やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
「明けの砂漠に!」
「勝ち取った未来に!」
「じゃあ、まあ、そういうことで」
マリューたちは、サイーブと共に乾杯をした。最後の締まらない言葉はムウだ。
【アークエンジェル】一行は、見事バルトフェルド隊を撃破し、明けの砂漠の拠点で束の間の祝杯を挙げていた。
「っ!? ゴホゴホ!」
「プハァ!」
酒精の強さに噎せるナタルだったが、マリューは美味しそうに飲み干している。いや、どっかのロボットアニメでも見た光景だな。サービスサービス!
キラは未成年だが、コーディネーターの身体スペックで酒は飲める。でも他の学生組は飲めないので飲んでない。
死者を送る儀式は、厳かに進んでいく。読み上げられる名前は膨大な数だ。いったいどれだけの人が死に、そしてこれから死んでいくのか。バルトフェルド隊を退けても、ザフトが消えたわけではない。戦いは続いていく。
きっと泣き崩れる遺族がいなくなることはないのだろう。あるいは、遺族ごといなくなるその時まで。
死者を送る儀式の後も、宴会は続く。どこもかしこも大騒ぎだ。騒ぐ気分でない者は、とっくに引っ込んだ。
ザフトに一矢報いたのを誇る為、死んだ者を笑って送る為、自分が生き残ったことを喜ぶ為。戦士たちは酒を飲み、騒ぐ。恐怖を忘れるように、誤魔化すように。
【アークエンジェル】の船員も同様に騒いでいる。彼らからすれば、エース部隊のクルーゼ隊に追い回され、やっとのことで第8艦隊と合流すれば、今度は地上で孤立して、またエース部隊のバルトフェルド隊に襲われるという悪夢。脅威が1つ無くなったのだ。どんちゃん騒ぎくらいしたいだろう。
未成年組は酔えないので、早々に引き上げた。キラも艦内に戻ろうとしたところ、マリューたちを見つけた。
「キラくん、良いところに!」
マリューに呼ばれてホイホイ来てみれば、ナタルが酔い潰れていた。お酒に慣れていないのに、無理して付き合って潰れたようだ。
「ナタルのこと、お願いしても良いかしら?」
マリュー自身はまだまだ飲むつもりのようで、頬を赤らめて酒瓶を抱えている。
酔っ払いに絡まれると面倒なので、キラはさっさとナタルに肩を貸して退散することにした。その際、ムウが俺もと逃げようとしたが、サイーブとマリューに捕まったようだ。
「おーい、キラ!?」
ムウからの助けを無視して、キラは艦に戻った。不可能を可能にする男だし、ダイジョブ、ダイジョブー。南無三。
「うーん……、水……」
気分が悪そうなナタルを部屋まで運び、上着を脱がせて水を飲ませる。
「気持ち悪い……」
ナタルは、ヨロヨロとベッドに倒れ込んだ。
「顔色真っ青だし、一人にしとくの危ないかな」
吐瀉物を詰まらせて窒息などしたら洒落にならないので、キラも介護のつもりで同じベッドに寝転がる。流石のキラも、この状態で盛ったりはしない。行為中に吐かれても嫌だし。
「大丈夫ですか?」
キラが背中を擦ってやれば、ナタルはキラに体を寄せた。
「いつもすまない……」
ナタルも軍人とはいえ、二十代半ば。まだまだ若造で、そんな中敵地で孤軍奮闘するのは、大きな負担だ。部下の前では強く見せても、心の内では不安なのだ。酒を飲み過ぎたのも、それが無関係では無い。
「我々は、君に負担ばかり掛けている……」
キラは無言で、背中を撫でる。
「私は……」
いつの間にか、ナタルは寝入った。苦しそうな寝顔だ。キラはナタルを腕枕しながら天井を見上げた。
「俺が守るさ……」
今後待ち受けるだろう激戦を思い、キラは拳を握った。
「……おい……どこを触っている……」
寝言を言いながら更に体を寄せてくるナタルに、キラは笑いながら力を抜いて抱き締めた。
「どんな夢見てるんだか」
眠りに落ちるキラの横で、ナタルの寝顔が穏やかなものに変わっていた。
◆◆◆
「海だー!」
原作通りに、海へ出てインド洋を進んでいる【アークエンジェル】は、現在小休止で手の空いた船員たちは、外に出ていた。
はしゃぐトールたちを尻目に、キラたちは別の場所でしっぽり楽しんでいた。
「海なのに水着が無いなんて……」
落ち込むキラに、カガリは呆れたような眼差しを向けた。
「お前な……」
結局カガリは原作通りに、着いてきていた。
「水着は無いから、これでどう?」
フレイが上着を脱いで、シャツの裾を捲って絞った。健康的なエロスだ。
「優勝」
「カガリはやらないの?」
「するわけないだろ!」
鼻の下を伸ばすキラと、カガリも巻き込もうとするフレイ。カガリは顔を赤らめて吠えた。
原作では、キラを取り合って仲が悪かったが、こちらではフレイとカガリは穏やかに過ごしている。たまにカガリは呆れたような顔をしているけど。
「呑気だな」
「問題は無いさ。【ストライク】の防水処理はしたし」
キラも遊んでいるわけではない。次の戦いに向けて、【ストライク】に防水処理を施したし、【アークエンジェル】のソナーの設定もした。働き過ぎである。
「防水処理をしても、あの機体は水中用では無いぞ?」
「しないよりはマシだろ」
如何に優秀な【ストライク】であっても、飛べやしないし、泳げもしないのである。
暫しの休息の後、警報が鳴り響いた。敵だ。紅海の鯱の異名を持つモラシムだ。
「海洋の真ん中は手薄じゃなかったのかよ!」
ぶつくさ言いながら、ランチャーパックを装備した【スカイグラスパー】でムウが発進する。
海の真ん中では、汎用型のモビルスーツなど役に立たないのでムウが主力だ。……普通なら。
「【ストライク】出ます!」
キラが、甲板上へ【ストライク】を上げる。甲板に登った【ストライク】には、大型のストライカーパックが装備されていた。
「ライトニングストライカー、期待通りの性能なら良いけど」
第8艦隊からの補給に混じっていた、試作ストライカーパックだ。OSが未完成だったものを、キラが使えるようにしたのだ。
「敵は【ディン】4に、【グーン】4!? 原作より増えてるじゃないか」
実は原作とは異なり、モラシム隊は潜水艦が2隻となっている。
「センサー展開!」
高感度センサーが展開し、敵機を捕捉する。
「銃身連結!」
両腕下部にマウントされていた銃身を合わせて、長大な砲身を構える。
「ターゲットロック!」
【アークエンジェル】に攻撃している【ディン】の1機へと狙いを定める。
「墜ちろ!」
ライトニングストライカー唯一の武装である『70-31式電磁加農砲』が吠える。難しい漢字だが、ようはレールガンである。
吐き出された弾丸は見事【ディン】を貫き、爆散させた。
ライトニングストライカーは長距離狙撃を主眼に置いたストライカーだ。その為高感度のセンサーを持ち、大型のレールガンを武装にしている。また、元々は稼働時間の延長を目指していた装備でもある為、大型のパワーパックを搭載しており、稼働時間に優れ、友軍機にエネルギー補給まで出来る。
ただし、大型のパワーパックや冷却機の影響で機動性は高くなく、武装もレールガンのみなので汎用性は低い。
だが、飛べず、泳げもしない現状では役に立つ。水中戦は原作でやった? どう考えても機体が痛むので、キラはなるべくやりたくないようだ。
1機撃墜されたのにも関わらず、果敢に【アークエンジェル】に攻撃を加える【ディン】部隊。しかし、そもそも【ディン】の武装は対艦攻撃には向いてないので、そこまで脅威ではない。エンジン以外は大丈夫。【アークエンジェル】の火砲も強力だし。
「もらった!」
また1機、レールガンに撃ち抜かれて【ディン】が墜ちる。
【アークエンジェル】にとっては、【ディン】よりも【グーン】の方が脅威だ。下方に対する攻撃能力が貧弱なので。
「小型ソナー投下」
キラが、砂漠で仕入れた小型のソナーを海に投げ入れた。無理矢理ストライカーにくっつけたソナーと高感度センサーで、【グーン】の位置を探る。
「ソナーの反響とセンサーの熱源探知を合わせて!」
鮫のように群がる【グーン】の位置を掴んだキラが、【ストライク】を跳び上がらせる。
「そこだァ!」
弾丸を数発、海面に撃ち込んで、キラは【アークエンジェル】の甲板に戻る。
数秒後、海面が爆発で盛り上がった。
「な、ナニィ!? 海中の【グーン】を狙い撃っただと!? ぐわぁ!」
【グーン】が落とされたことに動揺したモラシムが、【ディン】の翼をムウに撃ち砕かれた。
その間に、キラがもう1機【グーン】を撃破した。
「くっ、撤退だ!」
モラシムは砕けた翼でなんとかバランスを取ると、這う這うの体で帰艦した。
ライトニングストライカー映像で見たいなー。