何時まで経っても外交・政治の描写は上手くならんのです。なので会談シーンはほぼカットなのです。今回はちょっとつまらん回です。
主のX:
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斯くして実施された《烏の巣》とクワ・トイネ公国間の会談。
《烏の巣》にとっては、転移騒動――前世界でも別の世界線から異世界人がやってきたりしてるため、思ったほど混乱はしていない――にて入手先を失った食糧や資源、そして友好国を手に入れるための第一歩。
クワ・トイネ公国にとっては、伝説に伝わる神竜に匹敵か上回る巨竜を従え、そして巨大な鉄製の船を有する勢力を味方につけるチャンス。
お互いに失敗は許されない状況であり、緊張感たっぷりの場となった。
――《烏の巣》側からの領空侵犯に対する謝罪から始まった会談の結果、以下の通りに取り決められた。
・クワ・トイネ公国及び《烏の巣》による連邦国家の設立を目指す
・《烏の巣》は有事の際、クワ・トイネ公国軍の指揮下に入り、その命令にも率先して従う。ただし、ある程度自由に動ける権限を有するものとする。
・《烏の巣》は、クワ・トイネ公国に対し軍事を含む各種技術を提供、及びその教育の為の人員も派遣する。
・クワ・トイネ公国は《烏の巣》に対し全面的に食糧を提供する。
・クワ・トイネ公国は、同国の不要な土地を《烏の巣》へ無期限租借する。これは軍事施設や工場などを建設するため。
・クワ・トイネ公国には、クイラ王国と《烏の巣》との交渉において、仲介役を務める。
圧倒的に、クワ・トイネ公国側が得をしているとしか思えない内容だ。
食糧の輸出、土地の差出という条件を付けられたが、食糧など公国にとっては余り過ぎてその分を家畜に与える程の量があり、土地は珍しく瘦せこけた無価値な場所を差し出すだけという破格なもの。
ロウリア王国との開戦の兆しが高まっている現状、この程度の対価を払うだけで優れた技術を手に入れられるのであれば、寧ろ進んで受け入れよう…というのが、公国側の考えだった。
ただし、それでも『食糧・領土を差し出す』という事実には変わらないため、提供される技術の精査を行うべく、人員を派遣する予定である。
「なるほど。ロウリア王国ですか…」
「我々のように、人間ではない種族を"亜人"と称し、迫害を続けてきた国です。現皇帝ハーク・ロウリア34世は亜人排訴を取り止めようと動いていたようですが…そんな話も、いつの間にやら聞かなくなりました」
ロウリア王国とクワ・トイネ公国、クイラ王国の関係性を訊いた黒烏は顔を顰める。
彼の国が亜人――エルフや獣人に対して行ってきた所業には、彼女自身腸が煮えくりそうな嫌悪を感じた。
KAN-SENの中にも、獣の耳や尻尾、角、エルフの耳等の特徴を持った者が少なからずいる。普段から彼女たちと接している黒烏にとり、ロウリアと関わる等論外だった。
「…もし接触を考えているようでしたら、お勧めはしません。門前払いが関の山でしょう」
「ご忠告感謝いたします」
会談に出席していたリンスイの言葉に、黒烏は座ったまま軽く頭を下げた。外務卿である彼らしい助言だった。
「《烏の巣》にも、貴方方のような特徴を持った者が少なくありません。残念ですが、ロウリアとの接触はできそうにありませんね」
黒烏の決定に、クワ・トイネ側は安堵した。
もし、ロウリアと接触してあることないこと吹き込まれ、自分たちにあの力が向けられたら…とは、考えたくもない。
そして、自分たちと同じ外見的特徴を持つということに、ある程度の興味を覚えた。
「うちの子たちは血の気が多いですから、彼の国そのものをなかったことにしてしまいかねません。そのような事態にならなくて安心しました」
(((え???)))
ニッコリとしながら、とんでもない台詞を口走る黒烏。彼女がいう『うちの子たち』とは、いったいどんな化け物なのだろうか。
そして、もしも対ロウリア戦争が始まったら、彼女たちの力が彼の国に向けられることになる…今まで憎悪と恐怖の対象でしかなかったロウリアに、生まれて初めて憐憫を覚えた公国側だった。
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――ヤゴウの手記にて
部下の外務局員、軍務局から派遣されたハンキ・ウーズドヴェルと共に、視察団に任命された私は、これから始まる船旅に辟易していた。
ハンキ将軍から聞くに、船旅とはとてもひどいものらしい。
船の揺れで気分が悪くなるなど当たり前、食事は保存の効く塩漬け肉や硬く乾燥したパン、水はすぐに腐ってしまうため、その代わりに積んだ酒を嫌でも飲まねばならず、おまけに居住性も最悪という、ある意味地獄だと。
しかし、沖合に停泊する純白の巨体を見た瞬間、私のそんな不安は一瞬で消し飛んだ。
遠目から少し目にしただけだが、まるで島が現れたように思えた。見る者を圧倒するような威圧感がヒシヒシと伝わってきたのを覚えている。
これだけ巨大であれば、少なくとも「狭い、暗い、汚い」の三重苦からは逃れられそうだ。
明日に備えて寝ることにする。
予定通りであれば、明日のこの時間は巨船の中だ。不安と期待の両方が沸き上がって眠れそうにない。
――乗船後に記す
現在私は純白の巨大船…『サファイア・テンポ号』の客室にいるのだが、私はもう驚き疲れていた。
この船へ乗り込んだ際、メイド――キュラソー殿とカーリュー殿へ、どれ程の大きさなのか聞いてみたが、全長290メートル、全幅32メートル、基準排水量9万トン、乗客定員2000名とのことだ。
デカすぎる。我が軍の軍船の10倍はあるではないか。
そして船内だが、とにかく明るい。光魔法や炎魔法を使った形跡はないにも拘わらず、である。
そして、1人1人にあてがわれた部屋も広く、上物な調度品に、その気になれば一度に5人は寝られそうな大きさのベッド。いずれも、自分が使ったことのない高級感のある代物だ。
まるで宮殿である。もう一生ここに住みたいほどに。
情報量が多すぎて未だ頭が混乱気味だ。まずは寝ることにする。
――翌朝、船室にて記す
昨夜はよく眠れた。
寝る前にカクテルと呼ばれる甘い酒を飲み、ほろ酔い気分でベッドへ横になったのだが、それが効いているらしい。
朝7時、トケイと呼ばれる時間を知らせる機械から鳴り響く音で目を覚まし、朝日を見ながら着替えて待っていると、キュラソー殿が食堂へ案内してくれた。
柔らかいパンや半熟のスクランブルエッグ、ベーコン、豆と野菜のソテーなどが盛られたメニューを堪能しつつ、彼女から本日の予定が知らされる。
今日は、この船に備え付けてあるエイガカンという施設で、《烏の巣》が存在していた世界の歴史を説明したいとのことだった。
私をはじめ、ハンキ将軍や部下たちも興味深いと思っていたが、いざ聞かされてみると、クワ・トイネの歴史が霞むほどの過酷なものだった。
同席していたクロウ中将の話によると、彼女らの世界は全国家を巻き込んだ戦争の連続により、80億もいた人口はその9割近くが絶滅したという。
『セイレーン』という勢力に制海権・制空権を奪われ、それに対抗するべく生み出されたのが、会談に出席していたリットリオ殿や、先ほど会ったキュラソー殿とカーリュー殿のような人型艦船――人の姿に巨大な軍船の力を宿したKAN-SENという兵器であった。
もはや、理解が追い付かない。
そして、そのKAN-SENを一元管理するための組織『アズールレーン』の設立と、それから離反した陣営が創設した『レッドアクシズ』との内戦、犠牲を出しながらもセイレーンを撃退した『セイレーン大戦』までを一気に説明され、頭がパンクしそうだ。
何よりも驚いたのは、クロウ中将が元はセイレーンの司令塔的存在である"オブザーバー"の手によって造られた存在だということ。
最初はセイレーンの名の下で活動していたようだが、実験という名目で世界の海を荒らし回ることに疑問を感じ離反、人類側に付いたという。
結局、説明されたことは衝撃のあまり何一つとして覚えていなかった。
配布された資料を後で読み込んでおこうと思う。
兵器解説は次回以降です。近未来的な…どっかのSF映画で見たことのある武器・兵器が出てくる予定です。オリジナル兵器や現代兵器もありますが。
第二次大戦の武器・兵器は、KAN-SENの装備以外で出てこないと思います。
よろしければ、感想等よろしくお願いいたします。