旅人に命を捧げたい 作:一般テイワットエンジョイ旅人
私は旅人の同行者である。世間的には、今やあらゆる国で英雄となって誰もに尊敬の眼差しを向けられる旅人、その腹心だと、従者だと、彼なしではこの偉業は為されなかった等々・・・そんな感じの評価を受けているらしい。とある新聞での記事では"英雄を裏から操る黒幕"なんて書かれ方もされていたくらいだ。
今や旅人、蛍が何か為す度に私も関与した物だと思われ、勝手に評価が上がっていく。「英雄の~」のような称号が増えていく。
どの街や村に行っても良い意味でも悪い意味でも顔と名前が知られている、とてつもない有名人になったものだ。
・・・どうしてこうなったのだろうか。
私は元々モンド北東部、具体的には星落としの谷周辺にてひっそりと自給自足をしつつ暮らしていた。
望風山地や海角で狩りをしたり、浜辺や星落としの湖で釣りをして暮らす日々。随分と原始的な生活だったが何だかんだ楽しかったように思う。少なくとも何も考えずに暮らせることが私には幸せだった。
かつて少年期に商人であった父とともに七国を旅し多くの希望を持った私は、青年期にそれを全て絶望に覆された。自分の願った想いや夢は全て無駄なものだということを思い知らされた。
そして多くの現実に向き合い・・・完全に疲れ果て多少縁があったモンドで残りの人生を1人で過ごしていくことを決めた。
そこでかつて見た現実を誰にも話すことなく、自身の死まで何もない生活を続けていく・・・と考えつつも食事の確保のために星落ちの谷の海岸沿いに魚獲りに向かった際、運命的な出会いをした。
『お腹空いた・・・』
『うぅ・・・おいらもお腹が空きすぎてもう飛べないぞ・・・』
『・・・大丈夫か?』
ふわふわ浮かんでいる・・・あの時は地べたに寝転がっていたが不思議な生き物であるパイモン、そして後に救国の英雄として数多の国で伝説を作っていくことになる旅人こと蛍。
そんな異質な2人が揃って横並びで砂浜の上で腹の音を鳴らしながら横たわって空腹にあえいでいたのだ。そりゃ困惑の1つや2つするだろう。
他国からの旅人にしては異質な服装、そして何故こんな辺境の海岸にいるのか等疑問はいくつかあったものの・・・このまま置いておく訳には行かないのと、こんな人が殆ど来ないような場所で出会ったのも何かの縁だと、家に背負って帰り料理を振る舞ってあげたのが2人との初対面だった。
後になって分かったことだが、どうやらこのテイワット自体に来てパイモンと出会ってすぐのタイミングだったらしい。まだ自給自足のサバイバル知識が足りていない状態で、食い扶持(パイモン)が増えたことでより食糧問題が顕在化していったようだ。
最悪パイモンを非常食にする選択肢もあったらしい、あまりにも極限が過ぎる。
そんなこんなで偶然にも命の恩人になったらしく妙に2人に懐かれてしまったわけだ。だがそこで私は関わりを終わらせる気であった。
モンド城への方角と道のりを教え別れの挨拶をした際、空腹で倒れるくらい旅の知識が無いことを盾にされて道案内をすることになってしまった。
軽い最後の親切のつもりで城の近くまで案内をして・・・蛍が風の元素力を手に入れ、風魔龍を見て、アンバーに見つかり城内に連行され、風魔龍の浄化作戦に強制的に参加させられた。
元々騎士団とはとある事情で関わりがあったため、あまり出会いたくなかったし出会ったら即座に逃走する気で居たが相手が飛行チャンピオンであるアンバーの時点で負けが確定していた。あと蛍とパイモンにも逃走を阻止された、何故?
そういった事情で芋づる式に蛍の旅に同行することになった私は・・・璃月にもそのままさも当然かのように連行され魔神の封印に参加し、寝ている間に拉致されいつの間にか船に乗せられて稲妻にも入国した。
あまりにも流れるような連行に常に困惑しっぱなしであったが、稲妻入国あたりからは段々慣れてきてしまった。
そして蛍とパイモンと共に七国の旅を続けながら、別れを告げたかつての友人への再会、新たな友人、そして自身の過去へ向き直る事が出来たのだ。
経緯は経緯であったが今は私を連れ出してくれた蛍に感謝しかなく、返しきれないくらいの恩がある。
そう、彼女のために命を捧げても良いと思えるくらいには。