暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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この世界ではちょっと名前を変えているパメラさん登場です。

彼女の出自は、ネルケのアトリエで知る事が出来ます。

本作でも、その設定を概ね採用しています。ただ本作の世界では、ある理由でパメラさんは傍観者に徹していられなかったのですが。

というわけでパメラもといパミラさんが登場です。


4、蠢動する影

クーケン島に交易船で上陸する者あり。

 

冒険者と呼ばれる、各地を旅しながら荒事を引き受ける戦士のような姿をしているが。姿は皮鎧だけと軽装。薄紫の長い髪も、戦闘向けには見えない。のほほんとした表情は、とても荒事で食べているものとは思えない。

 

腰に帯びている剣も、ごく小さいものだった。

 

パミラとだけ名乗っている、その女に。

 

バレンツ商会のメイドをしているフロディアは、夜陰に紛れて接触していた。

 

港にあるちいさな食事所。

 

主に、行商相手にやっている店で。

 

王都のものと比べても、出てくる食事はまずくないし、それなりにしゃれた外観になっている。

 

これもあって、田舎であるクーケン島の住民には憧れの場所になっているらしく。

 

此処でプロポーズするカップルも多いそうだ。

 

まあ、フロディアにはどうでもいい事だが。

 

まずは、頭を下げて挨拶する。

 

「久しぶりです、コマンダー」

 

「久しぶりねー。 この島に、優れた錬金術師が出現したっていうのは本当かしら」

 

「本当です。 このまま成長すれば、世代に隔絶した錬金術師になるかと思われます」

 

「でも、異界からの大侵攻を防ごうと動いているのよね……」

 

こくりとフロディアは頷く。

 

感情が薄いフロディアだが。

 

それでも、そう作られているのだ。

 

コマンダーは、フロディアも正体は知らない。自分の一族と似たような者なのかも知れない。

 

ただ、「幽霊」と言われる程何処にでも現れ。

 

そして用事を済ませると、ふらりと去って行く。

 

以前、一族が総出で動いた時。

 

ロテスヴァッサの王宮に仕掛けて、錬金術の資料を全て焼き尽くした時があったが。

 

その時に指揮を執ったと聞いているが。

 

確か当時の王を、このコマンダーが処理したと聞く。

 

それなりの手練れを侍らせていたはずなのだが。

 

それでも幽霊の名前の通り。それらの護りなど、何の役にも立たなかった。

 

「今なら、処理は簡単にできますが、如何しますか」

 

「保留ね。 フィルフサの拡大を、これ以上許すわけにはいかないわ。 そもそも私達の主だって、ここしばらくはオーリムで強力すぎる王種を処分する事に力を注いでいたくらいなのよ?」

 

「確かにこのままだと大侵攻が発生しますが、それもその気になればどうにかできるのでは」

 

「フィルフサを甘く見てはいけないわ。 だってあれらは……」

 

喋りすぎたと思ったのか。

 

パミラが、口を閉じる。

 

そして、プディングを注文する。

 

地方によって全く違ってくる料理だが。パミラはミルクを主体に作ったものが好みだ。ただ、此処ではそれは出てこなかったが。

 

あまり好きでは無いタイプのプディングが出て来たので、パミラはそのままの表情で残念と言いつつ、食べ始める。

 

「今の時点では保留よ。 手出しはしないようにねー」

 

「しかし、放置していると強力になりすぎますが。 最悪の場合、主の所にまで乗り込んで来るでしょう」

 

「そうね。 でも、今は様子を見ましょう。 もしも強くなりすぎるようだったら、フィルフサとの戦いの後……状況次第で、「セーフティ」を掛けてしまいましょうね」

 

「分かりました。 主の判断なのですね、それが」

 

パミラはこくりと頷くと。

 

完璧なテーブルマナーで、プディングを平らげる。

 

決して美味しい料理ではないが。

 

パミラも、餓えの苦しみは知っていると言う話だ。どんな食事でも、絶対に残す事はないそうだ。

 

ふうと嘆息すると、パミラは軽く話をする。

 

「それで、今度の錬金術師はどういう存在?」

 

「今の所は報告書も出したとおり、「良き錬金術師」です。 ただ、今後どうなるかは分かりません」

 

「ふうん。 確かに記録にある錬金術師は、若い頃は「良き錬金術師」と言える存在だった事があるけれども、子供が出来たり立場が変わったり、或いは権力を得たりすると、みな豹変してしまうのよねえ」

 

「正義感が強い反面、非常に気性が荒く、敵に対しては一切容赦もしません。 また感情の制御が下手で、論理的に考える事も苦手なようです」

 

くすくすとパミラは笑う。

 

まあ、コマンダーとされているほどの個体だ。

 

多少強い錬金術師でも、その気になれば余裕で始末できる。優しそうな笑顔と、弱そうな見かけは。あくまで擬態。

 

その正体は、フロディアでは及びもつかない戦闘のみに特化した存在なのだから。

 

「まあいいわ。 貴方はそのまま仕事を続けて。 機会を見て、私が接触を試みて、見極めて見るわね」

 

「了解いたしました。 くれぐれも無茶をしないようにお願いいたします」

 

「ふふ、分かっているわ-。 まあ最悪でも、この島を吹き飛ばす程度で済むでしょう」

 

礼をすると、席を立つ。

 

もう、パミラはいなかった。

 

あのコマンダーが出てくると言う事は、「主」は相当問題視しているということだと見て良い。

 

ここ百年ほどは、ろくな錬金術師が出ていなかったという話もある。

 

それもあって、問題視していても不思議では無い。

 

どういうわけか、同時代に多数の錬金術師が出現する事があり。

 

それが今の人間が「神代」と呼ぶ時代。それから幾つかあった歴史の改変期。最後は百数十年前だったという。

 

そして錬金術は才能依存の学問。

 

百年の研鑽が、一月の天才に追いつかれる。

 

フロディアが見た所、あの錬金術師。

 

ライザは恐らく、神代の錬金術師と同等かそれ以上。下手をすると、史上最強の錬金術師かも知れない。

 

「主」も神代の技術は全て使えるわけでは無いと聞いている。

 

だとすると、コマンダーがああ言っていても。

 

始末してしまうべきではないのだろうか。

 

少し悩むが、頭を切り換える。

 

しばらくはバレンツ商会に仕えて、社会に溶け込む。それがフロディアの仕事だ。

 

商会に戻る。

 

ルベルトは既に寝ている。本当に女を近づける様子がない。

 

実直なことだなと思いながら。

 

フロディアは、自身も休むことにしたのだった。

 

 

 

(続)




次の課題を突破するために動き出すライザ達。

しかしながらそれは幾つもの複雑な問題と関与しています。

複雑に編まれた因果の糸を、果たして突破出来るのでしょうか。

解決するべき問題は、あまりにも今は多く。

そして壁は高いのです。
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