やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ!   作:よみや

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だいぶ空いてしまったけど、エタってないですよ。

劇場版のBlu-rayの予約が始まりましたね。私は予約しました。皆さんは予約しましたか?私は特典小説が欲しいです。


PHASE-13 歌姫の返還

 

 

 

 

 

 長い間、口づけをしていた二人が離れる。

 

「キラ、落ち着いた?」

「あ、うん」

 

 テンションが上がってキスをしたフレイだったが、唇が離れると恥ずかしくなってきた。

 

 そして、この場には自分たち以外もいることを思い出した。

 

 フレイが横を見ると、ラクスがこっちを見ていた。チラチラ見ているとかではない。ガン見である。ガッツリと見ていた。

 

「ちょっ、なんで見てるのよ!?」

 

 顔を真っ赤にしたフレイが、ラクスに詰め寄った。

 

「あら、わたくしの目の前でキスを始めたのは、フレイさんですわ」

 

 だが、ラクスは全く悪びれない。まあ、勝手におっぱじめたのに見たなって怒るのは理不尽だから。劇場版のアスランかよ。破廉恥な! 

 

 羨ましそうなラクスから、フレイが話題を逸らそうとする。

 

「いいですわね。わたくしは、アスランとそのような情熱的なキスはしたことがありませんわ」

「アスランって、誰?」

「わたくしがいずれ、結婚する方ですわ」

 

 フレイとのキスで、ボケーとしていたキラが、アスランという言葉で再起動した。

 

「アスラン?」

 

 ラクスがピンクちゃんを抱えて、キラに見せる。

 

「優しいんですけど、とても無口な方で。でも、ある日このハロをくださいましたの」

 

 ラクスの瞳は、とても嬉しげだ。

 

「わたくしが気に入りましたと申し上げましたら、その次もまたハロを。そして、その次も」

 

 最初はなかなか可愛いわねと思っていたフレイも、最終的には、えーという顔をしている。

 

「……」

 

 キラが無言で、じっとピンクちゃんを見ている。

 

「キラ?」

「キラ様?」

 

 少し躊躇ったキラが、思い直して口を開いた。

 

「……アスランは、俺の親友だ。【イージス】に乗ってる……」

 

 キラの言葉に、フレイとラクスは目を見開いた。

 

「ではフレイさんのお父様を殺したのは……」

 

 ラクスの体が震える。それに気づいたフレイが、ラクスを抱き締めた。

 

「アスランが直接パパを殺したわけじゃないわ。そもそも命令されて戦っているのに、責めたって仕方ないじゃない……」

「フレイさん……」

「ラクスが気に病む必要は無いわ。でも悲しいわね……。話を聞いてると、アスランは優しそうなのに、戦争をしているなんて……」

 

 フレイとラクスが、お互い泣きそうになりながら抱き締め合っている。

 

「アスランのお母さんは、《ユニウスセブン》にいたんだ」

「そう……。なら、仕方ないわね。パパはブルーコスモスだったし……」

 

 キラの言葉に、フレイは目を伏せた。辛くないわけがない。だが、破壊された《ユニウスセブン》を見ているフレイにはもう、一方的に攻めることは出来なかった。

 

 しばらく泣いていたフレイとラクスだったが、泣き止むとフレイがキラに問いかけた。

 

「ねえ、ラクスはこのままだと、どうなるの?」

 

 その言葉に、ラクスの体が固くなる。

 

「第8艦隊に合流すれば大歓迎されるだろうな。プラントのトップの娘だ。利用価値はいくらでもある」

 

 フレイが、ラクスを強く抱き締めた。

 

「ラクスは民間人よ?」

「戦争にはそんなこと関係無い。俺が証拠さ」

 

 キラの言葉に、フレイも反論出来なかった。戦争の狂気の前に、建前や常識なんて通用しない。

 

「……なんとかならないの?」

 

 フレイが探るように、キラを見る。そこには、疑惑の中に確かな信頼が混じっていた。当然キラもこのままにするつもりはない。

 

「【アークエンジェル】にいる限りはどうにもならない。だから、連れ出す」

「それは!」

 

 驚いたラクスが身動ぎするが、フレイが抱き締めているのでほとんど動けない。

 

「今晩、みんなが寝静まった頃合いに【ストライク】で連れ出す。アスランを指名して呼び出せば、なんとかなるだろ」

「でも、そんなことをしたらキラ様が!」

 

 ラクスはキラのことを心配するが、キラからすればそこは問題無い。

 

「大丈夫だ。【アークエンジェル】は、俺が居なきゃまともに戦えない。それに、オーブ国民の俺を罪に問うことなんて出来ないよ」

 

 キラは安心させるように笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、マリューとナタルは艦長室で頭を抱えていた。もちろん、キラのメンタルについてだ。

 

「私は知っていたはずなのに……」

 

 特に初戦闘でのことを知っているマリューは、自己嫌悪で唸っていた。

 

 わかっていたのに、後回しにしていた。キラが言わないから、大丈夫だと思っていた。キラは、民間人の子供なのに。

 

「艦長だけの責任ではありません……。私もどこかで大丈夫だと思っていました。何の根拠もないというのに……」

 

 二人も本来の階級以上のことをやっているので、負担は大きい。だが、キラのケアはするべきだった。なにせ、キラが潰れたら、【アークエンジェル】は終わりなのだから。

 

 エッチなことはともかく、もっと頻繁に話すなどして普段から気を配るべきだった。そうしたら、キラのメンタルの状態にも気がつけたかもしれない。

 

「今晩にでもキラ・ヤマトを部屋に呼びますか?」

「今さら取り繕っても、キラくんは納得してくれるかしらね? フレイさんと揉めた後は、部屋に引きこもっているようだし」

 

 同じ男なのだし、ムウに頼りたいマリューだったが、ムウはムウでブリッジのメンバーや整備兵のケアをしているので余裕が無い。ムウからすれば、キラのケアはそっちでやってるんじゃないの? といったところだ。デブリベルトに行く前にキラを呼び出していたので、ケアはしてると思っている。まだ何もしてないと知ったら吃驚仰天だろう。

 

 しかし、いくら悩んでも時間は止まってくれない。交代の時間になり、2人がブリッジに上がると警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 艦内時間が真夜中になり、皆が寝静まった頃にコソコソと動く人影があった。キラたちだ。キラとフレイが、ラクスを連れ出していた。原作と違い、フレイが事前に用意をしたので、服装を動きやすい連合の体操服みたいなものに着替え、目立つ髪をバンダナで覆っている。

 

 順調に通路を移動していると、物陰から人が出てきた。慌ててラクスを隠そうとするが、まあ無理だ。

 

「こんなところでなにやってんだ、キラ?」

 

 物陰から出てきたのは、トールだった。

 

「トール、どうしてここに?」

 

 質問に質問で返したキラに、トールは肩を竦めた。

 

「その子の部屋から戻ってくるお前を見た時に、なんとなくこうなる気がしたんだ」

「……流石だよ。親友」

 

 一瞬視線を合わせた2人だったが、トールがおどけたように、道を空けた。

 

「ま、女の子を人質に取るなんて、悪役のやることだからな」

 

 トールが手伝ってくれたお陰で、4人は無事に【ストライク】まで辿り着いた。ラクスは船員用のノーマルスーツに着替えている。え、パンツ見せてからのボテ腹? いや、宇宙空間でも使えるバッグに服は詰めたから。あと、フレイが手伝ったからキラは着替え見てないよ。

 

 コックピットに入ったラクスがトールにお礼を言う。

 

「ありがとうございます。また、お会いしましょうね?」

「それは……どうかな?」

 

 小説でもあったやり取りだが、原作通りなら2人が再び会うことは無い。

 

「フレイさんも、いろいろとありがとうございました」

「ラクス、また会えるかしら?いや、会いに行くわ。……戦争が終わったら」

「はい、……戦争が終わりましたら」

 

 フレイとラクス、2人にとってこの出会いは、今までの自分の世界を変えるほどの衝撃だった。ナチュラルとコーディネーター。この2人が、この混迷渦巻く世界の鍵となる。

 

 フレイとラクスの会話の隣で、キラが発進準備を進めていく。それを見ていたトールが、口を開いた。

 

「キラ、お前はどうする? ……帰ってくるのか?」

 

 トールの言葉に、フレイがぎょっとした顔を向けた。

 

「ちょっ、何言ってるの!?」

「お姫さまを連れていけば、キラは助かるだろ」

 

 真剣なトールの言葉に、フレイとラクスが息を飲んだ。

 

「【アークエンジェル】には、皆がいるんだ。帰ってくるさ」

「……そうか」

 

 キラとトールが見つめ合っていると、格納庫に人が入ってきた。マードックだ。

 

「おい! 何してる!?」

「キラ、行ってこい!」

「ああ、必ず戻る!」

 

 トールがフレイを連れて離れると、キラはコックピットを閉めて発進シークエンスに入った。

 

 

 

 

「状況は!?」

 

 叫ぶマリューに、情報収集をしていたクルーが報告をする。

 

「格納庫で異常発生! 【ストライク】が動いています!」

 

 想定外の事態に固まったマリューとナタルのもとに、現場のムウから通信が届いた。

 

「坊主がピンクの嬢ちゃんを連れ出した! ダメだ! もう、エアロックが開けられた!」

「なッ!?」

 

 驚愕したマリューとナタルが外を見れば、【ストライク】が直りたてのエールストライカーで飛び立って行くところだった。行き先は馬鹿でもわかる。2人の顔は真っ青だ。

 

「まずい! 艦砲起動!」

「え、バジルール少尉!?」

 

 ナタルの指示に、ノイマンたちが慌てる。

 

「本気で当てるわけではない! 牽制射だ! 【ストライク】の進路上に撃て!」

「おいおい、そんなことしたら【ストライク】がこっちを撃ってくるぜ?」

 

 ムウの軽口にマリューとナタルの顔色が真っ青を通り越して真っ白になった。

 

 この状況。どう見ても、キラが【ストライク】とラクス・クラインを手土産に、ザフトに投降しようとしているようにしか見えない。

 

 今まで誰も考えないようにしていたが、【アークエンジェル】はキラの善意に支えられてきたのだ。キラがいなくなれば、お先は真っ暗だ。キラが敵にまわることなど、微塵も考慮されていない。なにせ、その状況になったら終わりなのだから。

 

 他国の民間人の子供に戦ってもらっている。これで報酬が出ているならまだしも、何も与えられていないことは他でもないマリューとナタルが1番理解している。

 

 マリューとナタルの脳裏によぎったのは、裏切られたではなく、見限られたであった。キラの精神状態は、みんな知っている。あれほど追い詰められていたのだ。文句は言えなかった。それに対して、自分たちは何も報いられていない。

 

【アークエンジェル】には、友人たちが乗っているが、誰だって最終的には自分を優先する。ブリッジにいたサイたちでさえ、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 就寝時間であったが眠れず、ラクスの救出のことを考えていたアスランは、突然の警報に部屋から飛び出した。

 

 ノーマルスーツに着替えて格納庫に行けば、足つきからモビルスーツが発進したという。

 

(キラ?)

 

 意図がわからず困惑するアスランに、【ストライク】からの全周波通信が聞こえた。

 

「こちらは地球連合軍【アークエンジェル】所属の【ストライク】。ラクス・クラインを同行、引き渡す。ただし、ナスカ級はエンジンを停止、【イージス】が単独で来るのが条件だ。この条件が破られた場合、彼女の命は保証しない」

 

 すぐにアスランは、これがキラから自分に向けてのメッセージだと気がついた。

 

「隊長、行かせてください!」

 

【イージス】に乗り込んだアスランがブリッジに通信を入れ、クルーゼに許可を求める。

 

 アデスと一悶着あったが、無事許可が降りたアスランは、ただちに発進した。

 

「アデス、私の【シグー】の用意をしろ。後ミゲルのハイマニューバもな」

 

 クルーゼが策謀を巡らせる一方で、【アークエンジェル】側はひとまずの安堵を得ていた。

 

 キラの通信では、投降の様子は無し。現場にいたフレイとトールからもキラは戻ってくるつもりだと聞き、みんな安心していた。

 

【アークエンジェル】と【ヴェサリウス】、双方が見守る中、【ストライク】と【イージス】が接触した。

 

「こちら【イージス】、アスラン・ザラ。要求通り1人だ」

「ハッチを開け」

 

 アスランがコックピットのハッチを開くと、キラもコックピットのハッチを開いた。

 

「何か話して」

「え?」

「顔が見えないから、ラクスだってわかるようにアスランに話しかけて」

「ああ、そういうことですの。こんにちは、アスラン。お久しぶりですわ」

 

 緊張の瞬間だというのに、ラクスの能天気な言葉でアスランの肩の力が抜けた。

 

「確認した」

「なら連れていけ」

 

 アスランがコックピットの外に出ると、キラがラクスをそっと押し出した。

 

 ゆっくりと宙を流れたラクスをアスランがしっかりと受け止める。

 

「キラ様、いろいろとありがとうございました」

 

 振り返ったラクスが、キラにお礼を言った。その言葉には、単なる感謝だけではない複雑な感情が籠められていた。

 

「アスランもどうもありがとう」

「ご無事でなによりです」

 

 アスランにもお礼を言った後に、ラクスはまたキラの方を向いた。

 

「フレイさんに、あなたと出会えて良かったとお伝えください」

「……必ず伝える」

 

 ラクスの様子に少し驚いたアスランだったが、これが最後のチャンスとキラに呼びかけた。

 

「キラ、お前も一緒に来い!」

 

 邪魔が入らない最初で最後のチャンス。アスランは、普段の余裕をかなぐり捨てて叫ぶ。

 

「お前が地球軍にいる理由がどこにある!?」

 

 キラとは戦いたくない。また昔のように戻りたい。あの暖かかった子供の頃に。だが、その願いは叶わない。

 

「俺だってアスランとは戦いたくない。でもあの船には友達が乗ってるんだ! 見捨てるわけにはいかない!」

 

(そうだ。優しいキラが、自分の欲望の為に戦うはずがなかった。キラは守る為に……)

 

 時間は巻き戻らないし、止まりもしない。お互いあの頃のようにはなれない。

 

「……ならば仕方ない」

 

 アスランが出した泣きそうな震えた声に、ラクスが驚いたようにアスランを見た。

 アスランの表情は歪み、体は震えていた。

 

「……次に戦う時は、俺がお前を撃つ!」

 

 アスランの言葉を受けたキラが、俯きながら答えた。

 

「……ああ、次は俺がお前を殺す」

 

 アスランとキラ、2人の叫びはまるで悲鳴のようだった。

 それを聞いているラクスの表情も曇る。ラクスは知っている。2人が本当はとても優しい人であることを。ならばなぜ、優しいはずの2人が戦うことになったのか。この時、ラクスの意識が戦争の根へと向いた。

 

【ストライク】と【イージス】が少しずつ離れていく。まるで、キラとアスランの今後を示しているかのようだ。

 

 そして、お互いが安全圏に離れた。

 

「エンジン始動だ、アデス!」

 

【ヴェサリウス】より、【シグー】と【ジンハイマニューバ】が発進する。

 

「こうなると思ってたぜ!」

 

 それに呼応するように、ムウが【アークエンジェル】から発進した。

 

「アスランは、ラクス嬢を連れて帰投しろ」

 

 クルーゼからの通信に、アスランは歯噛みする。これでは自分がキラを騙し討ちしたようなものだ。アスランが逡巡していると、ラクスがおもむろにコンソールのスイッチを押した。

 

「ラクス!?」

「ラウ・ル・クルーゼ隊長。やめてください。追悼慰霊団代表のわたくしがいる場所を戦場にするおつもりですか? そんなことは許しません。すぐに戦闘行動を中止してください」

 

 今度はクルーゼが歯噛みをする。前回の経験を活かしたラクスが、【ヴェサリウス】にも通信を繋げていたので、クルーゼ隊の士気はガタ落ちだ。これでは戦えない。

 

(困ったお姫さまだ)

「了解しました、ラクス・クライン」

 

 内心を隠して返答をしたクルーゼが、機体を反転させる。

 

 それを唖然として見ていたアスランに、ラクスがニッコリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 




次は今月中に投稿できたらいいなー。
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