やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ!   作:よみや

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作中では転生した主人公をキラ。原作のキラを准将と書いてます。


1章 INVOKE
PHASE-01 偽りの主人公


 

 

 

 C.E.(コズミック・イラ)70年、血のバレンタインの悲劇によって、地球、プラント間の緊張は、一気に本格的武力衝突へと発展した。

 誰もが疑わなかった、数で勝る地球軍の勝利。が、当初の予測は大きく裏切られ、戦局は疲弊したまま、すでに11ヶ月という時が過ぎようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「現在、華南宇宙港から7キロの地点までザフトが迫り、守備隊と激しい戦闘を繰り広げています」

 

 カタカタと音を鳴らす作業中のパソコン。その画面の隅に開いていたニュースサイト。そこから流れる不穏なニュースに、少年は眉をひそめた。

 東洋系の顔立ちの少年だ。線は細く。どことなく華奢な印象を受ける。

 

 彼の名前はキラ・ヤマト。機動戦士ガンダムSEEDの主人公である。ただし、この世界の彼はオリジナルとは異なり、中身が違うが。

 彼の中身は転生者であった。気がついたらキラ・ヤマトになっていた。気がついたのは3年前、《ヘリオポリス》に到着した時である。

 

「華南宇宙港での戦闘。確かオペレーション・ウロボロスの一貫だったっけ。マスドライバーを有する基地を潰して、地球連合を地球に封じ込める、か……」

 

 彼には知識があった。ガンダムが好きだった為、当然ガンダムSEEDの知識もある。ただ、視聴していたのは子供の頃だったので、色々知識に抜けや間違いもあるが。

 

「くそー。よりにもよってなんでSEEDの世界なんだ。ガンダムの世界でも指折りのクソ世界だぞ。しかも主人公とか! 俺が頑張らないと世界が滅びるじゃないか」

 

 そう、このコズミック・イラの世界は、世界観が終わっているのだ。頭コズミック・イラという言葉もある程だ。わりと頻繁に大量虐殺が起きる。

 

「無印は准将の精神に序盤からダメージを与えてくるからな。イヤだー」

 

 准将とは、キラ・ヤマトのネット上での渾名だ。キラは歴代ガンダム主人公の中でもトップクラスに出世するのだ。それが、本人にとって幸せかどうかは別として。

 あと無印だけでなく、続編の運命でも准将の精神はダメージをたくさん受けます。

 

「このニュースが出たってことは、今日が1話か」

 

 無印の1話冒頭は、准将がプログラミングしているパソコンの隅で、華南戦線のニュースが流れるところから始まる。つまり、今この瞬間から原作が始まったのだ。

 

「てかこの女性アナウンサーの声、絶対桑島さんだろ」

 

 どうやらキラは余裕なようだ。あるいは諦めて開き直ったか。

 

「キラー! 見つけたぜ!」

 

 キラがカレッジ内にある中庭の東屋で黄昏ていると、キラの友人であるトールが、彼女であるミリアリアを連れてやって来た。

 

「トール、なんかあったか?」

「カトウ教授がお呼びだぜー」

「見つけたら絶対連れてこいって言ってたわよ」

 

 トールとミリアリアの言葉に、キラは眉をしかめる。

 

「またかよ。あの人すぐ俺をコキ使おうとするんだよな」

 

 カトウ教授はモルゲンレーテの技術者で、地球連合と協力してモビルスーツのOSを開発している。ちなみにモルゲンレーテはオーブの国営企業だぞ。

 

「お、新しいニュースか?」

 

 トールが流しっぱなしのニュースを暢気な顔して見ている。ミリアリアはオーブ本国を心配しているようだが、トールはヘラヘラしながら、中立だから大丈夫と言っていた。

 

「中立ね……」

 

 今キラがカトウ教授から寄越させれている作業は、大西洋連邦とオーブが秘密裏に協力して開発しているMSのOS開発の一部である。地球連合の1国である大西洋連邦とのMS開発など、普通に中立としてアウトだ。

 キラはそのことをよくわかっているので、内心複雑だ。それに、未来においてオーブが戦火で焼かれるのも知っている。

 

「早く行こうぜ」

 

 トールの言葉に荷物を纏めながらも、キラは不安を隠せないでいた。

 

「だから、そういうんじゃないんだってば~」

 

 3人がエレカ乗り場に来たところ、きゃぴきゃぴしている女子が3人。その内の1人は、かなり目立つ赤髪の美少女だ。

 

 フレイ・アルスター。無印においてはヒロインと言ってもよい人物であり、准将とはあらゆる意味で深い関係になる女子だ。

 

(フレイ・アルスター……。俺は彼女を)

 

 合流してみんなでわちゃわちゃしながら、キラが心の中で、ある決意を再確認していると、後ろから咳払いが聞こえた。振り返るとそこには、落ち着いた雰囲気の黒髪の女性、ナタル・バジルールがいた。

 

「乗らないのなら、先によろしい?」

 

 順番が来ても乗らないキラたちに業を煮やしたのだろう。といっても生来の生真面目さが出ただけで、怒ってはいないようだが。

 

 みんなが口々に謝る中でキラは

 

(ダブル桑島さんキター!)

 

 内心で狂喜乱舞していた。フレイとナタルの声優はどちらも桑島さんなのだ。同じ場面で二役ってすごいよね。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 時間が少し流れ、キラたちはカトウ教授の研究室にやって来た。部屋にはお馴染みのゼミ仲間のサイやカズイがおり、さらにカガリもいた。

 

(カガリ・ユラ・アスハ。MS開発の噂を聞いて単身乗り込んできたじゃじゃ馬姫か)

 

 キラが内心で酷いことを言っているが、事実である。付け加えるならば、准将の双子の姉でもある。

 

(やっぱり、今日、ここで!)

 

 ドンという衝撃とともに、《ヘリオポリス》が揺れる。サイが隕石か!? と驚いているが、そんな訳がない。始まったのだ、日常の崩壊が。

 

 振動が治まらないので、避難しようとすると、同じく避難中の人からザフトが攻めてきているという話を聞けた。

 

 突然の事態に驚愕したサイたちも避難しようとするが、カガリが走り出した。真実を確かめに向かったのだ。

 

「トール先に行け! すぐに追いつく!」

 

 すかさずキラも追いかける。ここが運命の分かれ道だ。キラだけでなく、世界の運命を分ける。

 キラはずっと悩んでいた。前世は普通の人だ。戦争なんてまるで関わりが無かった。でもここはコズミック・イラなのだ。他人事ではいられない。だから決めたのだ。後悔しないように生きると! 

 

「ちょっ、待てよ!」

 

 キラがカガリに追いつき、腕を取る。

 

「な、離せ!」

 

 暴れるカガリだったが、背後のどこかで爆発が起こり、被っていた帽子が吹っ飛んだ。准将はカガリを男だと思っていたので、ここで初めて女の子だと気づくのだ。アニメだとBGMも変わり、とてもミステリアスな雰囲気になってカガリがヒロインのように感じられるのだが、姉弟なんだなぁこれが! っていうかこれ、普通なら王道的主人公とヒロインの出会いだろ。

 

「お前は早く戻れ! 私には行かねばならんところがある!」

「戻れるルートなんてもう無い! こっちだ、工場区なら避難シェルターがある」

 

 キラが強引にカガリの手を引いて走り出す。

 

「は、離せ! バカ!」

 

 手を引かれて走るカガリは涙目だ。

 

「こんなことになってはと……。私は……」

 

 カガリは自国のMS開発の噂を聞いてやって来たら、確かめる前に攻撃を受けるとか悲しいよね。

 

 通路を走り抜けた先は、格納庫に繋がっていた。

 

「着いた、工場区! ッ! あれはッ!?」

「地球軍の新型機動兵器……」

 

 格納庫にあったのは2体の鋼鉄の巨人。灰色のMSを巡って、連合とザフトが銃撃戦を繰り広げていた。

 

「お父様の裏切り者ー!」

 

 泣き崩れたカガリが叫んだ。銃撃戦の最中に大声なんてあげれば、そりゃ反射的に撃たれる。

 

 キラが慌ててカガリを引っ張ると、さっきまでカガリがいたところを銃弾が通った。流石はマリュー・ラミアス、良い腕をしている。本当に技術将校か? 

 

「ああ、もう!」

 

 へにゃへにゃしているカガリを面倒くさがったキラが抱えて走る。残念ながらお姫様抱っこではなく、お米様抱っこだが。

 

 避難シェルターの入口へたどり着いたキラはインターフォンを押す。原作通りに1人しか入れないとなるが、キラからしたら2人入れても困るのでこれでいい。

 

「入って」

「え?」

 

 呆然としているカガリを入口に押し込むキラ。カガリは抵抗しようとするが、無理矢理押し込む。

 

「俺は隣のシェルターに行くから!」

「待て、お前は──」

 

 最後までカガリの言葉が届くことなく、扉は閉まった。次に再会するのは地球でだ。まあ、原作通りに生き残れればだが。しかし、こんなベタなことしててもヒロインじゃなくて姉弟とは、SEEDは業が深い。キラカガ過激派の残党は20年経っても潜伏してるから……。これが人の業!

 

「ハマナ、ブライアン! 早くX303とX105を起動させるんだ!」

 

 格納庫まで戻ってくると、銃撃戦は激化していた。連合、ザフト両陣営で多くの犠牲者が出ている。

 

 キラがキャットウォークから見下ろすと、丁度マリューの背後からザフト兵が銃撃しようとしていた。

 

「お姉さん後ろ!!」

 

 キラの声に咄嗟に反応したマリューが振り向き際にライフルを乱射し、ザフト兵を倒した。

 

(危ねえ! タイミングギリギリだった!)

 

 キラはこの出来事は覚えてはいたが、実際に事が始まると、どのタイミングで起きるかなんて、秒単位での把握なんて当然できないので、原作通りにキラが関われる保証なんて無いのだ。

 

 ライフルの弾が切れたマリューが、拳銃で応戦しながら叫んだ。

 

「来い!」

「左ブロックのシェルターへ行きます! お構いなく!」

「あそこはもう、ドアしかない!」

 

(ここも原作通りか!)

 

「チッ、おりゃあ!」

 

 キラが一瞬の躊躇の後、キャットウォークから身を躍らせた。高さ5、6メートルはあるが、無事に受け身を取って着地した。

 

「ラスティ!」

 

 それと同時に、どこかでキラの親友の声が響いた。影が薄いことでお馴染みのラスティ・マッケンジーが、ハマナに撃たれたのだ。【ストライク】に搭乗予定だった赤服を倒すとは、大金星である。

 

「うおおおッ!」

 

 ラスティを殺られたことにキレたアスランが、遮蔽物から飛び出し、連合の残存兵を一掃する。

 

「あぐっ!」

 

 マリューの肩もアスランの放った銃弾に撃ち抜かれた。倒れたマリューに向かって、弾詰まりを起こしたライフルを捨てたアスランが、ナイフを抜いて迫る。

 

「やめろッー!!」

「なにッ!?」

 

 思ったよりもマリューとの距離があったことに焦ったキラが、叫びながらアスランに飛びかかる。空中で体を捻った回し蹴りがアスランに炸裂した。

 

「ぐッ!」

 

 ギリギリで腕で防いだアスランだったが、ナイフはどこかに吹っ飛んでしまった。

 

 コズミック・イラで白兵戦最強候補に名が挙がるアスランとマリューの間に割って入るのは、キラも怖かったようで冷や汗ダラダラだ。

 ちなみにどちらも後に、拳銃一丁でコーディネイターの特殊部隊を壊滅させている。なんで、1話で白兵戦の頂上決戦をやってるんですかねえ。

 

「何だおま……キラ?」

 

 アスランが一瞬気がつかなかったのは、アスランの頭に血が上っていたのではなく、キラの体つきが変わっていたからだ。

 

 准将はインドア派のモヤシくんだったが、キラは今後戦乱に巻き込まれることがわかっていたので、体を鍛えていた。そして、スーパーコーディネイターは伊達ではなく、3年間の鍛練で身長は伸び、筋肉も付いた。身長を比べれば原作の同時期よりも10センチも高い。なんと傲慢な体だろう。

 

「……アスラン」

 

 キラの呟きに反応して、構えを解いたアスラン。2人の視線が交差する。

 

「キラ──」

 

 アスランが何か話そうとした瞬間、大きな爆発が起きた。格納庫はいつの間にか燃え盛り、生存者もこの場の3人しかいない。

 

「くっ」

 

 マリューが負傷を押して拳銃を構える。それに気づいたアスランが下がるのと同時に、再び大きな爆発が起こり、キラとマリューに爆炎が迫る。

 

「くそッ!」

 

 咄嗟にマリューを抱え上げたキラが、【ストライク】のコックピットに飛び込む。

 

(ちょっと原作と違うんじゃないかなー!?)

 

 本来ならマリューにコックピットに押し込まれる筈のキラだったが、迫りくる炎が怖すぎて体が動いていた。まあ、爆発のタイミングまで原作通りになるかはわからないし。

 

「コックピット閉めるスイッチどれですか!?」

 

 コックピットに飛び込むやいなや、叫ぶキラの勢いに押されたマリューが、それと指差したスイッチを押すキラ。ちなみにキラとマリューの体勢は、シートに座ったキラの膝の上にマリューがお姫様抱っこのような形で乗っている。

 

「このままこいつで、ここから出ます。機体のシステムの立ち上げをお願いします」

「いや、それは……」

 

 マリューは渋るが、キラからすればどうせ後で代わることになるんだから変わらんやろくらいに思っている。

 

 

「撃たれてるお姉さんよりは俺のほうがマシですよ。あ、俺はキラ・ヤマトって言います」

「……私はマリュー・ラミアス大尉です。わかりました。この機体はザフトに絶対に渡せないので、そのつもりで」

 

 マリューが幾つかのスイッチを押すとモニターや計器類に光が入る。そして

 

 General

 Unilateral

 Neuro-Link

 Dispersive

 Autonomic

 Maneuver

 

 モニターに表示されるOS。

 

「ガン、ダ、ム」

 

 【ストライク】の両目が光り、徐々に立ち上がる。爆炎を背に、鋼鉄の巨人に命が吹き込まれた。

 

 

 

 

 

 




SEEDはネタも面白いので、そっちも盛り込みたいです。ラクス構文とか使いたい。
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