やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ!   作:よみや

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PHASE -21 必死

 

 

 

 

「えーと、い、痛いのか? ほら、もう泣くな」

 

 怪我して泣いている子供におっかなびっくり近寄ったナタルが、ポーチからお菓子を与えてあやしている。

 

 普段厳しいことを言っても根は優しいナタルは泣き止んだ子供にホッとしていると、いつの間にか子供に囲まれていることに気がついた。

 

 子供は羨ましそうに、お菓子を食べている子供を見ている。まあ、そりゃそうだ。

 

「あ、あはは、そ、そんなに数はないんだ。……困ったな」

 

 個人用のポーチにそんなに入るわけもない。意外とうっかりしているナタルがオロオロしている。それをフォローしようとしたフレイが、キラから渡されたリュックの中身を確認すると、お菓子や缶詰が入っていた。

 

「キラ、流石ね」

 

 まるで状況を知っていたかのような対応に、流石キラ略してさすキラと思ったかどうかは知らないが、感心したフレイがナタルのフォローに入った。尚、後でナタルに滅茶苦茶感謝された。

 

 それを横目に【アークエンジェル】に通信を入れたムウは、マリューに明けの砂漠を止めなかったことをなじられていた。可哀想なムウ、ひとえにてめえが現場で一番階級が高いせいだが。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「隊長、このままじゃ追いつかれますよ?」

「……運命の分かれ道だな」

 

 ダコスタは、バルトフェルドの言葉に困惑した。バルトフェルドは尊敬に値する隊長なのだが、時々よくわからないことを言うのが玉に瑕だ。その言葉自体は、後々になってとても大事な事だったり物事の本質を突いていたりするので、せめて常人にもわかるように言って欲しい。

 

「死んだ方がマシという言葉はよく聞くが、本当にそうなのかね?」

 

 バルトフェルドの言葉と同時に、レーダーが接近する車両を捉えた。

 

「……やはり、死んだ方がマシなのかね」

 

 バルトフェルドの言葉は、砂塵に紛れて消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 バルトフェルドたちに追いついた明けの砂漠だったが、彼らの攻撃はまるで通じなかった。いかに勇敢に戦おうとも、【バクゥ】とバギーでは勝負にならない。

 

 キラが戦場に辿り着いたのは、原作通りにアフメドが死んだ直後だった。

 

「チッ」

 

 このままここを戦場にすると、カガリたちが巻き込まれるので、自分を餌にして距離を取った。

 

「出てこなければやられなかったのに!」

 

 キラとしても、明けの砂漠の面々に死んで欲しかったわけではない。キラができる最大限のフォローとして、砂漠初戦を単独で戦おうとしたのに、彼らが勝手に割って入ったのだ。

 

 正直この時点で、キラからできることは無くなった。町を焼かれれば何を言っても聞かないし。

 

 ズームされたモニターに、力無く倒れるアフメドに縋りつくカガリが映った。

 

「くそ、抵抗すると無駄死にをするだけだって、何でわからないんだ!」

 

 悪態をついたキラは、十分な距離を取ったところで、【バクゥ】に立ち向かう。2機の【バクゥ】のミサイル攻撃を飛んで避ける。エールストライカーを装備した【ストライク】は、機動性で優位を取れる。

 

 しかし、3機目が急接近するのを見て、キラは気を引き締めた。

 

 バルトフェルドが乗った【バクゥ】を中心にフォーメーションが組まれる。確かに連携は脅威だが、【バクゥ】自体の攻撃は大したことはない。

 

 放たれるミサイルを推力に任せた急制動で躱していき、躱しきれないものは『ビームライフル』と『イーゲルシュテルン』で撃ち落としていく。

 

「ここだ!」

 

 一瞬の隙を見て、キラが反撃に転じる。シールドをフォーメーションのど真ん中に放り投げ、連携を崩す。

 

「久しぶりに楽しくなってきたな! 各機、乱戦に持ち込め!」

 

 必殺のタイミングで放たれたミサイルが、【ストライク】に迫る。シールドを捨てた今、防ぐ術はない。

 

 熱くなってきたバルトフェルドだったが、キラは逆に冷静だった。

 

「俺はオーブの民だ。当然、土遁の術は使えるぜ」

 

【ストライク】が、地面スレスレで後方宙返りをした。全開で吹かされたスラスターが、地面を抉り吹き飛ばす。巻き上げられた砂の壁で、ミサイルが誘爆した。

 

「なに!?」

「もらった!」

 

 舞い上がった砂と爆煙を避けようとしたバルトフェルド以外の【バクゥ】の頭部がビームで撃ち抜かれた。

 

「うおぉぉッ!!」

 

 その隙をついてバルトフェルドが突撃するが、キラの反応の方が早い。

 

 左手で抜刀した『ビームサーベル』で、バルトフェルド機の右前足を切断した。

 

「チッ、撤退だ!」

 

 駆け抜けた勢いのまま撤退するバルトフェルドたちを、キラは見送った。機体を翻せば、明けの砂漠の生き残りが集まり始めていた。

 

「……くそッ!」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 コックピットから降りてきたキラに、明けの砂漠の生き残りたちは何も言えなかった。大層な口を利いても、結局キラが来なければ全滅するところだった。

 

 正直キラは原作と同じ状況になっても、口を出す気はなかった。が、やはり我慢ができなくなった。それに、明けの砂漠の面々もそうだが、特にカガリだ。彼女の意識を変える為には言わなければならない。

 

「貴方たちは、自殺志願者か何かなんですか?」

 

 キラの冷えきった言葉に、みんな気圧された。カガリ以外は。

 

「なんだと!? あいつらを見て、同じことが言えるのか!?」

 

 涙を浮かべたカガリが指し示した場所には、複数人の遺体があった。五体満足なら上等。踏み潰された死体は、肉片になっていることだろう。

 

「見ろ! アフメドはまだ若いのに、必死に戦ったんだ! みんなだって、必死に戦った! 大事な人や大事な物を守る為に必死で!」

 

 言葉だけなら尊いことを言っているのかもしれない。だが、現実に照らし合わせればクソだ。

 

 キラが、カガリの頬を張り飛ばした。

 

「思いだけで、何が守れるっていうんだ!」

 

 場が凍った。カガリは、目を見開いてキラを見た。

 

「はっきり言ってやろうか? 必死で戦うなんてのは、最低条件なんだよ。敵も味方も必死で戦ってるんだ!」

 

 カガリの肩が震えた。

 

「必死に戦えばなんとかなるなら、地球連合はここまで負け続けてない!」

「でも!」

 

 カガリが泣きながら、何かを叫ぼうとした。だが、言葉が出なかった。

 

「別にザフトの肩を持つわけじゃないけどな。ザフトだって必死さ。ユニウスセブンの悲劇を二度と起こさせないように、死に物狂いで戦ってる。みんなが譲れないものの為に戦ってるんだ! 自分たちだけが正しくて、他は間違ってるなんて傲慢なんだよ!」

 

 遂に、カガリは泣き崩れた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 戦場から戻っても地獄は終わらない。死んだレジスタンスの家族は泣き崩れた。

 

 そんな中で、泣きじゃくるカガリをフレイが迎えた。

 

「良かった、あなたは無事だったのね」

 

 暖かく迎え入れたフレイに、カガリは泣きながら縋りついた。

 

「わ、私が無事だって、みんながぁ……。たくさん死んだ! な、なにもでぎながっだ!」

 

 フレイは黙ってカガリを抱き締めた。

 

 しばらくして、落ち着いたカガリがぽつぽつと話し出した。

 

「……あいつに、キラに言われたんだ。思いだけで、何が守れるのかって。フレイはどう思う?」

「そうね」

 

 カガリの問い掛けに、フレイの顔に苦味が走った。

 

「私も思いだけじゃ守れないと思う。勿論思い自体は、とても大切だとは思うけど」

 

 フレイの脳裏に父親が浮かび上がった。

 

「私のパパね、こないだ死んだの」

「え?」

「ヘリオポリスが壊れて、慌てて無理矢理軍艦に乗って私を探しに来たの。でも、途中で艦が落ちて死んじゃった」

 

 突然の話に、カガリは上手く返すことができなかった。

 

「その時、キラは死に物狂いで戦ってくれたの。私が助けてって言ったから。でも無理だった。あんなに必死に戦ってくれたのに、パパは死んじゃった」

 

 カガリには信じられなかった。カガリから見れば、キラはそつなく戦っているようにしか見えない。

 

「キラは自分を責めたわ。……キラのせいじゃないのにね。必死になってもできないことはあるわ。人間そんなに万能じゃないもの」

 

 なら、理想論ばかり話す自分たちは、キラからしたらどう思っただろう。

 

「じゃあ、どうしたらいいんだ?」

「それがわかったら、こんなに戦争が激化しなかったんじゃないかしら。みんなわからないのよ」

「……そうか」

 

 いつかわかる日が来るのだろうか。自分の父親のことを思い出しながら、カガリは空を見上げた。

 

 

 

 

 




ちなみにカガリとフレイが話してる近くで、キサカが聞き耳立ててます(笑)
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