暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ 作:dwwyakata@2024
精霊王「土」は、既に「風」の使者である下位の「星の民」に、後から合流すると返事をしていた。
「風」は好きにするようにと応える。
意外にも、錬金術師共を気に入っているかに見えて、まだ見極めている最中であるらしい。
錬金術師がまだ若い個体だから、だろうか。
人間という生物は、何百年も見て来たが。年齢や立場によって、同じ個体か疑わしい程に変わる。
若い頃はまばゆいばかりの強い正義感と使命感を持っていた個体が。
年老いた頃には、すっかり醜悪なエゴの塊になっている事も珍しくもない。
だが、それは別にどうでもいいことだ。
「土」は自分の目で見極める。
何しろ、見て来たからだ。
最後の瞬間まで、自己正当化し続けていた、愚かしいクリント王国の錬金術師を。
周囲の人間を何十万、いやもっとフィルフサの蹂躙に巻き込んで起きながら。自分は正しい。弱者が死ぬのは当然だとうそぶき続けていた愚かしさを。
その愚かしさを「土」は軽蔑していた。
そしてライザリンだったか。
他の精霊王とは精神リンクである程度の意思が通じている。
だからこそに、その錬金術師が「今は」信用できる事も分かっている。
だがそれは、あくまで「今は」だ。
年老いたときに、どうなるかなど分からない。
或いは伴侶を作って子供が出来るだけで、大きく変わるかも知れない。
そんなことは、人間を見て来ているから分かる。若い頃はとても真面目で正義感が強く、自己犠牲の精神も持ち合わせていた人間が。
子供が出来た瞬間に豹変するのもみている。
真面目だった人間が、悪辣な集団に影響され。
数ヶ月と経たずに邪悪の権化になるのもみている。
他の精霊王達も、恐らく「様子見」のつもりの筈だ。
もしも今塔に入ってきている者が、年老いてもなお変わらない心を持ち。そしていにしえの錬金術師どもと同格以上の才覚を持つとしても。
「今」、それを判断するのは不可能だからだ。
「土」はもっと良く見ておきたい。
だから、直接見極める。
「枷」の破壊は、既に地力で成し遂げている。というよりも、フィルフサがこの塔に押し入ってきたとき。
奴らが踏み砕いたので、既に半分以上壊れていたのだ。
だからそれについては別にどうでもいい。
この塔は、クリント王国の拠点だった。確か王族だとか言う、集団のトップに血統が近い人間も入っていて。
それで玉砕の指揮を執ったはず。
なお其奴は、事あるごとに逃げだそうとして。
最後のフィルフサが突入してくる頃には、見苦しいと言う事から、縛り付けられて転がされていた。
そのまま踏み砕かれて死んだが。醜態をみていた兵士達は、もはやそれに一瞥もしなかったし。
そもそもフィルフサに皆が踏み砕かれていく中で、かまっている余裕すらないようだった。
クリント王国の連中は、「王族は優秀」だの「貴族は優秀」だのの繰り言を必死に喧伝していたようだが。
そんなものはないと、自分の身で証明したわけだ。
ふっと、「土」は笑った。
話題になっている錬金術師が塔に入れば。
真実を知る事になる。
今日は既にかなり時間的に遅い。或いは明日また出直してくるかも知れないが。いずれにしても、近いうちに「土」の前に姿を見せる。
その時には、全ての真実を知っているだろう。
理解もしているはずだ。
びりびりと、周囲の空気が帯電する。
「土」は、判断次第ではそのライザリンとかいう錬金術師を殺す。絶対に生かしてはおかない。
才能を持つ錬金術師と言うだけで、世界の脅威なのだ。
今まで見てきた四桁に近い錬金術師は、才能を持っているほど世界への脅威度が高く。そして世界を滅茶苦茶にエゴで蹂躙する可能性が高かった。
統計としてはちょっと数が物足りないが。
それでも母集団の数と比べると、充分過ぎるだろう。
才能が半端な錬金術師ですら、己の力に溺れて邪悪の限りを尽くす。それが現実だったのだ。
だからこそ、錬金術師を影から始末しているような連中までいた。
それを止める気は毛頭ない。
さて、見極めさせて貰うぞライザリンとやら。
貴様が真実を知ったとき、果たして正気でいられるか。
貴様が年を取ったとき。
今と同じでいられるか。
若い頃、「良き存在」であろうとした錬金術師は、例外なく堕落した。それを知っている「土」は。
世界にとって危険な芽を摘むためにも。
何よりも、最後の最後まで繰り言をほざいていた錬金術師に対する怒りのやりどころを見極めるためにも。
此処に踏みとどまらなければならなかった。
(続)
地獄の跡地を見せられたライザ。
更に過去の錬金術師達が行った凶行をわかり安すぎる形で目にしていく事となります。
原作でも歴代シリーズで屈指の外道集団であるライザのアトリエ世界の「古代クリント王国」の錬金術師(最後の士は敢えて本シリーズでは師に変えています)。
そのおぞましい業が目の前に拡がっていくのです。