やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ!   作:よみや

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本日2話目なので、注意してください。


PHASE-11 絶叫

 

 

 

 

「あら、キラ様もコーディネーターですの?」

「そうだよ」

 

 おしゃべりしながら、食事をしていたキラたちだったが、ラクスの表情が曇った。

 

「あの、ほとんど食べておられませんけど、やはりわたくしとでは食が進みませんか?」

 

 ラクスの言葉に、キラは苦笑いした。

 

「いや、単純にお腹の調子がよくなくて。ラクスはお腹が元気そうだし、俺の分も食べる?」

 

 キラがからかうと、ラクスは頬を赤くしてそっぽ向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「通信です! これは、地球軍第8艦隊の暗号パルスです!」

 

 ブリッジでは味方からの通信があり、一気に活気づいていた。アニメではすぐのように感じるが、ラクスを拾ってから3日が経っている。

 

 これより、【アークエンジェル】は先遣隊との合流を目指す。

 

 

「最近、キラあんまり見ないな」

 

 サイの言葉に、食堂の雰囲気が重くなった。

 

「ここのところは、あのピンクの女の子と一緒に食べてるみたい」

「そっか……」

 

 ミリアリアの返事に、更に雰囲気が重くなる。

 

「フレイがあんなこと言ったから、気まずいんじゃない?」

「な、なによ……」

 

 カズイは相変わらずだが、フレイの言葉に力が無い。

 

「休憩時間も、ほとんどがあの子のとこだもんな」

 

 トールの言葉に、フレイはどこか面白くなさそうであった。

 

 

 一方、キラはこの3日でラクスと交流を重ねていた。准将のようにクリティカルが無理なら、回数を増やすとばかりに空いた時間をラクスと過ごしている。これによって、トールたちとの時間が大幅に減った。また、水不足が解決したらといっていたマリューたちとも疎遠になっていた。マリューたちもラクスのことで頭を悩ませていたし、補給後の進路でも頭を悩ませていて、ついおざなりになっていた。

 

 

「静かなー♪ ︎」

 

 キラたちは暇なので、歌を歌っていた。デブリベルトで回収した物資に混じっていたアコースティックギターでキラが演奏して、ラクスが歌っていた。歌うのはラクス自身の曲や、地球とプラントでそれぞれ流行っている曲だ。

 

 同年代の子とこういうことをしたことがないのか、ラクスはとても楽しそうだ。

 

「キラ様は、ギターがお上手なのですね」

 

 キラは、君と会った時のために練習したんだよと内心思いながら笑う。なんだかんだキラも楽しいのだ。

 

「次はアレンジでもする?」

「まあ、良いですわね!」

 

 先遣隊との合流まで、後1日。悲劇はすぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「ジャマーです! エリア一帯に干渉を受けています!」

 

 先遣隊との合流の目前で、ブリッジが静まり返る。先遣隊が、敵に見つかったのだ。

 

「状況は!?」

「敵艦は1隻、ナスカ級! モビルスーツは5機! 【ジン】が3機、【ジンハイマニューバ】が1機、最後の1機は【イージス】です!」

「くっ! あのナスカ級だというの! ……今から反転しても逃げ切れる保証も無いわ。【アークエンジェル】は、先遣隊援護に向かいます!」

 

 戦況を確認したマリューは、先遣隊の援護に向かうことに決定した。

 

 艦内に警報が鳴り響く。ギターを置いたキラは立ち上がった。

 

「キラ様も戦うのですね……」

「俺が戦わないと、この艦沈むからね。ラクスは、部屋から出ないように」

 

 キラがラクスの部屋から出て、格納庫に向かっていると、途中でフレイと会った。

 

「キラ、あの……。先遣隊には、パパが……」

 

 口ごもるフレイに、キラは告げた。

 

「出来る限りのことはするから」

 

 キラは格納庫に走った。その後ろ姿を、フレイは見つめていた。

 

(こうなることはわかってた。だから、変えるんだ。原作を、ここで!)

 

 格納庫に着いたキラに、マードックが走り寄った。

 

「ボウズ! 【ストライク】だが、エールストライカーが使えねえ!」

「え、なんで!?」

「直前の点検で、スラスターに異常が見つかった!」

(こんな時に!)

 

 キラの表情が、苦虫を噛み潰したようになる。

 

「修理は?」

「5分や10分じゃ終わらねえから、間に合わねえ! だからお前さんは、ソードかランチャーで──」

 

 ソードストライカーもランチャーストライカーも用途が限定的過ぎる。艦隊の援護にはそぐわない。

 

「なら()()を! 改良は出来てますよね!?」

「! ああ、わかった。改良は出来てるぞ!」

 

 キラが【ストライク】に搭乗すると、すぐに発進シークエンスが始まった。ミリアリアの声が、コックピットに流れる。

 

「カタパルト接続。ストライカーパックはガンバレルストライカーを装備します」

 

 ミリアリアのアナウンスに、ブリッジが慌てた。

 

「キラくん! ガンバレルって!」

 

 マリューから通信も入った。

 

「エールが故障で使えません」

「でも、ガンバレルはフラガ大尉でもないと使えないわ!」

「ガンバレルなら、単純な推力ではエールに匹敵します。武器として使わないなら、問題ありません」

 

 キラはマリューからの通信を切った。うだうだやっている時間は無いのだ。

 

「システムオールグリーン。進路クリア、【ストライク】どうぞ!」

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 キラが戦場に到着した時には、もう既に先遣隊の3隻の内、2隻が中破状態だった。【メビウス】の残りも少ない。

 

【ストライク】を見つけたアスランが、キラに襲いかかる。

 

 キラとアスランの戦いが始まったところで、フレイがブリッジに入ってきた。戦況が気になって仕方なかったのだろう。

 

「パパ、パパの船はどこなの!?」

 

 フレイの叫びに、サイが席を離れた。

 

「フレイ、ここに居ちゃ駄目だ!」

「いや、離して!」

 

 サイが、フレイを連れてブリッジを出る。フレイは抵抗していたが、居住区まで戻ってきたところで動きを止める。彼女の目には、ラクスの部屋が映っていた。

 

 

「くそッ!」

 

 キラは、アスランと激しい攻防を繰り広げていた。しかし、慣れないガンバレルストライカーのせいで動きが鈍い。

 

「エールストライカーなら!」

 

 この日の為に、キラはOSの調整を進めていた。今までより、格段に自分に合うように調整したが、使えなければ意味が無い。

 

 そうこうしている内に、ミゲルの【ジンハイマニューバ】と戦っていたムウが、被弾して撤退した。

 

 先遣隊も残るは、フレイの父親が乗る【モントゴメリ】だけだ。

 

 戦局の悪化で、ムウから撤退を進言されていたマリューが決断出来ないでいると、ブリッジのドアが開いた。サイが戻ってきたのかと思えば、入ってきたのはフレイだった。それも、ラクスを連れて。

 

「キラは、キラは何してるのよ!」

 

 思わず固まったマリューを無視して、フレイがカズイに怒鳴り散らす。

 

「え、いや……」

 

 どもるカズイを無視して、フレイがモニターを見れば、【ストライク】と【イージス】が戦っているところだった。

 

「早く、そんな奴やっつけてよ!」

 

 遅れてサイもやって来るが、フレイのあまりの剣幕に止めることは出来ない。

 

「キラとは、どうやって連絡取るのよ!?」

「うわっ」

 

 フレイが、カズイから無理矢理インカムを奪う。見かねたマリューとナタルが止めようとするが、その前にフレイがコンソールを滅茶苦茶に弄り、偶然【ストライク】と繋がった。ただし、ブリッジ全体に聞こえる形でだが。

 

「キ──」

「どけぇぇぇッッッ!!」

 

 ブリッジ全体に響くキラの絶叫で、皆が固まった。

 

「え?」

 

 フレイは思わず、手元のインカムを見つめた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 ムウが撤退し、【メビウス】が全滅したキラは、いよいよ追い詰められていた。このままでは、原作通りになってしまう。フレイという少女を救うには、ここで父親を救うのが1番なのだ。それに、このままではキラの命も危ない。もうなりふり構ってなどいられない。

 

「どけぇぇぇッッッ!!」

 

 キラが『ビームサーベル』を抜いて、【イージス】に斬りかかった。本来、ガンバレルストライカーに『ビームサーベル』は装備されていないが、キラがマードックに頼んで追加で装備してもらっていた。

 

 アスランが冷静にシールドで受けるが、キラは蹴りをいれて距離を離す。そして、アスランを無視するように、推力全開で飛び去った。

 

「なに!?」

 

 アスランも追おうとするが、ガンバレル4機分の推力は凄まじくあっという間に離れていく。

 

 速度を維持したまま、1機の【ジン】に近づくキラ。気がついた【ジン】が、『M68キャットゥス500mm無反動砲』を撃つが、当たらない。

 

「は、速い!」

「邪魔だァァァッッッ!!」

 

 キラが通り抜け様に、辻斬りのように『ビームサーベル』で胴体を泣き別れにした。

 

「キラ!」

 

 追いついたアスランが『ビームサーベル』で斬りつけてくるのをシールドで受けつつ、他の【ジン】を探す。

 

 また、無理矢理距離を離したキラは、【ジン】の元に向かおうとするが、『ビームライフル』に持ち変えたアスランが、執拗に攻撃してくる。

 

「鬱陶しいんだよ!!」

 

 反転したキラが斬りかかるが、アスランは逆に距離を取った。このまま釘付けにするとアスランが思ったところで、【ストライク】の背部から、ガンバレルが展開された。

 

 四方に散ったガンバレルから2門の砲塔が展開し、【イージス】を狙う。

 

 アスランが、ガンバレルからの弾丸を回避したところに、キラが斬りかかる。これもアスランはシールドで防ぐが、動きが止まった。次の瞬間、ガンバレルの弾丸で【イージス】の『ビームライフル』が撃ち抜かれた。

 

 爆発する前に、『ビームライフル』を捨てたアスランが【ストライク】を見るも、既に【ストライク】は【ジン】に向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「なによ……、なによこれ……」

 

 モニターの中で【ストライク】が、滅茶苦茶に暴れまわっていた。

 

「がああぁぁッッッ──!!」

 

 獣のような叫び声をあげて、吶喊するキラ。【ジン】がバズーカを撃ってくるが、構わずに突っ込む。

 

 機体に当たる弾だけ『イーゲルシュテルン』で、撃ち落として『ビームサーベル』を振るう。

 

 かろうじて、武器だけで済んだ【ジン】が、切り落とされた『キャットゥス』の代わりに、『重斬刀』を装備する。しかし、ガンバレルで四方から撃たれ、体勢を崩したところを『ビームライフル』で撃たれて爆散した。

 

 フレイは今まで、世界が戦争をしているということへの理解が希薄だった。だって、フレイのまわりは平和だったから。《ヘリオポリス》での出来事からは怖いことが続いていたが、なんとかなると漠然と考えていた。だって、今まで自分の望みは叶ってきたから。

 

「こんな、こんな……」

 

 ブリッジに響く、キラの絶叫。

 

 今までキラがモビルスーツに乗ってると聞いても、イマイチ大変さがわからなかった。コーディネーターだから乗れるとすら思っていた。だって、キラはいつでも明るくて、スケベで。だから、苦労なんて無いと思っていたのに。

 

 声を荒げたところなど聞いたこと無かったキラが、まるで獣のような叫び声をあげている。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!」

 

 逃げるように飛び回る【ジン】を【ストライク】が追い回して、『ビームライフル』を連射していく。遂に逃げ切れなくなった【ジン】が、ビームの直撃をもらって爆発した。まるで容赦の無い戦い方をしている、あの優しいキラが。

 

 あまりの状態に、ブリッジにいる全員が凍ったように固まっている。

 

 全員がどこかで思っていたのだ。キラは凄い奴だと、凄いから大丈夫だと。何も問題無いのだと。マリューでさえ、心のどこかでそう思ってしまっていたのだ。キラがモビルスーツを動かせても、戦争が出来るわけではないと知っていたのに。

 

 キラが、【ジンハイマニューバ】に向かっていく。しかし、エースパイロットであるミゲルは手強く、そうこうしている内に、アスランも合流して2対1の状況になった。

 

「え、援護を!」

 

 慌てたように、マリューが指示を出すが、ナタルの表情は苦い。

 

「あの混戦では【ストライク】に当たります!」

 

 目まぐるしく動き回る3機に、戦艦ではどうしようもない。

 

「その艦にはァッ! どけぇぇぇ!!」

 

 キラの叫びに、目を見開くフレイ。そうだ、キラは自分の頼みであんな無茶をしているのだ。

 

(私がパパを助けてって頼んだから……)

「キラ様……」

 

 フレイは自分の隣から聞こえた声で、ラクスの存在を思い出した。そうだ、自分は彼女を人質にする為に連れ出したのだ。

 

「この子を殺すわ!」

 

 フレイの絶叫に、皆が振り向いた。

 

「戦闘を止めなきゃ、この子を殺すって、あいつらに言って! そう言ってぇぇぇ!!」

 

 フレイが叫んだ瞬間、【ヴェサリウス】から主砲が放たれ、【モントゴメリ】を貫いた。皮肉にも【ジン】が減ったことで、射線が通り易くなった結果だった。

 

「あっ」

 

【モントゴメリ】が大爆発を起こした。救命ポッドが出た様子も無い。フレイは、自身の父親が死んだのを理解した。呆然としているフレイに、キラの叫び声が届いた。

 

「くそおォォッッッ──!!」

 

 血を吐く、獣のような叫びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




作者的には、ここが序盤で書きたかったところです。
今回のキラくんの絶叫で、フレイとラクスとマリューとナタルの脳が焼かれてしまいました。
キラくんの精神状態が、みんなにバレて盛大に曇りましたね。

原作知っててフレイを助けたいなら、フレイパパを助けようとすると思うんですよ。彼女がおかしくなるのは父親が死んでからなので。でも、簡単に助けられないのがコズミック・イラだと思います。ミゲルが生きてて難易度上がってますしね。


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