつ説明していく。

 

「その様子だと、魔術と常にある生活をしていたわけではなさそうだな」

 

「はい。 いつも守られてばかりで」

 

「その割りには隊商を抜け出して、時々何かしていたようだが」

 

「え? そうだったのかクラウディア」

 

レントくんは気付いていなかったみたいだけれど、その通りだ。

 

私は時々、隊商を抜け出して、ある事をしていた。

 

固有魔術に関する事だ。

 

そもそも、あんな場所で魔物に襲われたのもそのせい。今までも、何度か危ない目にあっている。

 

それでも、お父様がそもそも色々あって、私に過保護な事もある。

 

どうしても、時間が取れなくて。

 

危険なのは分かっていても、ああやって隊商を外れなければ時間を作れなかったのである。

 

「そうだな、お前はまずは好きな事と魔術を切り離すことを考えろ。 見た所、お前の魔術は魔力の物質化にあると見た」

 

「魔力の物質化ですか?」

 

「そうだ。 剣やら弓やら鎧やらを魔術で作り出すものだな。 基礎については私が教えてやるから、自分でそれは磨き抜け」

 

はいっと、返事をする。

 

ライザが一度、自宅に戻ったらしい。空を見ると、太陽の位置から考えて、もう時間が余り残っていない。

 

レントくんは座学に入る。

 

同時に私は、指示を受けた。

 

「魔術で、自分がもっともたくさん敵を殺傷できそうなものをイメージしろ」

 

「はい」

 

それなら、弓だ。

 

前に隊商に凄腕の護衛がいたことがある。その人は女性だったのだけれども、使う弓がものすごくて、百発百中、屈強な魔物も射貫くほどのものだった。

 

弓というのは元々女性の武器ではなく、屈強な男性でも引くのに苦労するという話を後から聞いたので。

 

恐らくは、その人も魔術で身体強化をしていたのだと思う。

 

「弓全てを魔術で作るのは少し難易度が高いだろうな。 糸の切れた弓があったら、まずはそれを使え。 糸と矢を魔術で作って、それを放つ訓練からだ。 隊商にあるようなら、それを使う事だな」

 

「はいっ!」

 

その後は、私も座学を受けて、魔術の基礎的な知識と、練り上げ方を教わる。

 

話によると、ライザはこれが必要ないくらい、独学とは言え魔術については相当練り上げられているらしい。

 

やっぱり。普段から魔術をたくさん使っていると、練度が上がるのかな。

 

そう思って、凄いなとも思う。

 

私は、昔から大事にされてきたし。

 

立場が立場だから、良い寄ってくる男性も珍しく無かった。十五の頃には、明らかにいやらしい視線をたくさん向けられるようにもなっていた。

 

それを見て、お父様は更に過保護になったし。

 

私はお金目当てで寄ってくる相手が怖くなって、友達も作れなくなった。

 

ライザは、レントくんもタオくんも違う。

 

それが分かったから、私はなけなしの勇気を振り絞って、友達になってほしいと頼んだ。

 

実は、ライザも私を値踏みしていたらしいことはなんとなく分かる。

 

でも、それは私が、ライザを利用しようとしているのではないかと警戒していたからだろうし。

 

それも当然だと思った。

 

今は、ライザ達と一緒にいたい。

 

それと同時に、こんなスペシャリストから教われる機会なんて滅多にない。

 

この機会。

 

多分、私の人生を変えるものだ。

 

私は細かいコツなどを教わった後、魔力を練り上げ始める。

 

体の中で。

 

弱々しかった私の魔力が。

 

少しずつ、目覚め始めているのが分かった。

 

 

 

(続)




如何だったでしょうか。

錬金術とこの作品世界の闇。それをものともせず驀進するライザ。

その二つをお楽しみください。

才覚が目覚めていくライザ達は、どんどん大きな世界に対して邁進していくことになります。
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