いや~…構想の練り直しに苦労しました。それに新しい物語を書き始めたりして全然時間取れなくって…。
今作は何とか続けていきたいですねぇ。
――中央歴1637年1月24日未明、クワ・トイネ公国北東海上――
「全く。こんな大変な時に洋上哨戒任務とは、上は現状が見えていないのか?」
クワ・トイネ公国首都防衛竜騎士団のカールス・マールパティマは、魔信が繋がっていないのを良いことに、上層部に向けて愚痴を吐いた。
『大変な時』というのも、現在クワ・トイネ公国と、友好的な関係を築いているクイラ王国は、隣国であるロウリア王国と一触即発寸前の状態にある。
同国はロデ二ウス大陸内で最大の国家であり、それに比例して軍事力も強大だ。
たかがワイバーンの1騎、竜騎士の1人でも貴重な戦力だ。
この海域の哨戒任務は毎回行わなければならない決まりになっているが、お国の一大事がすぐそこまで迫っているというのに、このようなことをしている場合ではないのではないか、とここ最近毎度感じていた。
実際、これまで何十回と哨戒飛行を行ってはいるが、現在までに異常などは見つかっていないのも、それに拍車をかけた。
思案している間に、変針位置へと差し掛かった。
愛騎を反転させようと手綱を握りなおしたとき、マールパティマの目に何かが映り込む。
「何だ、あれは…?」
自分しかいないはずの空に、黒い点が見えた。
かなりの速度で飛行しているらしく、近づいてくるのが早い。
(うん…?)
黒点が大きく、飛行物体の全容がはっきりしていくうち、彼はその形状の異様さに疑問符を浮かべた。
「……は?」
形はワイバーン…であるのだが、それはあまりにも大きすぎた。
今跨っている愛騎のワイバーンは、体長約10メートル。それに対して、目の前を飛んでいる竜は軽く
やけに角ばった分厚い漆黒の翼、鋭い牙が並んだ顎、光輝く双眼…その巨体は、否が応でもあらゆる生物を威圧しそうなものだが、常識を超越した存在を目の当たりにした彼は、恐怖よりも先に呆れに近い感情を抱いていた。
何だあれは、神竜が攻めてきたのか…そんな考えが湧く。
「…お?おい、相棒!気をしっかり持て!!」
マールパティマの愛騎が、目の前の巨竜に怖気づいたように震え始めた。自分よりも圧倒的格上な存在であることを、生物的な本能が訴えているのだ。
飛行の姿勢が不安定になるが、何とか振り落とされずに相棒の背中をポンポンと叩いて落ち着かせる。
「うおぉぉぉ…ッ!?」
漆黒の巨竜と擦れ違う。
互いの距離は、最低でも数百メートルは離れていたはずだが、巨体が猛速で通過したことで巻き起こされた乱気流が、マールパティマ騎を大きく揺さぶった。
バランスを取り戻すと、反転して追跡を開始する。
「追いつけない…!?」
だが、ワイバーンの最高速度は、巨竜のそれに遠く及ばない。
巨体に似合わず、遥かに素早かった。
「こちらマールパティマ!現在、所属・正体不明のワイバーンと接触!途轍もなく大きく、ワイバーンでも追いきれないくらいに速い!現在マイハーク方面へ向かっている!」
《大きい…とはどの程度だ?》
「信じられないが…全長は200メートル超は確実、色は黒だ!…くそ、もう見えなくなる!」
司令部との連絡の最中も、巨竜はマールパティマをぐんぐんと引き離していく。最高時速の差は、20~30キロでは利かない。
ワイバーンの最高時速235キロを遥かに上回るスピードで、クワ・トイネ公国の都市マイハークへと迫っている。
《…どうやら本当のようだな。了解した!本土の竜騎士団を全て上げるよう進言する!苦労を掛けるが、君も彼らと合流して対処してくれ!》
報告を信じてもらえたことで、少なくとも対処が遅れることはなさそうだと、マールパティマは一先ず安堵した。
普段から真面目に勤務している彼の経歴、そして慌てふためきながら報告する狼狽ぶりが、嘘だと思える報告に信頼性を与えたようだ。
「了解した。…とはいえ、それはできなさそうだが、な…」
連絡を取り合っている間に、件の巨竜は完全に見えなくなっていた。
感想等ありましたら宜しくお願いします。