暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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枷をどうにかしなければなりません。

古代クリント王国時代の技術に挑むときが来ました。


1、邪なる枷

アトリエと「水」の精霊王がいた洞窟は指呼の距離だ。すぐにアトリエに戻って、対策会議をする。

 

タオが言っていた通りの場所に「水」がいたこと。

 

そして「水」も話が出来ること。

 

それに、出してきた課題が明確なこと。

 

これら全てが僥倖だ。

 

リラさんも、遠回りになるが。精霊王を味方に出来れば、最悪の事態でも被害を随分と抑えられるだろうと喜んでくれたが。

 

しかし、あれらはやはりオーリムで言う精霊とは別だともいうのだった。

 

まずタオが挙手。

 

「僕は刻まれていた文字を解読するけれど、具体的にどうするの? 「火」は枷を外すのに、下手すると何十年も掛かったんでしょ? あんな凄い力を持った存在がだよ」

 

「そうだな。 それを考えると、一日二日で出来るかどうか……」

 

レントも懸念する。

 

クラウディアは、こう言うときはてきぱきとお茶を出してくれる。お菓子も焼いてくれる。

 

ここ最近は、蜜も作っている。

 

蜂の巣だったら、その辺になんぼでもある。これを蜂の子ごとエーテルで分解して、要素を抽出。

 

勿論蜂に攻撃されるが、それらは即座に煙でいぶすか、冷気の魔術で永眠してもらう。

 

蜜を蓄える蜂は種類も限られるし。

 

あのメイプルデルタ近辺には、大量の巣もある。

 

それらを活用して、蜜を抽出し。

 

更に濃くすることで、蜜の結晶も作れる。結晶にしておくと、基本的に蜜は痛む事がないので、保存も出来るし。

 

任意に使える。

 

そもそも砂糖がどれだけ貴重かを考えると、この蜜がどれほど値段がつくかが良く分かる。

 

勿論蜂の巣を丸ごと叩き潰して、絞って蜜を取ることも出来るが。

 

これは基本的に技術と力がいるので。

 

錬金術でやる方が早い。

 

流石に茶葉はどうにもならないので、クラウディアは商会から持ってくる。その代わりに、あたしはこの蜜の結晶をクラウディアにバレンツ商会へ持っていって貰っている。ルベルトさん曰く、対価として充分過ぎるそうだ。

 

また、この蜜を使って菓子も作れる。

 

あたしは錬金術でやってしまうが、クラウディアは用意してある台所の窯を用いて作り。その技量は、普通にお店で出てくる品だった。

 

だから、話をしているときに。お茶とお菓子が担保されるようになっているし。

 

それはとても有り難い話だ。

 

アンペルさんが満面の笑みでクッキーを食べていたが。

 

やがて視線が集まっているのに気付いて、咳払いする。

 

結構この人、可愛いところあるんだなあ。

 

そう思った。

 

「あー、おほんおほん。 軽く竜脈についてもう一度説明しておく」

 

前にも説明して貰った事があったが。

 

アンペルさんは、そこから再度説明してくれた。

 

竜脈というのは、地面の下にある魔力の流れ。この世界の血管のようなもの。この世界だけではなく、確認する限りオーリムにも存在していて。オーリムの竜脈はこの世界のものよりも更に強力らしい。

 

なんでこれを竜脈と呼ぶかは諸説あるらしいが。

 

竜脈がある地点には森などが繁茂したり、たくさんの魚が集まる良い漁場になったり。逆に、噴火を繰り返す危険な火山が出来たりするらしい。

 

ともかく、自然の力が増幅されるそうである。

 

あの洞窟にも、どうやらその竜脈があるようだと、アンペルさんは説明してくれる。

 

「古代クリント王国の錬金術師どもは、その竜脈を使ってあの精霊王「水」に無理矢理言う事を聞かせたのだろう。 そしてフィルフサとの戦いに狩りだしたというわけだ」

 

「酷い……」

 

クラウディアが素直に言う。

 

確かにあたしも酷いと思う。

 

精霊王はきちんと話が通じる相手だ。それをまるで道具のように。

 

だから、滅んだんだ。そうとしか、あたしは言えない。

 

レントも、怒りを覚えているようだった。

 

「何でも力尽くで解決するのは場合によってはあるんだろうが、話も通じる相手にそういうことをするのは気にくわねえな……」

 

「僕も同感だよ。 話せば古い時代の知識が得られるかも知れないのに。 星の都の話だって、もっと聞きたかった」

 

「あ、うん」

 

まあタオはそういう奴だよなあと思う。

 

勿論悪気がない事も分かっている。だから、いちいち怒ったりするつもりもない。

 

クラウディアは、綺麗に整っている眉を下げた。

 

「もしも枷なんてものがあるなら、すぐに解放してあげたいと思うの。 ライザ、アンペルさん、どうにかならない?」

 

「クラウディア、落ち着け。 すぐにはどうにもならないから、此処に戻って来たんだ」

 

リラさんが、丁寧に諭すと。

 

クラウディアも頷く。

 

これで、多少は話しやすくなったか。

 

アンペルさんが、少し考え込んでから。言う。

 

「恐らく、古城にあったものと同じ仕組みだろう」

 

「古城のドラゴンを狂わせた石碑か!」

 

レントが思わず立ち上がる。

 

そうだ。

 

あれもいずれにしても、破壊しなければならなかったのだ。

 

石碑のメモは、タオが取ってきてある。すぐに拡げて、内容を確認すると。確かに構造は似ている。

 

あたしもこれでも魔術に関しては相応の知識がある。

 

魔法陣の構造くらいはある程度分かる。ウラノスさんなら、もっと細かく解析できるかも知れない。

 

「あれはいずれにしても破壊しなければならなかった。 ドラゴンは確かに危険な存在だが、それをあのように縛るのはとても褒められた行動ではないだろう。 勿論人間を積極的に襲うようなドラゴンは排除しなければならないが、基本的に知能が高いドラゴンは、人と距離を置く超越存在だ。 場合によっては、エンシェントドラゴンになると人間に知恵を授けて穏やかな関係を構築することもあるという」

 

「だったら、出来るだけ急いで壊さないと……!」

 

「ああ、そうだな。 ライザ」

 

あたしは頷く。

 

アンペルさんが、順番に皆に話をしていく。

 

「まず私とライザが、魔法陣を解析する。 恐らくだが、竜脈からの力の供給を絶てば、魔法陣をとめ、「枷」を破壊する事が出来るだろう。 ただし下手に触ると、力が逆流して、周囲全体が吹っ飛びかねん」

 

「慎重な対応が必要な訳だな」

 

レントの言葉に、アンペルさんが頷く。

 

そして、続けた。

 

「単純に壊すのは論外だが、まずは魔法陣の機能を停止させる必要がある。 タオ、解析した文字を見せてくれるか」

 

「こっちです」

 

現在の言葉に翻訳されている。一部言い回しが迂遠な辺りは、古城にあった石碑と同じである。

 

「水司る大いなる力」というのが、多分精霊王のことだろう。

 

他にも固有名詞らしいのが幾つかあるが、それ以外は概ね文章として理解出来る。

 

台座には何カ所かに幾つも文字が刻まれていた。それらも解析してみるが、どうも魔法円に閉じ込める形ではなく。

 

魔法陣そのものを、台座にしているようだ。

 

かなり高度な仕組みだ。スペシャリストの意見がほしい所である。

 

そう、あたしが口にすると、レントが立ち上がる。

 

「この図、貸してくれるか。 俺がウラノスさんに話を聞いてくる」

 

「レント、頼めるか」

 

「ああ。 俺は力仕事しか出来ないからな」

 

「よし。 タオ。 リラとクラウディアと一緒に古城まで行って、問題の石碑周辺の床にも風化した文字が刻まれていないか調査してきてくれ。 今のタオだったら、見逃すことはないだろう」

 

リラさんが分かったと言って、すぐに二人を促す。

 

後は、解析の開始だ。

 

レントは島に戻り。

 

リラさん達三人で、すぐに古城に出向く。リラさんがいるし、今の二人だったら、古城の魔物程度に遅れを取らないだろう。

 

皆が行くのを見届けてから、アンペルさんがいう。

 

「皆の身体能力を上げる腕輪、今のうちに作っておいてくれ。 タオとクラウディアと私の分がまだだったな」

 

「解析はいいんですか?」

 

「かまわない。 私一人で充分だ。 それよりも、多分かなりピンポイントの爆破をしなければならないはずだ。 後で精密な爆弾を作る必要が生じてくる。 その時の為に、鋭気をやしなってくれ」

 

頷く。

 

こうして、皆がそれぞれ、自分が出来る事の為に動き出す。

 

あたしも、皆の強化のため。

 

黙々と、調合を開始していた。

 

 

 

最初に戻って来たのはレントだった。ウラノスさんは戦線を退いたものの、魔術師としては知識を失っていない。

 

あたしやアンペルさんよりも詳しく、魔法陣をみて説明をしてくれたという。

 

「ウラノスさん、怒ってたぜ。 これ最悪の禁術だってな」

 

「良かった。 ウラノスさんも、怒るような内容だったんだね」

 

「ええと、タオの説明に幾つか追加でメモを書いてくれたぜ」

 

すぐにアンペルさんと一緒に、メモをみる。

 

なる程、更に分かりやすくなった。

 

あたしも、内容は頭に入れておく。

 

アンペルさんが目論んでいるのは、ピンポイントでの枷の破壊だろう。下手に破壊すると大爆発してしまう。

 

それを防ぐためには。

 

多分だが、魔法陣の、力をこちら側に供給している文字を消し飛ばす作業が必要になって来る筈だ。

 

それをするには。本当に繊細で。なおかつピンポイントの範囲を熱で一瞬にして破壊し尽くす爆弾が必要になってくる。

 

あたしは黙々と、火薬を調合する。

 

レントは他にも、必要な薬だののリストを貰ってきてくれた。なんでも三件隣の家の奥さんが産気づきそうだという話で、それらの薬が最優先だ。エドワードさんが産婆さんと一緒に出向くだろうが。いずれにしてもお薬は幾つかいる。

 

作り置きしてあるお薬をコンテナから出し。足りない分は、エーテルとジェムを釜に投入して、その場で増やしてしまう。

 

ジェムはあたしの魔力の変質したものだ。

 

だから、触ればどれがどうだか分かるし。

 

エーテルの中で組み合わせれば、同じものを再現出来る。そうしてお薬を作り、すぐに瓶に移す。

 

液体の薬をエーテルの中で作った後、エーテルにある程度強い粘性を持たせ。粘性の違いの中浮き上がってきた液体の薬を瓶にすくい上げる。

 

そうすることで、液体を釜の中で調合できるのだが。

 

これが出来るのも、錬金術師の中ではほんの一部であるらしい。

 

アンペルさんが褒めてくれるので嬉しいが。

 

今はお薬の方が先だ。

 

「リストにあったお薬は揃えたよ」

 

「よし、戻って配ってくるぜ。 順番通りに行けば良いんだな」

 

「うん。 お願いね」

 

「力仕事しか出来ないからな。 逆に力仕事は全部任せておけな」

 

レントがそんな事を言うが、本来はあたしが直接行くべきだろう。緩衝剤の藁を詰めた袋に薬瓶やらを入れて、レントがクーケン島に戻っていく。ついでにボオスに進捗を話しても来るそうだ。

 

ちゃんとしたお薬と医者、産婆がいないと文字通りお産は命がけになる。

 

あたしはクーケン島の閉鎖的な所は大嫌いだが。

 

だからといって、未来を作る子供を死なせて良いわけがない。

 

レント、頼むよ。

 

そう呟くと。

 

黙々と調合を続ける。今、フラムの火力を上げるために火薬そのものを研究していたのだが。

 

それが上手く行きそうだ。

 

今までも、熱の檻に相手を閉じ込めて溶かし尽くすような爆弾を作ってはいたのだが。

 

それの集大成になるものが出来そうなのである。

 

名付けてローゼフラム。

 

薔薇の花弁に相手を閉じ込め。文字通り熱で消滅させる爆弾だ。今回、これを用いる。如何にピンポイントの破壊で。しかも超高熱で一瞬で焼き尽くせるかの実験だ。

 

以前のゴミ処理とは訳が違う。

 

完全に仕組みさえ理解出来れば、ジェムでなんぼでも増やせるのである。また、破壊範囲を調整する事で、文字通り魔物の群れでも瞬時に焼き尽くせるだろう。

 

恐ろしい破壊兵器だが。

 

これを誰かを救うために用いるのだ。

 

あたしは、古代クリント王国の阿呆どもと一緒になるつもりは無い。

 

調合を続けていると、リラさん、クラウディア、タオが戻って来た。前より知識がついて経験も積んでいるタオは、興奮気味に言う。

 

「アンペルさん! 広範囲に調べて見たら、やっぱり色々見落としていた文字が見つかったよ!」

 

「お手柄だったなタオ。 見せてくれるか」

 

「こんな感じだよ!」

 

タオは満面の笑み。

 

てか、目の色が違っている。

 

アンペルさんはそれを微笑ましそうにみながら、議論を始めた。

 

リラさんは、できる事がなくなったと判断したのか、ソファでいきなり寝始める。それでいい。

 

この場にいる仲間の中で、最強の戦士であることに代わりは無いのだ。

 

いざという時のために、力を蓄えておいた方が良いだろう。

 

クラウディアは、水を汲んだりと家事を始めてくれる。恐らくだが、状況を見て今日はもうアトリエから外に出ないと判断したのだろう。

 

的確な判断だと思う。

 

まず、三人揃ったので、腕輪は渡しておく。

 

アンペルさんが議論を中断して、クラウディアも伴って外に。腕輪のつけ心地と、どれくらい身体能力が上がるのか確かめてくれているらしい。

 

あたしはその間にも、調合を進めて。

 

忌まわしい枷を粉砕するための、準備を続けるのだった。

 

調整をしているうちに、レントが戻ってくる。

 

それで我に返ると、すっかり外は真っ暗になっている。レントによると、エドワードさんに薬を渡すと、随分と感謝されたらしい。産婆さんも、何回かあたしの薬が非常に良く効くのをみて、考えを改めたようだ。

 

他にも、必要なものはちゃんとリスト通り配ってくれたそうだ。

 

また、ボオスとも話をつけてきてくれたらしい。

 

「ボオスが一度、集まってまた話したいそうだ。 ただ、時間がない事はボオスも理解していてな。 塔の事が片付いたら来てくれ、と言ってた」

 

「そうだな。 塔の事が終わったらどのみちブルネン邸に出向く事になるだろうし、それでいいだろう」

 

「こっちはどうだ」

 

「結論は一つだ。 魔法陣のうち、一部を破壊することで機能を停止する。 ただ、複数の文字を一瞬で消し飛ばす必要がある。 それも同時にな」

 

他の方法もあるにはあるらしい。

 

アンペルさんの話によると、「火」がやった方法がそれで。枷そのものをじっくり時間を掛けて破壊していく事で、竜脈からの力の逆流を抑える事が出来るそうだ。

 

ただしそれには年単位で時間が掛かってしまう。

 

今回は安全策を採る必要がある上、時間がない。

 

だから、これでやるしかないというわけだ。

 

「アンペルさん、何とかなりそうだよ」

 

「よし、それならまず明日の朝、古城で実験をする。 どの道どこかで実験をする必要はあった。 あの古城の石碑は機能停止寸前だったし、失敗しても城が吹き飛ぶ程度で済むだろう。 逃げるのに猶予もある筈だ。 忌まわしい城だし、最悪吹き飛んでしまってもかまうまい」

 

過激なことを言うアンペルさんだが。

 

リラさんはソファで猫になっている。

 

恐らく、昔からの事だから、気にする必要すらないのだろう。

 

あたしは苦笑いすると、更に細かい調整をしていく。クラウディアがアンペルさんと何か話をしていたが。

 

それに、かまうつもりはなかった。

 

 

 

夜遅く。

 

何とかローゼフラムの試作品が出来た。二つ、である。

 

これを同時に起爆することが出来れば、今日は終わりだ。先に皆には休んで貰っていても良かったのだが。

 

立ち会うというので、つきあわせてしまった。

 

まず、台座の大きさから推察される、魔法陣の効果の範囲。

 

それをアンペルさんが説明して。念の為に、それより二割ほど大きく削れるようにしておく。

 

まずは、湖岸近くの土に二つを埋めて。

 

あたしは、起爆のワードを唱えていた。

 

薔薇の花が咲く。

 

それが、熱で作りあげた破壊の花であり。

 

瞬時に地面がえぐれたのをみて、皆が瞠目していた。あたしも、驚いている。本当に、一瞬だった。

 

キュッと、熱せられて更に圧縮された。熱の効果範囲にあったものが固まる。

 

仕組みそのものは、以前ゴミ掃除に使ったものと同じだ。

 

だから、これでいいのである。

 

以前より、破壊力、精度、熱量が桁外れなだけだ。

 

ふうと、深呼吸。

 

リラさんが、手首を押さえていたが。脈で測っていたらしい。一番視力がいいリラさんが、太鼓判を押してくれた。

 

「完全に同時だ。 これで問題があるようだったら、誰にも克服は出来ないだろう」

 

「よし……っ!」

 

「皆、早めに休め。 明日は早いぞ」

 

アンペルさんが促して、皆それぞれ休みに入る。あたしだけはずっと調合をしていたので、先に風呂に入って、それから眠る。

 

アンペルさんとリラさん曰く。

 

野宿するようになると、風呂はいつ入れるか分からなくなる。

 

風呂に入らないでいると、体が汚れるだけではなく、体臭も強くなって魔物に気付かれやすくなる。

 

だから出来るだけ、風呂には入れるときに入る習慣をつけろ、と。

 

そして食事も同じ。

 

魔物の群れと交戦するような場合、下手をすると半日、それ以上の連続戦になる事もあるそうだ。

 

魔物の群れだけではない場合も想定しろ。

 

そう、リラさんはいう。

 

分かっている。

 

この辺りには出ないが、夜盗や匪賊の類が出る可能性もある。クラウディアの話だと、辺境にはやっぱりその手の凶賊がいるそうだ。

 

人間でありながら人間を止めるような輩は、古代クリント王国の時代だけではない。今もいるのだ。

 

錬金術師だけではなくとも。

 

だから、そういう対人戦を想定していると思われる訓練も、リラさんはしてくれている。恐らく今後、単独行動をする事を考えての話なのだろう。

 

いずれにしても、教えは有り難く拝聴する。

 

風呂から上がると、軽く遅い夕食をとって。それで眠る事にする。

 

もうクラウディアはすやすや寝ていた。

 

本当にすやすや寝る人間はあんまりいないのだが、クラウディアはその珍しい一人である。

 

リラさんは眠りが浅いらしくて、ほとんど寝息も聞かない。まあこれは、オーレン族そのものがそうらしいので、種族の特性だろう。

 

あたしも全力で集中して調合をして疲れた。

 

エーテルを全力で絞り出すから、いつも空っぽになるまでフルパワーで動いている事になる。

 

それを思うと、翌朝回復しているあたしは、相当に回復速度が早いのだろう。

 

幼い頃から島中走り回っていたし、それが基礎体力につながっているのかも知れない。

 

まあ、それでも体力がつかなかったタオのようなパターンもある。

 

基礎体力も、才能なのだろうか。

 

ぼんやり考えているうちに、もう眠くなる。

 

そして、気がつくと。

 

夢の中にいた。

 

感応夢ではない。

 

ただぼんやりと見える。

 

フィルフサの群れを。一気に押し流す。水に触れたフィルフサは、あの頑強さが嘘のように、その場で崩れて行く。

 

そうだ、水。

 

水を操作して、周囲にぶちまけるような道具を作れたら。今後あのタフさ極まりないフィルフサ相手に、有利に立ち回れるかも知れない。

 

そんな風に。

 

夢の中で、あたしは考えていた。

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