暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ 作:dwwyakata@2024
農家の娘と言うことで、嫌々ながらも必要な事は仕込まれているからです。
なお、このスキルが後の時代、王都などで役に立ったりします。
朝一番に、やっぱりあたしは起きだす。
農家の生活は、古くには陽が落ちたら眠り。陽が出たら起きる、だったそうだ。
クーケン島でもそれは変わらず。
昔は麦も育たないような土を、一生懸命耕して。石を取り除いて、畑に肥をまいて土を作って。それでもクーケンフルーツくらいしかまともに育たなくて。それでたくさんの人が、無念の内に死んでいったそうである。
いずれにしてもあたしは、農家の娘だ。朝には強い。
起きだすと、しばらく体を動かして。
それで、いつでも出られるように準備を終えていた。
みんな起きてくるまでに、顔を洗って、軽く調合の確認もしておく。皆が起きだすと、既に出る準備を始め。
そして朝食を終えた時には。
いつでも出られるようになっていた。
アンペルさんが手を叩く。
「よし。 今日は古城での試験をして、もしもそれで上手く行くようなら……一気に洞窟の方の「水」の枷も外してしまう」
「アンペルさん、いいか?」
「どうしたレント」
「精霊王って奴ら、多分嘘はついていないと思うんだが……もしも嘘をついていた場合はどうするんだ?」
アンペルさんはもっともな懸念だと、レントの事を褒める。
リラさんも、意外な事に同じ事を言った。
ただ、とアンペルさんは話を続ける。
「ただ、その可能性は低い。 「火」は既に地力で枷を外しているのにもかかわらず、我々と敵対しなかった」
「あ……なるほど」
「「火」の戦力は側で感じ取れた筈だ。 我々をわざわざ騙しても、精霊王の側に得はない。 騙す意味すらない、と考えれば更に分かりやすい。 そうやって、考えて行けば良い。 まあ世の中には、こういう理屈を無視して動く輩もいるがな」
アンペルさんの説明は分かりやすい。
レントも頷いて、どんどん考えを吸収しているようだ。
レントは力自慢だが、それだけではいけないと自分でも思っているのだろう。そして一人で旅をするには、相応の知恵も必要だ。
この間クラウディアに裁縫を習っているのをみた。
クラウディアもプロほど出来る訳ではないようだが、それでも自分の服くらい縫えないと意味がない。
タオに至っては、学者顔負けの思考と知識をどんどん蓄えつつある。
クラウディアだって、みるみる逞しくなっている。
だったら、あたしだって負ける訳にはいかない。
もたもたしていたら、一人置いていかれることになるだろう。
軽く打ち合わせをした後、出る事にする。
ローゼフラムと名付けたこの強化フラムは、非常に強力な分、コアクリスタルで複製するとごっそり魔力を持って行かれる。
多分レヘルンやルフト、プラジグなんかも同じだろう。強化すれば、こんな感じでごっそり魔力を持って行かれる。
散々魔力を増やしているあたしだが、それでもうっと呻きたくなるほど消耗がひどい。出る前に、先に準備する。戦闘時に使う場合は切り札と割切る。そう考えないと、とても使えたものではない。
だが、それでも戦術的には使えるし。
戦略的には更に強力に扱う事が出来る。
アトリエでなら、ジェムを投入する事で複製だって出来るし。ただ強力な装備を複製してみて分かったが。こういった事をしていると、ジェムがどれだけあっても足りないかも知れない。
いずれ、あたしは経営の知識を持つ必要があるかも知れない。
数字を管理するには、それが必須だからだ。
それに。視野を広げるには、多分旅をするだけでは駄目だ。実際ザムエルさんのように、彼方此方旅をした結果ああやって腐ってしまった人だっている。
それならば、自分がやった事がない事をどんどんやるしかないだろう。
勿論不向きなものもあるだろうが。それは早めに知る事が出来れば言うことがない。
一通り準備をしてから、アトリエを出る。
鳥が鳴いている。
小鳥たちは、比較的のんきだ。
フィルフサの斥候がいないという事も、それほど強力な魔物がいないという事もあるのだろう。
この状況を守らないと。
クーケン島は、狭くて古くて、とにかく窮屈だった。
だけれども、今はそれでも守らないといけないと思っている。
荷車は、非常に重量感が増したが。今ではこれを引くのも押すのも全く苦にならない。錬金術を知る前とは、あたしは別物だ。
別物になった以上、古いあたしと同じではいられない。
先に少しでも進まないといけないだろう。
それがどれだけ大変であっても。
自分から望んで、首を突っ込んだんだから。責任は、自分で取る。それが筋というものだ。
少しばかり背負っているものが重くなったが。
アガーテ姉さんなんか、十二~三の頃には今のあたしくらいの重荷を背負っていた筈である。
それを考えると、あたしなんてぬるい状況だとしかいえない。
警戒しながら、古城への直通路に急ぐ。
あたしがハンマーでブチ抜いた古城への道。崩れた岩は、既になくなっており。また落盤する可能性もなさそうだ。
此処は後で補強しておくべきだろう。
建築用の接着剤で、何処を修復しておくべきか。もう少し知識がほしい。いずれにしても、さっさと此処は抜けてしまう。
落盤が起きるような場所だ。
安全とはとても言えないのだから。
山道を皆で一丸になって抜ける。この辺りは魔物も殆どいないし、強い魔物はもっと少ない。
黙々と山道を突破して、古城の前に出る。
それにしてもばかでっかいお城だ。
アンペルさんがいうには、城には「宮殿」と「要塞」があるらしい。例えばロテスヴァッサの首都にあるのは「宮殿」だそうだ。ただしロテスヴァッサの首都そのものは「要塞」なのだとか。要するに「要塞」の中に都市があって、その中心が「宮殿」だという。
宮殿は基本的に偉い人間がぬくぬくと暮らして、贅沢振りを見せつける場所で。
要塞は戦闘のためだけに用いられる拠点らしい。
このお城は典型的な「要塞」だが。その割りにはもう崩れてしまっている。勿論残っている場所もあるが、それでも崩落が酷い。
古代クリント王国の技術からして、ここまで自然の風化で崩れるのは妙だ。
潮風にずっとやられて経年劣化で壊れた「聖堂」と違って、此処はそもそも崩れる理由がないのだ。
或いは何かあったのかも知れない。
今はそれを、知る術はないが。
「昨日、少し魔物がいた。 遅れを取る相手では無いが、油断はするな」
「了解ですリラさん」
今回も、戦闘時の指揮はあたしが取るように言われている。
ただ、時々こうしてくれるアドバイスが有り難い。
無言で、あの石碑の所にまで行く。
洗脳されていたとはいえ、ウラノスさんの寿命を大きく奪い、魔術師としての人生を終わらせたドラゴンには思うところがあるが。
それを放置していた古代クリント王国にはもっと不愉快だ。
石碑。壊していないから、そのままある。
すぐに、事前に打ち合わせしていた通りに動く。
この石碑は、強力な魔法陣を使って、力を吸い上げている。竜脈から、だ。
竜脈は世界の血管。文字通り世界を巡る魔力が流れているのだから、その力は絶大。吸い上げるだけで、圧倒的な力で何でもやりたい放題だ。
精霊王を縛れるくらいなのである。
最悪の場合、エンシェントドラゴンと言われる最強のドラゴンさえ従える事が出来るかも知れない。
いずれにしても、許してはおけない。
魔法陣の構造は、ここに来る前に調べてある。今は、目標地点に行き、文字を確認していく。
此処だ。
魔法陣というのは、文字に篭もった魔力を利用して、魔術を自動実行するものである。
魔術を極めていくと、空中にこの魔法陣を自動生成出来たりするが、それはあくまで自分の魔力で作ったもの。
実際にものに刻んで安定させたものは、やはりレベルが違う強力な効果を実現する。
それが錬金術で何かしら補強されているのなら、なおさらだ。
床を調べて見るが、やはりだ。石材は何か加工されている。何度か軽く踏んでみたが、これは全力でやらないと踏み砕くのも厳しそうである。
ただ、ローゼフラムだったら、文字通り一瞬で溶かしきれる筈。
文字を確認したので、もう一箇所に行く。
かなり文字が摩耗していたが、間違いない。
逆に言うと、こんな文字が摩耗している魔法陣を放置しているなんて。作ったものに責任を持たないなんて、錬金術師どころか何かを作る人間として失格だ。
こんな外道が作ったもののせいで、ウラノスさんは魔術師としての人生を終わらされた。
それだけじゃない。もっとたくさんの人が不幸になった筈だ。
ため息をつくと、ローゼフラムをせっせと仕掛ける。
アンペルさんが、説明をしていく。
「今から爆破する魔法陣の二箇所は、「竜脈」に関係するキーとなる文字だ。 かなり頑強に石材を錬金術で補強しているが、二箇所に分散されているそれを同時に粉砕する事で、竜脈から石碑への力の供給を絶つことが出来る」
「おおっ!」
「じゃあ、もうドラゴンが此処に縛られて操られることはなくなるんですね」
レントとタオが素直に感心する。
クラウディアも、あたしの作るものを不安視している様子はない。
さて、ここからが本番だ。リラさんが、皆に促す。
「全員離れろ。 事前に説明がされている通り、ライザが全力で作ったフラムだ。 巻き込まれたら絶対に助からんぞ」
「ライザ、信じてるからね」
「まっかせといて」
あえて強気に言うが。
まあ、大丈夫の筈だ。
これは、いずれフラムの上位互換として量産し。戦闘に投入する予定のものだ。発破としても使える。
今回が、それの試運転ともなる。
失敗するわけには、絶対に行かないのである。
空中を通じて魔力を流しながら、二地点の中間点に移動する。まああたしが作ったフラムだ。
錬金術の調合で使うエーテルはあたしの魔力を実体化したものだし、結果として作ったものの場所はそのまま感じ取ることが出来る。
だから、正確に中間点に立つ事が出来た。
これも火力が大きいので、三段階で爆破する。
一段階目に解除。
二段階目に起爆開始のワード。
そして三段階目に起爆。
この段階を踏まないと、焚き火に放り込んでも爆発しないように作ってある。
こういった危険な道具は、兵器利用されないように、徹底した安全管理が必須なのである。
まあないとは思うが、夜盗とか匪賊とか。
場合によっては、腐りきっている事が分かりきっているロテスヴァッサの王宮の人間とか。
そういうのに渡らないようにしなければならない。
ロテスヴァッサの連中は、間違いなく。研究が進展していたら、古代クリント王国の錬金術師どもと同じ事をしていた。
そんな連中に、こんな破壊兵器を渡すわけにはいかないのだ。
またアーミーが編成されて。
戦争が起きるかも知れない。
それも、世界を巻き込んでの戦争だ。絶対に、そのようなことを許してはならなかった。
「中心点に立ちました!」
「各自それぞれ防御姿勢! 石材の破片などが飛んでくる可能性がある! 油断するな!」
アンペルさんが檄を飛ばす。
レントがパリィの姿勢をとって備え。
クラウディアが音魔術を使って、巨大な防御魔法陣を作りあげていた。あんな真似も出来るようになったのか。
リラさんは態勢を低くする。
いざという時の回避のためというよりも、味方に熱せられた石材が飛んだときに、弾き返すためだろう。
たのもしい。
そのままあたしは、まずは解除。
ローゼフラムに、魔力を通す。
起爆開始のワードを唱える。この段階ではまだ起爆しないが。最後の確認のために、周囲を見る。
そして最後。
起爆していた。
どっと、むしろ柔らかい音がして。薔薇の花が咲く。二輪同時。それが、文字通り城の一角を溶かし尽くす。
熱風はなし。
爆風もない。
薔薇の花が咲いた後は、綺麗に文字が消し飛んで。更に念の為に、その周囲の構造体も消し飛ばしていた。
様子を見に行く。熱で溶解した石材が、かなり地面の奥深くまで続いている。すぐに魔法陣を確認。
よし。
動力供給を絶ったのだ。完全に、停止していた。
「やったよ!」
「よっしゃあ! 流石だぜライザ!」
「遺跡だけれど、こればっかりは仕方がないね。 ちょっと僕の方でも調べるよ」
「私の方でも調べよう」
タオとアンペルさんが、すぐに二手に分かれて調査を開始する。あたしは深呼吸すると。
最悪の事態に備えて、ローゼフラムの予備を取りだして、状況を見守る。
古代クリント王国は、腐りきっていたが技術は本物だ。
錬金術師の才覚は、その性質の善悪関係無く宿る。
だから、セーフティの機能が魔法陣につけられていたりとか。
自爆装置とかがあったりするかも知れない。
それらを許してはいけない。
念の為に、魔法陣の中枢となる地点も先に割り出してある。もしも誤動作が起きるようなら、それを爆破する。
その場合、多分城がまとめて崩落する事になるので、逃げださなければならないが。
まあ、今の皆だったら、逃げ切る事は容易だろう。
無言で調査の様子を待つ。
クラウディアも油断なく音魔術を周囲に展開していて。魔法陣に集中している所を魔物に襲われないように。周囲に警戒網を張り巡らせていた。
やがて、タオが手を振ってくる。
「大丈夫! 完全に機能停止してる!」
「此方でも確認した。 再起動する可能性もなさそうだ」
「良かった……」
クラウディアが胸をなで下ろす。
その間も、リラさんは周囲に厳しい視線を向けて、警戒を続けてくれていた。この辺りはとても有り難い。
「こんな城だし、どうせ盗賊とかトレジャーハンターとかが侵入するだろ。 徹底的に魔法陣は壊した方が良くないか?」
「いや、これ自体はもはや完全に無力だ。 竜脈から継続的に吸い上げていた魔力も、既に空気中に放出を開始している。 それに魔物が誘き寄せられるかも知れないが、それは適宜退治していけば良い」
「はー、あたしがやる事になりそうだなあ」
「別に今のライザなら問題あるまい」
リラさんが嬉しい事を言ってくれる。
まあ、責任を持って後処理をするつもりだったし。
それについては、別に不満はなかった。
いずれにしても、これはベストと言って良い結果だろう。問題は、本番だ。ローゼフラムの在庫がまだある事を確認すると、アンペルさんは言う。
「もう一箇所、壊しておこう」
「まだあったっけ?」
「ええと、多分街道の……」
「そういえばそうだった……」
レントが気付いて、言葉を濁す。
彼処で大きなトラブルがあった事を思い出したのだろう。
ドラゴンを操っていたタチの悪いシステムは、彼処にも存在していたのだ。
ただ、元を断った以上、多分大丈夫だろうとは思う。あくまで念の為である。
とりあえず、先にやっておくことがある。
レヘルンを放り込んで、まだじゅうじゅう言っている破壊箇所を冷やす。そしてそこに、土を放り込んで完全に埋め立てる。
遠くから、小さめのラプトルが何をしているんだろうと首を伸ばしてみていた。
大きくなると集団で人間を襲う危険な魔物だが、小さい内はどんな魔物でも可愛いものである。
視線を向けると、ギャっと鳴いてその場を離れる。
それでいい。人間を適度に怖がらせておけば、襲ってくる事もないだろう。
埋め立てを終えると、小妖精の森を経由して、街道に出向く。
昔の愚人の尻ぬぐいをしなければならないが。それでも、やっておかなければならない事である。
だから、やってしまう。
街道の石碑まで、それほど時間は掛からない。途中で今日は護り手の巡回にかち合う事もなかった。
今日はそういえば、バレンツ商会が海路で何か運ぶとかで、それの護衛か。
クラウディアも商談に立ち会う頃だろうか、そろそろ。
いずれにしても、この非常に厳しい状況を、一刻でも早く打開しなければならない。冒険をするよりも、今は忙しさが先に立っている。
これは、良くない状況だ。
冒険が楽しくない。
石碑に辿りつく。此方も、仕組みは同じだ。やっぱり竜脈から力を吸い上げているようである。
魔法陣の仕組みも同じ。
タオとアンペルさんが、念の為に周囲を徹底的に調べる。
その間にあたしは、コアクリスタルでローゼフラムを複数増やしておいた。魔力をごっそり持って行かれるが。
まあ此処でなら、大した魔物は出ないし。
危険な魔物が出ても、アトリエまで撤退する事も難しく無い。
ただ、根こそぎ魔力を吸い上げられる感じで、ちょっと疲れる。栄養剤を取りだして、飲んでおく。
味はマイルドになっている筈だが。
今でも、タオは飲むと渋面になる。
もうちょっと味をマイルドにしたら、エドワード先生の所に持ち込んでも良いかも知れなかった。
「魔法陣の仕組み、確認したよ! やっぱり間違いない。 細部は違っているけれど、やっぱり竜脈から力を吸い上げてる!」
「迷惑な仕組みだな……」
「しかも急造だ。 これはローゼフラムを使わなくても、爆発の危険はないだろうが……それでも爆破してしまった方が良いだろう」
「僕も同感だよ。 こんなの、残しておいちゃいけない」
遺跡をみるとよだれを流すタオですら、そうまでいうか。
すぐにあたしは動く。
魔法陣を確認して、ローゼフラムをセット。
その間、クラウディアの音魔術が聞こえてくる。笛を具現化して、それで流す曲。その反響。
耳に心地よく。ちょっとうっとりしそうになるが。集中集中。
ローゼフラムを設置。
それで、すぐに離れた。
また魔力を辿って、等距離の位置に移動する。爆破準備完了。それを告げると、皆離れた。
さっきの火力はみんな目にしているのだ。
あの火力の誤爆は、間違っても受けたくないと考えているのだろう。
「全員避難完了! それぞれ防御態勢を取れ!」
「待ってライザ!」
「え、うん!」
クラウディアから不意に制止が掛かる。
クラウディアが笛を吹くと、音に集まっていた鳥がみんな羽ばたいて離れていった。
なるほど、鳥が巻き込まれると思ったのだろう。もう良いかなと思ったが、クラウディアはもう一吹き。
そうすると、影に隠れていた小鳥が、あわてて逃げていった。ちょっと動きが遅かったし、とろい個体なのかも知れない。
「もう大丈夫。 ごめんね、手間を掛けさせて」
「良いんだよクラウディア」
「ちょっと気付けなかったな。 この辺りは、音魔術で周囲を察知できるが故か」
「……そうだな」
アンペルさんも、クラウディアの事を責めない。
いずれにしても、爆破は任意のタイミングで出来るのだ。だったら、無意味に殺生をすることもない。
起爆。
また、同じように薔薇の花が咲く。二輪同時。
二度の実験。いや、最初の起爆実験を含めると三度か。
問題はないと判断して良いだろう。
仕掛ける位置、角度などによって、殆ど完璧に想定通りに熱で抉り取ることが出来る。鉄のインゴットでも容赦なく溶かし尽くすだろうこの高熱は。
間違いなく、今後の戦いで役に立つ筈だ。
レヘルン、ルフト、プラジグでも、同じように使える強化版を今構想中である。というか、多分釜に向かえば作れる。
後処理をする。
地面が溶岩化するとまずい。さっさとレヘルンでその場を冷やし尽くす。
すぐに赤熱していた地面が穏やかになり。
そして、処置は終わった。
まだ昼少し手前だ。
昨日まる一日取られた、という事もある。アンペルさんに頷くと、頷き返してくれた。
一気に片付けてしまうべきだろう。
ただでさえ、時間がないのだ。
それに、「風」はこれで認めてくれるかも知れないが。一番人間に対して怒っているという「土」がまだ残っている。
友好的な精霊王に対して、しっかり振る舞えないようだったら。最大級に警戒している相手となんて、やっていけないだろう。
そしてこれはなにも精霊王に限った話じゃない。
近くで言えば、クーケン島。
まだあたしのお父さんとお母さんだって、まともに錬金術を認めてくれていない。役に立つ薬や、充分機能する農具を作って見せても。それでも農家を手伝ってくれないかと、お父さんはいうし。お母さんは、まだまだあたしが作るものを胡散臭そうにみる。
漁師の白髭おじいちゃんや、ウラノスさんはあたしを認めてくれている。エドワード先生もしかり。
だけれども、やっぱりまだ錬金術の産物を、胡散臭そうにみている人はたくさんいる。
近場ですらこれだ。
あたしが錬金術師としてもっと成長したら、どこか遠征するかもしれない。遠征先では、最初は詐欺師か山師扱いだろう。
そういった風な目で見てくる相手と話すのは、今威圧的に接してきている精霊王よりも難しいかも知れない。
だとすると、こうやって今のうちに無理難題に答えられる力量を備えておくべきだ。
あたしも、少しは考えているのである。
荷物を確認した後、その場を離れる。
レントが明確に先の事を考えて動いていて。
クラウディアだって、此処を離れるのはそう遠くない未来で。
タオも、或いは学者として、クーケン島で一定の地位を確保するか、もしくはもっと偉い人になるかも知れないのが目に見えてきている今。
あたしが。もたついているわけにはいかなかった。