暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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2、「火」現る

足に魔力を集中。

 

ちょっとの間熱波に耐えて欲しいと皆に頼んでから。あたしは跳躍していた。ただし、直上に、である。

 

跳躍して、更に熱魔術で氷の足場を作る。この足場はかなり不安定だが、あたしの魔術で作った足場だ。

 

もろさとかそういうのは、全て文字通り肌で感じ取れる。

 

氷の足場を使って更に跳躍すると、浮いている巨大な岩の上が、どうなっているのか様子がわかった。

 

なるほど。

 

いきなり上にいかなくて正解だったなこれは。

 

そう思いながら、何度か氷の足場を作って、落下速度を落としながら着地。すぐに冷気の膜を張って、熱波を緩和した。

 

「これも自動でやれるようになるといいね。 この付近にはないけど、もの凄い寒い場所に行くかも知れないし」

 

「自動で温度の調整か。 ロテスヴァッサの錬金術師達は、結局そこまでの領域に達する事が出来なかったな」

 

「アンペルさんの元同僚でも無理だったのか?」

 

「ああ。 あいつらは自分の僅かな才能だけを鼻に掛けて、他人の足を如何に引っ張るか、家格をどうやって挙げるか考えているだけの愚人だったよ。 一人だけ私以上の才能を持つ奴がいたが、それも色々あってな……」

 

そうか。それは、いずれ細かく話してくれる時に聞けば良い。

 

あたしは咳払いすると、状況を告げる。

 

「ええと、浮遊している岩の上は溶岩のプールみたいになっていました。 でも、毒ガスが出ていないし、厳密には違うのかな?」

 

「溶岩のプールだと!?」

 

「はい。 ぐつぐつと岩が煮えていて。 直接足を運んだら、みんなドボンだったと思います」

 

「なるほど。 恐らく此処で正解という事だろうな」

 

リラさんの言葉にあたしも同意する。

 

こんな奇怪な現象、精霊王が起こしていると見て良い。

 

そして「風」が言っていた通り。

 

相性が良い場所にいるということだ。

 

「火」はこの火山。

 

まあ妥当な所だと思う。

 

まずは、上にいる精霊王にどうコンタクトを取るか、だが。上に直接上がるのは、あまり良い考えとは言えないと思う。

 

しかしながら、それはあたし達の都合だ。

 

精霊王がどう考えるかは分からないし。

 

何よりあの「風」と、性格が違うことだって考えなければならないだろう。実際「闇」という精霊王は、性格が違うような事を「風」は言っていた。

 

「レヘルンではしごでもつくれないか?」

 

「レント、溶岩は岩どころか、鉄でも溶かすって話だよ。 氷なんて、一瞬で駄目になっちゃうよ」

 

「それは、おっそろしいな……」

 

「……幾つか試してみよう。 何もあの恐ろしい岩の上にいきなり上がることはないよ」

 

まずは、あたしだ。

 

深呼吸すると、魔力を全力で練り上げてみる。

 

リラさんにも頼む。

 

リラさんは頷くと、魔力を練り上げるためか、何か不可思議な踊りみたいなのをぬるぬると始めた。

 

元々身体強化に膨大な魔力を使っているのは分かっていたが。

 

そうやって、単に魔力を練り上げるとどうなるかまでは分からなかった。

 

想像以上だ。

 

あたしよりも魔力は上だと見て良い。

 

何も魔術にしてぶっ放して使うだけが魔力じゃあない。

 

まだリラさんは、戦闘での余力があると見て良い。本気で全部の力を解放したら、どれだけの破壊力を産み出すのか、想像もできない。

 

だが、二人揃っても精霊王の魔力の一割あるかないかだろう。途中からクラウディアとアンペルさんにも頼むが。

 

結局、反応はなかった。

 

「一旦とめて。 うーん、だめかなあ」

 

「ライザ達、魔力量凄いね……」

 

「全盛期のウラノスさんも凄かったらしいよ。 それにあたし達、この服とかで増幅してるし」

 

「ああ、なるほどね」

 

タオが、あたしが作った服を見回して、今更ながらに呟く。

 

もっと増幅の倍率を大きくすれば、精霊王にも届くのだろうか。だが、今はとにかく時間が足りないのである。

 

少し考えてから、浮遊している岩の周囲を見て回る。

 

溶岩が滝のように。

 

いや、飴細工のように垂れている場所を見つける。

 

その下では、溶岩が池を作っていた。

 

上が湖だとすれば池という規模だが。

 

いずれにしてもぞっとしない。

 

絶対に近付かないようにとアンペルさんに念を押される。あたしも近付くべきではないと思った。

 

「かなりでかい岩だな。 それにこんな風に溶岩が垂れているって事は、上がるのは絶望的か……」

 

「一旦手分けして周囲を確認しよう。 上がれるような場所があるかも知れない」

 

「分かったわ」

 

すぐに二人一組になって、周囲を確認する。

 

あたしはクラウディアとだ。

 

周囲を探って行くが、やはり都合よく上がれそうな場所はない。

 

浮遊する岩はたくさんある。

 

それは別にいいのだが。それを飛び移っていけそうな、丁度良い感じの岩がないのである。

 

しばらく考え込みながら、周囲を歩く。

 

地面が穴だらけになっている場所にさしかかる。手を横に伸ばして、進まないようにクラウディアに促す。

 

案の定、上から溶岩がしぶきとなって降って来て。地面に穴を穿っていた。

 

ぞっとしない話である。

 

進んでいたら、頭に直撃。即死だっただろう。

 

一度戻って、浮遊岩から距離を取る。レントとタオ、アンペルさんとリラさんも戻って来ていた。

 

「ちょっとこれは上にはいけそうにないな」

 

「面倒くせえ。 前みたいに向こうから来て貰おうぜ」

 

「駄目だよレントくん。 相手がとても冷静だったから良かったけど、もし寝起きだったら怒るかも知れないよ。 それに違う性格の可能性だってあるんだから……」

 

「あー、それもそうか。 面倒だな……」

 

「あ、ちょっといい?」

 

タオが何か思いつく。

 

皆の視線が集まると、タオはちょっと気恥ずかしそうにした。

 

「呼びつけるのは論外として、興味を持って貰うのはどうかな」

 

「聞かせて、タオ」

 

「うん。 ええと、クラウディアに演奏して貰おう」

 

「なるほどね……」

 

確かに、「風」はクラウディアの音魔術を中和し。その後、姿を見せていた。

 

音魔術を使って見るのはありだ。

 

ただ、場所が悪い。

 

あの浮遊岩の上に、多分音魔術の探知は届かないだろう。少なくとも今のクラウディアの技量では、だ。

 

その懸念を口にすると、タオは指さす。

 

あっちの方に、中途くらいまでなら上がれそうな浮遊岩があった、というのだ。

 

レントもそういえばあったと、ちょっと頼りない言葉で教えてくれる。いずれにしても、すぐにやってみるしかない。

 

撤退はやるべき事をやってからするべきだ。

 

此処は山の頂上近く。

 

降りるだけでも、結構時間が掛かるのだから。

 

下手をすると、この灼熱地獄の中で野宿すら考えなければならなくなる。痛むのを防ぐためにも、保存食しか持ってきていない。保存食は必要な時だけに使いたいという理屈もある。

 

「分かった。 ただクラウディアはそこまで身体能力高くないし、あたしがクラウディアを抱えてあの浮遊岩をぽんぽん飛んでいくのは現状の魔術の技量だと厳しいよ」

 

「それなら私がやる」

 

「リラさん」

 

「とりあえず、その場所に案内しろ」

 

すぐに移動を開始する。

 

浮遊岩は本当に大きくて、小揺るぎもしている気配がない。恐ろしい巨大さで、ちょっと身が竦む。

 

これは自然現象ではあるまい。

 

古代クリント王国の錬金術師は、人間的にカスとしか言いようがなかったのははっきりしているが。

 

それでも才覚については相応だったのだろう。

 

そして錬金術は、人格に関係無く使えるようになると言う事だ。

 

本当に危険な学問なんだな。

 

そう思って、あたしは襟を正す気分である。

 

レント達の案内で、くだんの浮遊岩の所に来る。確かに、階段状になっていて、上に行くには丁度良さそうだ。

 

大きさは、三人が足場にするには充分なくらいだろう。

 

タオは無理だとしても、レントもこられるか。

 

アンペルさんも、いけるかも知れない。

 

「最悪の場合、撤退する事を考えて、あたしとリラさん、クラウディアだけで行くよ」

 

「分かった。 撤退の準備、しておくよ」

 

「お願い。 アンペルさん、下の見張り、お願いします」

 

「任せておけ」

 

アンペルさんがついていれば大丈夫だ。

 

まずは、リラさんがクラウディアをお姫様抱っこして、ひょいひょいと跳んでいく。肩にでも担ぐのではないかと思って冷や冷やしたが。まあこの辺りが妥協案なのだろう。それにしても、魔力による肉体操作が凄まじい。あたしよりも数段上だと一目で分かる。

 

その後に、あたしも続く。

 

このくらいの高さだったら、魔力を足に集中して、跳ぶだけでいける。多分レントもいけるだろう。

 

高度を稼ぐ。

 

そして、最高高度に出ると、一旦止まる。浮遊している岩は大きさは様々だったが。それでも、三人が上に立つには充分な大きさだ。岩そのものも丸かったりするのだが。それでも充分過ぎる。

 

浮遊岩に乗って見て気付く。

 

これ、何かしらの加工をされている。

 

元々は、階段だったのかも知れない。重力を無視した建築がされていた、ということだろうか。

 

そんな技術があるのなら。

 

どうして欲を掻いたのだろう。

 

エゴが絡むと、人間は化け物になっていく。

 

それは分かっているけれども。何だか、技術が泣いているような気がして、あたしは複雑だった。

 

技術に罪は無いだろうに。

 

クラウディアを降ろすリラさん。腕組みして、顎をしゃくる。

 

此処からだと、さっきの空中よりも、ゆっくり溶岩の湖になっている浮遊岩が見渡せる。

 

恐ろしい大きさだ。

 

途中の浮遊岩も視線に入れて、位置は把握していく。

 

近付く事は出来る。

 

その気になれば、溶岩を無視すればその上に行く事も可能そうだ。

 

ただし、それをすれば死ぬし、やる意味がない。

 

それだけの話である。

 

まずは、クラウディアに頼む。

 

頷くとクラウディアは、フルートを取りだして、吹き始めた。

 

音魔術に使う、具現化した笛ではない。

 

わざわざ大事なフルートを使うと言うことは、それだけ本気と言う事である。

 

このフルート、間近で見ると今の冶金技術では作れないことが一目で分かる。バレンツ商会が手に入れた宝なのだろう。

 

それを持たせているだけで、ルベルトさんがクラウディアをどれだけ大事に思っているかがよく分かる。

 

放し飼いのうちとはえらい違いである。

 

それにしても、良い曲だ。

 

多分思い出の曲なのだろう。クラウディアの体から迸る魔力は、青白くて、とても儚げだ。

 

リラさんも澄んだ声で歌い始める。

 

これは単純に白牙氏族に伝わる歌なのだろう。

 

内容はわからないが、クラウディアの曲を邪魔していない。とても良い歌だと、あたしは思う。

 

しばらく様子を見るが、反応は無しか。

 

いや、違う。

 

どうやら、当たりだったらしい。

 

クラウディアが演奏をとめる。リラさんも、歌うのを止めた。

 

まあ、この魔力量。

 

即座に感じ取ることが出来るのは当たり前か。

 

溶岩の湖の真ん中あたりで、ぼこぼこと何かが噴き上がっている。

 

それが、溶岩を吹き飛ばして。姿を見せた。

 

幼い人間の女の子に見えるが。

 

溶岩に浸かっている時点で人間の筈がないし。

 

何よりこの凄まじい魔力。

 

「風」に全く見劣りしない。

 

全裸のその女の子は、大きく伸びをすると、目を擦る。上に連れて来たのが女衆で良かった。

 

流石に幼い女の子が相手とは言え、ちょっと色々見せる訳にはいかない光景すぎるので。

 

「女の子だね……」

 

「間違いない。 精霊王だよ」

 

「凄まじい魔力だ。 戦闘を覚悟しろ」

 

「はい」

 

クラウディアも、すぐにフルートをしまう。

 

溶岩の中で、服を具現化する女の子。「風」と同じように椅子を作り出すと、それにもたつきながら座る。

 

動作が人間の子供そっくりで。

 

ちょっと微笑ましい。

 

シュッとした鋭さがあった「風」と違い、無邪気な子供そのものだ。そして無邪気ってのは、危険極まりない事も意味している。

 

幼い子供は残酷だ。

 

少なくとも無垢でも優しくもない。

 

それはあたしが一番良く理解している。

 

際限ない強大な力を手に入れた幼児なんて、それこそ世界の災厄にしかならないだろう。

 

見かけ通りの精神年齢ではない事を祈るしかないが。

 

不意に、空間転移して、精霊王は側にいた。

 

むわっと、冷気の防壁ごしでも凄い熱波が来る。

 

やっぱり無邪気に暴威を振るうタイプか。「火」の精霊王と言う事もあって、火に近い性質かも知れないとは懸念していたが。

 

懸念は最悪の形で当たったようである。

 

「風」と同じように。最初は聞いたことがない言葉を喋る精霊王。タオが、先に言っていたように、多分古代クリント王国の言葉で下から叫ぶようにして応じた。そうすると、頷いた精霊王はあたし達にも分かる言葉で喋り始めた。

 

「人間だ。 しかも錬金術師だね。 まーた私達をフィルフサとの戦いにかり出そうって考え?」

 

「ええと。 私はライザリン=シュタウト。 そちらはクラウディアとリラさんです」

 

「精霊王と呼ばれる「火」だよ。 まったく星の都の連中、実利的な名前しかつけないんだからさ。 自分で名前を名乗ろうとしても、ロックがかかっていて出来ないし不便だよもう」

 

やはり、火か。

 

クラウディアが、汗だらだらになりながら、笑顔を必死に作る。

 

「その、暑くて……」

 

「え、そう? それはごめん。 気持ちよくお風呂で寝てたから、調整が上手く行かなくってね」

 

すぐに涼しくなる。

 

これは、助かる。なんというか、「風」と違って極めてフランクだ。見かけの年齢は五歳くらいに見えるが、これだけの会話が出来るという事はもっと精神年齢は高そうである。

 

助かる。

 

これなら、予想よりもずっとやりやすいはずだ。

 

「下に仲間がいます。 もしよろしければ、皆と話してくれませんか?」

 

「いいよ。 じゃ、まとめて移動しよ」

 

「え、ちょ……」

 

いきなり、世界が切り替わる。

 

そして、地面で尻餅をついていた。

 

光景が切り替わった。

 

これは、超高速での移動じゃない。多分、超レア能力だと聞いている空間移動だ。

 

アンペルさんの空間操作もかなり凄いレア魔術だと聞くが、これはもう伝説に残るような代物である。

 

予言なんかと同じで、人間の手がおいそれと届く代物じゃない。実物をみるまで信用するなと念押しされるような術だ。

 

戦慄しているあたしを見て、「火」はによによしていた。

 

何かを悟ったのかも知れなかった。

 

「その様子だとクリント王国だとか言う連中じゃないね」

 

「はい。 クリント王国は数百年も前に滅びました」

 

「あー、滅んだんだ。 まああれだけ好き勝手すれば当然だよねえ。 巻き込まれた人間には同情するけれど、滅んだことはザマア見ろとしか言えないかな」

 

「あたしも、滅ぶべくして滅んだと思います」

 

立ち上がると、埃を払って居住まいを正す。

 

レントが冷や汗だらだら流しているのを一瞥。

 

それはそうだろう。

 

「風」と殆ど同じ魔力。それも、前よりもずっと近い位置にいるのだ。相手がその気になれば、全員一瞬で蒸発である。

 

「私を起こしたって事は、なんか用があるんだよね。 腕試し? それともあたしの宝が目的?」

 

「違います。 「風」からの伝言です」

 

「わ、おねいちゃんのだ!」

 

「風」がくれた球体を見せると、すぐにそうだと理解したらしい。

 

あたし達の実力で、「風」を打倒するのは不可能だ。伝言だというのも、嘘では無いと即座に察知したのだろう。

 

この辺り、見かけと能力、知識は乖離している。

 

かなり精神的に「風」よりも幼いようだが。

 

充分に話が出来るし、これは良い案配だと思う。

 

まず、状況を告げる。

 

フィルフサの大侵攻が近づいている事。

 

それを告げると、「火」はああやっぱりというのだった。

 

「麓の方がちょろちょろ五月蠅いと思ったら、やっぱり湧いてたんだ。 本当に迷惑だよもう」

 

「ええと、続けますね」

 

「うんうん」

 

「火」は話を聞いてくれる。

 

これは、助かる。

 

ただ、「火」の目は、大まじめに話をしているあたしをしっかり観察している。騙そうとしているかどうか、即座に見抜こうとしてくるはずだ。

 

精神が幼くても、バカとは限らない。

 

あたしも、最大限の敬意を払わないと危ないだろう。

 

「風」達精霊王四名が集結しようとしているが、「火」だけではなく、「水」もまだ来ていない事。

 

此処から西にある渓谷にて、「風」が待っている事。

 

これらを告げると、「火」はなるほどねえと納得してくれた。

 

「おねいちゃんらしく迂遠だね。 見た感じ、そんな悪党に見えないし、使いっ走りにして試さなくてもいいと思うんだけどなあ」

 

「恐縮です」

 

「それで、キミたちの目的はなんなん?」

 

「フィルフサの侵攻を食い止めて、異界オーリムの聖地グリムドルから奪われた水を取り戻して。 あたし達の島クーケン島の安全も守ることです」

 

贅沢だなあと、「火」が苦笑い。

 

贅沢を望んでいるのは、あたしだって分かっている。

 

だけれども、これはやりとげないといけない事だ。

 

もう首を突っ込んでしまった。

 

勿論あたしの手が届かない所にある問題は、どうにも出来ない。今後できる事が増えれば、できない事だって見えてくる。

 

あたしが助けられた筈なのに助けられなかった命や。

 

どうにかできた筈なのに、失敗する事だって、起きるかも知れない。

 

だけれども、今やっている事は出来る範囲の事だ。

 

だからやる。それだけである。

 

「クリント王国の外道どもとは違うみたいだね。 彼奴らってば、他人を騙す事と、自分らのエゴを満たす事しか考えてなかったし、同じ種族を奴隷とか呼んで使い捨てするしで嫌い。 それと違うんだし、まあいいや。 もし同じ事考えてるようだったら、焼き尽くしてやろうと思ってたんだけどね。 時間を掛けて、枷も外したし」

 

「枷、ですか」

 

「私達の力、クリント王国の連中には大きすぎたからね。 だから竜脈に枷を作って、無理矢理従わせてきたんだよ彼奴ら。 私達が無理に枷を外せば、私達に大事なものも木っ端みじんになるから、従わざるを得なかったの。 まあ彼奴らがいなくなってから、こうやって時間を掛けてぐつぐつ煮込んで、枷は壊して、今は自由だけど」

 

なるほど。

 

魔術的な何かの装置が本来上にあって。

 

それを時間を掛けて破壊した、というところか。

 

それにしても、「星の都」というのは、「風」も口にしていた。それは一体なんなのだろう。

 

他にも分からない単語が幾つかあった気がする。

 

まあ、それはいい。

 

とにかく、「火」はとても友好的で誠実だ。あたし達のことも、気に入ってくれたようである。

 

「じゃあ、とりあえず私はおねいちゃんと合流するよ」

 

「あ、すみません……」

 

「何?」

 

タオが声を掛けると、「火」は笑顔のまま圧を返した。

 

ひっとタオがすくみ上がる。

 

まあ、タオも魔力はしっかり使えるし見える。この無邪気な女の子が、場合によっては無邪気に手足をもぎに来る位は、分かっているのだろう。

 

子供というのは、そういうものだ。

 

そしてこの子の精神年齢は、はっきりいって子供の領域を超えていない。

 

みんなそれは分かっている。タオもだ。

 

だからすくみ上がるのは、仕方がない。

 

だがタオは、必死に顔を上げて、それでもきちんという。

 

「そ、その。 「水」さんの居場所は、分かりませんか……」

 

「「水」ねいちゃん? 多分水の力が得られる場所にいると思うよ。 てか、本当に技術が一度消し飛んだんだね。 それくらい探せないというのは……」

 

「す、すみません」

 

「んー、キミ達良い人だしちょっとだけヒントあげようかな。 「水」ねいちゃんは、よどんだ水よりも、流れがある水の方が好き。 川の水よりも、ゆったりした海の水の方が好き。 でも、海の中よりも、陸に近い場所の方が好き」

 

随分と詩的な発言だ。

 

流石に精霊王、というところか。

 

もう少し話を聞きたそうにするタオだが、じゃねとちいさな手を振って、「火」は空に消える。

 

そして一瞬後には、もう姿は見えなかった。

 

全身が、どっと疲れる。至近距離で、あんな魔力を浴びればそれはそうだ。

 

圧倒的な力の差があった。火という分かりやすい力を司っている以上、戦闘力は「風」以上かも知れない。

 

クラウディアが、貧血を起こしたようで、リラさんが支える。

 

アンペルさんが音頭を取った。

 

「一度安全圏までさがる。 クラウディア、大丈夫か」

 

「ごめんなさい、力を使い果たしてしまったみたいです……」

 

「荷車に乗せて運ぶぞ。 中腹までさがれば、一時休憩に移ることが出来るだろう。 急げ!」

 

「前衛は俺が務める! ちょっと乱暴だが、邪魔な魔物は全部蹴散らして行くぜ!」

 

レントが意気込む。

 

まあ、一番余力があるのはレントだろうし、当然か。

 

クラウディアを荷車の隅に載せると、一気に山下りを開始。頭をぶつけないように気を付けてとクラウディアに告げると。

 

後は全力で、火山を降った。

 

目的は達成出来たが、分からない事も増えた。

 

いずれ分かるようになるのかも知れないが。それはそれだ。

 

とにかく今は、この疲弊をどうにかして回復しなければならない。

 

タオが、走りながら言う。

 

「「火」の言っていた「水」のいる場所、見当がついたかも知れない」

 

「えっ! 本当!」

 

「凄いなタオ! お手柄だ!」

 

「う、うん。 でも、まだ行ってみないと分からないよ」

 

とにかく、山を降る。

 

中腹まで来ると、魔物の姿がちらほら見えるが、レントがいわゆるウォークライを挙げると、さっと姿を消した。

 

襲ってくるようなゴーレムは、往路で全て始末してある。今いるのは、鼬とか大きな鳥とかラプトルとか、そういうのばかりだ。それらもいずれも大きさ的に大した事がなく、弱い個体ばかり。強いのは、先に始末したからである。

 

禁足地にいた魔物が逃げ出して来て、新しく住み着かないのは救いだ。

 

この山も、あたし達が知らないだけで、その時は大混乱だったのだろう。

 

登頂の途中で、キャンプを行った集落跡に到着。やっと一息つく。

 

冷気のフィールドを張ったまま、まずは栄養剤を飲み干す。自分で作ったものであったのに。

 

とにかく苦く。

 

そして、体に染み渡っていた。

 

強力すぎる相手を目前にすると、凶悪な魔物とやりあった時か、それ以上くらい消耗する。

 

それをあたしは、良く理解したのだった。

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