やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ!   作:よみや

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モビルスーツの戦いって難しい


PHASE-02 初戦闘

 

 

 

 

「バッテリー残量7割、ヨシ! 固定パーツ無理矢理破壊、ヨシ! 行ける!」

 

 キラが現場猫して、【ストライク】のスラスターを吹かせて飛び上がる。ほぼ同時に【イージス】も飛び上がり、2機は格納庫を出た。

 

 工場区の外で破壊活動をしていたミゲルが、出てきた2機に反応した。

 

「アスランか!」

「ラスティは失敗だ。向こうのモビルスーツには、連合の士官が乗っている」

「なに!?」

 

 ミゲルに応答したアスランは、【ストライク】から目が離せない。

 

(キラ……。いや、あいつがあんなところにいるはずが)

 

 当のキラは、着地の勢いを殺せずヨロヨロとふらついていた。

 

「う、動かし辛ッ!」

 

 キラはメインシステムにアクセスすると、機体のステータスを確認していく。

 

「フェイズシフト装甲……、これか!」

 

 キラがコンソールのスイッチを押した。すると、【ストライク】の灰色一色だった装甲がトリコロールカラーに色づく。

 

「あれが噂の新型装甲か。あいつは俺が捕獲する! お前は先に離脱しろ!」

 

 【ストライク】の変化に気づいたミゲルの【ジン】が、『重突撃機銃』を発砲する。

 

「キラくん勝手に! きゃあッ!」

 

 色々と弄りだしたキラに、マリューが物申そうとした瞬間、【ジン】が放った76ミリ弾が足下に着弾し、【ストライク】がバランスを崩す。

 

「出し惜しみしてる場合ですか!? このフェイズシフト装甲って強いんでしょ!?」

「そうだけど! うっ!」

 

(フェイズシフトは持ってて嬉しいコレクションじゃない! 高い金掛けて作ったのは、戦うためだ!)

 

 傷の痛みに呻いたマリューを気にしつつも、キラはスラスターを使って下がりながら、OSを確認する。

 

「うわッ、こんなクソみたいなOSでモビルスーツを動かそうだなんて!」

「まだ全て終わってないのよ! しかたないでしょう!」

 

 実際、地球連合のモビルスーツのOSはお粗末なものだ。ザフトの開発したモビルスーツは、機体自体には目新しい技術は使われておらず、地球連合でも複製は可能だ。ただし、OSがコーディネイターを前提にしているので、ナチュラルではまともに動かすことができない。それが、地球連合産のモビルスーツでもネックになっている。ナチュラル用のOSは開発が始まったばかりで、戦闘にはとても耐えられない。

 

 『重突撃機銃』で牽制をかけているミゲルが、未だに離脱しないアスランに怒鳴る。

 

「いつまでもうろちょろするなアスラン!」

 

 キラのことが気になりつつも、アスランは決断した。

 

「……離脱する」

 

 【イージス】がスラスターを吹かして飛び立った。

 

 【イージス】が離脱するのを目にしたキラは、ここからが本番だと気合いを入れ、シートの脇からキーボードを引っ張り出した。

 

「マリューさん、邪魔なんでもっと俺にくっついてください! できれば胸を当てる感じで!」

「胸って…あなたこの状況で余裕そうね!?」

 

 コントのような会話をしつつも、キラは【ストライク】のOSの変更を始める。

 

(さあ、いくぞ。これが伝説の早口長セリフ一発録りだ!)

 

「キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定。チッ、なら疑似皮質のイオンポンプに制御モジュール直結! ニューラルリンゲージ・ネットワーク再構築。メタ運動野パラメータ更新、フィードフォワード制御再起動。伝達関数、コリオリ偏差修正。運動ルーチン接続、システムオンライン、ブートストラップ起動!」

 

 【ジン】がサーベル状の武器である『重斬刀』を抜いて、襲い掛かる。

 

「武器! 『イーゲルシュテルン』。ハリネズミの陣? これか!?」

 

 現状の【ストライク】の唯一の射撃武器である頭部バルカン砲の『イーゲルシュテルン』が、【ジン】に向かって発射された。

 本来は牽制、またはミサイルの迎撃等に使用する兵器である為、威力よりも速射性を重視している。人間において両頬にあたる部分から軽快に吐き出された弾丸は、【ジン】の装甲を叩き、左肘の関節から黒煙が噴き出した。『イーゲルシュテルン』で【ジン】の装甲を貫通するのは厳しいので、どうやら当たりどころが良かったようだ。

 

「マリューさん、舌を噛まないように気をつけて! 突っ込みます!」

「ちょッ、ええ!?」

「後は、『アーマーシュナイダー』? これだけか!」

 

 頬をひきつらせるマリューを他所に、サイドスカートからナイフを取り出したキラは、フットペダルを思いっきり踏み込み【ストライク】を【ジン】に突撃させる。マリューは、咄嗟にキラに抱きついた。マリューの胸が、キラの体で潰れる。

 

「ここから、出ていけぇッ!!」

 

 【ジン】の『重突撃機銃』の弾丸を尽く避け、首もとにあたる部分に、2本の『アーマーシュナイダー』を突き刺した。

 

「くそッ!ハイドロ応答無し、多元駆動システム停止!? ええい!」

 

 機体が行動不能になったミゲルは、自爆装置を起動して脱出した。

 

 それを見たキラは、原作通りと余裕を持って【ジン】から離れている。しかもオマケとばかりに、【ジン】の『重突撃機銃』と『重斬刀』もパクっていた。

 

 そして、一呼吸おいてから【ジン】が爆発した。原作では、間近で爆発を受けたせいでマリューが気絶するわ、バッテリーは使い果たすわで大変だったが、それを回避することができたのは大きい。

 

「うそ……。【ジン】を倒した?」

「レーダーはこれか。よし、残敵は無しと」

 

 呆然とするマリューを他所に、暢気にポチポチとコンソールを弄っているキラ。何とか【ジン】に対抗するために【ストライク】を作ったマリューと、【ストライク】なら【ジン】なんて余裕やろという原作の記憶があるキラでは、感覚が違い過ぎる。

 

「あ、マリューさん。敵いなくなったし、フェイズシフト装甲切ったほうがいいですか?」

「え、あ、そうね。フェイズシフト装甲は展開中、ダメージを受けなくても常に大量の電力を消費するから」

 

 【ストライク】の装甲から色が消え、灰色に戻る。これをディアクティブモードという。

 

「バッテリーの残りは約半分。どこかで補給しないと不味いですよね?」

「そうね。工場区に戻れば、まだ生きている電源があるかもしれないわ。それに、【ストライク】の装備も探さないと」

「じゃあ、工場区に戻りますか。でも、その前にマリューさんの肩の治療をしましょう。モビルスーツのコックピットって、サバイバルキットがあるって聞いたんですけど、どこですか?」

「それなら、シートの後ろに」

「よし、じゃあいったん降りますか」

 

 サバイバルキットを取ろうと、キラが操縦桿から手を離そうとしたが、離れなかった。

 

「ん?」

 

 よく見れば、キラの手は震えていた。恐怖を無視していただけで、感じていないわけではなかったのだ。

 

「キラくん……」

 

 マリューがそっと震える手に触れて、強張った指をゆっくりとほぐすように1本ずつ操縦桿から離していく。マリューは、キラが民間人の子供であることを軽く見ていたと後悔していた。

 

「ごめんなさい。怖くないわけないわよね。ありがとう。あなたの勇気のお陰で、私は生きてるわ」

 

 マリューが、顔色も悪くなってきたキラの頭を撫でる。キラはボフッとマリューの胸元に顔を埋めて身を震わせた。

 

 そのまま少しの時間が経つと、キラが顔を上げた。顔色はよくなり、むしろ少し赤くなっていた。

 

「あ、あー柔らかかった」

「軽口が言えるようになったのなら大丈夫ね」

 

 目を反らしながら早口で話すキラに、マリューがクスッと微笑む。

 

 ピピッとセンサーが反応した。モニターを見ると、【ストライク】のカメラが、建物の後ろから様子を伺っているトールたちを捉えていた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「キラ!? どうして、お前がモビルスーツに!?」

 

 【ストライク】から降りてきたキラに、トールたちが駆け寄ってきた。メンバーは原作と変わらないようだ。彼らもツイてない。

 

「いやー、戦闘に巻き込まれてね。炎に巻かれそうになったから、モビルスーツに逃げ込んだんだ」

「あの、キラくん下ろして」

 

 マリューは不満げにキラに訴えた。マリューはキラに抱えられてコックピットから降りて、そのままトールらに囲まれたので、少々恥ずかしいのだ。

 

「キラ、その人は?」

 

 サイが半ば理解しつつも、確認の意味も込めて聞く。しかし、サイの服装は大分尖ってるね。え、キラ? 原作と違って、いたって普通だよ。半袖のパーカーとカーゴパンツ。ベルト? いや、准将と違ってキラはベルトに執着してないから。ただ、キラもベルトがアイデンティティーだという自覚があるから、左手首にベルトみたいなブレスレットをしているよ。じゅ、准将にとってベルトだらけの服は、せ、戦闘力を抑える拘束具だから(震え声)。

 

「地球連合の将校さんだって」

「マリュー・ラミアスです」

 

 その後に簡単な自己紹介をして、キラとミリアリアでマリューの傷の応急処置をしていく。幸い弾は抜けているので、なんとかなった。

 

 だが、治療に集中するあまり、トールたちを放っておいたのは失敗だった。あるいは、原作に収束していくのか。

 

 原作通りに【ストライク】のコックピットで騒いでいるトールたちにブチ切れたマリューが、拳銃をぶっ放した。

 

「機体から離れなさい!!」

 

 キラは頭を抱えた。普通明らかに軍の機密っぽいモビルスーツに乗り込むかなぁ? と自分のことを棚に上げて。

 

「申し訳ないけど、あなたたちをこのまま解散させるわけにはいかなくなりました。事情はどうあれ、軍の最高機密を見てしまったあなたたちは、しかるべき所と連絡が取れ、処置が決定するまで、私と行動を共にしてもらいます」

 

 トールたちがピーチクパーチク騒いでいるが、キラからすれば予定通りなので問題無い。あとトールは割と自業自得。

 

「キラくんは文句言わないのね」

 

 何も言わないでボケーとしているキラを、マリューが胡乱げに見ている。それを受けて、キラは若干呆れた顔でトールたちを見ながら話す。

 

「生きるか死ぬかの状況だったとはいえ、勝手にモビルスーツを動かして何もないと思うほど暢気じゃないですよ。あとトールたちは、俺も事前に注意しなかったけど、何でモビルスーツ勝手に触って大丈夫だと思ってるんだよ……」

 

 最後のほうは溜め息まで吐いてるキラに、トールたちも居心地悪そうにしている。それを見たマリューは、拳銃を下ろして指示を出す。

 

「とりあえず、【ストライク】の装備を探しに工場区に行きます」

「じゃあ、お前らはその辺に乗り捨てられてる車に乗りな」

 

 キラが指差した方向には、避難の際に乗り捨てられた車が幾つかあった。

 

 

 

 

 

 

 




キラマリュもいいよね
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