暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

8 / 110
ライザ達が悪ガキになったのにはそれぞれに理由があります。

いずれにしても、ライザが錬金術を始めたのにあわせて、みんなそれぞれ進み始めます。

ライザ達の悪ガキグループの最年長者レントも当然その一人。

彼は毒親持ちと言う事で、色々原作でも苦労している一人です。


2、レントの苦悩

クラウディアの家に遊びに行く。

 

旧市街にある一番大きな家に、クラウディアは滞在している。良い行商にだけブルネン家が貸し出すことで有名で。この辺り、実は行商人にこびへつらっているモリッツさんも、相手次第では思うところがあるのかも知れない。此処を貸し出している相手は久方ぶりなので、裏の事情を周知の島の人間が、みんな好意的に接するのも何となく分かってくる。

 

クラウディアのお父さんのルベルトさんは留守にしていて、代わりに寡黙なメイドさんが出迎えてくれた。

 

何でも王都でメイドをたくさん輩出している家系の人間らしく。

 

貴族だったり豪商だったり、或いは両方を兼ねている家に雇われていくらしい。そして、それぞれが一族の名を傷つけないように必死だそうだ。

 

紅茶をいただきながら、そんな話をする。

 

それはそうとして、ちょっと味付けが濃いかも知れない。

 

クーケン島では、調味料が手に入りづらい事もあって、基本的にものの味が薄いというのは聞いている。

 

これは行商人だけではなく、アガーテ姉さんや、酔ったザムエルさんが話しているのも聞いたから、本当なのだろう。

 

紅茶はあたしもたまに飲むのだが。

 

これも、そう感じた。

 

それで、クラウディアと軽く話す。

 

弓を渡したときに。弓と一緒に、あたしは使い古しのグローブも渡した。矢を放つとき、下手をすると指ごと持って行かれるからだ。

 

クラウディアはリラさんの言った通りに魔力を練りながら。

 

弦を出現させる事には成功したそうだ。

 

次は矢だと、クラウディアは嬉しそうに話している。

 

その後、裏庭で軽く様子を見せてもらう。

 

クラウディアは育ちが良いからだろう。やはり背筋が伸びていて。故に立射の態勢を取るのがとても上手で、殆どもうあたしが教える事はなかった。

 

これ以上はリラさんによる指導だろう。

 

「どうライザ」

 

「うん、完璧とはいかないけど、始めたばかりの人間とは思えないくらいいいよ。 それで音魔術はどうするの?」

 

「そっちも練習中だよ。 やっぱり独学で何となくやるのだと駄目だね。 リラさんに教わった通りに練習したら、毎日ぐんぐん火力が伸びてる」

 

「こればっかりは仕方が無いよ。 リラさんは一目で分かったけれど、あれは生半可な傭兵よりも、修羅場を滅茶苦茶くぐってるし、魔力量も多分才能だけで培ったものじゃないと思う」

 

軽く話す。

 

あたしの錬金術も聞かれたので、せっかくなので作ったばかりのお薬も渡しておく。

 

少しずつ、素材などの良し悪しもわかるようになって来た。

 

もらった参考書を手にクーケン島を回っていると。

 

周り慣れた狭い島の筈なのに、新しい発見がどんどん出て来て。新鮮で面白くて仕方がない。

 

昔、散々島の中を走り回って、知り尽くした意味がやっと出て来ている。

 

それに、クーケン島の植生などは分かっているから。どこに何があるのかも、参考書である程度知識が上書きされた今も、ある程度は察しがつく。

 

この辺りが面白くて、わくわくが喚起されてたまらない。

 

「ライザ、すごくきらきらしてるね」

 

「うん。 おっと、そろそろ時間かな」

 

「島の外に出るの?」

 

「ごめん、流石にクラウディアはまだ外に一緒に行けない」

 

寂しそうにするクラウディアだが。

 

自分でも、とても冒険に出られる自衛力がないことは分かっているのだろう。

 

クラウディアを殺しかけたエレメンタルなんて、それこそ外ではなんぼでもいる魔物である。

 

それはクラウディアだって分かっているだろうから。

 

ただし、クラウディアはもう仲間だし。

 

一緒に冒険に行きたいと思う心は強くある。

 

だから、あたしは咳払いすると、クラウディアに言う。

 

「大丈夫。 クラウディアが努力を続けて、それで自衛力が身についたら、あたしからルベルトさんに交渉して見る」

 

「ほんと?」

 

「ただ、正直あたしたちもまだ努力足りないんだよね。 この間クラウディアが襲われた時に出て来た鼬だったら、もうどうにでも出来る自信があるけれど」

 

あんなもの。

 

外には幾らでもいる魔物だ。

 

だから、まだまだ力が必要だ。

 

一つ考えているのが、装備の刷新である。

 

昨日、鉱石を使って錬金術を行って。

 

多少品質は劣るけれども、それでもインゴット……延べ棒を作る事が出来た。

 

クーケン島にある鉱石だと、正直抽出出来る要素が弱々しくて、触っていて叩きたくなるようなすごいインゴットはまだ作れない。

 

色々レアな鉱石や作物もあるにはあるのだけれども。

 

それでもまだ要素が弱々しいのだ。

 

恐らくは、人が住んでいるから。

 

自然にあるべき要素のたくましさが、失われてしまっているのだと思う。

 

「大丈夫、すぐに出来るようになってみせるから」

 

「嬉しいわ。 ライザ達の事、みんな大好きよ」

 

「えへへー、そう言われると嬉しいな」

 

まあ、確かに屈託ない笑顔でそう言われると嬉しい。

 

それに、クラウディアはあたしと同い年なのに、なんだかずっと幼い子に感じる。あたしは子供は嫌いではないので、こういう風に慕われると結構弱い。だけれども、クラウディアはその辺りも分かっているようで。

 

自分に変な風な遠慮はしないでほしいとも言っていた。

 

親しき仲にも礼儀ありなんて言葉もあって、流石に隠し事はなしとまではいけない。それはクラウディアにも要求は出来ない。

 

だけれども、遠慮しないでほしいと言われているので、素直に事実は告げる。

 

その後は、屋敷のメイドさんに話して、この場を後にする。

 

クラウディアも、玄関まで見送ってくれた。

 

ちょっと離れがたいな。

 

そう、あたしは思った。

 

 

 

あたしの家の裏手にある入り江まで、船を引っ張って。

 

それから、船でまた対岸に渡る。

 

まだしばらくは見極めがいるから、普段使っている入り江の影に船を止めて。石柱に固定するつもりだ。

 

今考えると、石柱も崩せば素材にできそうだけれども。

 

今は、我慢だ。

 

移動中に、レントとタオと軽く進捗について話す。

 

レントはリラさんに教わった通りにやっていて。かなり成果が出ているようだ。

 

もともとレントは護り手の中でもかなり力量が期待されている若手で、少なくともアガーテ姉さんとザムエルさん以外の相手だったら互角以上にやり合える。

 

それだけの基礎がある所に、別次元の実力者から指導を受ければ、それは伸びる。

 

ただそれはそれとして、司令塔も必要だ。

 

あたしはふわっと指示を出せば、それにそって動けるようにする。

 

そんな感じで、レントは今訓練をしているそうだ。

 

そして最終的には、自分一人で旅をすることも視野に入れているという。

 

それもまた良いだろう。

 

手分けして何かしなければならないとき、三人一組の原則を崩さなければならなくもなってくる。

 

そんなときは、単独行動できる判断力と知識が必須だ。

 

勿論、単独行動だと戦える魔物だって限られてくるけれども。

 

それはそれで、今は考えなくても良いだろう。

 

今回は、良さそうな鉱石を探す意味もある。

 

それについて説明すると、タオが眼鏡を直していた。

 

「インゴットを自分で生成できるの!?」

 

「うん。 でもクーケン島の鉱石だと、やっぱり品質に限界がある。 多分今のレントが使っている剣と同じようなのしか作れない」

 

「いや、この剣が幾らだったか知ってるだろ!?」

 

「あたしだって、自分の杖でそれは知ってるよ。 まずあたし達全員……クラウディアも含めて、錬金術で武器を作りたい」

 

もしそれが出来れば。

 

今まで大苦戦を強いられていた魔物が相手でも、恐らくは苦労する事はなくなるとみて良いだろう。

 

ただ、世界には意味がわからないほど強い魔物もわんさかいるらしい。

 

それらを相手にする冒険を考えると。

 

今のうちに、できる事を一つずつこなさなければならないのだ。

 

参考書を見せて、今回狙う素材を二人に周知はした。

 

「タオはどう?」

 

「幾つかの単語を集中的にせめて、汎用的な会話を出来るようにしているところだよ。 ただ、やっぱりうちにある本、かなり専門用語が多いみたい」

 

「それで苦戦中か?」

 

「うん。 それに加えて、なんというか言葉の使い方が迂遠なんだよね……」

 

たまに島に来る吟遊詩人とか、すごく迂遠なものの言い回しで物語を語ったりする。それはそれで雰囲気が出るのだが。

 

言葉として会話するのに便利かというと、それは違っているだろう。

 

「とにかく、少しずつ解読は確実に進めてるよ。 まだ部分部分をちょっとずつ、だけれどもね。 今なら、当時の人と一般的な会話くらいなら出来るかもしれない」

 

「すごいよタオ!」

 

「ああ、すげえ。 流石だな。 でも、それで会話する相手がいないなあ……」

 

「うん、それは仕方が無いよ。 古代クリント王国の言葉なんて、もう誰も使わないからね……」

 

此処以上の辺境だと或いはまだ使っている人間がいるかも知れないが。

 

ただ、タオの話を聞く限り、そんな不便な言葉。わざわざ使う理由が見受けられないような気がする。

 

その辺りは、学者では無いあたしだって、簡単に察しがつく。

 

対岸に到着。

 

石柱にロープで船を固定。

 

やっぱりだ。

 

この石柱、多分素材に出来る。だけれども、それは後回し。荷車を降ろす。まずは、これに今回狙う素材を満たしたい。

 

対岸には、多少の魔物が彷徨いているのが見える。

 

鼬が多いが、この辺りの鼬は水の中の方が機敏に動く。尻尾がひれのようになっていて、より水中活動に特化している。

 

此奴らに水中に引きずり込まれると、歴戦の傭兵でも遅れを取る事があるらしくて。

 

見かけ以上に危険な相手だ。

 

なお、古い時代の鼬は、臭いを出して相手から身を守っていたらしいのだけれども。

 

今の時代の鼬は、その能力を失っているらしい。

 

まあそれもそうだと思う。

 

今の鼬は、そんな事しなくても身を守れるくらい、大きく早く、そして強いからである。

 

「この辺りの魔物を掃討して、まずは力試しだ」

 

「うう、ちょっとまだ怖いなあ」

 

「大丈夫、あたしとレントがしっかり攻める!」

 

「おうよ!」

 

まだちょっと不安がありそうな大剣を引き抜くレント。やっぱり骨董品だ。だけれども、良い武器は現役の護り手に行くのがクーケン島の基本。

 

というか、そもそもだ。

 

そうしないと、島が守れないのだ。

 

鼬の数は十数匹か。全部が纏まっているわけではなく、それぞれ我が物顔に散ってくつろいでいる。

 

端から崩す。

 

そうだけ説明して、突貫。

 

鼬の一体が顔を上げて、此方に気付く。警戒しているけれど、どうでもいい。

 

真正面から、ひねり潰すだけだ。

 

まずはあたし。

 

上空に熱源を出現させると、光の矢を鼬に降らせる。それぞれが人間の手足を貫くほどの火力がある熱線だが、それも鼬相手には決定打にならない。魔物の頑丈さを思うと当然だが、ちょっとむかつく。

 

この火力を錬金術で上げられないか。

 

上げられるようだったら、限りあるフラムなどの物資も節約できるのだけれども。

 

ただ、あたしもエーテルを散々絞り出して、魔力の総量が上がっているみたいで、明らかに普段よりも鼬に効いている。

 

怯んだ鼬に突貫するレントだが。

 

いつもほど無謀に攻めていない。

 

脳天に一撃を与えた後は、即座にバックステップ。

 

鼬が反撃で振り下ろした爪を、回避する事に成功。

 

更に、鼬の脇に入り込んだタオが。全身ごと大槌を旋回させて、叩き込む。ギャッと鋭い悲鳴を鼬が上げて。

 

そこにあたしが、熱の槍を叩き込んでいた。

 

鼬の頭が砕ける。

 

まずは一匹。

 

様子を見て、数体が警戒態勢に入る。

 

「続けて、一匹ずつ潰すよ!」

 

「おうっ!」

 

鼬は数が多すぎる。此奴らが魚を散々食い荒らすせいで、漁師もみんな迷惑している。それどころか、草食獣が殆ど喰われてしまうので、無駄に雑草だらけになって街道だって荒れる。

 

だから普段から間引く必要があるのだけれども。

 

護り手でも、とても手が回りきらない。

 

別に護り手の仕事をとるわけじゃない。

 

この街道を少しでも安全にするために。

 

好き勝手にこの場所を荒らしている鼬は、削っておかなければならないのだ。

 

あたしが出来る。

 

あたし達が出来る。

 

だから、やる。

 

それだけである。

 

二匹目の頭を蹴り砕いて粉砕し、三匹目。三匹目は、死角に潜り込んで、あたしの後ろから襲いかかってきたが。

 

即応したレントが割り込んで、大剣で受け止める。その瞬間にあたしも飛び離れて、横っ腹に熱の槍を叩き込んでやる。吹っ飛んだ鼬に、更に追撃で連射。傷口に叩き込まれた熱の槍が、鼬の内臓を直に焼く。

 

あまりおいしくはないが、鼬も食べる事が出来る。

 

倒した後は、食べられそうな肉や毛皮は剥いで回収しておくべきだろう。

 

そう思って、周囲を確認。

 

タオが警告してくる。

 

また数匹が、こっちに警戒している。

 

でも、数匹だ。

 

少しずつ斃して、確実に減らしていく。ちょっと増えすぎている鼬は、此処で全て処分するべきだった。

 

 

 

夕方。

 

鼬の駆除、完了。

 

レントは自分の手を見ていた。

 

あたしは、魔力を使い尽くすようなこともなく。多少余裕がある。やっぱり、きっかけがないと駄目だな。

 

そうあたしは思う。

 

錬金術をはじめて、エーテルを絞り出すようになって。やはり体が魔力を普段より使うようになった。

 

運動をすれば筋力を使うのと同じだ。

 

あたしも、これから錬金術をどんどんやれば、それだけ魔力が増える。

 

それは、やってみてよく分かった。

 

タオも息をついてへばっているが、それでも以前より動きが良くなっている。頭だけ使っている訳ではない。

 

普段より頭も使っている、が正しい。

 

だからタオはどんどん強くなっている。

 

レントは不安そうだ。あたしは、声を掛ける。

 

「レント、動きよくなってたよ。 何度も綺麗に敵の攻撃防いで、此方へのダメージを軽減できてた」

 

「ああ、そうだな。 だけども、まだ全然だ。 もっと周囲を冷静に見るようにはなれているが、考えてから動いてやがる。 悔しいが、これを考える前に出来るようにならないといけねえ」

 

「レント、体の制御だけに魔術使ってるよね」

 

「ああ、そうだが」

 

なら、頭の方にも回せば良い。

 

タオが、自分の方を指さしたので、あたしは頷く。

 

レントはしばし考え込んだが、やがて頷いていた。

 

「分かった。 俺たちの仲だ。 タオ、ちょっとアドバイスくれるか?」

 

「いいけど、頭の方に魔力回すやり方、筋力制御とだいぶ違うよ」

 

「だから専門家に頼むんだよ」

 

「うーん、分かった。 ええとね」

 

二人が勉強会を始める。

 

その間に、あたしは採取を始めた。

 

レントは、勉強会をしながら、あたしの周囲に目を配ってくれてもいる。鼬の残党がいるかもしれないからだ。

 

あたしは少し暗くなってきたなと思って。

 

魔術で灯りを作る。

 

自分の周囲を自動で旋回する熱の弾だが。これはそのまま灯りにもなる。ただし剥き出しの熱なので、家の中などでは間違っても使えないのだが。

 

ランタンがいるかな。

 

そう思って、無言で素材を荷車に詰め込む。

 

レントはタオと話しながら、周囲を歩き回って警戒を続けてくれる。今回の戦闘では、フラムを温存できたが。

 

あたしが確実に力を上げていることは、レントも分かっていたのだろう。

 

劣等感につながらないといいのだけれど。

 

そう思う。

 

鉱石を幾つも調べて行く。ひんやりとする鉱石も、じわっと来る鉱石もある。セキネツ鉱だけではなく、アクア鉱というものも見つける。それだけではなく、他にも鉱石素材は幾つも種類があって、用途も違う。

 

大型の蜘蛛の巣を発見。

 

蜘蛛に謝って追い出すと、端を切って丁寧に巻き取る。

 

蜘蛛の巣は大きいものを触ってみると分かるが、硬度が尋常じゃ無い。その堅さは、鉄とかにも迫るという話だ。

 

実際問題、あたしも触ってみて凄いなと思う。

 

ただ。それでもぴんと漠然と張られているだけのもの。

 

持ち歩いているナイフでも取れるし。

 

なんなら熱魔術で焼き切ればいい。

 

他にも薬草なんかを採取した後、さっさと撤収する。この時間くらいから、護り手がこの辺りを調べに来る。

 

それを警戒して、鼬もいなくなる。

 

だけれども、その代わりにエレメンタルが来る可能性がある。

 

エレメンタルと戦闘するのは避けたい。この間のクラウディアを襲っていたような雑魚だったら兎も角、もっと強いのが出てくると厄介だ。

 

鼬の皮と肉も、使えそうなのは剥いでおく。

 

後、帰った後、もしも会ったらアガーテ姉さんに話をするべきか。いや、止めておくべきか。

 

護り手の仕事の負担が減るなら言う事はないのだが。

 

それはそれとして、アガーテ姉さんだって怒るだろうしなあ。

 

怒ったら全員一晩説教コースだしなあ。

 

ちょっと悩んだが、結局鼬の死体は全部エリプス湖に放り込んで、その場から処理しておいた。

 

魚が集って、鼬の死体を貪り尽くしていく。

 

普段は鼬に喰われる側だが。

 

今回は逆。

 

凄い勢いで処理されていく鼬と、跳ね回っている大量の魚を見て。ちょっと身震いがした。

 

「ライザ、大丈夫か」

 

「前の事、まだ結構不安?」

 

「ううん、大丈夫。 大丈夫だよ」

 

言い聞かせる。

 

既にこの初歩の錬金術についての本は読んだが。いずれ、魚や水場にある素材も使わなければならなくなる。

 

熱操作の魔術で、素材の一部を冷凍。

 

熱く出来るという事は、冷やすことも出来る。

 

食べられそうな肉は、帰路でおやつにしてしまう。タオですら、ちょっと疲れたといって、ほどよくあたしが焼いた肉をがつがつ食べていた。船を漕ぐ前に、レントは先に食事を済ませた。

 

みんな、まだ体が育つのだ。

 

それもあって、食欲は旺盛である。これは恐らくだが、クラウディアも同じだろう。

 

帰路で、レントは言う。

 

フラムは温存したが、あたしが作った傷薬は使った。

 

それを見て、やはり思うところもあったのだろう。

 

「ライザは確実に錬金術で強くなってる。 タオだって、本をどんどん解読してる。 俺は、まだまだだな」

 

「そんなことないって」

 

「いや、まだまだだ。 今朝も俺、親父に殴られてな。 また一方的だった。 酒に狂って、すっかり鈍ってる親父にまだ勝てるどころか、ろくに抵抗もできねえ。 こんなんじゃ、まだ駄目だ」

 

「あのザムエルさんに殴られて死んでないだけ凄いと思うけどな……」

 

あたしはぼそりと呟くが。

 

レントは聞こえていないようだった。

 

ザムエルさんは鈍ったとはいうけれど、護り手と一緒に魔物退治して。そういうときには、凄い強そうな魔物を仕留めてくる。

 

そういうのを見ると、まだあたし達より全然強いと言うのが分かるし。

 

苦々しげにしながらも、アガーテ姉さんが時々仕事を……酒代のツケを帳消しにする代わりに頼んでいるのも分かるのだ。

 

ただ、そんな島中の鼻つまみ者と化しているザムエルさんの息子であるからこそ、レントは色々苦悩が大きいのだろう。

 

ちょっと、最後の言葉はあたしとしてもデリカシーがなかったな。

 

そう思って、あたしはため息をついた。

 

力が急激に上がり過ぎても、多分良いことはない。

 

とりあえず、順番にやるべき事をやっていこう。

 

そう、あたしは決めていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。