やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
戦闘から4日。不足する物資の補充の為、キラたちはバナディーヤを訪れていた。
「じゃあ、4時間後に」
「気をつけろ」
軍事物資の補充に赴くキサカたちと別れ、キラたちは日用品の補充の為市場に向かう。
「こういう場所は初めてだから、新鮮ね」
それ自体は原作通りだが、原作と違い同行者にフレイが追加されていた。
「でも、意外と活気があるわね? ザフトの占領下だっていうから、もっとこう……」
「こっちだ」
平和そうな雰囲気に首を傾げるフレイに、カガリが促した。
カガリが向かった先には、砲弾で抉れた地面があった。そして、その先に見えるのはバルトフェルドの旗艦【レセップス】。
「平和そうに見えるのは見せかけだ。あれが、この街の本当の支配者だ。逆らう者は容赦なく殺される。ここは、砂漠の虎のものなんだ」
カガリはこう言っているが、平和そうなのはある意味当然だ。反連合のアフリカ共同体はザフト寄り。むしろ喜んでザフトを受け入れたことだろう。なんなら、要請していてもおかしくない。敵の敵は味方なのだ。
キラは溜め息を吐いた。
◆◆◆
「よし、少し休憩するか」
ある程度店をまわった後、キラたちは食事がてらカフェへとやって来た。人数が増えても、男が荷物持ちなのは変わらず、キラは大量の荷物を抱えていた。手が塞がってる護衛とか意味あるん?
「しかし、フレイの注文は無茶だぞ。アナハイム製の78式電動マルチスパナとかジオニック製の06式電動ドライバーなんて、こんなところにあるわけないだろ」
「えー」
どうやら、頼む品は変わってもフレイの注文は手に入らないようだ。
そうこうしているうちに、注文していた食べ物が届いた。
「ドネル・ケバブだ。こいつはチリソースをかけてだな──」
「あいや待った!」
チリソースをかけようとしたカガリを遮るように、サングラスをかけた男が声をあげた。
ド派手なアロハシャツなんていう馴染む気ゼロの服装をしているのは、砂漠の虎ことアンドリュー・バルトフェルドだ。こんな目立つ格好で堂々と出歩くなんて、副官のダコスタくんは胃を痛めていることだろう。
「ケバブには、ヨーグルトソースが常識だ!」
「うるさい! 私の勝手だろ!」
目の前で子供のような言い合いをしている2人に、フレイは呆気に取られている。
キラは、今頃向こうはロゴスと
結局カガリはチリソースをかけて、バルトフェルドが絶叫している。お前ら仲良いな。
「ほら、お前たちも」
「待て、彼らまで邪道に引き込もうと言うのか!?」
原作通りにミックスされてはたまらないので、キラはさっさとソースをかけた。偉い人が言っていた、飯食う時は誰にも邪魔されず、自由で救われなきゃダメなんだと。つまり、君たち静かにしなさい。
「フレイ、お互いに違うソースかけて半分こにしようぜ」
「あら、良いわね」
キラとフレイがイチャイチャ恋人ムーヴを見せつけてきて、カガリとバルトフェルドは自分たちは何をやっているのかと固まった。
あーんまで見せつけたキラとフレイに降参したバルトフェルドは、よっこらしょと勝手に椅子に座った。
「しっかし、凄い荷物だね。パーティーでもするの?」
「ええい、なんなんだお前は!? 勝手に座ってきて!」
またもや2人がやいのやいの騒いでいると、空気を切り裂くような破裂音が聞こえた。
次の瞬間、バルトフェルドがテーブルを蹴り上げて遮蔽物にする。すかさずキラが、カガリとフレイをテーブルの陰に引き込んだ。
「ちょっ、なんなのよ!?」
「ロケランか!」
それを皮切りに銃撃戦が始まった。
「死ね!
「青き清浄なる世界の為に!」
どこからともなく現れたブルーコスモスたちが、攻撃を仕掛けてきている。
応戦しているバルトフェルドと客に混じっていた護衛を見つつ、キラも拳銃を抜いた。原作と違ってキラも拳銃を持ってきている。
ハワイで親父にではないが、こんな時代だ。拳銃体験くらいなら、専門施設でできるので撃ったことはある。投げつけて戦うよりは簡単だろう。
「キ、キラ!」
「大丈夫だ、フレイ! テーブルから体出すなよ!」
死角からバルトフェルドを狙うブルーコスモスに気づいたキラは、即座に拳銃を構えて撃った。
放たれた弾丸はブルーコスモスの腕に当たり、ブルーコスモスはもんどりうって倒れた。
「隊長! こ無事ですか!?」
戦いが終わると同時にダコスタが現れた。慌てて飛んできたのだろう。ご苦労様です。
ダコスタの小言を聞き流しながら、バルトフェルドがサングラスと帽子を外した。
「アンドリュー・バルトフェルド……。砂漠の虎……」
唖然としているカガリを見て、バルトフェルドはニヤリと笑った。
◆◆◆
「あ、あの私たち、本当に大丈夫ですから」
遠慮がちに申し出たフレイに、バルトフェルドは陽気に返した。
「だめだめ、お茶を台無しにして、命も救ってもらったのに、そのまま返すなんて。お礼をしないと。彼女だって、服ぐちゃぐちゃだし」
結局暖簾に腕押し。過度に断るのも変なので、キラたちはバルトフェルドが拠点にしているホテルへと連れていかれた。
カガリは早々にアイシャに連れていかれ、キラとフレイはバルトフェルドとコーヒーを飲むことになった。
寛いでくれたまえと言われて本当に寛げるわけもないが、フレイが部屋を見回すととある物が目に入った。
「これって」
「ああ、それ。それはエヴィデンス01。もちろんレプリカだがね」
エヴィデンス01。通称くじら石。まるでくじらに羽が生えたかのような化石。これは、地球の生物ではなく、外宇宙からの生物だ。ジョージ・グレンが発見し、本物はプラントにある。
「楽しくも厄介な存在さ」
「厄介?」
バルトフェルドの言葉に、フレイは首を傾げる。
「こんなものを見つけちゃったから、希望とか可能性とかが生まれたわけだしね。……人はまだ、もっと先まで行けるってね」
「先……」
「この戦争の根っこだ」
考え込むフレイを興味深そうにバルトフェルドが眺める。キラとしても興味深い話だが、記憶を取り戻してからその手のことは散々考えた後だ。確かに根っこではあるが、今のキラにどうにかできることでもないし、目の前の戦いを何とかしないことには先もくそもない。根っこに気を取られて、目の前の花の対処を怠れば、終末という果実が実ってしまうのだから。
◆◆◆
「アンディ」
扉が開かれると、ドレス姿のカガリが現れた。こうして見ると、確かに美人だ。
「おや、似合っているね」
「うるさい!」
黙っていれば完璧だが、喋ればお転婆だ。
「何で私にこんな格好をさせたりする? これも毎度のお遊びか?」
「お遊び?」
「変装して町で遊んでみたり、住民だけ逃がして町を焼いてみたりってことさ」
カガリとバルトフェルドの視線がぶつかる。
「いい目だ。真っ直ぐで、実にいい目だ」
「ふざけるな!」
この娘は、ここが敵の拠点だってわかってるのかな?
「君も死んだ方がマシなくちかね」
不意に部屋の温度が下がったように錯覚した。どれだけふざけて見えても、バルトフェルドは砂漠の虎なのだ。
「そっちの彼、君はどう思う? どうしたら、この戦争は終わると思う? ……モビルスーツのパイロットとしては」
「どうして、それを!?」
カガリとフレイが露骨に反応した。素直過ぎるだろ。バルトフェルドに笑われてるぞ。
「戦争には制限時間も得点もない。なら、どうやって勝ち負けを決める? どこで終わりにすればいい?」
バルトフェルドが銃を向けた。
カガリとフレイが立ち上がるが、キラは座ったままだ。他の奴ならともかく、バルトフェルドはこの場面では撃たない。彼自身が戦争の終わらせ方について悩んでいるから。
「敵である者を全て滅ぼして……かね?」
全て滅ぼして終わらせる。それは、パトリック・ザラやジブリールの考え方だ。所謂絶滅戦争。
「確かに、戦争はゲームやスポーツとは違う」
キラが話し始めると、バルトフェルドは視線を鋭くした。
「理想的な話をするなら、どちらかの陣営に決定的なダメージを与えて停戦や降伏に繋げることだろ。……でも、もう無理だ。核は放たれたし、ニュートロン・ジャマーも撒かれた。お互いにライン越えだ。止まらない」
アニメの範囲ではお互いに体力が続かなくなったから終戦しただけで、すぐにまた開戦。Destinyの終盤であっても、バルトフェルドの言う根っこはそのまま。なんなら、二度目の戦争で悪化している。
エヴィデンス01はパンドラの箱だった。開けたら災厄が飛び出す、底に希望があるかどうかはわからない。
「なら、なぜ君は戦う? 同胞と敵対する道を選んで」
「え?」
バルトフェルドの言葉に、カガリが驚いてキラを見た。
「守りたい人がいるから」
キラの言葉に、バルトフェルドは銃口を下げた。
「ま、今日の君は命の恩人のわけだし、ここは戦場ではない。帰りたまえ。今日は話ができて楽しかった。……よかったかどうかはわからんがね」
キラは立ち上がると、カガリとフレイの背を押した。扉を開けて出ようとするキラに、バルトフェルドは声をかけた。
「また、戦場でな」
キラは返事をしなかった。
実は書き始めた時は映画の知識をキラが持ってるか決めないでいて作中で明言してなかったけど、映画は知らないことにします。理由は知ってるとキラは絶対に先んじてどんな手段を使ってもファウンデーションを潰すからですね。話が成り立たねえ(笑)