やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
「あら、キラ様もコーディネーターですの?」
「そうだよ」
おしゃべりしながら、食事をしていたキラたちだったが、ラクスの表情が曇った。
「あの、ほとんど食べておられませんけど、やはりわたくしとでは食が進みませんか?」
ラクスの言葉に、キラは苦笑いした。
「いや、単純にお腹の調子がよくなくて。ラクスはお腹が元気そうだし、俺の分も食べる?」
キラがからかうと、ラクスは頬を赤くしてそっぽ向いた。
◆◆◆
「通信です! これは、地球軍第8艦隊の暗号パルスです!」
ブリッジでは味方からの通信があり、一気に活気づいていた。アニメではすぐのように感じるが、ラクスを拾ってから3日が経っている。
これより、【アークエンジェル】は先遣隊との合流を目指す。
「最近、キラあんまり見ないな」
サイの言葉に、食堂の雰囲気が重くなった。
「ここのところは、あのピンクの女の子と一緒に食べてるみたい」
「そっか……」
ミリアリアの返事に、更に雰囲気が重くなる。
「フレイがあんなこと言ったから、気まずいんじゃない?」
「な、なによ……」
カズイは相変わらずだが、フレイの言葉に力が無い。
「休憩時間も、ほとんどがあの子のとこだもんな」
トールの言葉に、フレイはどこか面白くなさそうであった。
一方、キラはこの3日でラクスと交流を重ねていた。准将のようにクリティカルが無理なら、回数を増やすとばかりに空いた時間をラクスと過ごしている。これによって、トールたちとの時間が大幅に減った。また、水不足が解決したらといっていたマリューたちとも疎遠になっていた。マリューたちもラクスのことで頭を悩ませていたし、補給後の進路でも頭を悩ませていて、ついおざなりになっていた。
「静かなー♪ ︎」
キラたちは暇なので、歌を歌っていた。デブリベルトで回収した物資に混じっていたアコースティックギターでキラが演奏して、ラクスが歌っていた。歌うのはラクス自身の曲や、地球とプラントでそれぞれ流行っている曲だ。
同年代の子とこういうことをしたことがないのか、ラクスはとても楽しそうだ。
「キラ様は、ギターがお上手なのですね」
キラは、君と会った時のために練習したんだよと内心思いながら笑う。なんだかんだキラも楽しいのだ。
「次はアレンジでもする?」
「まあ、良いですわね!」
先遣隊との合流まで、後1日。悲劇はすぐそこまで迫っていた。
◆◆◆
「ジャマーです! エリア一帯に干渉を受けています!」
先遣隊との合流の目前で、ブリッジが静まり返る。先遣隊が、敵に見つかったのだ。
「状況は!?」
「敵艦は1隻、ナスカ級! モビルスーツは5機! 【ジン】が3機、【ジンハイマニューバ】が1機、最後の1機は【イージス】です!」
「くっ! あのナスカ級だというの! ……今から反転しても逃げ切れる保証も無いわ。【アークエンジェル】は、先遣隊援護に向かいます!」
戦況を確認したマリューは、先遣隊の援護に向かうことに決定した。
艦内に警報が鳴り響く。ギターを置いたキラは立ち上がった。
「キラ様も戦うのですね……」
「俺が戦わないと、この艦沈むからね。ラクスは、部屋から出ないように」
キラがラクスの部屋から出て、格納庫に向かっていると、途中でフレイと会った。
「キラ、あの……。先遣隊には、パパが……」
口ごもるフレイに、キラは告げた。
「出来る限りのことはするから」
キラは格納庫に走った。その後ろ姿を、フレイは見つめていた。
(こうなることはわかってた。だから、変えるんだ。原作を、ここで!)
格納庫に着いたキラに、マードックが走り寄った。
「ボウズ! 【ストライク】だが、エールストライカーが使えねえ!」
「え、なんで!?」
「直前の点検で、スラスターに異常が見つかった!」
(こんな時に!)
キラの表情が、苦虫を噛み潰したようになる。
「修理は?」
「5分や10分じゃ終わらねえから、間に合わねえ! だからお前さんは、ソードかランチャーで──」
ソードストライカーもランチャーストライカーも用途が限定的過ぎる。艦隊の援護にはそぐわない。
「なら
「! ああ、わかった。改良は出来てるぞ!」
キラが【ストライク】に搭乗すると、すぐに発進シークエンスが始まった。ミリアリアの声が、コックピットに流れる。
「カタパルト接続。ストライカーパックはガンバレルストライカーを装備します」
ミリアリアのアナウンスに、ブリッジが慌てた。
「キラくん! ガンバレルって!」
マリューから通信も入った。
「エールが故障で使えません」
「でも、ガンバレルはフラガ大尉でもないと使えないわ!」
「ガンバレルなら、単純な推力ではエールに匹敵します。武器として使わないなら、問題ありません」
キラはマリューからの通信を切った。うだうだやっている時間は無いのだ。
「システムオールグリーン。進路クリア、【ストライク】どうぞ!」
◆◆◆
キラが戦場に到着した時には、もう既に先遣隊の3隻の内、2隻が中破状態だった。【メビウス】の残りも少ない。
【ストライク】を見つけたアスランが、キラに襲いかかる。
キラとアスランの戦いが始まったところで、フレイがブリッジに入ってきた。戦況が気になって仕方なかったのだろう。
「パパ、パパの船はどこなの!?」
フレイの叫びに、サイが席を離れた。
「フレイ、ここに居ちゃ駄目だ!」
「いや、離して!」
サイが、フレイを連れてブリッジを出る。フレイは抵抗していたが、居住区まで戻ってきたところで動きを止める。彼女の目には、ラクスの部屋が映っていた。
「くそッ!」
キラは、アスランと激しい攻防を繰り広げていた。しかし、慣れないガンバレルストライカーのせいで動きが鈍い。
「エールストライカーなら!」
この日の為に、キラはOSの調整を進めていた。今までより、格段に自分に合うように調整したが、使えなければ意味が無い。
そうこうしている内に、ミゲルの【ジンハイマニューバ】と戦っていたムウが、被弾して撤退した。
先遣隊も残るは、フレイの父親が乗る【モントゴメリ】だけだ。
戦局の悪化で、ムウから撤退を進言されていたマリューが決断出来ないでいると、ブリッジのドアが開いた。サイが戻ってきたのかと思えば、入ってきたのはフレイだった。それも、ラクスを連れて。
「キラは、キラは何してるのよ!」
思わず固まったマリューを無視して、フレイがカズイに怒鳴り散らす。
「え、いや……」
どもるカズイを無視して、フレイがモニターを見れば、【ストライク】と【イージス】が戦っているところだった。
「早く、そんな奴やっつけてよ!」
遅れてサイもやって来るが、フレイのあまりの剣幕に止めることは出来ない。
「キラとは、どうやって連絡取るのよ!?」
「うわっ」
フレイが、カズイから無理矢理インカムを奪う。見かねたマリューとナタルが止めようとするが、その前にフレイがコンソールを滅茶苦茶に弄り、偶然【ストライク】と繋がった。ただし、ブリッジ全体に聞こえる形でだが。
「キ──」
「どけぇぇぇッッッ!!」
ブリッジ全体に響くキラの絶叫で、皆が固まった。
「え?」
フレイは思わず、手元のインカムを見つめた。
◆◆◆
ムウが撤退し、【メビウス】が全滅したキラは、いよいよ追い詰められていた。このままでは、原作通りになってしまう。フレイという少女を救うには、ここで父親を救うのが1番なのだ。それに、このままではキラの命も危ない。もうなりふり構ってなどいられない。
「どけぇぇぇッッッ!!」
キラが『ビームサーベル』を抜いて、【イージス】に斬りかかった。本来、ガンバレルストライカーに『ビームサーベル』は装備されていないが、キラがマードックに頼んで追加で装備してもらっていた。
アスランが冷静にシールドで受けるが、キラは蹴りをいれて距離を離す。そして、アスランを無視するように、推力全開で飛び去った。
「なに!?」
アスランも追おうとするが、ガンバレル4機分の推力は凄まじくあっという間に離れていく。
速度を維持したまま、1機の【ジン】に近づくキラ。気がついた【ジン】が、『M68キャットゥス500mm無反動砲』を撃つが、当たらない。
「は、速い!」
「邪魔だァァァッッッ!!」
キラが通り抜け様に、辻斬りのように『ビームサーベル』で胴体を泣き別れにした。
「キラ!」
追いついたアスランが『ビームサーベル』で斬りつけてくるのをシールドで受けつつ、他の【ジン】を探す。
また、無理矢理距離を離したキラは、【ジン】の元に向かおうとするが、『ビームライフル』に持ち変えたアスランが、執拗に攻撃してくる。
「鬱陶しいんだよ!!」
反転したキラが斬りかかるが、アスランは逆に距離を取った。このまま釘付けにするとアスランが思ったところで、【ストライク】の背部から、ガンバレルが展開された。
四方に散ったガンバレルから2門の砲塔が展開し、【イージス】を狙う。
アスランが、ガンバレルからの弾丸を回避したところに、キラが斬りかかる。これもアスランはシールドで防ぐが、動きが止まった。次の瞬間、ガンバレルの弾丸で【イージス】の『ビームライフル』が撃ち抜かれた。
爆発する前に、『ビームライフル』を捨てたアスランが【ストライク】を見るも、既に【ストライク】は【ジン】に向かっていた。
◆◆◆
「なによ……、なによこれ……」
モニターの中で【ストライク】が、滅茶苦茶に暴れまわっていた。
「がああぁぁッッッ──!!」
獣のような叫び声をあげて、吶喊するキラ。【ジン】がバズーカを撃ってくるが、構わずに突っ込む。
機体に当たる弾だけ『イーゲルシュテルン』で、撃ち落として『ビームサーベル』を振るう。
かろうじて、武器だけで済んだ【ジン】が、切り落とされた『キャットゥス』の代わりに、『重斬刀』を装備する。しかし、ガンバレルで四方から撃たれ、体勢を崩したところを『ビームライフル』で撃たれて爆散した。
フレイは今まで、世界が戦争をしているということへの理解が希薄だった。だって、フレイのまわりは平和だったから。《ヘリオポリス》での出来事からは怖いことが続いていたが、なんとかなると漠然と考えていた。だって、今まで自分の望みは叶ってきたから。
「こんな、こんな……」
ブリッジに響く、キラの絶叫。
今までキラがモビルスーツに乗ってると聞いても、イマイチ大変さがわからなかった。コーディネーターだから乗れるとすら思っていた。だって、キラはいつでも明るくて、スケベで。だから、苦労なんて無いと思っていたのに。
声を荒げたところなど聞いたこと無かったキラが、まるで獣のような叫び声をあげている。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!」
逃げるように飛び回る【ジン】を【ストライク】が追い回して、『ビームライフル』を連射していく。遂に逃げ切れなくなった【ジン】が、ビームの直撃をもらって爆発した。まるで容赦の無い戦い方をしている、あの優しいキラが。
あまりの状態に、ブリッジにいる全員が凍ったように固まっている。
全員がどこかで思っていたのだ。キラは凄い奴だと、凄いから大丈夫だと。何も問題無いのだと。マリューでさえ、心のどこかでそう思ってしまっていたのだ。キラがモビルスーツを動かせても、戦争が出来るわけではないと知っていたのに。
キラが、【ジンハイマニューバ】に向かっていく。しかし、エースパイロットであるミゲルは手強く、そうこうしている内に、アスランも合流して2対1の状況になった。
「え、援護を!」
慌てたように、マリューが指示を出すが、ナタルの表情は苦い。
「あの混戦では【ストライク】に当たります!」
目まぐるしく動き回る3機に、戦艦ではどうしようもない。
「その艦にはァッ! どけぇぇぇ!!」
キラの叫びに、目を見開くフレイ。そうだ、キラは自分の頼みであんな無茶をしているのだ。
(私がパパを助けてって頼んだから……)
「キラ様……」
フレイは自分の隣から聞こえた声で、ラクスの存在を思い出した。そうだ、自分は彼女を人質にする為に連れ出したのだ。
「この子を殺すわ!」
フレイの絶叫に、皆が振り向いた。
「戦闘を止めなきゃ、この子を殺すって、あいつらに言って! そう言ってぇぇぇ!!」
フレイが叫んだ瞬間、【ヴェサリウス】から主砲が放たれ、【モントゴメリ】を貫いた。皮肉にも【ジン】が減ったことで、射線が通り易くなった結果だった。
「あっ」
【モントゴメリ】が大爆発を起こした。救命ポッドが出た様子も無い。フレイは、自身の父親が死んだのを理解した。呆然としているフレイに、キラの叫び声が届いた。
「くそおォォッッッ──!!」
血を吐く、獣のような叫びだった。
作者的には、ここが序盤で書きたかったところです。
今回のキラくんの絶叫で、フレイとラクスとマリューとナタルの脳が焼かれてしまいました。
キラくんの精神状態が、みんなにバレて盛大に曇りましたね。
原作知っててフレイを助けたいなら、フレイパパを助けようとすると思うんですよ。彼女がおかしくなるのは父親が死んでからなので。でも、簡単に助けられないのがコズミック・イラだと思います。ミゲルが生きてて難易度上がってますしね。