やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
オーブ近海で、その戦いは行われていた。
「何をやっているディアッカ、早く艦の足を止めろ!」
「わかっている!」
ザラ隊による【アークエンジェル】への攻撃。原作通りに、キラたちは追い込まれていた。
「いい加減に!」
ここでもキラは、ジレンマに陥っていた。【アークエンジェル】が落とされるのは困る。だが、適度に損傷しないとオーブに入れない。両方やらなくちゃならないのが転生者の辛いところ。
エールストライカーを装備したキラは、『ビームライフル』だけだと火力が足りないので、バズーカを引っ張り出してきていた。
バズーカを連射して、敵の動きを制限する。迎撃させれば、それだけバッテリーや弾薬が減る。
バンクシーンの大盤振る舞いで、【アークエンジェル】へ攻撃が雨霰と降り注ぐ。
「借りは返させてもらう!」
原作通りでも大変なのに、そこに追加でミゲルもいるのだ。難易度は上がっている。
「ニコル、左から回り込め!」
アスランの指示で回り込んだニコルが、『ランサーダート』で『バリアント』を潰した。
それを好機と見たイザークが、キラに突っ込む。
「迂闊だな!」
キラの『ビームライフル』でグゥルを撃ち抜かれたイザークは、『ビームサーベル』を抜いて【アークエンジェル】へ飛び移ろうとした。
「でぇい!」
「踏み込みが足らん!」
迎え撃ったキラの『ビームサーベル』が、【デュエル】の『ビームサーベル』の根元を切り裂いた。剣豪かよ。
ちなみに重たいバズーカは、捨てた。お前はもう、フヨウラ!
「ナニィ!?」
驚くイザークを踏み台にして、フォローに来たニコルを狙う。俺を踏み台にした!?
「うわぁぁ!?」
准将ばりに足癖悪いキラのキックで、ニコルを叩き落とした。
「ッ! そいつを寄越せ!」
【ブリッツ】がいなくなり、無人になったグゥルをキラが奪った。落とし物は、拾い主の物だ。お前の物は、俺の物!
「こいつ、ニコルのグゥルを!」
釣られてやって来たミゲルと、ドッグファイトを繰り広げるキラ。
対艦用で『キャットゥス』を装備していたミゲルは、『ビームライフル』とは撃ち合えず、グゥルを撃ち抜かれて海に落ちた。
「くっそぉぉ!」
「ミゲル!」
残っているのは、アスランとディアッカだけだ。ディアッカはムウと遊んでいるので、実質1対1。
「空さえ飛べれば、こっちのもんだ!」
「これほど腕を上げてるなんて!? キラ!」
アスランはたった1機で、自分たちと渡り合うキラに驚愕する。バルトフェルド隊もモラシム隊も破られたということに実感が沸いた。
そして、戦況はキラの望み通りに推移した。オーブの領海に近づいた為、オーブの艦隊が現れた。
「不味いわ! 領海から離れて!」
マリューの指示に、学生組は唖然とする。
「オーブは味方ではないのよ! このままでは、撃たれる!」
その後、カガリが出てごちゃごちゃやっているが、キラはアスランの相手をしながら、【バスター】を注視していた。お前が頼りなんだ。
良い位置取りになったところで、ディアッカのグゥルを撃ち抜いた。
「このォ!」
鼬の最後っ屁で【アークエンジェル】のエンジンを破壊するディアッカ。実はお前、砂漠編から味方だよな?
オーブの領海に突っ込んでいく【アークエンジェル】。それをキラはホッとした顔で見ていた。
【アークエンジェル】に攻撃陣形を取るオーブ艦隊。原作だと艦隊司令はモブだが、うちではトダカさんだぜ。
「攻撃用意。百発百外しだ。巧くやれよ。撃ちーかた、始め!」
【アークエンジェル】の周囲に、砲弾やミサイルが降り注ぐ。しかし、直撃するものは無い。オーブのお家芸だな。
「チッ、ここまでか」
アスランはオーブ軍に攻撃が当たると外交問題になる為、渋々引き返すこととなった。
◆◆◆
「私は反対です!」
ナタルの硬い声が、部屋に響いた。
オーブ側からの【アークエンジェル】への要求は原作通りだった。【ストライク】の戦闘データの提供と、キラの技術協力。
「とはいっても、じゃあどうする? みんなでアラスカまで泳ぐか?」
場を和らげるように、ジョークを言ったムウをナタルが睨んだ。
「対価なら【ストライク】の戦闘データで十分でしょう!? この期に及んで、キラ・ヤマトに更なる負担をかけるなど!」
ナタルの剣幕に、ムウは腰が引けた。ナタルもただで何もかも手に入るなどとは思っていない。だが、これ以上キラに負担をかけたくなかった。
同じ思いであると思っているマリューをナタルが強い目で見るが、マリューの目は死んでいた。
「私たちに選択肢は無いわ……。言われなかったけど、ザフトからの圧力は相当なものだろうし……。オーブ側も引かないでしょう……」
やれる能力があるならやれのムウと、能力があっても出来ればやって欲しくないマリュー。だが、艦長としてクルーの命を預かるマリューは、時に非情な決断を下さなければならない。
「キラくんには、やってもらうしかないわ……」
拳を握り締めて、肩を震わすマリューを見て、ナタルも唇を噛んだ。弱者に選ぶ権利など無いのだ。
尚、キラ本人は技術協力する気満々である模様。オーブは自分の国なんすわ。
◆◆◆
キラがモルゲンレーテの施設に、【ストライク】ごと乗りつけると、エリカ・シモンズが迎え入れた。
【ストライク】はオーバーホールの為に預け、キラとフレイはエリカの後に続いた。あ、フレイはキラとコックピットタンデムで一緒に来た。まあ、後輩にはホテルになったガンダムもいるし、【ストライク】くんも多少はね?
施設の奥まで進むと、フレイは驚愕の声をあげた。
「このモビルスーツって!?」
「【M1アストレイ】。オーブの量産型モビルスーツよ」
キラは知ってるので、ふーんという顔だが、代わりにフレイが驚いてくれる。
「お前は驚かないんだな」
頬を赤く腫らしたカガリが、キラに不満そうに話し掛けた。
「まあ、Xナンバーがオーブ製って時点で察してはいたよ」
まあ、危ない橋渡るんだったら、見返りはあるよね。実際《ヘリオポリス》は崩壊したんだし。技術転用くらいするって。
その後もカガリがやいのやいの言っていたが、キラは無視した。小娘の癇癪に付き合っている暇は無いのだ。
その先で、【M1アストレイ】のデモンストレーションを見せて貰ったが、酷いものだった。ジジババの太極拳かな? これで倍近く速くなったとか、冗談だろう?
パイロットであるアストレイ3人娘と喧嘩するカガリを他所に、エリカはキラに仕事内容を告げた。
「私たちは、あれを強くしたいの。あなたの【ストライク】みたいに」
無理じゃないっすかね。【ストライク】はパイロットが傲慢なるスーパーコーディネイターなんで例外ですよ。
「私たちは、あなたにあれのOSの改良をお願いしたいの」
お願いって言ってるけど、実質命令だよね。断れないもん。まあ、転生者だから知ってるし、当然備えているけど。
「それはナチュラルが乗ってということですか?」
「え?」
キラの質問に、カガリが呆けた。
「オーブは中立で、コーディネイターもいる。軍やモルゲンレーテにも、当然いるでしょう? 【ジン】のOSをちょっと弄るだけでも、今よりは格段に良くなる筈です」
オーブにもコーディネイターはいる。公然と差別はされない為、ある意味コーディネイターの安住の地といえるかもしれない。
「確かにそれは事実です。でも、比率で言えば、ナチュラルの方が圧倒的に多いの。私たちは、誰でも乗れるOSが欲しいのよ」
「なるほど、わかりました」
キラが懐から、とあるデータディスクを取り出した。
「もし、ナチュラル用OSの雛型が既にあるとしたら、どうします?」
先読みは転生者の特権。ここからは、キラのターンだ。
データディスクが2枚……来るぞエリカ!