ソードアート・オンライン 本能の牙-compassion- 作:Clown42
「こりゃあ......不味いかな......」
突然ですが絶体絶命です。
ログインして初めて本気で命の危機を感じています。
何が起きたかっていうと、私とアスナはレベル上げのために、一層の迷宮区で見敵必殺の勢いで暴れまわってたんだけど......
勢いに乗りすぎてトラップにかかってしまい、アスナと分断されてしまったという現状です。
「リタ!大丈夫!?」
「まだ平気。これからヤバくなる」
私は真っ赤に染まった部屋に閉じ込められて、アスナは通路にひとりぼっち。
部屋はあっという間に通勤ラッシュの電車状態......モンスターハウスって言うんだっけ?こういうの。
とりあえず、倒せない敵じゃないから瞬殺はされないだろうけど、数が数だけに不安が胸を絞める。
「ゴオォォォォォオオ!」
部屋のモンスター《ルーザー・コボルト》が一斉に咆哮を上げる。さっきまで切り捨ててきた者達と同じとは思えない威圧感があった。
扉越しにアスナと会話する。
「アスナ!とりあえず迷宮区から脱出して!」
「嫌よ!リタはどうするの!?」
「どうしようかな......無限に出てこなければ生きのこれるかもね」
「......もしかしたら別の道もあるかもしれない。さがしてみるからなんとか持ちこたえて!死なないでよ!」
足音が扉から遠ざかっていく。
本当に探しにいったの?いい友達を持ったと言いたいけど、軽く部屋を見渡す限り、他に出入口があるようには見えない。せめてアスナが死なないことを祈る。
「ポーション3つ、か......やれるかしらっ......!」
もうやられる前にやるしかない。
ここまで来たときのように、なるべく急所狙いで攻撃していく。次々と散っていく光に気にも止めず、ただひたすら敵を狩り続ける。攻撃を受けても、まとめて襲いかかられても、気圧されることなく戦い続ける。
いつの間にか回復アイテムも底をつき、後がなくなってきたが、敵の数も残り僅かになっていた。
「さぁ!終わりよ!」
残り数匹を、まとめてソードスキル<ホリゾンタル>で切り捨てる。すると、先ほどまで真っ赤に染まっていた部屋は、いつもの色に戻っていた。
「よかった......無限じゃなくて......」
ヘトヘトの体を引きずり、とりあえず部屋から出る。
「案外......やればできるもの......ね......」
そのまま私は通路に倒れてしまった。
まずい、起きなきゃ。でも、今の私にはもう指一本動かせる力も無かった。
だめよ......まだアスナがいるんだから......二人で......生きなきゃ......
「おい、大丈夫か!?」
「私は......まだ......」
意識を失う寸前、そう誰かが言って、駆け寄ってくる足音が聞こえた。
気が付くと、私は外にいるみたいだった。
ようやく体も動きそうなのでとりあえず体を起こす。
「ん......んん......」
「お、起きたか?」
声の主は黒い肌でガッチリとした体つきの外国人だった。
しまった......英語は読めるけど、英会話は苦手だよ......
「え......あ......アイルビーバック」
「日本語できるから無理するな」
「あ、そうなんですか」
助けてくれた......んだよね?だからいい人ってことでいいのかな?すごく落ち着いてるし、明らかに歳上だし、日本語上手いし......
「あの、助けてくれてありがとうございました」
「いや、こんな状況だ助け合うのは当然だろう。誰だってこんなところで死にたくないからな......っと、俺の名はエギル、よろしくな。」
「私はリタです。あの......エギルさん。助けていただいておいて図々しいんですが、お願いしてもいいですか?」
「ん?なんだ?」
エギルさんは、他数人の仲間と迷宮区に来ていて。探索していたところ、私を見つけたらしい。他の仲間は街に帰ったそうだ。申し訳なく思いながらも、私はあの迷宮区のトラップ部屋の前で倒れていた経緯と一緒に、アスナのことも話した。
フレンドリストから消えてないところを見るとまだ生きてる。
「そうか......仲間がいたのか......」
「はい、お願い出来ませんか?」
エギルさんは少し悩んでいたが、答えはすぐに出た。
「OK 助けにいこう。だが、俺たちがやられたら元も子もないから、慌てずにな」
「はい!ありがとうございます!」
早速さっき私が倒れていた迷宮区第十四階層の通路まで行くことにした。
戻ってきてたりしてくれるといいんだけど......
まだ最初の迷宮区なだけあって、そこまで複雑でもなければ広くもない。私みたいに罠にかかっていなければすぐ見つかると思うんだけど......
「どうだ?リタ」
「まだ少し離れてますね、けどこの奥ってこの階段しか......」
まさかとは思うが、アスナも罠の餌食に......
いやいや、ネガティブなことは今は考えないようにしよう。
「アスナー!返事してー!」
十六階層に到達し、アスナを呼んでみる。
だが、声が空しく反響するだけだった。
この奥にもまだ続きがあるんだろうか、一階と比べて通路が少なく、部屋も広い。
「ん?奥の部屋、誰かいないか?」
「え?......!アスナ!」
どうなってんの......?なんでアスナは倒れてるのよ......アスナの近くには別の人がいて、モンスターは全滅してるみたい。通路を駆け抜けて、すぐにアスナのもとに向かおうとした時、今までより大型のモンスターに阻まれる。
「なっ......こいつ、一体!?」
「多分だがレアPOPモンスターだろう。お前、この迷宮区で《コボルト》系の奴狩りまくってたりしてないか?噂では、強めの奴が仕返しにくるんだと」
心当たりはあるけど冗談でしょ......こんなタイミングで仕返しだなんて......でも、やるしかない!
私は、あの部屋を抜け出した時よりも強く願った。
二人で生きたい、この世界から抜け出すために!
「エギルさん......もう少しお付き合いしていただけますか?」
「大丈夫だ、No problem」
「ありがとうございます......それじゃ、行きます!」
私は眼前のモンスター《ヴァンガード・ルーザー・コボルト》に向けて剣を構え、目を閉じ、集中する。
アスナの為なら、守るべきものの為なら、どこまでも力が湧いてくる......
約束したもの......私が守るって。
約束したもの、一緒に帰るって。
約束したもの!一緒に戦うって!
「強めの奴と言っても、いつものより手練れで動きがいいって位だ!ある程度HPを削ったら、お前は仲間のところに行け!そのあとは俺だけでも十分だ!」
「......わかりました!死なないでくださいよ!?」
「もちろんだ!後、もっと気楽に話していいぜ。遠慮があると、戦いづらいだろ?」
「オッケーじゃあ早速、甘えちゃうわ!」
私が壁、エギルが攻撃役で動く。
ここまで、片手で足りるくらいしか共に戦ってないのに不思議と息の合った戦闘ができていた。
盾持ち片手剣と両手斧は相性いいんだろうか?
「リタ!俺がソードスキルで体勢を崩すから、その隙を狙え!」
「オーライ!頼むわよ!」
「うおぉぉらぁぁぁぁ!」
両手斧のソードスキル<ワール・ウインド>で足を狙い、放つ。
見事《ヴァンガード・ルーザー・コボルト》に命中させることに成功し、相手は仰向けになって倒れた。
「くらえ!我流<レイジスパイク>!」
倒れた敵に向かって大きくジャンプし、顔の真上まで行く。
そのまま私は、空中で<レイジスパイク>のスキルモーションを起こし、そのまま顔めがけて突撃する。
結果。撃破は出来てはいない、でも大きくHPを削ることに成功した。このまま一緒に倒せるかも、そう思ったけどそう簡単には行かせてくれないのが現実ってやつよね。
「え、向こうの部屋、敵がまた出てきてる!?」
「行け!リタ!奴はもう一息でやれる、俺だけでも大丈夫だ!」
「............いや、やっぱり倒すまでいるわ」
「何言ってる!?仲間は......」
「このまま二人で同時にソードスキルを放って切り抜けるわ。そして、そのまま奥の部屋の敵も倒す」
アスナの為なら、誰がどうなっても構わないって正直言って本気で思ってた。でも、やっぱり違うと思うの。私は良くても、それじゃあアスナは喜ばない。
だから決めた。アスナ以外人も、私が守りたいって思ったもの全てを守りたいって。欲張りかもしれない、偽善だって言われるかもしれない............けど......!
「決めたのよ......私は、私の守れる全てを守るの!私には守りたいものがある!だから、エギル。あなたと一緒にこいつを倒して、奥の二人も助ける!」
「......よしわかった、行くぞ!」
その時、私は自分の中から力が溢れてくるのをはっきりと感じていた。物心ついたときから、似てる感覚を感じることはあるけれど、ここまで強く感じるのは初めてだ。
二人で一気に敵に突っ込む。
敵の残りHPは赤くなってるから行けるはず......!
「「うおおおおおぉぉぉぉぉ!」」
私は<バーチカル>エギルは<グランド・ディストラクト>を同時に放つ。仕返しに来た敵は、悔しそうに叫びながら四散した。
すぐさま私は、奥の部屋へ駆けていく。リザルトなんて確認してる余裕はなかった。
部屋の近くまで来たとき、倒れてるアスナを庇いながら戦う人を見て私は、驚いた。
「え......シュネル?」
「止まるな!リタ!」
エギルが私を抱えて部屋に飛び込む。
驚きのあまり動きが止まっていたようだ。でも、後ろ姿だけど背格好も似てるし盾無し
「助太刀するぜ!礼は後でいい!」
「すまない!」
私より年下な感じの剣士さんと共に部屋のモンスターを一掃する。
連戦ではあったものの、三人で戦ったので意外とすぐに片付いた。とにかく、アスナが起きるのをこのまま迷宮区で待つわけにもいかないので、一度外に出ることにした。
外に出て、近くの木陰にアスナを寝かせる。
私の時もそうだけど一時はどうなることかと......
でも、不思議とそれほど疲労感は感じていない。先程の、自分の中から力が溢れてくるのを感じた時は、決まって物凄い疲労感に襲われる。おそらく、さっき自分が通路で倒れたのは、無意識にその状態になっていたからだと思う。
「二人ともありがとう、さすがにこの
「ううん、こっちこそ。友達を守ってくれてありがと」
やっぱり、シュネルじゃないわね。
顔とか似てるけど、どことなく違う。それに、私とアスナのこと、忘れてるはずはないだろうし......
っていうか年下......よね?さっきはそんな感じしたけど。冷静に見てみると、何だか見た目よりずっと落ち着いてるから年下なのか年上わからなくなるわ、この子。
「そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺はキリトだ」
「私はリタ。キリトが助けてくれたこの子はアスナ」
「俺はエギルだ。そういえばリタ。お前さっき誰かの名前読んでなかったか?確か......シュネルって」
うん、言ってた。言ってたけど人違いなんだよね~
まだ誰も第一層を突破してないとはいえ、都合よくあの子の知り合いと会えるわけないし......
「あんた......あいつを知ってるのか?」
会えたよ。
都合よく会えちゃった。とにかく、エギルが頭に『?』な状態だったから後で話すことにした、長くなるしね。
とりあえず、これも何かの縁と言うことで近くの街まで一緒にいてくれることになった。
ついでに、アスナが起きるまで、今までのことをお互いに話すことにした。
「......成る程......それは大変だったな、リタ。普通なら無茶するなよって言いたいんだが、そのお陰で俺も助かったからな。ありがとう」
「どういたしまして。エギルも無茶に付き合ってくれてありがと」
「なに、気にするな。ところでリタ。お前さっきコボルトのラストアタックボーナス見たか?」
???
らすとあたっくぼーなす?なぁにそれぇな感じでエギルを見ると、俺も詳しくは知らないけどそういうのがあるっぽいよって視線で返された。
いや、ホントになによそれ。
見かねたのか、キリトが説明してくれた。
「ラストアタックボーナス、テキストチャットでLAって書く人もいるんだが、これは、一部の強力なモンスターに最後の一撃を与えた人にのみ与えられる特殊ドロップのことだ。大体ボス戦で手に入ることから、少数派だけどボスボーナスって呼ぶ人もいる」
「じゃあそのLAを私は取ったってこと?......そういえばリザルト確認してなかったわね......」
「Oh......」
そんなわけで、リザルトの代わりにアイテムストレージの中を確認してみる。
キリト達曰く、LAをとっていれば何か見たことない感じのやつがあるらしいんだけど......
「あ、あった。『ヴァンガードマント』?着てみよっと」
「へぇ......見た目はフーデットマントみたいだな、いいんじゃないか?フードで顔も隠せるし」
「ああ。今更だが、お前は女なんだから変なトラブル回避するためにも顔を隠せる装備はしといた方が良いぞ?っていうか、相方はそうしてるじゃないか」
私は別に気にしないって思ってたんだけど、やっぱり気にした方がいいのかな?私をナンパする奴なんてかなりの物好きだと思うけど。
アスナが顔を隠せる装備にしてるのは、キリト達が危惧してるようなことを考えて私が着させたんだよね。だってアスナは文句なしにかわいいし、スタイルいいし、性格いいし、頭もいいしで最高だもん!本人に言っても、そんなことないよって過大評価しすぎって言われるけど、私が男だったら絶対惚れるね。
......的なことをキリト達に言ったんだけど......
「プレイヤーの中に物好きな奴がいることもある。ただでさえオンラインゲームに女性プレイヤーは少ないものなのに、このゲームは限定一万人っていう制限もあるんだぞ?その中で女性プレイヤーなんて、一割にも満たない数しかいないと思うのが自然だ。」
「まぁ、中には妻帯者や彼女がいるって奴もいるかもしれないし、彼女ができたって奴もこれから現れるかも知らん。だが、不純な動機でお前が狙われない理由は何処にもないし、しかもここは現実じゃない。現実じゃない故に、本当の体には影響が無いことをいいことに、何でもやろうと思えばできるいわば無法地帯だUnderstand?」
わかってます、わかってますってば~
確かに私も女だし、そういうのに狙われる対象の一人になることはわかるけど、それでももっとかわいい子は絶対いるよー今まで現実でもナンパもされたことないし、特に男子からアプローチされたこともないし、噂は聞いたことあるけど絶対冗談だろうし......
「とにかく、二人は何が言いたいかというと......?」
「「リタは考えが甘い!」」
うう......ハッキリ言われてしまった。まぁ、言われるとは思ったけど、そんなに甘いかな?
でも、思い返してみると、あんまり自分のことは考えてなかったかも、反省反省。
「ずいぶん盛り上がってるわね」
「はっ......アスナ、いつの間に......」
「そこの人がプレイヤーの中に~って言ってた辺りから」
少し寝起き気味の声でアスナは話す。
アスナが起きたのでとりあえず軽く自己紹介し、移動することにした。残りの話は移動しながらと言うことで。
「トールバーナまでそう遠くないが、油断せず行こう」
「トールバーナ?」
「私達が迷宮区に入る前に準備した街のことよ」
「へぇーそんな名前だったんだ、全然気にしてなかった」
エギルが呆れ半分心配半分な感じで苦笑いする。
なんだかんだ言ってもまだ初心者だから、街の名前覚えてなかったり、危なっかしかったりするのは大目に見て?ね?
迷宮区から離れ、トールバーナまであと少しの辺りまで来たとき、数日前より明らかに人が集まってるのに気づいた。一体何なのか、キリトに聞いてみる。
「ねぇ、キリト。なんか数日前ぐらいより人が多くない?ここって圏外よね?」
「ん?ああ、そっか。リタとアスナは迷宮区に早くに籠ってたから知らないのか」
もしかして、なんかのイベント?それとも事件?
どちらにしても、それは私達プレイヤーにとって吉報なのか凶報なのかそこが重要なんだけど......
「今日、ボス攻略会議が開かれるんだ。時間は16時、コロシアム跡でな」
「攻略......会議......」
私達が迷宮区に籠ってる間にそんなに状況が動いていたなんて......さっき吉報か凶報かが重要だって思ったけど、これはどっちにも取れそうね......このままトントン拍子に事が進んで、プレイヤー全体の士気を上げる結果になるなら百層攻略も現実味を帯びてくる。でも、殆どのプレイヤーが抱えてる不安や諦めを煽る形になるなら、攻略どころの話じゃなくなる。
何でもそうだけど、要するに見方の問題で、解決策は一人一人違う。
もちろん、こんな風に考えてるのは私だけじゃないと思う。会議を企画した人はどちらも起こりうると想定して、あえて今のプレイヤー達の間に漂ってるお通夜のような雰囲気を打破しようという一発勝負の苦難に飛び込むことにしたんだと思う。
「アスナ......」
「わかってるよ。私達も参加しようって言うんでしょ?」
「......女の勘?」
「茶化さないの。友達としての経験からの予想よ」
そうよ、誰の目を憚ることなく。前を向いて歩いてる人を見て私達に出来ることは、ただその人に協力してあげること。支えあって、並んで歩いて、後ろで止まる人達に背中を見せること。ただそれだけなんだと思う。
ただ武器を振って戦うだけじゃない。目に見えるものだけが敵じゃない。人それぞれに千差万別の考えがあるのと同じように、戦い方もまた、人それぞれの形があるんだ。
これはゲームであっても遊びではない。その言葉の意味の片鱗を私は見た気がした。
次回からしばらくシュネルとリタ共通ストーリーになりますが次回のみ少しシュネル成分多めですもちろん、最初のボス攻略と言うことなのでハーイ!なあの人やナンデヤ!なあの人も出てきますお楽しみに!