やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
たぶん章分けするなら、ここからが二章です。章タイトル決まったら分けるかも。
PHASE -17 夜の砂漠
【アークエンジェル】が無事に地上に降下して間も無く。マリューとムウは艦長室で、今後についての話し合いをしていた。
「ここが、アラスカ。んでもって、ここが現在地。随分と遠い所に降りてきちまったな」
ムウの溜め息混じりの声を聞いて、マリューは改めて現在の状況の不味さに胃を痛めた。
「……仕方ありません。あのまま【ストライク】と離れる訳にはいかなかったのですから」
そう、【ストライク】と離れる訳にはいかなかったのだ。軍務的にもそうだし、個人の心情的にも。
「あれだけの活躍をした坊主を見捨てる訳にはいかないからな。損害の比率で言えば、この間の戦闘は圧勝。第8艦隊も無事だ」
キラの奮戦が無ければ、第8艦隊にどれだけの損害が出ていたことか。全滅ということもありえた。
「恐らく第8艦隊内じゃ英雄扱いだろ。俺みたいに二つ名がつくかもな」
ムウは、あえて軽く話しているが、マリューの心労は増すばかりだ。
確かに、キラの活躍は目覚ましい。まさしく英雄だろう。しかし、それが本当にキラにとって望ましいのか。どれだけ強くとも、戦争ができるわけではないというのに。
◆◆◆
「レーダーが当てにならないですか?」
不思議そうなトールの声に、ノイマンとチャンドラが頷いた。他の学生組も不思議そうだ。
「そ、Nジャマーの影響でね」
Nジャマー。正式にはニュートロンジャマー。自由中性子の運動を阻害するフィールドを作る装置だ。電波を阻害する為、レーダー等の通信機機を妨害できる。ただ、そちらはオマケであり、本体ともいえる効果は核分裂の抑制だ。これにより、核ミサイルはただの置物と化した。また、原子力発電も無効化する為、世界中がエネルギー不足に陥り、餓死者や凍死者等死人が出まくった。
「お前達はオーブ出身だから、今一実感が無いかもしれないけど、未だに混乱は収まってないんだぞ」
オーブは地熱発電が盛んであり、Nジャマーによる被害、通称エイプリルフールクライシスの影響は少なかった。
「ま、そのお陰で今俺たちが敵に見つかってないから、何とも言えないけどな」
チャンドラが締めの言葉を放った後、ブリッジにナタルが入ってきて、空気が緊張した。
「異常はないか?」
「ハッ! ありません!」
直立不動で答えたチャンドラだったが、笑う者はいない。だってナタル怖いもん。
「ザフトの勢力圏とはいえ、この状況ではすぐには見つからないか」
「やっぱり、ここって不味いんですか?」
ナタルの呟きにトールが恐る恐る質問すると、ナタルは困った顔をした。
「不味いか不味くないかで言えば不味い。ザフトの勢力圏だからな。だが、今の主戦場はビクトリア周辺の筈だ。それを鑑みれば、この辺りは手薄でもおかしくはない」
なるほどー。と一安心なトールに、ナタルが釘を刺す。
「とはいえ、我々を放っておくとも思えん。おおよその場所は予測されているだろう。気は抜くなよ」
うへぇーという顔をしたトールだったが、すぐに気を取り直した。
「でも【ストライク】のあの凄い装備があれば、何が来ても平気ですよね!」
「いや、マルチプルアサルトストライカーは地上だと使えないぞ」
ナタルの言葉に、学生組全員が衝撃を受けた。
「あれは推力で無理矢理使っていただけだからな。地上でやったら、関節が壊れるぞ」
「そんなー」
「そもそも大気圏突入の影響を調べて整備するまで、【ストライク】は戦えん。【アークエンジェル】も同様だ。なにせ、スペック上はできてもやったことは無いんだからな」
ブリッジでそんな会話がされている中、格納庫では整備班が大車輪で働いていた。
「【ストライク】のオーバーホールの状況はッ!?」
「取り敢えず痛んだ消耗品は交換だ!」
「電磁流体ソケットの状態は!?」
マードックを中心に怒鳴り合いに近い状態だが、整備は順調に進んでいた。
コックピットでできる作業が終わったキラは、コックピットから降りて一息ついた。
「やっぱり、重力あると格納庫は大変だな」
キラの作業を手伝っていたフレイもノビをしながら同調する。
「物一つ運ぶのも一苦労だもんね」
そんな二人に気づいたマードックが寄ってきた。
「【ストライク】も目処はついたし、ボウズと嬢ちゃんは寝ていいぞ」
現在はもう夜中と言っていい時間だ。戦闘からそのまま作業なので、皆疲労困憊だ。
「え?」
「パイロットは休むのも仕事の内だぞ。いざって時、ボウズが疲れてて戦えませんって訳にはいかねえからな」
キラはやることはたくさんあったが、戦闘の疲労は確かに感じていたので休むことにした。続きは早起きしてやればいいし。あれだけの戦闘をした後にこの余裕。なんと傲慢な体なんだ。
「なら、私は残ります!」
しかし、フレイは残りたいようだ。
「私は戦闘しませんし! 取り敢えず何か皆さんの食べ物と飲み物貰って来ます!」
言うだけ言って去っていくフレイに、マードックは頭をガシガシと掻いた。
「嬢ちゃんのやる気は買うけどよ。潰れちまったら、元も子もねえんだよな。わりぃけど、ボウズの方でも気にしてやってくれよ」
確かに今のフレイは、オーバーワーク気味のように見える。しかし、それは他の皆も変わらない気もする。
そこに、ムウがやって来た。
「よう、【ストライク】の状態は?」
「取り敢えず、大きな問題は無いっすね」
「そりゃ良かった。じゃあ、俺は【スカイグラスパー】を触ってみますかね」
ムウが【スカイグラスパー】のマニュアルを手に取ると、思い出したかのようにキラに話し掛けた。
「そうだキラ。艦長が呼んでるから、部屋に寄ってけよ」
「? はい」
不思議そうなキラに、ムウは肩を竦めた。
◆◆◆
マリューは、部屋に入ってきたキラを温かく迎え入れた。
「キラくん、体は大丈夫?」
「はい、元気です」
嘘ではなく、本当に元気そうなキラにマリューはホッと息を吐いた。
「時間が無くて言えてなかったけど、ありがとう。キラくんのお陰で第8艦隊は無事だったわ。ハルバートン提督も生きてる」
キラの低軌道での戦闘は、正に獅子奮迅の活躍だった。だからこそ、マリューはキラのメンタルが心配だった。
「いえ、俺こそ最後にヘマしたので、アラスカに降りられませんでしたし」
「それは仕方のないことだわ。あの状況で最後まで攻撃してきた【デュエル】が異常だったのよ」
確かにアラスカに降りられないどころか、ザフトの勢力圏に降りてしまったが、最悪ではない。生きている限り、挽回はできる。
「キラくんは、この後は休むの?」
「はい」
「なら、一緒に寝ましょうか」
「はい?」
驚くキラをよそに、マリューは制服の上着を脱いだ。
「あら、私と寝るのはいや?」
「……いやだって、俺もう志願したんですよ?」
俯くキラをマリューが抱き寄せた。
「志願したといっても、キラくんは訓練もしていないわ。志願しただけで、戦争ができるようになるわけではないもの」
マリューの温もりと香りに、強張っていたキラの体が緩んでいく。
「それに宇宙にいた時は、ほとんどできなかったものね。これはその分でもあるから、これからもいらっしゃい」
確かにキラは志願した。だから歴とした軍人だ。だが、マリューはキラを普通の軍人として扱うつもりは微塵も無かった。贔屓と言われようと、ルール違反と言われようと曲げるつもりは無い。
寄り添うと決めたのだ。軍を辞めるまで、キラの心が壊れないように、せめて寄り添うと。
「キラくん……」
「マリューさん……」
二人の唇が触れあった。
◆◆◆
「……キラ、どこにいるの?」
今回は短め。なんせ書き貯めなんてないもんで、完成次第出してます。次はちょっと遅くなるかも?
原作と違い、キラくんが熱でダウンしてないので少しだけ時間に余裕があります。それがどう影響してくるかお楽しみに。