やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
キラ「もう、終わったで」
「そのデータディスクは?」
震える指で、データディスクを指すエリカに、キラがドヤ顔で答えた。
「俺が作ったナチュラル用OS」
砂漠に落ちた時点で、オーブに行く気満々のキラが準備しないわけがないのだ。
「【ストライク】ベースで作ってあるから、【M1アストレイ】のデータを見て調整すれば、すぐにでもテスト出来ますよ?」
優秀過ぎる。目を白黒させているエリカを他所に、キラが近くの端末にデータディスクを読み込ませて、調整を始めていく。
「おい、キラ。お前、こんなのいつの間に用意してたんだよ!」
驚いて興奮しているカガリに、キラが端末から顔を上げずに答えた。
「宅配便が遅れたら怒られるだろ? だから、点数稼ぎに作ったんだよ。フレイやトールに協力して貰ったから、ちゃんとナチュラル用になってるよ」
オーブ用であると同時に、無事にアラスカへ着いた時用の保険でもあるのだ。ハルバートン提督も結局オーブ以外の中立国で補給する時しか支援無かったし。流石に、ザフトの勢力圏を突っ切って送る支援は無理だったようだ。
数十分の作業で調整は終わったようで、新しいOSが【M1アストレイ】に移植されていく。
その結果。
「すごい!」
パイロットであるアサギが興奮したように叫ぶ。
少し前までのヨボヨボの老人というか、ただの的じゃんとした動きから一転、機敏に動く【M1アストレイ】。
その動きは、機動兵器の名に相応しいものだった。
「細々とした調整やデバッグはありますけど、これで依頼は完了ですかね?」
「ッええ! そうね。ありがとう」
自分たちではどれだけ時間がかかったかわからない難題が、爆速で解決したことに混乱するエリカ。
それに畳み掛けるように追撃をするキラ。弱ったら追撃は基本。
「じゃあ、これからは個人的な話。ちょっと呼んで欲しい人がいるんです」
「呼んで欲しい人?」
エリカは、呑気にもウズミ様かなと思った。
「サハク家の偉い人を。どうせ、どっかで見ているんでしょう?」
エリカの顔がピシッと固まった。
「ど、どうしてサハク家を?」
「いや、ネットの掲示板の陰謀論の板だと、後ろ暗いことは大体サハク家だって言われてるので。……その反応だとビンゴみたいですね」
エリカは、冷や汗がダラダラ垂らして動けない。すると、どこからかコツコツと靴音が響いてきた。
「ほう、どうやらなかなか頭がまわるようだな」
「ミナ様……」
「ロンド・ミナ・サハクだ。私に何のようだ? キラ・ヤマト」
現れたのは、外伝での主要キャラ、ロンド・ミナ・サハクだ。
「追加で仕事をするから、報酬が欲しいと思いまして」
「……何の仕事をするというのだ?」
「その前に、認識の擦り合わせをしたいですね」
キラが、オーブ関係者を見回した。
「その【M1アストレイ】は、何の為にあるんですか?」
「はぁ!? オーブの守りだって言っただろ!」
キラの言葉に、カガリが即座に反応した。
「いや、どこ守るんだよ。M1は地上用の機体。オーブの領内のほとんどは海だぞ? 本土決戦用か?」
「え、それは……」
カガリが言葉に詰まった。
「AMBACが利くから宇宙の拠点防衛には使えるけど、本土防衛には向かないだろ。飛べないし、泳げないんだから」
ミナが、キラの言葉に頷いた。
「それは事実ではある。だが、オーブはやっと汎用型のモビルスーツを作れたレベルだ。局地戦向けはまだまだ先だろう。お前は、それをどうにか出来るのか?」
ミナの言葉を受けて、キラが懐から2枚目のデータディスクを取り出した。
「追加の仕事は、オーブの防衛に関する兵器の開発」
「なるほど、報酬は何が望みだ?」
面白がるミナの言葉に、キラはニヤッと笑った。
「俺はアラスカまで辿り着いたら、地球軍を除隊するので、その後オーブの防衛に関われる仕事に就けてください。出来れば、ある程度権力が欲しいですね」
「いいだろう。私の直属にしてやる。ただし、私の納得出来る兵器を作れたら、だがな」
ミナは興味深げに、キラの持つデータディスクを見ていた。
◆◆◆
「で、結局どうするんだ?」
カガリが問うと、キラがフレイにデータディスクを渡した。
「メインモニターに出して」
「はい」
キラが画面を指差すと、そこには戦闘機が映っていた。
「これは【スカイグラスパー】じゃないか」
「そう、【スカイグラスパー】だ」
今さら戦闘機かと言いたげなカガリを無視して、説明を始めるキラ。
「オーブ防衛に必要なのは、空と海の戦力だ。当然空は戦闘機だ」
「連合は、【ディン】に負けてるじゃないか」
カガリは不満そうだ。
「その通り、主力戦闘機の【スピアヘッド】では【ディン】に勝てない。そもそも、【ディン】は【スピアヘッド】に勝てるように設計されてるからな」
キルレシオが違い過ぎるよ。物量作戦出来ないオーブじゃ、相手にならない。そもそも、連合相手の時点で、物量差で無理ゲー。
そこで、改めてキラが【スカイグラスパー】を指差した。
「その点、こいつは単独で【ディン】を落とすポテンシャルがある。実際、カガリも1機落としてる」
みんなの視線がカガリへと集まった。ちょっとたじろぐカガリ。
「モビルスーツに拘ると、グゥルのようなもので飛ばす必要がある。それだと数が用意出来ない。それに、戦闘機なら既存の戦闘機パイロットを流用出来るし、モビルスーツのような専門の訓練をしないで済むから速成出来る」
機種転換どころか、兵種転換など訓練に時間がかかりすぎる。
「オーブの空軍は凄腕揃いって噂だし、それを活かした方が良いと思います」
キラの言葉をミナは黙って聞いている。
「そこで、こいつ」
キラが合図すると、画面が移り別の戦闘機のデータが映し出された。
「【スカイグラスパー】をベースに量産を前提に改良した」
全員の目が、画面に集中する。
「まず、不要なストライカーパック関係の機能をオミット」
【ストライク】と連携するのが前提の【スカイグラスパー】から、主力量産機にするなら当然だ。だって、【ストライク】量産しないんだから。
「正直【スカイグラスパー】のコストの大部分はここです。換装システムそのものや、空中換装などに使う特殊なコンピューターは高いし」
試作機は機能盛り盛りだから高いのだ。
「武装は基本そのまま。ビームを撃てるアドはでかいので」
この時期、空飛ぶビーム兵器はザフトは作れてないからね。
「おおよその外観はそのまま。後は左右スラスターの外側に翼をつけて完成。ストライカーパックが無いなら、こっちの方がバランスが良い」
暫し考え込んだ後、エリカが質問した。
「これを量産するとしても、コストが高くないかしら? 【スピアヘッド】よりは大分高いし、どこまで数が揃えられるか……」
「そもそも、【スピアヘッド】じゃカトンボのように落とされるだけです。連合のように数を揃えられるのなら兎も角、オーブでは少数精鋭が求められる。なので、戦闘機売りましょう」
エリカが目をしばたかせる。
「幸いオーブの戦闘機も【スピアヘッド】のマイナーチェンジ版。連合に売っぱらって、そのお金を製造費に足しましょう。連合も戦闘機ならいくらでも欲しいだろうし、買ってくれますよ」
ミナが満足そうに頷いた。いくらでも戦闘機が欲しい連合に戦闘機を売れば恩も売れるし、一石二鳥だ。
「悪くない計画だ。予算を得る為に、年寄りどもに見せてくるとしよう。こいつの機体名はどうする?」
「なら、日本と絡めて【トキ】で」
キラの言葉に、カガリが首を傾げた。
「【トキ】って、時、時間ってことか?」
「戦闘機なんだから鳥に決まってるだろ。ニッポニア・ニッポンだよ」
「年寄りどもが好きそうな名前だ。取り敢えずは、M1のOSの作業の続きをしていろ」
そう言うと、ミナはデータのコピーを取って足早に去っていった。
国鳥のキジと名前を迷ったけど、キジは地面にいるイメージがあったのでトキにしました。