暗黒錬金術師伝説9 暗黒!ライザのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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1、恐らく最後の聖地への侵入

異界の門の辺りは、やはり乾期だというのに湿気が凄く。まだまだ向こうでは大雨である事が容易に分かった。

 

フィルフサの群れを文字通り押し流し。

 

自然の猛威によって、完全に大侵攻は叩き潰した。

 

だが、それは自然の猛威を味方につけることによって、圧倒的暴力を振るったに等しい行動だ。

 

一歩間違えば、古代クリント王国の連中が、聖地グリムドルを無茶苦茶にしたのと同じになる。

 

気を付けなければならない。

 

あたしはそう考えながら、門を潜っていた。

 

前ほどの、一寸先も見えないような土砂降りではなくなっているが。それでも豪雨と言って良いだろう。

 

もし、水を自在に出せるものだとあの玉を見つけた時にブルネン家のずっと前の当主であるバルバトスが見たのなら。

 

それは、歓喜していただろう。

 

この地方の、乾期の厳しさは誰にも平等だ。

 

ましてや麦も育たないような水しか手に入らなかった昔のクーケン島である。更に言えば、手に入れた水で色々な作物も出来るようになったとしたら。

 

それはブルネン家が威張るのも当然だったのかも知れない。

 

だけれども、そんなうまい話なんて、この世にある訳もないだろう。

 

この水は、異界から略奪したもので。

 

その結果、異界は数百年も地獄に晒され続けた。

 

フィルフサが無茶苦茶にしなくても、グリムドルは荒野のままになり続けていただろう。

 

クラウディアが言っていた、古代クリント王国の頃の理屈。

 

自分が勝つためだったら何をしてもいい。

 

負けた人間は等しく全てを失う。

 

そういう理屈が、この惨状を作り出したのか。

 

或いは、もっと古くから。腐った理屈は人間を蝕んでいたのか。

 

それはあたしには、どうにも判断は出来なかった。

 

無言で、キロさんの所に行く。

 

キロさんは、洞窟の前で待っていた。

 

ふっと、笑うキロさん。

 

もうフードはしておらず、笑顔も少しだけ明るくなっていた。

 

洞窟の中で、軽く話す。

 

「フィルフサはどうですか」

 

「少数のはぐれた個体がうろうろしているけれど、見つけ次第処理しているわ。 将軍は恐らく、もう蝕みの女王と一緒にいる個体数体のみ。 それ以外の雑魚は、もはや統率を失って、雨に溶けるのを待つばかりね」

 

「あれほど恐ろしい相手だったのに、哀れなものだな……」

 

「レントくん。 まだ戦いは終わっていないよ」

 

クラウディアが、レントをたしなめる。

 

全くその通りだと、レントは苦笑しつつ認めた。いずれにしても、これからが本番である。

 

「事前に打ち合わせしたとおりに行きます。 あたし達が負けたときには、キロさん。 お願いします」

 

「ええ。 装置を弄って、以降一年がかりで蓄えた水をゆっくり吐き出させ、そして破壊する。 そして、それが終わったら門を閉じる」

 

「はい。 それでお願いします」

 

「ふふ、承ったわ。 でも、それほど心配はしていないの。 個人としての武勇はともかく、今の貴方たちなら勝てる。 歴戦を経てきたけれども、それでも怖いと思う事はあるのよ私も。 そんな私も、経験だけは無駄に積んで来た。 今の貴方たちなら……勝てるわ」

 

一礼する。

 

最初に出会った時に、ボオスを助けてくれた事。

 

それに、あたしを錬金術師と知っても、出会い頭に首を刎ねなかった事。

 

全てが、感謝しかない。

 

既に食事もトイレも風呂も済ませてある。皆に、一応、最後の確認をする。全員、大丈夫と応える。

 

タオも、眼鏡を直していた。

 

「ライザ、例のハンマー持ってきているよね」

 

「うん。 いざという時は、タオが使う?」

 

「そうさせてもらうよ。 荷車にあるあれがそう?」

 

「そうだよ。 先に素振りして確認しておいて」

 

タオが最初に立ち上がって、最終調整を開始。

 

あたしは、爆弾を相応に用意しておく。

 

レントは無言で集中。

 

クラウディアは、外で音魔術を展開。遠くまで、音を飛ばして状況を確認しているようだった。

 

リラさんはそれらを見ながら横になり。

 

アンペルさんは、無言で義手の微調整をしている。

 

あたしは座禅を組んで、精神集中。魔力を極限まで練り上げることとした。

 

それにしても、だ。

 

今、何処かから見られているか。

 

どうもそんな気がする。

 

まあ、それを気にしても仕方がない。此処にいるキロさんですら気付けないような使い手がいて。

 

其奴が此方を見ているとしたら。

 

それが仕掛けて来たときには、はっきり言ってどうにもできないだろう。

 

世界最強の六人にはほど遠い事だって理解している。

 

今のレントだって、錬金術装備無しの状態でザムエルさんとやりあって勝てるかは微妙だ。その程度の実力の六人なのである。

 

「準備は整ったか?」

 

「はい。 いけます」

 

「よし。 白牙の戦士達よ、見ていてくれ。 皆の命を奪った「蝕みの女王」を、今から屠りに行く。 皆に日の導きと月の加護のあらんことを」

 

「……」

 

その言葉が、リラさんにとって。いやオーレン族にとって、最大の強い意味を持つ言葉だとあたしは聞いている。

 

皆も知っている。

 

だから、それに誰も何も言わなかった。

 

さあ、決戦だ。

 

クラウディアが、外で待っていた。

 

そして、細かい状況を説明してくれる。

 

「あの辺りを通れば、川を迂回して敵の根拠地に行けると思う。 ただし、沼みたいになっているから、危険はゼロではないわ」

 

「分かってる。 それでも、濁流に飛び込むよりはマシだよ。 ありがとうクラウディア」

 

「どういたしまして。 どうしても私の戦闘力はみんなには劣るから、こういう所で役に立たないとね」

 

「その行動力、戦闘力を補ってあまりあると思うけどなあ」

 

タオがぼやく。

 

あたしから言わせれば、タオだって餌をぶら下げてやればとんでもない行動力を発揮するのだが。

 

タオにはあまり自覚がないのだろう。

 

雨の中を行く前に、軽く水の装置を調整しておく。水を少しずつ放出するようにして、むかし水源だったと言う場所におく。

 

これで、もしキロさんまで手もなくやられてしまった場合でも、二十年くらい掛けて水は全て戻るはずだ。

 

これで、やっていないことは全てなくなった。

 

移動開始。

 

轟々と凄い音を立てる川が、幾つも流れている。もう川の水は茶色になっていて、おぞましい紫はなくなっていた。

 

フィルフサが地面からわっと出てくる光景は、まだ覚えている。

 

ああいうのが苦手な人は、それこそトラウマになるかも知れないくらいの恐ろしい光景だった。

 

だが、それはそれ。

 

あの地面から出て来たのは生まれたばかりのフィルフサだったかも知れず。

 

紫の地面こそが、フィルフサを産み育てるための胎盤だった可能性もある。

 

そう考えると、あの光景は。

 

むしろ主観で、気持ち悪いだのなんだの言うべきではなかったのかも知れない。

 

そして全ての紫に染まった土壌が流された今。

 

フィルフサの未来を、あたしはそれだけ奪ったのだ。

 

勿論。分かっているし、それに対する悩みはない。

 

ただ覚えておかなければならない。それだけの話なのである。

 

「ここよ」

 

「ふむ、確かに流れは緩くなっているようだな。 だが、深さは……」

 

「ちょっとまってね」

 

クラウディアが前に出て、手を水面に突く。

 

恐ろしく汚れている水だが、今更気にすることもないのだろう。それにアトリエで洗い仕事とかはしているし。

 

弓矢を扱うようになってから、手にマメだって出来ている。

 

それを思えば、今更とは言えた。

 

手を水につけたクラウディアが、音魔術で深さを確認。魔力が凄まじいので、やはり背中に翼が生じているように見える。

 

しばし音魔術を展開した後、クラウディアが汗を拭っていた。ハンカチも、既に絹のを使わないようになっていた。絹のだと、どうしてもこういった場所での戦闘での汗を拭いきれないからだろう。

 

お上品なままでは、こういった泥まみれの場所で戦い続けられない。当たり前の話である。

 

栄養剤を渡す。それを飲み干してから、クラウディアは幾つかの地点を指さしていた。

 

「ええと、あの辺りを通れば渡河が出来ます。 ただ、途中何カ所か深くなっている場所があるみたいです」

 

「……荷車を使うか」

 

「そうですね。 そうしましょう」

 

アンペルさんが言う通りにする。

 

現状、荷車は装甲で覆っているのだが。実の所、浮かせる事も可能である。

 

幾つか持ってきている袋があって、それにすぐ空気を吹き込む。空気を作るのはそれほど難しく無い。

 

熱魔術で寒暖を利用するだけ。

 

それで、ぶわっと空気を吹き込むことが出来るのだ。

 

この袋は、元々水を採取するためのもの。鼬を捌いて皮を袋に加工したものだ。それに空気を吹き込んで縛る。

 

元々半水棲の生活をしている鼬である。

 

その皮は、水をとても良く弾く。

 

膨らんだ袋を複数取り付ける事で、荷車はいざという時の筏に変貌する。クラウディアに乗るかと聞いたが、首を横に振られた。

 

荷車と一緒に、六人で水に。

 

そのままクラウディアは、音魔術を展開し続ける。

 

水底の地面の柔らかさも確認しておく必要があるからだ。そうして、確実に渡河を進めていく。

 

水を自在に操れるアドバンテージが、此方にある。

 

だから、それを使って勝った。

 

だが、これだけの水が溢れると、それは凶器にだってなる。あまりもたついていると、いずれ牙を剥いてくるかも知れない。

 

土地の水はけは、あたしが思っていたよりはいいようだ。

 

だが、そもそも植物が全て失われてしまったのだ。水がある程度捌けたら、少しずつ植物を植えて、育てて行かなければならないだろう。

 

水底の感覚が危うい。

 

泥がかなり滞積していて、それが足を取る。

 

また、水流も弱いとはいえある。

 

これは油断すると危ないな。そうあたしは思う。水はやっぱりまだ少し怖い。入れないほどではないけれども。

 

ただ、この水。

 

生き物の気配がない。

 

まあ、それもそうなのだろう。この辺りの水は、徹底的に排除されたのだ。水に住む生物は全滅。

 

いずれ海から遡上してくるかも知れないが。

 

それまでは。水は生物の空白地帯になる。

 

何より、一度壊された生態系というのは、簡単には回復しない。考え無しに壊されたものは特に、だ。

 

無言で歩く。

 

タオが時々あっぷあっぷしているので、レントが支援。

 

「助かるよ」

 

「背丈はどうにもならねえからな。 小魚とか食うと良いとか言うが……」

 

「そうでもないよ。 私が知る限り、単に栄養をたくさんとっていると背が伸びる傾向があるってだけかな」

 

「なるほどな。 これからはもっと食べられる筈だから、食べておくべきじゃないのか」

 

タオが、口を尖らせる。

 

どうせチビだよと。

 

だけれども、タオはこれから背が伸びる可能性は大いにある。

 

そうあたしが慰めると、多少場の空気がやわらいでいた。

 

「まあ、クラウディアの言うとおりなのかも知れない。 王都にいったら、意図的に多めに食べて見るよ」

 

「問題は王都の連中が田舎者を差別したりしないか、だな」

 

「そういえばアガーテ姉さんがそんなこと言ってたな」

 

「それについては恐らく問題はないだろう。 今の王都は、田舎の人間が大勢集まっているからな。 そしてみんな、王都に古くから住んでいる人間を良く思っていない。 田舎者という理由でタオを虐める奴がいたら、そいつも周囲からあまり良くは見られないだろう」

 

アンペルさんが、そんな事を言ってくれる。

 

そうこうしている内に、対岸が見えてきた。クラウディアは、たまに話をする以外はずっと音魔術を使っている状態。

 

不意に、クラウディアが左、と促す。

 

すぐに掴まっている荷車を、あたしは左に動かす。

 

レントも踏ん張って、良く耐えてくれた。

 

「うわ、足下が崩れる感触があったぜ。 これ、帰るときとかどうするんだ……」

 

「あるだけものは持ってきてある。 「蝕みの女王」を討ち取ったら、じっくり回復してから戻ろう」

 

「つまり負けても逃げる事は無理って事だね……」

 

「もう腹をくくれ」

 

悲しそうなタオに、リラさんが一喝。リラさんの声は別に荒ぶったりはしていないが。一度こういう風に言うと、誰も逆らえない怖さがある。

 

元々その強さをみんな間近で見て来ているから、というのもあるのだろう。

 

タオも黙る。

 

それでいい。

 

ここから先にいるのは。今まで目にして来た全ての相手よりも強い敵だ。それくらいの覚悟を決めないと、勝てないだろう。

 

対岸に到着。

 

荷車を引き上げると、袋から空気を抜く。

 

びりびりと空気が帯電している。もうこの辺りは、雨が降っていてもフィルフサの探知範囲だ。

 

向こうも気付いているのだろう。最後の戦いを仕掛けて来たと。

 

敵にして見れば、繁殖行動を叩き潰してくれた最悪の敵だ。こっちからしてみても、全てを滅ぼす最悪の敵。

 

例え、悪意があろうがなかろうが。

 

放置はしておけないのだ。互いに。

 

無言で休息して、渡河の疲れを取る。この辺りは、激戦が行われていたときは水が流れていたが、今はそのまま池のようになっている。

 

フィルフサは、無理をすれば渡河できたのではあるまいか。

 

いや、それは不可能だったんだろうな。

 

あたしは気配を探って、そう結論する。

 

本当に敵の数が少ない。

 

最後の大侵攻をしかけるタイミングで、ありったけの兵力を敵は出してきたという事である。

 

そして敗れた。

 

残っているのは、司令部だけだ。

 

ただその司令部さえ残っていれば、フィルフサは何度でも増えて戻ってくるだろう。特に王種は、存在そのものが危険だ。

 

倒さなければならない。

 

無言でハンドサイン。

 

回復したら言って。

 

そう告げると、リラさんとアンペルさん、レントは大丈夫とハンドサインを返してきた。

 

クラウディアは少し休憩。タオも。

 

あたしは頷くと、休憩を待つ。敵は今の時点では仕掛けては来ていないが。それもいつまで続くか分からない。

 

敵にしても、この最終攻撃に対しては、全力で反撃するつもりだろう。逃げるにしても。少なくとも殿軍を出しては来る筈。

 

腹は充分満ちている。

 

さて、どう動く。

 

そう考えていると、敵側から動いてきた。

 

その姿を見て、あたしは瞠目する。

 

そうか、ついに出てくるか。そして、ついに此処まで届いたという事を意味してもいる訳だ。

 

皆を促して、岩の影から出る。

 

雨を物ともせず、平然と佇立している其奴は。

 

忘れもしない。

 

小妖精の森で最初に出くわした、フィルフサ将軍。偵察のために、あたしたちの世界まで来ていた奴だ。

 

頭には剣が刺さったまま。

 

奴は、きちきちと顎を鳴らしていた。ものなんて食べないだろうに。感情だってないだろうに。

 

それでもびりびりと感じる。

 

凄まじい怒りだ。

 

がらんどうの存在が、怒りをこれだけたぎらせるのは、それは決まっている。仲間がみんな、あたしの手で濁流に沈んだからだ。

 

そしてそれは、最初にあたしを相手にせず。そのままあたしを見逃した結果だからだ。

 

更に、間近で相対してみて分かった。

 

此奴こそ、敵の将軍における最強の個体。

 

恐らく「蝕みの女王」は、大侵攻を完璧なものとするために、最初から最強の手札を切ってきたということなのだろう。

 

そして奴は、確実に此方の世界が乾期に近付きつつある事を確認して、情報を持ち帰った。

 

或いはアンペルさんとリラさんが、斥候を確実に処分していたから、此奴が出たのかも知れないが。

 

いずれにしても此奴は。

 

文字通りの女王の懐刀というわけだ。

 

「懐かしいな。 あの時は文字通り手も足も出なかったが……」

 

「今回はリラさんとアンペルさんもいる。 力も前とは比べものにならないくらい上がってる!」

 

レントとタオが口々に言う。

 

リラさんは態勢を低く、アンペルさんは詠唱を開始している。

 

こいつ。フィルフサの将軍の中でも、やはり図抜けている。今だから分かる。あの時仕掛けた愚かさを。

 

相手にもされなかった力の差を。

 

雨があって、なお力は向こうが上か。だが、それでも勝たなければならないのだ。

 

確実に此方の戦力を削るためだけに、此奴は出て来た。

 

女王を守るために。

 

此方だって、負ける訳にはいかない。

 

女王を逃がすわけにはいかないからだ。

 

最初に仕掛けたのは、あたしだ。

 

爆弾を投擲する。即座に対応した将軍が、空中でそれを撃墜する。こいつも魔力砲を使うタイプか。

 

リラさんが仕掛ける。

 

誰よりも早く間合いを詰めると、鋭い斬撃を叩き込む。

 

その全てが防がれた。

 

何、と呟くのが聞こえる。

 

全員散開しながら、攻撃を開始。続けてレントが仕掛けるが、パリィのように弾かれていた。

 

何だ今のは。

 

「クラウディア!」

 

「!」

 

クラウディアが、反射的に音魔術をぶっ放す。少しだけ、クラウディアに向けて放たれた攻撃の速度が鈍り。

 

それを、アンペルさんが撃墜する。

 

地面に落ちたそれを見て、悟る。

 

棘だ。

 

超高速で、棘を射出して。攻防に利用してくる、と言う訳だ。

 

これは厄介極まりない。

 

全身を展開する将軍。体の彼方此方が開いて、姿を見せるのは、無数の棘だ。それも構造的に、これは再発射可能なのか。

 

「まずい、伏せろっ!」

 

リラさんが叫ぶ。

 

同時に、あたりの全てを、棘が抉る。

 

あたしは間一髪、クラウディアに飛びついて、一緒に伏せる。タオもアンペルさんも、避けるのに成功したか。

 

レントとリラさんは、もろに喰らって吹っ飛んでいる。

 

即死していない。それだけで、よしとするべきなのか。

 

勿論そのままで相手の猛攻は止まらない。

 

跳躍。

 

そして、上空で今度は体の下部を展開。其処には、多数の魔力砲が備わっていた。

 

それは頭に当たる部分なんか、潰されても何とも思わないわけだ。

 

それに迅速に地面に潜る事が出来た理由もよく分かった。あれで文字通り掘削していたのだろう。

 

魔力砲が、斉射される。

 

だが、次の瞬間。

 

あたしが投擲したクライトレヘルンが炸裂。魔力砲と相殺し、猛烈な蒸気が将軍を包んでいた。

 

将軍が、猛々しく地面に着地。

 

背中に翼が出来ている。此奴、飛ぶ事も出来ると。

 

きちきちと顎を鳴らすと、水平にあたしに向けてすっ飛んでくる将軍。

 

タオとレントが同時に動く。レントは、全身血だらけだが、それでも動いてくれた。

 

至近、本当に至近で。

 

口に当たる部分から剣のような突起をつきだした将軍が、食い止められる。

 

リラさんが、土手っ腹に回転しながらの蹴りを叩き込み。

 

全身の棘を打ち終わった隙間に、クラウディアとアンペルさんがそれぞれ一撃を叩き込む。

 

拉げる将軍。

 

だが、羽根を高速で動かして滑るようにさがると。この程度は余裕と言わんばかりに、口から凶悪な魔力砲を放ってくる。

 

あたしが、即応。

 

熱槍で迎撃して、互いに弾きあっていた。

 

爆発が周囲を蹂躙し、蒸気が辺りを駆け回る。あたしは詠唱を続けながら、敵の動きを確認し続ける。

 

高速で左右に動きながら、体の左右に剣のような突起を出現させる将軍。

 

レントを弾き飛ばし、続いてリラさんを吹き飛ばす。

 

更に、クラウディアにまだ残っている棘を放つが、タオが突き飛ばして。自身はハンマーでどうにか受けきる。

 

クラウディアが地面から、矢で反撃。

 

将軍の体に、極太の矢が叩き込まれ。更に装甲が拉げる音がした。それでも将軍は地面に自分を打ち付けるように降り立つと。

 

地面に、体を固定する。

 

がつんと、もの凄い音がした。これは、超火力の魔力砲をぶっ放してくるつもりだ。

 

アンペルさんが立て続けに空間切断を叩き込むが。コアを抉っている様子はない。ひょっとして、コアを高速で動かしているのか。

 

あたしも詠唱を続ける。

 

パワー同士のぶつかり合いだったら、負けるつもりはない。だが、一瞬でもいい。相手の動きを止められないか。

 

一瞬が、一時間にも思える。

 

将軍の口に、超高密度の魔力が収束していく。あれをぶっ放されたら、誰かは確実に死ぬ。

 

雨のアドバンテージがあってなおこの力量差。

 

本当に、王種に勝てるのか。

 

冷や汗。

 

相手が魔力砲を放とうとする瞬間。一瞬だけ、あたしの方が遅い。

 

だがその時、隙が出来る。

 

タオが投擲した爆弾。それを、鬱陶しいといわんばかりに、将軍が撃墜したのである。

 

その隙に、あたしが詠唱を終わらせていた。

 

巨大な熱槍。十四本。通常足止めに使う熱槍の千本収束させたもの。

 

ここに来たときに使った、範囲攻撃型じゃない。一点収束型のヘブンズクエーサー。それも総力での一撃。

 

これに対して、面白いとばかりに、将軍が受けて立ちに来る。

 

将軍が、総力での魔力砲を放つ瞬間。

 

あたしも、熱の槍十四本を、同時に投擲する。

 

それらが一点に収束し、なおせり合う。それだけの火力が、将軍には備わっていると言う事だ。

 

魔術が効かない。

 

それは分かっている。

 

だが、どうして敵は魔力勝負に乗って来た。弾き返されても、痛くも痒くもないからだろうか。

 

いや、違う。

 

「はぁあああああっ! 焼き尽くせ、クエーサーっ!」

 

裂帛の気合いと共に、全力を集中。額の血管が切れそうになる。だが、それでもなお、押し込む。

 

炸裂。

 

敵の顔面至近で、超高熱が炸裂する。だが、これでは恐らく倒せない。それは、分かっている。

 

いや、おかしい。敵が融解している。動きが鈍くなっている将軍に、総力で全員が仕掛ける。

 

リラさんの蹴りが、将軍から突きだしている武器を全て吹き飛ばす。

 

アンペルさんの空間切断が、足を一本抉り取る。

 

態勢を崩した将軍に、血を汗と一緒に振り飛ばしながら、レントが斬りかかる。

 

タオも、それと一緒に、体ごとハンマーでぶつかっていく。

 

装甲が、抉り取れる。

 

赤熱していたからか。いや、雨で冷えていたところを急に温めたからか。

 

そこに、クラウディアが総力の矢を叩き込む。装甲の一角が、文字通り弾き飛ばされるのが見えた。

 

あたしは突貫する。

 

将軍は回転しつつ、周囲全員をはじき飛ばしに掛かるが。

 

それこそが、弱点を生じさせる事になる。

 

空中に氷の足場を作りあげると。

 

あたしはそれを蹴り。

 

地面に向けて、全力で蹴り込んでいた。

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