暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ 作:dwwyakata@2024
ついに……島の深奥への道が開かれました。
そこもまた、地獄でした。
どうやって重量を支えているのか分からない構造の階段が、地下へ地下へと伸びている。時々円形の台座があるけれども、それもだ。
柱のような構造物は見かけない。
或いは、島を浮かせる技術は、こう言う部分では使われているのかも知れなかった。
ボオスが一度戻って、そしてまた来る。
ランバーに声を掛けて、見張りを頼んだらしい。
今夜は徹夜コースになる可能性もある。そう告げると。ランバーは、それでも見張ってくれるだろうとボオスは言った。
「ランバーを信用しているんだね」
「当たり前だ。 道化を装ってまで周囲の警戒心を消して、俺を最後まで諌めてくれた奴だぞ。 右腕みたいなもんだ。 今後何があっても、失う訳にはいかん」
「乾きの悪魔を倒したと聞いたが、本当に強かったんだなランバーは」
「なんだ父さんまで。 ただランバーも道化を演じるのになれたからか、本気で戦うと相当に疲れるらしいがな」
あたしは良い関係性だなと思いながら、更に奧へ。
分岐があるが、これは基本的に今は無視。アンペルさんが、次はこっちだと指示してくれる。
手元には地図。
塔の最上階で写し取ったものだろう。
「だ、大丈夫なのかねアンペルさん」
「大丈夫ですよ。 今の時点では、地図は間違っていない」
「ねえ、ライザ……」
「どうしたの?」
クラウディアがカンテラをかざしている。いわゆるビーム形式にして光を収束できるのだが。
クラウディアの言葉に釣られて見てみると、周囲の空間は確かに異様だ。
幾つかの円形の台座が浮かんでいて、それらが全て階段でつながっている。周囲には石材だのが雑多に散らばっているが。
何だろうアレ。
壁際の方だろうと思う。カンテラの光が届ききっていないというのもあるのだろうけれども。
それでも、見えるには見える。
レントも手をかざして、それを見ながらいう。
壁に多数の穴が開いているのが見える。気色の悪いタイプの穴では無くて、回廊に沿って柱が生えているように見えるが。
「魔物の巣穴みたいだな」
「縁起でもない、やめてくれ」
「……いや、レント。 意外にその例えは間違っていないかも知れない。 図面を見ると、どうやらあの辺りにゴーレムを配備する予定だったようだ。 戦闘兵器としてな」
「最後の一体まで、あの谷に投入したからいないって訳か……」
あの谷に投入されなかったら。
ゴーレムや幽霊鎧は、古代クリント王国の錬金術師が、弱者を殺し征服するために使われたのだろう。
反吐が出る話だ。
彼処が空っぽで良かった、と思う。
クラウディアには、引き続き音魔術を頼む。
音魔術を展開しているクラウディアは発光する事もある。周囲の足下が留守になる可能性も減る。
幾つめかの階段を下りていくと、更に巨大な区画に出た。
ここは、円形の地面じゃあない。なんだこれ。周囲を見回すが、どうにも意図がよくわからない。
石材が雑多に積まれている。
それだけではなくて、色々と放棄されているように見えた。
アンペルさんが地図を見ながら、ぶつぶつ呟いている。
口調が荒くなっている。
ということは、あまり良い事ではないのだろう。
文句を言おうとするモリッツさんを、あたしが黙らせる。まあしっと口の前に指を立てて警告しただけだが。
「ライザ、気を付けて。 地面が彼方此方欠けてる」
「島は未完成だったらしいからね。 多分この辺りは、作りかけを放棄したんだと思う」
「そ、そんなところに来て大丈夫かね!」
「静かに。 アンペルさん、今集中しています。 アンペルさん怒ると凄く怖いんですよ」
リラさんが咳払い。
ずっと入口の方を警戒してくれている。
なんだろう。何かいるのだろうか。
だが、聞かない方が良いだろう。藪蛇になる可能性が高い。そう勘が告げている。そう思うと、どうしても警戒するべきだろうか。
右往左往しているモリッツさんを見張りながら、あたしは周囲の警戒を続行。やがて、地図からアンペルさんが顔を上げていた。
「一区画戻るぞ」
「はい。 何かあったんですか?」
「此処は本来、最下層にそのままつながる通路だったようだが、此処を作る前に色々事故があったようでな」
「あっ……!」
クラウディアが、悲しそうに声を上げる。
石材の合間に、朽ちかけた骨が幾つも見える。どう見ても人骨だ。音魔術で気付いたのだろう。
此処では虫も入らないし温度も一定。
ミイラにならなかったが。骨になってしまったのは、仕方がないだろう。
あの手記で見た。
この島を作るのに、奴隷として使われていた人が千人も命を落としたのだ。
唾棄すべき事実が。ここに現実として示されている。
あたしも黙祷する。
「ごめんなさい。 後で、島の墓地に葬ります」
「くそっ! 古代クリント王国の連中、どこまで邪悪なんだ! 亡くなった人をここに集めて放置して行きやがったのか!」
「しかも一人や二人じゃない。 この様子だと、島の底の底は……」
「いい。 後であたしが、時間を掛けてでも葬るよ」
あたしが皆にびしりと言うと。
空気が引き締まった。
アンペルさんが、頷いて戻るように促す。一区画戻ると、更に別の区画へ戻る。さっきまでの通路と違って、階段が少し怪しい。そして、円形の台座も。
「かなり造りがいい加減だね……」
「突貫工事だったと言う事だ。 錬金術師としての風上にもおけない仕事だ」
「人をたくさん使い捨てて殺しながら、こんないい加減な作りだなんて。 確かに許せないね……」
「それもあるが、奴らの好きなやり方だ」
アンペルさんが、階段を気を付けて上がるように促しながら、解説してくれる。
なんでも錬金術師の中で「高度な錬金術師」を気取る連中は、自著を暗号で記す事が多いという。
それが知恵をひけらかすことにもなるし。
己の知力を見せつける事にもなるからだ。
錬金術は才能の学問。
古代クリント王国の錬金術師達は、それこそ自分を神に等しいと考えていたのだろうとアンペルさんは指摘。
だからこそ、己の作るものは聖典だし。
複雑な暗号が込められていてもいいという判断な訳だ。
不愉快さがせり上がってくるが。
こんどはクラウディアが、あたしの袖を引いた。分かっている。ここで冷静にならないと。
トラップとかがあった時に、対応できない。
無言で進みながら、足下に注意。
円形の台座に出る。そこからも上下に複雑に通路が延びていた。ちょっとした迷路気分である。
「これは確かに、子供は絶対に入れられねえな……」
レントがぼやく。
その通りだ。
階段には手すりすらない。此処から落ちて命を落とした奴隷だった人もたくさんいそうである。
それだけじゃない。
錬金術の技術の粋を尽くしただろうこの島でさえこの有様だ。
他の場所でも、大勢こんな感じで、奴隷にされた人々が文字通り使い潰されていたのは疑いない事だ。
このボロボロの内部構造は。
古代クリント王国の錬金術師の邪悪と傲慢、残虐と陶酔が全て詰まっていると見て良い。
幸いにも、それがクーケン島の人々を今まで生活させてきたが。
それはまったくの偶然による結果だ。
溜息が漏れる。
「ライザ、見ろ」
ハイビームの灯りの先に、大きなパイプみたいなのがある。その先には、巨大な装置がくっついていた。
うなずくあたしに、アンペルさんが説明してくれる。
「あれが恐らくは、水をくみ上げて淡水に変えていた装置だ。 見た所、機能していないようだな」
「あれが動けば……いや、動いた上で水質も改善しないといけないんだな」
「そうなる」
「そうか、本当だったんだな。 偉大なるご先祖が、盗人で、しかも多数の屍を踏みつけて顧みもしないような輩だったとはな……」
モリッツさんが心底残念そうに言う。
歴史的な偉人は確かに存在しているとあたしは思う。
多数の門を閉じてきたアンペルさんと、その護衛をしてきたリラさんは、その例だと思う。
だけれども。歴史的な偉人が、みんな聖人である筈がない。
結果として歴史的な偉人となっているだけの人だって、かなり多い筈。
バルバトスというモリッツさんとボオスの先祖は、その類だったということ。それについては、今はもういい。
手をかざして確認。
何かしら破損があるようには見えない。
頷くと、そのまま移動する。クラウディアが、全力で二度音魔術を広域展開。その度に、悲しそうにする。
わかっている。
多分底に堆積している大量の人骨を検知してしまったのだろう。
文字通り地獄の底だ。
「ここを、更に進むの……?」
「辛かったら休む?」
クラウディアは首を横に振る。
それはそうだろう。
そもそも、渓谷であれほどの人死にを目にしているのだ。モリッツさんも、或いはだが。
先祖から、何かしら聞かされていたのかも知れない。申し訳なさそうにしている。それとも、島の恥を見せたと感じているのだろうか。
「すまない。 どうだ、クラウディア」
「彼方の通路を下に行くと、多分先に行けると思います」
「分かった」
「みな、行こう。 迷子にならないようにこっちで手は打ってあるから」
タオが、何かしらの布を所々に結びつけている。多分だけれども。次から来る時用の目印だろう。
階段が更に怪しくなってくるし。
その辺りの床で果ててしまった人の亡骸と。その周囲の染み。
そういうものが。更に増えてきていた。
足蹴にしながら歩いていたんだろうな古代クリント王国の錬金術師どもは。
そう思うと、怒りで感情が乱れる。
どんな罠があるか分からないのだ。しっかり手を入れて、調査していかないといけないのが厳しい。
「この辺りまでは、次は僕一人でも来られるね。 今後は事故を防ぐために、色々手を入れないと駄目だろうけど」
「ああ、それはあたしがやっておく。 この事件が片付いてからね」
「すまないな、ライザ」
「いいって。 それもあたしの責任の一つだし」
あたしにはそれが出来る。
だったらやる。
それだけの事だ。
更に奧へ進んでいく。不意に、妙に整理された円形の台座に出る。此処は何もおちていない。
神経質なまでに綺麗で、埃すら積もっていなかった。
かといって誰かが手入れした形跡もない。足もとに魔力の流れがある。床を触ってみると、自動で空気中の魔力を集めて。埃を弾いているようだった。
こんなしくみを作るくらいだったら、人命を大事にしろ。
そう面罵したくなる。
此処までのあまりの惨状を見ていると、どうしても強い言葉が出そうになる。だが、クラウディアが悲しそうにしているし。他の皆も青ざめている。此処で感情を乱すわけにはいかない。
「間違いない。 近いな。 もうすぐ中枢だ」
「やっとか。 迷子になりそうだ」
「いや、帰りはそのまま上がるだけでいけるはずだよ。 降りるときに迷わないように、後でリボンを僕が結び直しておくよ」
「頼む。 それにしても、これはライザがキレるのも当たり前だ。 俺も流石にむかついてきたぜ」
レントが言うと、ボオスもそれに同意してくれる。
それだけで、どれだけ救われるか。
別に共感なんて求めていない。
ただ、ここを作った錬金術師は、自分の勝手な主観で命に貴賤を作り。そして浪費しまくった。
しかも同じ人間の命をだ。同じ事をやる奴がいたら、あたしは其奴を蹴り砕いて殺すだけである。
錬金術師にその権限を与えたのが貴族だろうが王族だろうが知るか。
そんな事をする連中は「貴く」もなんともない。
路傍の獣の糞にも劣る世界の害毒だ。それらですら肥料としては使えるのに。世界に害を撒くだけもっとタチが悪い。
階段を下りていく。
そうすると、前の方から強烈な魔力を感じる。
灯りを当てても、妙な光の壁みたいなのに遮られて見えない。これは、どうやら本当に当たりらしい。
そしてその光の壁みたいなのが。
今までに壊してきた精霊王の枷同様、突貫工事だったのか。経年で弱っているのか。大した力を感じないのもまた事実だった。
「どうやら中枢みたいだね」
「し、島の中枢か。 こんな広大な空間で、たくさんの干涸らびた骨があって……わしらは恐ろしい所に暮らしていたのだな」
「どこだって同じだ。 覚悟を決めろ父さん」
「そうだな……」
モリッツさんが襟を直している。
今の時代、街道に出れば行き倒れが魔物に食い荒らされている事はどうしても目にする。
人が減った時代。
魔物にとって人間は、肉の詰まった袋くらいにしか思えない相手になっている。
ましてや魔物は人間に散々殺されてきたという事もある。
知性がある魔物は、今は復讐の刻だと言う事で、人間を無作為に殺して回る事まであるらしい。
だから、クーケン島の周囲だって安全じゃあない。
基本的に別の村や町に行くときは、護衛として傭兵や、気が利いていれば騎士を雇うのはそれが故。
騎士は一応難しい資格試験を突破してなっているから、相応の実力は見込めるからである。
傭兵は十把一絡げの扱いだから、場合によっては雇用主を裏切る。街道で殺してしまえば、口封じと金儲けがそのまま出来るからだ。だから雇用主も傭兵は信用しない。傭兵もそれが分かっているから、荒んでいる者が多い。
牧歌的に見えるクーケン島も。
周囲はいつ死んでもおかしくない場所が拡がっていて。
フィルフサという脅威が別次元なだけで。
本当の意味で安全な場所なんて、この世界の何処にもないのだと言える。
だから、地下にこんな場所があっても。クーケン島が特別に危険な場所であるという事はない。
ボオスは護り手と一緒に外に出ているから知っている。モリッツさんだって、先代に急かされて似たような真似はしていた筈だ。
だから、特別なことでは無い。そう二人も、即座に理解出来たという事だ。
地下へ地下へ。
階段を下りていく。
カンテラで一瞬、光が途切れて。
そして、不意に明るくなった。
間違いない。これだ。
あの天球儀みたいなのが其処にある。塔で見た奴よりも何倍も大きくて、様々なものが周囲でチカチカしていた。
タオが眼鏡を思わず直す。
アンペルさんが、間違いないと太鼓判を押した。
「これがクーケン島の中枢だ。 地図の場所と一致している」
「なんだか光ってやがるな。 真ん中のが陽なのか?」
「いや違うな。 これは天球図ではない。 ただのシステムで……中央にあるものは、多分動力源だよ」
だとすると。
あれがフィルフサから抽出した。或いは抽出しようと目論んでいたものか。
大量にあれば島を空に浮かせることも可能な程の動力。
古代クリント王国の錬金術師のような幼稚な全能感を拗らせた人間に持たせるには危険すぎる玩具。
だが、古代クリント王国の錬金術師は、本当にフィルフサを根拠なく使役できると思ったのか。
何か、伝わっていたのではないのだろうか。
リラさんが呟く。
「この禍々しい波動、間違いない。 恐らくは下級のフィルフサから採取した核だろうな」
「下級でこの動力……」
「ちょっとまって。 あれが操作盤かも知れない。 専門用語にあった奴だ」
天球儀みたいな奴の下に、出っ張っている部分がある。
タオが飛び出していったので、すぐに側で護衛する。危なくって仕方がない。罠が何処にあっても不思議では無いのだ。
すぐに散開して、周囲を確認。
タオが触れると、「操作盤」が光り始める。
タオはメモを見ながら、それを触って、なるほど、そうかと呟き始めた。
「分かるのか?」
「間違いない。 僕の家にあった本、これの操作手引きだ。 多分古代クリント王国の錬金術師からあの「少将」ってアーミーの偉い人が没収して、読み方も吐かせて、それで伝えさせたんだ」
「……そうか。 それにしても、どうして読み方が散逸したんだろうな。 百数十年前に一体何があった?」
「分からない。 普通だったら、次の世代に若い頃に伝承すると思うんだけれど……」
タオが操作していく。
両手を拡げたほどもある光の板みたいなのが空中に何枚も浮き上がる。それが魔力ではなく、光を複数の方向から当てて作り出しているのだとあたしは理解していた。
タオが呻く。
「くっ……管理者権限が必要だって出た。 錬金術師達が、いざという時に弄られないように保険を掛けていたんだ」
「任せて」
あたしが、直しておいた鍵を光の板に突き刺す。
なんとなくだけれども。それでいいと思ったのだ。
同時に、ふわっと光が拡がって。
そして、タオが目を輝かせる。
「間違いない! これで、島の状態が分かる!」
「よし、まずは水についてを頼む。 どうして百数十年前だかに、水が出なくなった」
「ええと……水、水。 あった。 ……ログ……これかな。 途中でぷっつり切れてる。 ええとええと……!」
ボオスが急かす中。タオも凄い手さばきで、光の板を何枚も出現させる。モリッツさんは、完全に顎が外れた様子で見ている。
光を使う魔術は珍しくもない。実際幻影を浮かべる魔術は、下級の魔術の一つとして存在している。
下級だが便利で、灯りを出す事が出来るし。魔物の気を引けることがある。何より光を強めに炸裂させれば人間相手でも目つぶしにもなるので、意外と重宝されている。
だがこれは、光の魔術を余技のまた余技くらいとして使っている。まるで別次元の技術だ。モリッツさんが仰天するのも当然である。
「分かった……。 動力が足りないんだ」
「どういうこと、タオくん」
「ええとねクラウディア。 この島を動かしていたのは、あの動力源だったんだ。 だけれども、本来つけるべき動力源とは出力が違い過ぎて、この島の基本的な機能すら保てていないんだよもう。 百数十年前には、水を出す機能が動力不足で止まってしまったんだ……」
「なんだって……!?」
モリッツさんが一番驚く。
タオは、更に続ける。
「それだけじゃあない。 数十年前にはこの島の姿勢を安定させる機能まで止まってる。 だから少しずつ旧市街地が水没し始めたんだ。 この島、傾いてる。 最近に至っては、とうとう島を固定する機能まで止まったみたいだ。 だから島が流され始めてる!」
「島が、流されているだって!」
「そうだよレント! この間、外海から魔物が来ただろ。 あれは島が流れて位置が変わったから、潮流が変わって、それに影響を多分受けたんだ。 そ、それだけじゃない……これは!」
タオがどんどん驚きの事実を調べ上げて行く。
それにしても、困惑と驚愕に混じって、やはり楽しそうだ。
やはりアンペルさんの言う通りなのだろう。
試せる。
今まで、仮説でしかなかったことが。
正しい。
周囲の誰も知らなかったことが。誰も信じてくれなかったことが。
だから、タオは今。
恐怖と怒りと一緒に、快感を感じている。
やっぱりタオは学者向きなんだな。そう思って、あたしは呆れながらも、状況を頭に入れていく。
「地震の原因がわかったよ。 この島、流されながら、何度も暗礁とかと接触しているんだ」
「おいおい、本当かよ!?」
「このままだとまずい。 この島がどんな技術で作られてるか分からないけれど、大きな岩礁にぶつかったらいずれ外壁が壊れるかも知れない。 周囲を見て。 この大きな空洞だよ。 水が流れ込んできたらどうなると思う?」
「し、島が沈みかねないというのか!」
モリッツさんが青ざめる。
タオが頷く。
貧血を起こしたモリッツさんを、あわててボオスが支える。モリッツさんは泡をふきそうな表情をしていた。
「一度戻るぞ。 この状況がわかれば充分だ。 また優先順位を設けて、順番に対策をしていく」
「分かりました!」
「ライザは動力源をみておいてくれ。 ひょっとしたら……調合をして貰う事になるかもしれない」
「はいっ!」
あたしは一人残る。
モリッツさんは完全に蒼白になっていて、ボオスが肩を貸して連れて行く。クラウディアは残ろうかと言ったが、あたしは首を横に振る。
集中したい。
この仕組み。
他にも、似たような感じで使われているかも知れない。他の場所では、単純に悪用されている可能性だって高いのだ。
仕組みをしっかり理解しておかないと、そういうときに対応できない。
錬金術は才能の学問だ。
此処にしても、そもそも今後の手入れなどをする事を考えると、タオが作る対応手段だけではどうにもならないだろう。
だいたい、動力が尽き掛けているのなら。
動力を補わないといけないだろう。
フィルフサの核が現実的なのか。
いや、蝕みの女王だったか。今、門の向こうで大侵攻の秒読みに入っているフィルフサ王種を確実に倒せるか、そんな保証はない。
だったら、どうすればいい。
あの動力源、仕組みは。
じっと見ていると、少しずつ仕組みが分かってくる。
なるほど、そういうことか。
呟きながら、頭の中で仕組みを一つずつ解析していく。あたしの頭の中で。古代クリント王国の錬金術師達が、得意げに、エゴのために、作りあげていったものが。ただの「技術」として再構築されていく。
技術はあくまで技術だ。
これを、クーケン島の人達のために、復活させるためには。
いや、元々が脆弱だったのだ。今後何百年ものために、強化するためには。
あたしは、必死に考え続けていた。