やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
戦闘後の【アークエンジェル】は、重苦しい雰囲気に包まれていた。
原作通り、カガリが帰艦しなかったのだ。
◆◆◆
「見つけた! 敵母艦だ!」
予測データの元へと急行したムウとカガリは、ザフトのボズゴロフ級潜水艦を見つけた。
「2隻いる! どうする?」
「先ずは手前のから狙う!」
ムウの指示で、対潜ミサイルが放たれた。ミサイルは直撃、潜水艦に大きな損傷を与えた。
「浮上してくるぞ! 狙え!」
浮上してきた2隻に、ムウとカガリは攻撃を加える。しかし、ムウの【スカイグラスパー】には『アグニ』があるが、カガリの【スカイグラスパー】はストライカーパック無しなので、火力が足りなかった。
無傷だった潜水艦はムウの『アグニ』で轟沈したが、手負いの方は満身創痍だが、【ディン】を3機吐き出した。
「くっ、俺が潜水艦に止めを刺す! お嬢ちゃんは、落とされないことだけ考えろ!」
言うやいなや、ムウは直上から垂直に潜水艦へと降下する。
「うぉりゃああ!!」
それを止めようとする【ディン】をカガリが牽制する。
「このォ!」
ムウの『アグニ』が再び潜水艦を捉え、轟沈させる。やっぱ戦闘機に持たせて良い火力じゃないよ。空飛ぶアグニとか悪魔だよ。まあ、絶対重量バランスとか空気抵抗とか最悪だけど。普通は『アグニ』撃っただけで、バランス崩すと思う。
母艦を失ったが、【ディン】たちは逃げることなくムウたちに攻撃を仕掛けた。
「落ちるなよ、お嬢ちゃん!」
「あのシミュレーターに比べれば!」
ドッグファイトの末、2機の【ディン】の撃墜に成功。しかし、カガリが被弾した。
「大丈夫か!?」
「ナビゲーションモジュールがやられただけだ! まだ飛べる!」
「なら、帰投しろ! 1機なら、俺が落とせる!」
「で、でも!」
「もう集中力が切れてるだろ! フラフラ飛ばれても邪魔なだけだ!」
「っ、わかったよ!」
途中まではカガリも良い動きをしていたが、1機撃破した時点で集中力が切れてしまった。まあ、正規兵じゃないから仕方ないね。
【アークエンジェル】へと帰ろうとするカガリだったが、ナビが壊れているので、位置がわからない。彷徨っているうちに、運命に出会ってしまった。
「ザフトの輸送機!?」
カガリが気づいた時には、輸送機側から攻撃されていて戦闘は避けられなかった。
「舐めるな!」
輸送機の機銃程度は避けて、ビームを撃ち込んだ。
「やった!」
煙を吹きながら高度を落としていく輸送機。しかし、突如としてハッチが開き、モビルスーツが飛び出した。
「何故、地球軍がこんなところに!」
アスランは突然の戦闘に驚きながらも、輸送機を追撃させない為に、カガリに攻撃を仕掛ける。
【イージス】は空を飛ぶことは出来ないが、一時的に跳び上がることは出来る。
「こいつ!」
「このモビルスーツ!?」
『ビームライフル』からの攻撃を何とか回避しようと試みるカガリ。残念ながら、完全には回避し切れず掠めたエンジンが火を吹いた。
「クソォ! 被弾したエンジンの動力カット! 消火剤散布! チッ、ダメか!」
みるみる高度を落としていく【スカイグラスパー】を見つめながら、アスランも重力に引かれて落ちていった。
◆◆◆
「疲れてるとは思うけど……頼むわね」
【ストライク】でカガリに捜索に向かおうとするキラに、マリューが声をかけた。
「俺は大丈夫です」
「予測エリアの中には小島も多い、案外そっちに落ちているかもしれない」
ナタルからも声をかけられたが、その声は柔らかい。原作と違いマリューを信頼して頼っているので、意見の対立は起きないし、キラのことで民間人を戦わせることについても考えが違う。今もキラのメンタルを慮って、出来るだけ柔らかい声を出しているし。
「手掛かりが無くても、2時間で戻って」
「了解」
発進したキラの心には、純粋な心配と冷徹な計算があった。
(今のカガリの腕で、なにもないのに落ちるわけがない。ほぼ確実に戦闘があった筈)
後は出会えたのかどうか。あの出会いも運命的なもので、少しボタンを掛け違えたら出会わなくなってしまう。
「散々原作を変えといて、今さら原作に頼るか……。他に手を思いつかなったとはいえ、無様だな」
それでも世界の命運的には必要なのだ。
「あとは運命次第か……。嫌いなんだよな、運命って言葉」
万が一、無人島以外に落ちて水没などしていたらヤバいので、キラは小島以外を重点的に捜索することにした。
◆◆◆
アスランとカガリの出会いは原作通りだった。そこからの流れも。
洞窟に移動した2人は、焚き火を挟んで向かい合っていた。
「《ヘリオポリス》のことは、俺たちだってあんなことになるとは思ってなかったさ……」
アスランの脳裏に、キラが浮かび上がった。もし、キラがいることを知っていたら、自分はどうしただろうか?
「モンゲンレーテが開発した新型モビルスーツを奪えればよかったんだ……」
「何を今さら! コロニーを攻撃したのは、事実だろうが!」
アスランの弁解に、カガリが噛みついた。
(「コロニーがどれだけ脆いかは、プラントの方が知ってる筈だろ!? 《ユニウスセブン》のことがあったのに、なんでザフトがコロニーに攻撃なんてするんだ!」)
キラの言葉が、脳裏を甦る。
「中立と言いながら、連合とモビルスーツを作ったのはオーブだ」
「それは……」
カガリに反論は出来なかった。何故なら、そのことに憤っていたのは他でもない自分なのだから。
「俺の母は、《ユニウスセブン》にいた。ただの農業プラントだった。それなのに、何の罪の無い人がたくさん死んだんだ!」
そもそも、連合はプラントに対して食料を生産を禁止していた。プラントはその名の通りに生産施設であって、地球では環境上よろしくない工業を行う場所として生まれた。
コーディネイターへの迫害があったとはいえ、プラントを自分たちのものにして、首輪だった食料についても勝手に生産を始めたら戦争にもなるだろう。プラントを作る金を出したのは、理事国なんだから。
まあ、散々テロをしたり、核ミサイルをブチ込んだりするのは、頭ブルコスの所業だが。
「私の友達もたくさん死んだよ、お前たちの攻撃で!」
結局、末端であるアスランやカガリが言い合っても、意味は無い。戦争を始めるのは、いつも偉い奴らなのだから。
アスランは、キラやキラの両親を思い出し、反論を止めた。
(キラのご両親は無事だろうか)
もし、万が一のことがあれば、キラは自分をどれだけ恨むのだろうか。まわりにいる、ナチュラルを憎むザフト兵のようになるのだろうか? アスランは恐ろしい考えを断ち切るように、座り込んだ。
「よそう。……お前とこんな話をしても仕方がない」
横になったアスランは、視線を逸らした。
◆◆◆
いつの間にかアスランが寝こけている中、カガリは【イージス】を見上げていた。
(「お父様の裏切り者ー!!」)
カガリの脳裏に、《ヘリオポリス》での出来事が浮かび上がった。
視線を巡らせれば、アスランの腰にある拳銃が目に入る。
カガリは静かにアスランに近づくと、拳銃に手を伸ばした。
拳銃に触れる寸前で、手が止まった。
(「思いだけで、何が守れるっていうんだ!」)
(「私も思いだけじゃ守れないと思う。勿論思い自体は、とても大切だとは思うけど」)
キラとフレイの言葉が、頭をぐるぐると回る。
(「別にザフトの肩を持つわけじゃないけどな。ザフトだって必死さ。ユニウスセブンの悲劇を二度と起こさせないように、死に物狂いで戦ってる。みんなが譲れないものの為に戦ってるんだ! 自分たちだけが正しくて、他は間違ってるなんて傲慢なんだよ!」)
カガリの手は、動かなかった。
しかし、焚き火が大きな音を立てて、アスランが目を覚ました。
「ッ!? お前!」
カガリは咄嗟に毛布を投げ、拳銃を引き抜いた。
「ごめん! お前を撃つ気はない! でも、あのモビルスーツは地球を攻撃するんだろう!?」
アスランの顔に、苦味が走った。
「作ったオーブが悪いのはわかってる! でも、あれは地球の人たちをたくさん殺すんだろ!?」
カガリの脳裏に、アフメドの最後が浮かび上がった。
「なら、撃てよ。その引き金を引いているのは、俺だ」
アスランの言葉に、カガリの拳銃を持つ手は震えた。
「俺はザフトのパイロットだ。機体に手をかけさせるわけにはいかない。どうしてもやるというなら、俺は……お前を殺す」
ナイフを向けるアスランだったが、どうしてもキラが頭をチラついた。
「わ、私は……」
(「戦争には制限時間も得点もない。なら、どうやって勝ち負けを決める? どこで終わりにすればいい?」)
バルトフェルドの言葉が思い起こされる。
(「敵である者を全て滅ぼして……かね?」)
(敵とは誰だ? どこか抜けているこいつか? それとも未だ見ぬコーディネイター? どうすれば戦いは終わる? 敵を殺せば? こいつを殺す? 誰が? 私が?)
「クソォ!」
何も選べなかったカガリは、拳銃を投げた。
それを見たアスランが、咄嗟にカガリを押し倒す。銃声が響いた。
「馬鹿か!? オープンボルトの銃を投げるやつがあるか!」
「ごめん……」
溜め息を吐くアスラン。さっきまでの殺伐とした雰囲気はどっかにいった。拳銃もナイフも遠くに転がっている。
「あ、その傷……。私が手当てするから!」
「え、いや別に」
「いーから、貸せって!」
「……その前に、服着てくれないか」
カガリは服を乾かしていたので、現在は下着姿だ。
このラッキースケベ! 照れてはいるが、がっつり脳裏に焼きついた模様。
◆◆◆
夜が明けると、アスランとカガリ双方に迎えが来た。
「お前、本当に地球軍じゃないんだな?」
「ち、が、うー!」
(なんで、キラもこいつも軍人でもないのに、戦場に出るんだ……)
「お前じゃない、カガリだ! お前は?」
「アスラン!」
最後の最後で名前を教え合った2人は、それぞれの居場所へと戻っていった。
2人の道が交わるのは、まだ少し先の話だ。
アスラン「ふっ、おもしれー女」
あの世界のフラグ管理難しすぎる。偶々カガリが迷子にならなきゃ、最後までザフトのアスラン・ザラだろ。