やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
キラが格納庫に入ると、何やら賑わっていた。
「お前ら軍人のくせに情け無さすぎ」
どうやら、カガリがシミュレーションでイキっているようだ。早速キラがわからせに行く。
「おいおい、ノーマルモードをクリアしたからって調子に乗るなよ。このハードモードをクリアできるかな?」
調子に乗ると死ぬのがガンダム世界なので、難易度ハード(コズミック・イラ)をやらせる。
「へっ、ハードモードくらい余裕だっての!」
カガリが意気揚々と挑む。
「あ!? ちょっ! まっ、うわぁぁぁ──!?」
はい、呆気なく撃墜されました。ペッ、たかがナチュラルの上澄み如きがチョーシに乗るなよ!
「こ、こんなの誰がクリアできるんだ! 設定間違ってるだろ!」
「いや、ムウさんならデキルヨ」
地団駄を踏むカガリを宥めていると、ムウがやって来た。
「今、俺のこと呼んだ?」
呑気な顔して現れたムウをシミュレーターに乗せる。
「え、なに? ハードモード?」
説明もそこそこにスタート。
「お、おお!?」
最初は驚いていたムウだったが、何とかクリア。しれっと評価もSを取っている。流石はフラガマン。
「ほら、ムウさんは余裕だったろ」
「ぐぬぬ」
「まあムウさんは二つ名持ちのエースだけど、ベテランならSはともかくクリアはデキルヨ。カガリはまだまだだなぁ」
最初は何が何だかみたいな顔をしていたムウだったが、キラがカガリを嗜めてるのを見て、状況を察したのか追随する。
「ま、そーだな。ノーマルは新兵の練習用だしな。嬢ちゃんもまだまだヒヨッコだな!」
二人にやり込められたカガリは、悔しげに唸っていた。
「くっ、くっそぉー!」
それを見た二人はワルい顔して笑っていた。クークックック!
◆◆◆
「なんで、【ザウート】なんて寄越すかね。ジブラルタルの連中は!」
バルトフェルドが、書類をデスクに投げ捨てた。ダコスタも頭を抱えている。
「【バクゥ】は、品切れか!?」
「これ以上はまわせないと」
どうやらバルトフェルドは増援を頼んだようだが、望みのモノは来なかったようだ。メタな話だと、予定されているオペレーション・スピットブレイクの為に戦力をかき集めているので、バルトフェルドは貧乏くじを引いたのだろう。
「【ザウート】じゃ、【バクゥ】のスピードについてこれん。甲板に並べて砲台の代わりにするくらいしか、使い道がないぞ」
散々な言われようで、【ザウート】くんは泣きそうだ。でも実際使い勝手が悪いので残当。鈍い、装甲厚くない、車高高くて被弾面積大きい。もうこれ開き直って戦車作れよ。ヒルドルブとかのがマシだろ。
「その埋め合わせのつもりですかね。あれは」
「この砂漠で、人型のモビルスーツなんぞ役に立たん。……普通はな」
「【バクゥ】の修理を急がせます」
決戦は近い。バルトフェルドは、昂る気持ちを抑えた。
◆◆◆
決戦の日、【アークエンジェル】は、明けの砂漠と共にバルトフェルド撃破に向かう。
選んだ戦場は、タルパティア工場跡地。明けの砂漠が仕掛けた地雷が設置された場所だが、到着前に大爆発が起こった。地雷を読んでいたバルトフェルドが破壊したのだ。
しかし、キラからすれば知っていたことなので驚きはない。そんなことよりも、キラが不殺をしたことで、【バクゥ】が何機になっているかが問題だ。
「【ストライク】発進!」
マリューの指示で、キラが発進する。装備はエールだが、ただのエールでは火力が足りない。両肩にそれぞれのストライカーの装備を付け、試作ライフルも持つ。更に両腰に、『9.1m対艦刀』を装備している。『9.1m対艦刀』は、統合ストライカーであるI.W.S.Pの武装だが、I.W.S.Pは不採用になったので、その武装だけ第8艦隊が持ってきたようだ。実体剣なのでエネルギー節約になるし、【バクゥ】程度ならば、楽に切れる。
「【エールストライク
【パーフェクトストライクハイマニューバ】時のエールストライカー用の追加スラスターを装備した【ストライク】は、増加した重量をものともせず空を切り裂いて翔んだ。
すぐに【アークエンジェル】を囲んでいた戦闘ヘリ【アジャイル】の1機が、【ストライク】に攻撃を仕掛ける。しかし、機銃程度など効かず、シールドでローターを叩かれて不時着していった。
「【バクゥ】は何機だ? ……11機か。損傷させた奴、全部直したのか? 予備パーツが潤沢で羨ましいね」
キラは、群れをなして接近してくる【バクゥ】に立ち向かう。
「数だけいたって!」
群れの中央の機体の進路上に、試作ライフルから弾丸をバラ撒き陣形を崩す。そのまま分断した右側の群れに突っ込む。
「これだけ食い込めば、フレンドリーファイアが怖いだろ!」
囲まれているとはいえ、常にどれかの機体のすぐそばにいる【ストライク】に、【バクゥ】たちは攻めきれない。
中心から『ビームライフル』、『120mm対艦バルカン砲』、『イーゲルシュテルン』、試作ライフルを撃ちまくる。
「くっ、卑怯なナチュラルめ! うわぁ!」
「メイラム!」
あっという間に3機の【バクゥ】が損傷して、撤退していく。
キラは、残った3機に間髪いれずに襲い掛かる。
「実体剣ならでは!」
『9.1m対艦刀』を投げつけ、1機の頭部を潰し、そのまま障害物にして移動コースを限定する。他が怯んだところに残りの『9.1m対艦刀』で斬り捨てた。
「たかが犬っころが!」
半分を撃退した今、残り5機程度どうということはない。ミサイルを試作ライフルで撃ち落とし、『ビームライフル』で足や武装を撃ち抜けば終わりだ。
「ふん、『デュエル』とは違うのだよ、『デュエル』とは!」
前座を片付けたキラが、モニターを見ればレーダーに反応。【バクゥ】よりも速い機体。バルトフェルドの【ラゴゥ】だ。
「来たな。何が砂漠の虎だ。エレガントタイガーに改名させてやる!」
◆◆◆
キラが原作よりも多い【バクゥ】を撃退した一方、戦場全体では原作の流れ通りに動いていた。
敵艦に背後を取られた【アークエンジェル】が、工場跡地に突っ込む。船体が引っ掛かって大ピンチだ。
原作通りにカガリが【スカイグラスパー】で飛び出した。
「あれだけシミュレーターをやったんだ! 私だって!」
ムウに続いて敵艦に攻撃する。この時代にあるまじき戦闘機のくせにビーム兵器を搭載しているので、火力がおかしい。デフォルトでビームとかマ?
「『シュベルトゲベール』は、こう使う!」
更に戦闘機なのに、剣で接近戦を仕掛けた。アンカーである『パンツァーアイゼン』で遠心力を使い、失速による墜落も防ぐ。
あの、その剣は宅配物であって、キミの武装ではないのですが。やはり准将の姉。頭おかしい。
「あのシミュレーターに比べれば!」
砲塔を切り裂き、迎撃のミサイルも避けきった。カガリは、やっぱりあのシミュレーターの難易度おかしいだろと思った。
◆◆◆
「さっさと敗者になれ!」
キラが試作ライフルと『120mm対艦バルカン砲』で狙い撃つが、【ラゴゥ】は凄まじい機動性で避けながら、反撃のビームを放ってくる。
「チッ、やっぱり四足歩行は被弾面積が少なくて狙い辛い!」
「凄まじい腕ね。こっちは二人だっていうのに」
アイシャの言葉に、バルトフェルドは頷いた。【ラゴゥ】は局地戦に特化しているというのに、ジリジリと押されている。
一人の戦士として全力を出せることに喜びを覚える一方、バルトフェルドの冷静な部分が状況を客観的に見る。
「【ストライク】はビームを使っていない。だが、実弾といえども【ラゴゥ】の装甲ではそう何発も受けられない。対してこっちの射撃武装はビームキャノンのみ」
今のところビームは全て避けるかシールドで防がれている。距離を詰めようにも、上手く弾幕を使って距離を取られている。もうすぐ弾が尽きるが、【ラゴゥ】のビームも無限じゃない。
「アイシャ。厳しいが突撃する」
「そうね。その方が面白そう」
覚悟を決めたバルトフェルドが突撃する。キラも『350mmガンランチャー』で迎撃するが、突っ込みながら躱してくる。すれ違いざまに試作ライフルがビームサーベルで切り裂かれた。
「クソッ!」
キラからすれば原作通りのフェイズシフトダウンからの『アーマーシュナイダー』で突撃など冗談ではない。SEEDにも目覚めてないのに。
キラとバルトフェルドの戦いは五分に戻ったが、戦場の勝敗は決した。【レセップス】は中破。戦闘能力の大半を喪失した。
ダコスタに退艦命令を出したバルトフェルドは、アイシャにも脱出を促した。
「そんなことするくらいなら、死んだ方がマシね」
「君も馬鹿だな……。なら、付き合ってくれ!」
【ラゴゥ】が攻撃を再開する。
「さっさと降伏しろよ!」
「言ったはずだぞ! 戦争に終わりの明確なルールなど無いと!戦うしかなかろう!互いに敵である限り、どちらかが滅びるまでな!」
降伏しないことなどわかっていても、キラは諦められない。
「ここだけ勝ったって意味が無いんだ! 先を見据えないと原作を越えられない!」
互いのビームが交差する。【ストライク】は『ビームライフル』を、【ラゴゥ】はビームキャノンを撃ち抜かれた。
「イメージするのは、常に最強の自分」
【ストライク】がシールドを捨て、『マイダスメッサー』を投げつけた。
「アンディ!」
「構わん! これで最後だ!」
バルトフェルドは弧を描く『マイダスメッサー』を無視して突っ込んだ。
キラは両肩の装備をパージして、両手に『9.1m対艦刀』装備した。
「オオォォ!!」
キラは『9.1m対艦刀』を投げつけ、『マイダスメッサー』と合わせて、バルトフェルドの逃げ道を限定する。
『9.1m対艦刀』を追い掛けるように、キラが突っ込む。両手で、『ビームサーベル』を抜刀。
「ッ!? これは!」
「鶴翼三連!!」
すれ違いざまに、【ラゴゥ】の頭部と四肢を切り裂いた。
「ぐぁッ!」
コックピットで爆発が起き、バルトフェルドが負傷した。そのタイミングで【デュエル】が現れる。
「バルトフェルド隊長!」
原作通りに砂漠でノロノロしていたイザークが、何とか辿り着いたのは決着がついた後だった。
「おのれ、【ストライク】!」
いかに【ストライク】が憎いイザークであっても、足元に【ラゴゥ】が転がっている状況では攻撃は出来ない。まして、通信によるとまだバルトフェルドは負傷しているが生きているのだ。
イザークがどうやって状況を打開するか考えていると、【ストライク】が【ラゴゥ】から離れた。
「なに!?」
訝しむイザークだったが、【ストライク】が光信号を送ってきた。
「死兵になっては困るので、連れて帰れだと!?」
迷ったイザークだったが、無事らしいアイシャが通信で助けを求めているので腹をくくって【ラゴゥ】に近づいた。
「バルトフェルド隊長! おい、女! バルトフェルド隊長の容態は!?」
「腹部に破片が! 早く治療をしないと不味いわ!」
コックピットから出てきた二人をマニピュレーターに乗せたイザークは、【ストライク】を一瞥して離れた。
「ディアッカ! どこだ!? バルトフェルド隊長が負傷された! 撤退する! 援護しろ!」
「ハアッ!? マジかよ!」
大騒ぎしながら撤退する彼らを見送ってキラは、大きく息を吐いた。
「理想を抱いて、溺死するわけにはいかないんだよ。俺は……」
砂漠の空に、信号弾が打ち上がった。