暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

55 / 110
精霊王達の素性。

それは、そもそも明るいものではありませんでした。


4、目を覚ます災厄と

「星の都」の王、「水」が目を覚ます。

 

王とは滑稽な話だ。

 

自分がどうして生まれ出たか、「水」は知っている。こんな名前をつけられた理由も、である。

 

不愉快な連中だった。

 

そして、そんな連中がいなくなった後は。

 

愚かしい者達から、勝手に祀り上げられて神とされた。

 

「星の都」が全て落ちた後は、今度は古代クリント王国だとかいう連中が来て。殆ど強制的に契約させられた。

 

不愉快だったが、相手はどうして作られたのか、「水」を含めた六名の精霊王の真実を知っていて。

 

その仕組みを知っている以上。

 

不快だが、逆らえなかった。

 

そして何百年か前。

 

「光」を除く五名の精霊王が、この土地に集結し。

 

そもそもあの愚かしい連中の落とし種であるフィルフサと戦わされた。

 

その時に「水」はもっとも激しく力を消耗し。

 

結果として、眠りにつくこととなった。

 

膨大な魔力を竜脈から吸収した結果、潮の流れにまで影響が出ている。そして目が覚めたと言う事は。

 

またフィルフサが迫っていると言う事だ。

 

自分に傅く「星の民」。

 

これもおかしな話である。

 

此奴らはそもそも。

 

まあ、それはどうでもいい。とにかく適当に散って、フィルフサの存在を探させる。

 

まずは形を取る。

 

椅子を作り。

 

そこに腰掛け。

 

服などを実体化させ。

 

最後にヒトの形になる。

 

ほどなくして、竜脈を通じて連絡が来る。これは、「風」か。激しい戦いで消耗したのは同じだ。

 

起きたのが少し早いか遅いか、その程度だろう。

 

「「水」よ。 目を覚ましたようだな」

 

「「風」か。 この不愉快な目覚め、あのフィルフサどもであろう」

 

「その通りだ。 だが、一つ面白い事もある」

 

「ほう。 聞かせよ」

 

「風」はいう。

 

面白い錬金術師が訪ねてきたと。

 

実力は、あの不愉快な……「水」達を創造した連中と互角か、或いはそれ以上。史上最強かも知れないと。

 

そして驚くことに。

 

物欲が極端に少なく、錬金術師特有の幼稚な全能感に浸っている様子もないという事だった。

 

「水」達を創造したあの連中も。

 

古代クリント王国やらの連中も。

 

幼稚な全能感に浸って、自身を神に等しい存在だと思い上がり。周囲の全てを見下している事に違いはなかった。

 

そうではない錬金術師は、一人も見た事がない。

 

だとすると、興味深いと感じた。

 

「近いうちにそなたの所に行くだろう。 その時は、好きなようにするといい」

 

「そうか。 時にまだ「火」の力を感じぬが」

 

「あれはどうせ湯浴みでもしていることだろう。 溶岩でな」

 

「ああ、そういえば大好きであったな湯浴みが」

 

からからと笑う「水」。

 

「風」も、それにあわせてくつくつと笑った。

 

さて、いずれにしても準備はしなければならないか。フィルフサは、「水」にとっても怨敵である。

 

「星の都」なんぞどうでもいい。

 

あれは名前と裏腹の、愚かしい業の塊だった。

 

「水」はそもそもとして、この世界に作り出されたエセの生命。

 

その点では、手が加わっているフィルフサも近いかも知れない。

 

ただ決定的に違うのは。

 

環境の改善を考え、常に自然の調和を考える「水」と違い。

 

フィルフサは、より醜悪な創造者のエゴを現していること。

 

全てを更地にし。

 

全てを奪い尽くす。

 

そして最後は綺麗さっぱり消え去ることで。創造者が何もかもを好き勝手に収奪できるための土地にする。

 

そんな邪悪なエゴの塊だ。

 

同じ手から作り出されたとしても。もはや、そのような存在は同胞でもなんでもない。

 

滅ぼすだけである。

 

まずは力を取り戻すか。そう思っている所に、来訪者がある。

 

人。錬金術師か。

 

いや、違う。

 

敵意は無いが、これは。

 

思わず構える「水」に対して、それはにんまりと笑った。

 

「お目覚めですか、精霊王「水」」

 

「貴様は……覚えがあるぞ。 このような場所に、何をしに来たか」

 

「ふふ、ちょっと仕込みにね」

 

パミラと言ったか。

 

そいつは剣を地面に突き立てる。敵意はないというつもりなのだろう。

 

まあいい。

 

此奴とは利害が一致していた。

 

今でもそうだかは分からないが。

 

軽く、パミラは今まで何があったのかを話す。クリント王国は滅びた事。その遺産を一部受け継いだロテスヴァッサでも、国の息が掛かっていた錬金術師は皆死んだ事。

 

現在、錬金術師はほぼ絶滅し。

 

活動している力ある錬金術師はたった二人だという事。

 

それを聞くと、「水」は頷いていた。

 

「なるほど。 どうせ貴様が暗殺でもしたのだろう」

 

「ふふ、そうかしらね。 いずれにしても、クリント王国と同じ事をしようとする以上、もう黙ってはいられなかったから。 計画を主導していた王もろとも、処理しておいたわ」

 

「そうか、手間が省けたな」

 

「問題は貴方たち。 ちょっとだけ、協力してくれないかしら」

 

内容による。

 

そう言うと、頬杖をつく。

 

こいつの戦闘力は、「水」とだいたい同じ程度だろう。今の病み上がりの状態だと、周囲の走狗を全てけしかけても厳しいか。

 

ただ、最悪の場合は撤退させて貰う。

 

それだけの話である。

 

「これから貴方を訪ねてくる錬金術師に、試練の一つでも出してくれる?」

 

「ほう?」

 

「現時点では間違いなく良き錬金術師。 でも、人というのは簡単に変わるもの。 その本質は、恐らく無理難題を出されたときに現れるものだと思うから」

 

「ふむ……確かに一利ある。 それに退屈していたところだ。 多少の余興も良かろう」

 

パミラはふっと笑うと、その場からかき消えるようにいなくなる。

 

まあいい。

 

「水」も確かにフィルフサが来るまでの退屈しのぎがほしい。

 

余興に乗るのは、吝かでは無かった。

 

 

 

(続)




原作では特にこれといって背景が語られなかったエンドコンテンツボスである大精霊達。

本作では「精霊王」と少し名前を変えてシナリオにがっつりと絡んで貰う事にしております。

精霊王達とライザは果たして上手くやっていけるのか。

問題はまだまだ解決の糸口も見えません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。