やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
【モントゴメリ】が沈んでも、戦闘は終わらない。ザフト側からすれば、【アークエンジェル】がメインディッシュだ。当然、戦闘は続行される。
そして、それはキラも同じだ。
動きの止まった【ストライク】を達磨にして確保しようとしたアスランは、悪寒がして躊躇した。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!」
突如動き出した【ストライク】が、猛然と【イージス】に斬りかかる。
「なんだ!?」
戦慄いたアスランが、シールドで『ビームサーベル』を受け止めたが、キラは構わず【ストライク】の左腕で、【イージス】の右腕を掴み押さえた。
「このォォッッッ!!」
本来、高い空間認識能力がなければ扱えないガンバレルを動かしている反動で痛む頭を無視して、ガンバレルを展開させる。
そして、身動きの取れない【イージス】を、背後から滅多撃ちにする。
「ぐッ!」
フェイズシフトのお陰でダメージは無いが、そろそろ【イージス】は、バッテリーの残量が危なくなってきた。
「アスラン!」
アスランのピンチにミゲルが即座に駆けつけたので、キラは大人しく【イージス】から離れる。ガンバレルはフェイズシフト装甲ではないから無理は出来ない。
キラとミゲルが戦う中、【ヴェサリウス】で動きがあった。
「アデス、艦は任せる。射程に入り次第、足つきを攻撃しろ」
クルーゼが【シグー】で発進しようとしていた。
◆◆◆
「ナスカ級より、モビルスーツの発進を確認! 【シグー】です!」
トノムラの報告に、止まったブリッジの時間が動き出した。
「迎撃準備!」
咄嗟にナタルが叫ぶが、【メビウス・ゼロ】は出られず、【ストライク】は交戦中。【アークエンジェル】単艦では、とても【シグー】とナスカ級を押さえられそうにない。
気づいたキラが戻ろうとするが、ミゲルが邪魔だった。機動性の高い【ジンハイマニューバ】で、的確に邪魔をしてくる。
「邪魔だァァァ!!」
苛立ったキラが、『ビームライフル』を撃ちつつ、ガンバレルを展開する。そして、その内の1機を砲身も展開させずに、【ジンハイマニューバ】に向けて飛ばす。
「なんだ?」
疑問に思ったミゲルだったが、次の瞬間別のガンバレルが、そのガンバレルを撃ち抜いた。弾薬と推進剤に引火したガンバレルが、派手に爆発する。
「うわぁぁッ!!」
当然、近くにいた【ジンハイマニューバ】は、衝撃をモロに受ける。吹き飛ばされたミゲルは放置し、キラは急いで【アークエンジェル】に戻ろうとする。しかし、そこに立ちはだかるアスラン。キラは間に合わない。
【ストライク】も戻れず、このままでは落ちると確信したナタルが、放心しているフレイからインカムを奪い、全周波放送で話し始めた。
「ザフト軍に告ぐ! こちらは、地球連合軍所属艦【アークエンジェル】! 当艦は現在、プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの令嬢、ラクス・クラインを保護している!」
衝撃の告白に、アスランたちの動きが止まった。
「偶発的に救命ポッドを発見し、人道的立場から保護したが、以降本艦への攻撃が加えられた場合、貴艦のラクス・クライン嬢への責任放棄と判断し、当方は自由意思でこの件を処理するつもりであることをお伝えする!」
つまり人質だ。
「格好の悪いことだな。援護に来て、不利になったらこれか」
「隊長……」
「ああ、わかっている。全軍攻撃中止だ」
クルーゼはせせら笑うと、攻撃中止を命令し、自機も【ヴェサリウス】へと帰艦した。
「卑怯な!」
アスランは呻いた。
「救助した民間人を人質に取る。こんな卑怯者たちと戦うのが、お前の正義か!?」
その一言が、キラの精神を逆撫でした。
「民間人ごと《ヘリオポリス》を攻撃した奴らが、卑怯だの正義だの言うなよ!」
「ッ!」
キラの言葉に、アスランは言い返すことが出来なかった。そのまま2人は、それぞれの艦へと戻っていった。
「【ストライク】と【アークエンジェル】を、ここで沈めるわけにはいきません……」
ナタルは、マリューと顔を合わせようとしなかった。マリューもそれは同じだった。2人とも、これが最良だとわかっている。たとえ、それがどれだけ苦く、苦しくとも。生き残る為には、これしかなかった。
◆◆◆
帰艦したキラは、寄ってくる整備員とは誰とも話さず、足早に格納庫を離れた。ヘルメットを外したキラの口元には、鼻血の跡があった。ガンバレルの負荷だ。
それを見送ったムウは、自らの不甲斐なさに苛立ち、手すりをぶん殴った。
「これじゃ立つ瀬ないでしょ、俺は!」
ノーマルスーツから着替えたキラが居住区に戻ったが、予想と異なり静かだった。シーンと静まり返った廊下を歩く。医務室の前を通るが、誰かがいる様子は無い。原作では、フレイが大泣きしていたのに。
そのまま食堂までやって来たキラは、食堂がえらく暗い雰囲気であることに気づいた。まるで、お通夜だ。
(なるほど、医務室から食堂に場所が変わったのか)
食堂には、学生組が揃っていた。当然フレイも。
「キラ……」
みんなキラに気づいたが、口が重く言葉が出ない。そうしているうちに、キラが先に口を開いた。
「フレイ、お父さんを守れなくて、ごめん……」
キラの言葉に、フレイは顔を俯かせて肩を震えさせた。
「なんで……、なんであんたが謝るのよ……」
「え?」
「なんで怒らないのよ!? 私は、あの子を人質にしようとしたのよ!?」
顔を上げたフレイは、涙でぐちゃぐちゃだった。
「俺が弱かったから、ああなったんだ……。俺が強かったら、こんなことにはなってない……」
「違う、違うわ!」
フレイが泣き叫ぶ。だが、内容が原作と違う。父親のことを責めないフレイに、キラは困惑した。
キラの困惑に気づいたトールが、口を開いた。
「俺たち聞いちまったんだ。お前の戦闘中の叫びを」
「叫び?」
「フレイがブリッジに入ってきた時に色々あって、『ストライク』と通信が繋がったんだ。そうしたら、お前の叫ぶ声が……」
トールの話に、キラは動揺した。自分が何を言っていたか、戦闘に必死過ぎて覚えていないのだ。
「俺、何を言ってた?」
「……ほとんどが、意味をなさない叫び声だった」
キラは、アスランのことがバレていないことにホッとした。
「そうか、別にそのことは気にしなくていいよ」
「いいわけないでしょ!」
立ち上がったフレイが、キラの腕を掴んだ。
「来て!」
フレイが、キラを引っ張っていく。キラは、フレイの目の強さに逆らえなかった。
「え!?」
「みんなは来ないで!」
みんな驚き追いかけようとするが、フレイの言葉で追いかけることは出来なかった。
「フレイ!?」
キラを無理矢理連れてきたのは、ラクスの部屋だった。中に入ると、フレイはドアをロックした。
「キラ様……」
気遣わしげにキラを見るラクスに、キラは目を逸らした。
「ごめん、俺が弱かったせいで、ラクスを人質に……」
キラの謝罪に、ラクスの表情が曇る。それをぶった切るように、フレイが叫んだ。
「だから、なんであんたが謝るのよ! その子を人質にしようと、ブリッジに無理矢理連れていったのは私よ! 私を責めなさいよ!」
罪悪感にまみれたフレイの言葉に、ラクスがフレイを見た。
「お二人が、ご自分を責める必要はありませんわ。わたくしで戦いが止まったのなら、それで良いのです」
ラクスの言葉に、フレイは涙を流しながら頭を下げた。
「それでも……。ごめんなさい……」
泣いているフレイを、ラクスが抱き締めた。それを見たキラは、一段落したと勝手に思った。何も終わってはいないのに。
「キラにも謝らないと……」
「え?」
「私のせいで、あんな無茶を……」
「それは謝らなくていいよ」
キラの固い言葉に、フレイとラクスが驚く。キラも、色々と限界だった。
「どんなに無茶しても、助けられなきゃ意味が無い。……意味が無いんだ!」
拳を握り締めて震えるキラ。
「俺は、フレイのお父さんを助けられなかった! なのに、なんで責めない!?」
遂に耐えきれなくなって、涙を流し始めた。それを見たフレイが、涙を溢れさせながら叫ぶ。
「責めるわけないじゃない! あなたは、あんなにも戦ってた! 血反吐を吐きそうな声で叫びながら戦ってたのに!」
キラは責められて楽になりたかった。知っていたのに、防げなかったことが辛かった。ずっと、フレイを助けることを目標の1つにしていたのに。
「なら教えてやるよ! 『イージス』に乗ってるのは、俺の親友だ!」
キラはアスランのことを暴露することで、自分が責められると思っていた。本気で戦ってないのだと。しかし、あの凄惨な戦いを見たフレイがそう考えるわけがなかった。
「なによ、それ……」
フレイは絶句した。しかし、キラが思っていたのとは違う理由でだ。
「だから責めろよ! 俺は──」
「優しいのですね」
ラクスの言葉に、キラが固まる。ギギキと、錆び付いたブリキのような動きで、ラクスを見た。
「キラ様はお優しいから、みんなのために戦っているのですね」
「違う……」
キラは、ラクスの言葉を否定するように、首を振る。
「俺は、必要だから戦ってるんだ! 優しいから戦ってるんじゃない!」
「優しくないのなら、その親友のところに行けばよかったではないですか。きっと受け入れてもらえたはずです。それでも行かなかったのは、あなたが優しいからでしょう?」
ラクスの言葉で、キラはラクスを見られない。
「違う。俺は……、俺は!」
「なんで、なんで言わないのよ……」
フレイが、キラの胸ぐらを掴んだ。体ごとぶつかる勢いだ。
「辛かったら、苦しかったら言いなさいよ!」
キラの表情が歪む。
「言ったところで、どうなるって言うんだ!」
「あんた、戦えるのが自分だけだからって、まわりがどう思うか、心配するかなんて、本気で考えてないんでしょう!?」
フレイが、キラを揺する。ここで、離してしまったら、二度と届かないところに行ってしまうと感じてしまって、力の限り揺する。
「言ってくれなきゃ……。言ってくれなきゃ、わからないじゃない!」
泣きながら叫ぶフレイに、キラの箍が緩んでいく。そして、心の奥底に沈めていた言葉が浮かび上がってしまった。
「なら教えてくれよ! 俺は、あと何回引き金を引けばいいんだ? あと、何人殺せばいいんだ!?」
キラの叫びに、ラクスが息を呑んだ。今のラクスに、答えを出すことは出来なかった。今のラクスは、守られているだけのお姫さまだから。
「知らないわよ!」
しかし、フレイは違った。覚悟を決めた彼女は引かない。引いたら終わりだと、本能的に察していた。
「私に戦いのことはわからないわ。でも、わかることもある。私が、私たちが生きているのは、キラが戦ってくれたからよ」
フレイの真っ直ぐな目が、キラを貫く。濁りのない、綺麗な瞳だった。
「それに、引き金を引いたキラだけが、気に病む必要は無いわ。モビルスーツを整備する人も、艦を動かしている人も、守ってもらっている私も。みんな同罪のはずよ」
フレイの言葉に、キラは虚をつかれた。心の片隅でキラも思っていて、考えてはいけないと否定していたことだった。
「ごめんなさい……。私、何も知らなかった。何もわかってなかったから……。でも今、やっと少しだけわかったわ。だから、泣かないで……。私も戦うから、あなただけを戦わせはしない」
フレイが、キラを抱き締めた。キラの体から、強張りが解けていく。
「守るから、今度は私があなたを守るから」
フレイの唇が、キラの唇と重なった。
私が初めてSEEDを見た時、フレイのこと好きじゃなかったんですよね。まあ、当時小学一年生だったので、複雑な人間関係や心理描写が理解出来なかったのもあるんですが。
ただ、ある程度大人になってから見たら、フレイのことを好きになりました。だから生存ifが見たくて。本作を書こうと思った理由の1つです。
つまり、なにが言いたいかと言うと、キラフレもいいよね。