暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、気性荒きもの

渓谷にいる精霊王「風」は、「土」が苛立っているのに気付いていた。

 

古代クリント王国の者達に、最も反発したのが「土」だ。

 

感情的な部分が大きい「土」は、雷撃を司る神が、古い時代の人間には最高神として扱われたように。

 

非常に気性が激しく、そして力も強い。

 

「火」のように幼いわけではないが。

 

感情の制御が、多分六人の精霊王の中で、一番下手だろう者が「土」だ。

 

少し前に、「水」に余計なちょっかいを出した者がいる。

 

一応素性は分かっている。

 

利害は一致しているから放置しているが。どうも向こうは、あのライザリンという錬金術師を試したいようだ。

 

まあ好きにすればいい。

 

最悪の場合は、精霊王四名で門を無理矢理消し飛ばす。

 

その場合、恐らくこの辺り一帯が消し飛ぶことになるし。

 

精霊王達もみんな百年以上は姿を取れないくらいのダメージを受けることになるだろうが。

 

それでも、この世界の自然を守るのが優先だ。

 

「星の都」の者達は、守護者としてだけではなく。特に土地が限られている「星の都」の生態系管理のためにも精霊王を作り出した。

 

今人間がエレメンタルと呼んでいるものもそうだ。

 

これらは人間の伝承に沿って精霊……エレメンタルと呼ばれるようになったが。

 

人工的に作られたものであって。

 

人型をしているのも、それが人工的に作られた故。

 

どういうわけか、「星の都」の者どもは、自分達を「進化の究極」などと自称していた。

 

だから人間に似せてエレメンタルを作り出したし。

 

精霊王達もしかり。

 

滑稽な話だ。

 

あれだけの愚行を行う生物が、万物の霊長だの進化の究極だの。文字通り、笑止の極みと言うべきか。

 

いずれにしても、「土」をとめておく必要がある。

 

人間共がピオニールだのと名付けた塔に出向く。

 

「土」は、苛立った様子で爪を噛んでいた。

 

「「風」か。 何をしにきた」

 

「苛立っているようでな。 フィルフサどもとの戦闘が控えている。 力は出来るだけ温存するようにしておけ」

 

「分かっている。 だがそもそも、錬金術師どもが徘徊しているのが気にくわぬ」

 

「そうか。 気持ちはわかるが抑えよ。 今、我等で試しをしている」

 

試しなど、必要あるものか。

 

土が吠えると、塔が震撼する。

 

まあそうだろう。

 

「土」を最初にクリント王国のものどもが捕まえた時。凄まじい業を見せられたのである。

 

それは怒る。

 

そして怒りはよく分かる。

 

あの戦いの時。クリント王国の人間は、奴隷と呼ばれる道具扱いされている人間を最前衛に立てて。時間を稼いでいる間に全て吹き飛ばす作戦を提案してきた。流石にそれを聞いて、「土」が怒りに枷を破りそうになった事もあるし。

 

錬金術師以外の人間が、それに反発したこともある。

 

これほどの事態を引き起こしたという事もあったのだろう。

 

錬金術師は周囲全てが敵だと言うことに気付いて、悔しそうに「自分が考えた正しい作戦」を引っ込めたのだ。

 

その時、「風」は思った。

 

人間は愚かだが。

 

それでもマシなものもいると。

 

実際マシな連中は、決死の戦いを勝てないのに挑んで。それで作戦のピースとなって踏み砕かれていった。

 

その結果、フィルフサの群れがまとめて消滅し。大侵攻を食い止めることには成功したのである。

 

この地方では。

 

他の地方でも、フィルフサの影がないという事は、作戦は成功したのだろう。どういう風に成功させたのかはよく分からないが。

 

「怒り狂う前に、「火」と感応しておけ。 どうも今回動いている錬金術師は、ずいぶんとましな人間のようだ」

 

「……分かった。 「風」の言葉ももっともだ。 「風」は人間の肩を無意味に持ったりはしない」

 

「ああそうだな」

 

「少し、出かけて来る」

 

「火」は少し前に渓谷に来た。ライザリンという人間が、比較的マシだという話を裏付ける話をしていた。

 

少なくともエゴに流される人間ではないし。

 

力に溺れて驕っている様子もないと。

 

幼い人格の「火」だが、それでも人間を見る目はきちんとしている。

 

それはそうだろう。

 

幼い人格にした分、人間は「火」を侮った。

 

だから、「火」が一番人間の醜い部分を見ているかも知れない。

 

精霊王と呼ばれるこの体は。魔力の量も、元々のスペックも、人間などとは比較にならない。

 

記憶は正確に蓄えておけるし。

 

何より一番人間に不審を感じていたのは「火」だ。

 

だから何百年も掛けて、枷を地力で溶かしきったのだろう。

 

湯浴みが趣味だったのは事実だが。

 

それはそれとして、実益もあったから火山に閉じこもったのだ。あいつは。

 

さて、「風」は己の守備範囲に戻る。

 

これからだ。

 

フィルフサの侵攻があるとしたら、三週間か四週間か。最低でも、それ以内に始まると見て良い。

 

その時、少なくとも精霊王四名が揃っていないと、最終手段も使えない。

 

出来れば「闇」もいて欲しいのだが。

 

あいつは何を考えているか、よく分からない。

 

人間の支配をはねのけた「光」とともに。今回は戦力に計上できなかった。

 

いずれにしても、人間と同じようにエゴで動くつもりは無い。

 

人間に作られたとしても、「風」達は自然の守護者だ。

 

それは大きな誇りとなって魂に刻まれている。

 

そのためだったら何でもする。

 

「風」の行動原理は。

 

自然の守護者たる存在という、誇りにあるのだった。

 

 

 

(続)




比較的物わかりがいい精霊王「火」のおかげで、思いがけずスムーズに事が運んで一安心するライザ達。

しかしながら、精霊王皆がそんなに友好的なわけではありません。

今回は、たまたま運が良かっただけです。

困難は続きます。
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