暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、そしてもう一度時代が動き出す

パミラは色々な世界を見て来た。

 

最初にいた世界では、とにかく荒々しい世界の中。多くの錬金術師が、野望のために動き。

 

しかしながら、根底では世界のためを思ってもいた。

 

荒々しく原始的な闘争本能に全身を支配されながらも。それでも世界のためにという一線を錬金術師達は越えなかった。

 

少なくともパミラが生まれた時代ではそうだった。

 

その世界でも、過去にいた錬金術師達は非人道的行動を続けていたようだったが。

 

それから順番に色々な世界を見て回った。

 

力が備わったから、というのはあるのだろうか。

 

幽霊で丁度良い。

 

いずれ、そう思うようになった。

 

パミラの存在は、やがて神と呼ばれるようなものとリンクしていき。

 

そして、世界を見守る役割を渡された。

 

色々な世界を見て来た。

 

酷い世界も多かった。

 

うららかで優しい世界もあったけれども。

 

それはごく少数。

 

人間は数を増やせば増やすほど心が貧しくなる。どうもその法則は、どこでも同じようで。

 

錬金術師も例外ではないようだった。

 

パミラはしばらく目を閉じて、意識を別の場所に集中させている。

 

集中先は、今いる場所。

 

クーケン島と言われる。

 

数百年前に、この世界の錬金術師達が作りあげた人工島。本来は、空に浮かび、錬金術師以外の人間を従え、従わない者は皆殺しにするための空中要塞だった。それがこんな使い方をされているのだから、不思議だ。

 

この世界での錬金術師は、災厄そのもの。

 

今までパミラが見て来た様々な世界で一番酷いのが間違いなくこの世界の錬金術師であるのは疑いない。

 

今、そんな世界の歴史で、最高の才能を持つ錬金術師が誕生しようとしている。

 

数百年前の錬金術師達が、何世代も掛けて復活させていった技術を。ごく短時間で解析して、ものにしようとしている。

 

今は善なる錬金術師だ。

 

それは直接接してみてよく分かった。

 

だが、あれが。

 

ライザリン=シュタウトがもしも何かの理由で翻意したら、この世界は文字通り終わりかねない。

 

それだけではない。

 

隣の世界であるオーリムも、同じように終わりかねなかった。

 

ライザリンが動き出す。

 

もう解析したのだ。

 

これは、あの子が危惧するのもよく分かる。神代といわれる。この世界が滅茶苦茶になった直接原因を作った錬金術師集団ですら、これほどの才覚の持ち主はいなかった。もしも神代の時代にライザリンが生まれていたら。

 

恐らく神代の外道どもを駆逐して、錬金術の概念そのものや歴史を変えていただろう。パミラは目を細める。

 

「パメラ」という名前で活動してきた時に見てきた錬金術師と、ライザリンは似ているかも知れない。

 

別の世界で見て来た錬金術師達。

 

みんな、世界のために動いていた。

 

エゴも当然あったけれど、それ以上に世界のために動いていたのだ。

 

この世界の錬金術師達には、それが決定的になかった。

 

否。

 

錬金術が出現した頃には。如何にしてエゴを充足させるか。如何に他人から搾取するか。それが人間の価値観となっていたのだろう。

 

だから化け物達が出現して。

 

世界を好き勝手にしていったのだ。

 

あまりにも酷い世界だったから、名前まで変えてこの世界を見守る事にしたが。それだけでは駄目だと判断したから肉体まで作った。

 

協力者も。

 

パミラは髪を掻き上げると、ふっと笑う。

 

今の時点では、ライザリンに手を出すつもりはない。あの子は危惧しているが。今の事件……フィルフサの大侵攻を防ぐまでは、何もしなくても良いだろう。

 

問題はその後だ。

 

どうもライザリンとその周囲の人間は、事件が終わったら離散しそうである。

 

それならその後にでも。

 

ライザリンに相応の処置をすれば良い。

 

簡単な事だ。

 

例え、神代の錬金術師であっても。パミラが見て来た世界の錬金術師達からすれば赤子同然。

 

この世界とオーリムでどれだけイキリ散らして無茶苦茶をしても。

 

そんなものは、井の中のカエルの王様だ。

 

パミラはもっと凄い錬金術師を幾らでも見て来た。

 

そういった錬金術師達が、圧倒的な力を持っても。結局は世界のために動いていたことを考えると。

 

やはりこの世界の錬金術師達は、どうしようもない連中だったのだと結論して良いのだろう。

 

それが過去になるか。

 

また繰り返されるのかはライザリン次第。

 

しかし、リスクが大きすぎるのも事実。

 

側に、フロディアが来る。

 

あの子が派遣している一人。

 

「コマンダー」

 

「何かしら」

 

「ライザリンを如何なさいますか」

 

「今、動き出したわ。 どうやら島の中枢の動力について、解析を終えたみたいね」

 

殆ど表情を作らないフロディアが、ひくりと口の端をつり上げる。

 

フロディアやその同胞は無表情そうに見えるが違う。

 

「あの子」の怒りを引き継いでいるだけだ。

 

だから、基本的に感情を見せない。

 

一つの駒としてこの世界を動かしていく事をなんとも思わない。

 

子供を作ることも。

 

その子孫を増やして、いざという時に備える事も。

 

少なくとも、古代クリント王国の蛮行をあの子が見てからは、「次」が起きないように全力で備えている。

 

その行動を、パミラは悪だとは思わなかった。

 

「凄い子よ。 神代にあんな子が一人でもいたら、この世界は此処までの地獄にはならなかったでしょうにねー」

 

「……錬金術師は結局、才能があれば圧倒的な力に晒されます。 それでエゴを肥大化させる……それが人間故の事なのでしょう」

 

「そうね。 でも、例外もある。 もう少し様子を見ましょう。 あの子がひりついているのも分かるのだけれどもねー」

 

一礼すると、フロディアはさがる。

 

これで、勝手に仕掛ける事はない。あの子が派遣した者達は、みんな任務に忠実だ。コマンダーであるパミラの指示にも従う。今まで例外はなかった。

 

さて。プディングでも食べて気分を変えるか。

 

パミラはそう思うと、闇の中に溶けるように歩き出していた。

 

 

 

(続)




明らかになった故郷の真の姿。クーケン島は、いつ潰れてもおかしくない状況だったのです。

まずは故郷を救わないといけません。それがどれだけ厳しい難題であったとしても。
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